公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
DX投資促進税制とは?対象設備・適用要件・廃止後の代替制度
「DX投資に税制優遇はまだ使えるのか?」とお調べの経営者に向けて、DX投資促進税制の制度概要から廃止の経緯、現在使える代替制度までを完全ガイドします。この記事を読めば、自社のDX投資に最適な支援制度を選べます。


「DX投資に税制優遇はまだ使えるのか?」とお調べの経営者に向けて、DX投資促進税制の制度概要から廃止の経緯、現在使える代替制度までを完全ガイドします。この記事を読めば、自社のDX投資に最適な支援制度を選べます。
🏆 結論:DX投資促進税制は2025年3月に廃止済み。代替制度を活用しよう
DX投資促進税制は令和7年3月31日をもって廃止されました。新規の計画認定はできません。ただし、認定済み企業は実施状況報告の義務が残ります。DX関連の設備投資を検討中の企業は、中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制・IT導入補助金などの代替制度を検討してください。
📢 重要:DX投資促進税制は廃止済み
DX投資促進税制は令和7年(2025年)3月31日をもって廃止されました。経済産業省は「先進的なDX事例の普及に一定の役割を果たした」として制度を終了しています。本記事では制度の振り返りとともに、現在使える代替制度を詳しく解説します。
DX投資促進税制とは、産業競争力強化法に基づき、企業の全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)に必要なクラウド関連投資に対して、税額控除(最大5%)または特別償却(30%)の優遇を受けられる制度でした。
この制度は令和3年度(2021年度)税制改正で創設されました。経済産業省が「2025年の崖」として問題提起した、レガシーシステムの刷新によるDX推進を税制面から後押しする目的で設けられた時限措置です。
実務では、この制度の相談を受けるケースの多くが「基幹システムの入替えを考えている」「クラウド移行で初期費用が膨らむ」という局面でした。通常の設備投資減税と異なり、ソフトウェアやクラウド移行費用(繰延資産)を対象にしていた点が、IT投資に積極的な企業にとって魅力的な制度でした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象法人 | 青色申告法人(個人事業主は対象外) |
| 根拠法 | 産業競争力強化法(事業適応計画の認定) |
| 税制措置 | 税額控除3%(グループ外データ連携で5%)or 特別償却30% |
| 投資額の下限 | 売上高比0.1%以上 |
| 投資額の上限 | 300億円 |
| 税額控除上限 | カーボンニュートラル投資促進税制と合計で当期法人税額の20% |
| 適用期限 | 令和7年(2025年)3月31日 → 廃止 |
参考: 経済産業省「DX投資促進税制」
DX投資促進税制は創設から約4年で役割を終えました。制度の変遷を時系列で整理します。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 令和3年(2021年)6月 | 産業競争力強化法改正で制度創設。適用期限は2023年3月末 |
| 令和3年(2021年)8月 | 事業適応計画の申請受付開始 |
| 令和5年度(2023年度)改正 | 要件見直し(売上上昇・海外市場獲得要件追加)+2年延長(2025年3月末まで) |
| 令和7年度(2025年度)改正 | 「先進的DX事例の普及に一定の役割を果たした」として廃止 |
DX投資促進税制の対象となるのは、DXの実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連投資です。対象資産は4種類に限定されていました。
| 資産区分 | 具体例 | 条件・注意点 |
|---|---|---|
| ソフトウェア | ERP、CRM、SCM、AI分析基盤など | 新規開発・購入が対象。アプリ開発支援・研究開発用途は対象外 |
