公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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中小企業投資促進税制とは?対象設備・特別償却・税額控除の要件を税理士が解説
「設備投資をしたいけど、使える税制がよくわからない」とお困りの経営者に向けて、中小企業投資促進税制の対象設備・金額基準・優遇措置の選び方を完全ガイドします。この記事を読めば、自社の設備投資にどの税制を使えばよいかを判断できます。


中小企業投資促進税制とは?対象設備・特別償却・税額控除の要件を税理士が解説
「設備投資をしたいけど、使える税制がよくわからない」とお困りの経営者に向けて、中小企業投資促進税制の対象設備・金額基準・優遇措置の選び方を完全ガイドします。この記事を読めば、自社の設備投資にどの税制を使えばよいかを判断できます。
🏆 結論:経営力向上計画が不要な「手軽な設備投資減税」
中小企業投資促進税制は、取得価額の30%の特別償却、または7%の税額控除(資本金3,000万円以下限定)を受けられる制度です。経営強化税制と違い、経営力向上計画の認定が不要で、確定申告時に明細書を添付するだけで利用できます。令和7年度税制改正で適用期限が2027年3月末まで延長されました。
中小企業投資促進税制とは、青色申告書を提出する中小企業者等が一定の設備投資を行った場合に、特別償却または税額控除のどちらかを選択できる制度です。租税特別措置法第42条の6に規定されています。
この制度の最大の特徴は、事前の計画認定が不要である点です。経営強化税制のように経営力向上計画を策定・申請する手間がかからず、確定申告書に所定の明細書を添付するだけで適用を受けられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法令 | 租税特別措置法第42条の6 |
| 優遇措置 | 特別償却30% or 税額控除7%(選択適用) |
| 税額控除の対象 | 個人事業主、資本金3,000万円以下の法人 |
| 適用期限 | 2027年(令和9年)3月31日まで |
| 事前計画認定 | 不要(確定申告時の明細書添付のみ) |
| 税額控除の上限 | 法人税額の20%(経営強化税制との合計) |
| 繰越 | 税額控除額の超過分は翌事業年度に限り繰越可能 |
💡 実務のポイント
実務では、「設備を買ったけれど投資促進税制を使い忘れた」というケースが少なくありません。特に税理士を変更したタイミングや自社で申告しているケースに多い印象です。設備投資を行ったら、確定申告前に必ず適用可能な税制を確認しましょう。
中小企業投資促進税制は1998年(平成10年)に創設され、数年ごとに延長・改正を繰り返してきた息の長い制度です。令和7年度税制改正では、適用期限が2025年3月31日から2027年(令和9年)3月31日まで2年間延長されました。
なお、今回の延長では制度内容に大きな変更はありませんが、農地所有適格法人における「みなし大企業」の判定ルールが一部改正されています。農業法人に関連する企業は注意が必要です。
中小企業投資促進税制を利用できるのは、青色申告書を提出する中小企業者等です。具体的には以下の要件を満たす事業者が対象になります。
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 法人(資本金あり) | 資本金の額または出資金の額が1億円以下 |
| 法人(資本金なし) | 常時使用する従業員数が1,000人以下 |
| 個人事業主 | 常時使用する従業員数が1,000人以下 |
| 農業協同組合等 | 農業協同組合、商店街振興組合など |
資本金1億円以下であっても、以下に該当する場合は「みなし大企業」として対象外になります。
⚠️ 注意
「うちは資本金500万円だから大丈夫」と安心している方でも、親会社が大企業の場合はみなし大企業に該当して適用を受けられません。グループ会社がある場合は、株主構成の確認が必須です。税務調査でこの要件を指摘されて追徴課税になるケースを実務で何度か経験しています。
製造業、建設業、農業、林業、漁業、鉱業、卸売業、小売業、サービス業、不動産業、物品賃貸業など、ほぼ全ての業種が対象です。ただし、以下の業種は除外されています。
中小企業投資促進税制の対象となる設備は6種類です。それぞれに最低取得価額が定められており、この金額基準を満たさないと適用を受けられません。
| 設備の種類 | 金額基準 | 具体例 |
|---|---|---|
| 機械及び装置 | 1台160万円以上 | NC旋盤、プレス機、食品加工機、農業用ドローン |
| 測定工具・検査工具 | 1台120万円以上 (1台30万円以上かつ合計120万円以上でも可) | 三次元測定機、非破壊検査装置 |
| ソフトウェア | 1つ70万円以上 (合計70万円以上でも可) | ERP、会計ソフト、CADソフト、生産管理システム |
| 貨物自動車 | 車両総重量3.5トン以上 | 2トン積み以上のトラック |
| 内航船舶 | 取得価額の75% | 総トン数500トン以上は環境対応船に限定 |
以下の設備は金額基準を満たしていても対象外です。特にパソコンやデジタル複合機は平成29年度改正で除外されたため、間違えやすいポイントです。
| 対象外設備 | 理由・代替手段 |
|---|---|
| 電子計算機(パソコン・サーバー) | 平成29年度改正で除外。経営強化税制の活用を検討 |
| デジタル複合機(コピー機) | 平成29年度改正で除外。経営強化税制の活用を検討 |
| 試験・測定機器 | 平成29年度改正で除外。経営強化税制の活用を検討 |
| 中古品 | 新品のみが対象。中古設備は少額減価償却資産特例を検討 |
| 貸付用設備 | リースで他者に貸し付ける設備は対象外 |
| コインランドリー用機械(副業的) | 管理のおおむね全部を他者に委託する場合は対象外 |
| 器具・備品(冷蔵ケース、照明等) | 投資促進税制の対象外。経営強化税制で対応可能 |
| 建物・建物附属設備 | 投資促進税制の対象外。経営強化税制B類型拡充で一部対応 |
💡 実務のポイント
現場で特に多い質問が「パソコン100台で総額500万円。投資促進税制は使えますか?」というものです。答えはNoです。パソコンは電子計算機に該当するため、金額にかかわらず投資促進税制の対象外です。この場合は30万円未満の少額減価償却資産特例(合計300万円まで)か、30万円以上なら経営強化税制を検討してください。
ソフトウェアについては、取得価額70万円以上であっても対象外となるものがあります。以下の判定表で確認してください。
| ソフトウェアの種類 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| ERP・基幹業務システム | ○ | 取得価額70万円以上 |
| 会計・給与計算ソフト | ○ | パッケージ・クラウド問わず |
| CAD・CAMソフト | ○ | 製造業の設計に使用 |
| 複写販売用の原本 | × | 販売目的のソフトウェアは対象外 |
| 開発研究用ソフトウェア | × | 研究開発税制の対象になる場合あり |
| サーバー用OS(ISO/IEC 15408認証なし) | × | セキュリティ評価認証がないもの |
中小企業投資促進税制では、特別償却30%と税額控除7%のどちらかを選択して適用します。ただし、税額控除を選べるのは個人事業主と資本金3,000万円以下の法人に限定されます。
| 比較項目 | 特別償却30% | 税額控除7% |
|---|---|---|
| しくみ | 通常の減価償却費に加えて取得価額の30%を追加で償却 | 法人税額から取得価額の7%を直接差し引き |
| 節税の性質 | 課税の繰延べ(トータルの税額は変わらない) | 税額の直接減少(トータルの税額が減る) |
| 初年度の効果 | 大きい(初年度の税負担を大幅に軽減) | やや小さい(法人税額の20%が上限) |
| トータルの節税額 | 0円(償却費の前倒しにすぎない) | 取得価額の7%相当額 |
| 適用対象 | 全ての中小企業者等 | 個人事業主・資本金3,000万円以下の法人 |
| 控除上限 | なし | 法人税額の20%(経営強化税制と合計) |
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 通常償却のみ | 特別償却30% | 税額控除7% |
|---|---|---|---|