| 繰延資産 | クラウド移行初期費用、カスタマイズ費用 | オンプレからクラウドへの移行に係る初期費用が想定 |
| 機械装置 | IoTセンサー、データ収集装置 | ソフトウェア・繰延資産と連携して使用するものに限る |
| 器具備品 | サーバー、ネットワーク機器 | 同上。汎用ハードウェアのみの投資は対象外 |
⚠️ 対象外だったもの
以下の投資はDX投資促進税制の対象外でした:アプリケーション開発支援目的のみの投資、研究開発目的のみの投資、ソフトウェア単体でない汎用ハードウェアのみの投資、インターネット利用サービス(SaaS月額利用料等)のみの投資。実務では「クラウドサービスの月額利用料は対象にならないのですか?」という質問が非常に多かったのですが、これは対象外でした。
DX投資促進税制の認定を受けるには、デジタル要件(D要件)と企業変革要件(X要件)の両方を満たす必要がありました。単なるIT導入ではなく、全社的なDXであることが求められた点が、この制度の最大の特徴です。
D要件は、DX認定の取得とデータ連携・クラウド活用の2つの柱で構成されていました。
| D要件の項目 | 内容 | 必須 |
|---|---|---|
| DX認定の取得 | IPAによるデジタルガバナンス・コード適合審査(60営業日) | ✅ |
| データ連携 | 社外データまたは新規取得データと既存社内データの連携 | ✅ |
| クラウド活用 | クラウドサービスまたは自社クラウド環境の活用 | ✅ |
💡 実務のポイント
DX認定はグループ会社であっても税制適用する法人ごとに個別取得が必要でした。「親会社がDX認定を持っているから子会社も使える」と誤解しているケースが実務で散見されましたが、それは認められませんでした。
X要件は、全社的な経営判断に基づくDX推進であることを証明する要件です。一部門のIT化ではなく、取締役会等の決議に基づく全社的な取り組みであることが求められました。
改正後(令和5年4月以降)のX要件では、売上上昇要件と海外売上高比率要件が追加されました。具体的には、対象事業の売上高が基準年度比で一定以上増加する見込みであること、海外売上高比率が一定水準に達する見込みであることが求められました。
実務で最も苦労するのがこのX要件の準備でした。「取締役会議事録でDX推進を決議した」だけでは不十分で、全社の経営戦略にDXがどう組み込まれているかを体系的に示す必要がありました。中小企業にとってはハードルが高く、結果として認定事業者は大企業中心になっていました。
DX投資促進税制では、税額控除と特別償却のいずれかを選択できました。この選択は他の設備投資減税にも共通する考え方なので、今後の投資判断にも活きる知識です。
| 選択肢 | 優遇内容 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 税額控除3% | 投資額の3%を法人税額から直接控除 | グループ内のデータ連携のみの場合 |
| 税額控除5% | 投資額の5%を法人税額から直接控除 | グループ外の法人ともデータ連携・共有する場合 |
| 特別償却30% | 普通償却に加えて投資額の30%を即時償却 | いずれの場合も選択可 |
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 通常償却のみ | 税額控除5% | 特別償却30% |
|---|---|---|---|
| 1年目の法人税減額 | 232万円 | 482万円 | 580万円 |
| 2〜5年目の法人税減額 | 各232万円 | 各232万円 | 各116万円 |
| 5年間の税減額合計 | 1,160万円 | 1,410万円 | 1,044万円 |
| 10年間トータルの税負担差額 | 基準 | ▲250万円 | ±0円(税の繰り延べのみ) |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
💡 税理士の視点:どちらを選ぶべきだったか
税額控除は「永久に法人税が減る」効果、特別償却は「税の繰り延べ(将来払う税金を前倒しで減額する)」効果です。長期的には税額控除の方が有利でした。ただし、特別償却は「今年の資金繰りが厳しい」場合に初年度のキャッシュフローを大幅に改善できるメリットがありました。実務では、課税所得が安定している企業には税額控除を、資金繰りが逼迫している企業には特別償却を勧めていました。
DX投資促進税制の認定手続きは、DX認定の取得→事業適応計画の認定→設備取得→税務申告の4段階でした。全体で約6〜9ヶ月かかるのが一般的でした。
| ステップ | 内容 | 所要期間 | 提出先 |
|---|---|---|---|
| ① DX認定取得 | デジタルガバナンス・コードへの適合申請 | 約60営業日(3ヶ月) | IPA(情報処理推進機構) |
| ② 事業適応計画認定 | 計画書+確認申請書の提出 | 約30日+事前相談1〜2ヶ月 | 事業を所管する省庁 |
| ③ 設備取得・事業供用 | 認定計画に沿って設備を取得し事業に使用 | 計画による | — |
| ④ 税務申告 | 確定申告書に税額控除or特別償却を記載 | 事業年度末から2ヶ月以内 | 税務署 |
実務で注意が必要だったのは、DX認定と事業適応計画認定が別ステップだった点です。DX認定はあくまで「事業適応計画の認定を受けるための前提条件」であり、DX認定だけでは税制優遇を受けられませんでした。
DX投資促進税制は令和7年度(2025年度)税制改正で廃止されました。経済産業省は廃止理由として「先進的なDX事例の普及に一定の役割を果たした」としています。
制度は廃止されましたが、2024年度末までに計画認定を受けた事業者は以下の義務が残ります。
| 義務 | 期限 | 注意点 |
|---|---|---|
| 実施状況報告書の提出 | 各事業年度終了後3ヶ月以内 | 計画の終了まで毎年度提出が必要 |
| 計画変更時の変更認定 | 変更が生じた時点 | 目標値の大幅変更等は変更申請が必要 |
| 目標達成の確認 | 計画期間中 | 目標達成後の翌年度以降は報告義務免除 |
⚠️ 旧制度(令和5年3月以前認定)との違い
令和5年3月31日までに認定申請した事業適応計画に従って、令和5年4月1日以後に取得した資産については、改正後のDX投資促進税制は適用されませんでした。旧制度で認定を受けた企業は旧制度の期限(2023年3月末までの取得)が適用されます。
DX投資促進税制が廃止された現在、DX関連の設備投資に使える主な支援制度は以下の5つです。税制優遇と補助金の両面から検討してください。
| 制度名 | 種類 | 対象企業 | 優遇内容 | ソフトウェア対象 |
|---|---|---|---|---|
| 中小企業経営強化税制 | 税制 | 中小企業者等 | 即時償却 or 税額控除10%(資本金3,000万以下は7%も可) | ✅ 70万円以上 |
| 中小企業投資促進税制 | 税制 | 中小企業者等 | 特別償却30% or 税額控除7%(資本金3,000万以下) | ✅ 70万円以上 |
| IT導入補助金 | 補助金 | 中小企業・小規模事業者 | 補助率1/2〜3/4、上限450万円 | ✅ |
| ものづくり補助金 | 補助金 | 中小企業・中堅企業 | 補助率1/2〜2/3、上限750万〜3,000万 | ✅ システム構築費含む |
| 自治体DX助成金 | 助成金 | 所在地の自治体による | 例:東京都DX推進助成金(上限3,000万円) | ✅ |
中小企業経営強化税制については「中小企業経営強化税制とは?即時償却・税額控除の選択と申請手順」で詳しく解説しています。中小企業投資促進税制については「中小企業投資促進税制とは?対象設備・特別償却・税額控除の要件」をご覧ください。
| ステップ | 確認事項 | Yesの場合 | Noの場合 |
|---|---|---|---|
| ① | 資本金1億円以下の中小企業ですか? | ステップ②へ | 研究開発税制・ものづくり補助金を検討 |
| ② | 経営力向上計画の認定を受けられますか? | 経営強化税制(即時償却可) | ステップ③へ |
| ③ | ソフトウェア70万円以上の投資ですか? | 投資促進税制(特別償却30%) | IT導入補助金・自治体助成金を検討 |
🧮 税制と補助金の併用ポイント
税制優遇(経営強化税制・投資促進税制)と補助金(IT導入補助金・ものづくり補助金)は原則として併用可能です。ただし、補助金を受けた部分は圧縮記帳の対象になり得るため、税額控除の計算基礎が変わる点に注意が必要です。補助金申請と税制適用の両方を視野に入れた設備投資計画を立てることをおすすめします。
DX投資促進税制と混同されやすい制度がいくつかあります。それぞれの違いを整理します。
| 項目 | DX投資促進税制 | カーボンニュートラル投資促進税制 | 5G導入促進税制 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 全社的DX推進 | CO2削減 | 5G通信インフラ整備 |
| 現在の状況 | 廃止済み | 延長・拡充で存続 | 廃止済み |
| 認定要件 | D要件+X要件 | CO2削減効果の認定 | 特定高度情報通信技術活用システム |
| 企業規模制限 | なし(大企業も可) | なし | なし |
カーボンニュートラル投資促進税制については「カーボンニュートラル投資促進税制とは?脱炭素化設備への税額控除」で詳しく解説しています。
DX投資促進税制の廃止後、中小企業がDX投資を進める際の実務的な戦略を整理します。
ポイント1:経営力向上計画を先に取得する
中小企業経営強化税制の即時償却を使うには、経営力向上計画の認定が必要です。設備投資の検討段階で計画認定を先行して進めることで、投資のタイミングに合わせて税制優遇を確実に受けられます。認定には約1ヶ月かかるため、早めの準備が重要です。
ポイント2:補助金と税制優遇を組み合わせる
IT導入補助金でソフトウェア導入費用の一部を補助してもらいつつ、自己負担分について中小企業投資促進税制の特別償却を適用する、という二段構えの戦略が有効です。
ポイント3:少額減価償却資産特例を活用する
取得価額40万円未満(令和8年4月以降)のソフトウェアや器具備品は、少額減価償却資産の特例で全額を即時経費化できます。大規模なシステム投資を分割して導入することで、この特例を最大限に活用できる場合があります。
💡 実務のポイント
DX投資促進税制が使えなくなった今、中小企業にとっては中小企業経営強化税制の方が使い勝手がよいケースが多いです。DX投資促進税制は全社レベルのDX計画が必要でしたが、経営強化税制は設備単位で申請できます。実務では「DX税制がなくなって困った」という相談を受けることがありますが、中小企業であれば経営強化税制で十分カバーできることがほとんどです。
法人決算全体の流れについては「法人決算の流れ」で解説しています。法人化のタイミングを検討中の方は「法人成りのタイミング」もご参考ください。
| # | 失敗パターン | 対策 |
|---|---|---|
| 1 | DX投資促進税制がまだ使えると思い込んでいた | 廃止済みのため、代替制度を検討する |
| 2 | SaaS月額利用料が税制優遇の対象になると思っていた | 月額利用料は対象外。初期導入費用のみ対象 |
| 3 | 設備を取得してから申請すればいいと後回しにした | 計画認定は設備取得前に完了する必要がある |
| 4 | 経営強化税制と投資促進税制の違いがわからず最適な制度を選べなかった | 上記の判定フローで確認し、税理士に相談 |
| 5 | 補助金を受けた後に税額控除を計算して、圧縮記帳を忘れた | 補助金受給額は圧縮記帳の処理を先に行う |
| 6 | ハードウェアだけの購入で税制優遇を受けようとした | ソフトウェアと連携する包括的な投資計画が必要 |
| 7 | 自治体の助成金を見落としていた | 所在地の自治体DX助成金を必ず確認する |
減価償却の基本については「減価償却の基礎知識」で解説しています。
📋 この記事のポイント
DX投資促進税制は廃止されましたが、設備投資を支援する制度は他にも多数あります。自社の規模・投資内容に合った最適な制度を選ぶことで、税負担を軽減しながらDXを推進できます。制度選びに迷ったら、税理士に相談して投資計画全体を設計することをおすすめします。
会社設立から決算・DX投資の税務まで、一貫したサポートをお求めの方は「会社設立の流れ」もご参照ください。令和7年度税制改正の法人税への影響全般は「令和7年度税制改正の法人税ポイント」でまとめています。