| 初年度の償却費 | 50万円 | 200万円 | 50万円 |
| 初年度の法人税額 | 112.5万円 | 90万円 | 77.5万円 |
| 初年度の節税効果 | — | 22.5万円 | 35万円 |
| 10年間トータルの税額 | 1,125万円 | 1,125万円 | 1,090万円 |
| 10年間のトータル節税額 | — | 0円 | ▲35万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
🧮 シミュレーションの読み方
特別償却は「課税の繰延べ」なので、10年間トータルでは通常償却と税額は同じです。初年度のキャッシュフローは改善しますが、翌年以降に償却費が減る分だけ税額が増えます。一方、税額控除は法人税額そのものが35万円減るため、トータルの節税効果があります。長期的に安定した利益が見込める場合は税額控除が有利です。
| 資本金 | 選択可能な措置 | 推奨される選択 |
|---|---|---|
| 3,000万円以下 | 特別償却30% or 税額控除7% | 安定利益→税額控除 / 初年度に資金確保→特別償却 |
| 3,000万円超〜1億円以下 | 特別償却30%のみ | 特別償却一択(税額控除は選べない) |
実務では、資本金3,000万円以下の法人が大半を占めます。その場合、安定して黒字が続く見込みなら税額控除7%を選択する方が、10年間のトータルで有利になるケースが多いです。一方、大きな設備投資で初年度に資金繰りが厳しくなる場合は、特別償却で初年度の税負担を軽くしてキャッシュフローを確保する戦略もあります。
中小企業が設備投資を行う際に使える主な税制は、投資促進税制・経営強化税制・少額減価償却資産特例の3つです。設備の内容と金額で最適な制度が変わります。以下のフローで確認してください。
| ステップ | 判定条件 | 該当する税制 |
|---|---|---|
| ① | 取得価額が30万円未満か? | → Yes:少額減価償却資産特例(全額即時損金、合計300万円まで) |
| ② | 投資促進税制の対象設備+金額基準を満たすか? | → Yes:投資促進税制(特別償却30%/税額控除7%。計画認定不要) |
| ③ | 経営力向上計画を策定できるか? | → Yes:経営強化税制(即時償却/税額控除10%。器具備品・建物附属設備も対象) |
💡 実務のポイント
「投資促進税制と経営強化税制、どちらが得ですか?」という質問を頻繁に受けます。経営強化税制の方が優遇が大きい(即時償却or税額控除10%)のですが、経営力向上計画の認定に1〜2ヶ月かかります。急ぎの設備投資で認定が間に合わない場合は、投資促進税制を「保険」として使い、間に合えば経営強化税制を適用する——という使い分けを実務ではよく提案しています。
| 比較項目 | 投資促進税制 | 経営強化税制 | 少額減価償却資産特例 |
|---|---|---|---|
| 優遇内容 | 特別償却30% or 税額控除7% | 即時償却 or 税額控除10% | 全額即時損金算入 |
| 対象金額 | 設備種類ごとに異なる(160万円〜) | 設備種類ごとに異なる(30万円〜) | 30万円未満(合計300万円まで) |
| 事前認定 | 不要 | 経営力向上計画の認定が必要 | 不要 |
| 手間・工数 | 低い(申告時の書類添付のみ) | 高い(計画策定+認定1〜2ヶ月) | 最も低い |
| 対象設備 | 機械装置・ソフトウェア等5種 | 機械装置・器具備品・ソフトウェア・建物附属設備 | 減価償却資産全般 |
| 適用期限 | 2027年3月31日 | 2027年3月31日 | 2026年3月31日(延長見込み) |
詳しくは「中小企業経営強化税制とは?即時償却・税額控除の選択と申請手順」も合わせてご覧ください。
補助金を受けて設備投資をした場合、圧縮記帳と投資促進税制を併用できるのかは経営者からよく聞かれるテーマです。結論から言えば、原則として併用は可能ですが、計算の順序に注意が必要です。
圧縮記帳を行った場合、投資促進税制の特別償却や税額控除の計算基礎は圧縮記帳後の取得価額になります。つまり、補助金で取得価額が圧縮された分だけ、特別償却額や税額控除額も小さくなります。
📐 併用シミュレーション
⚠️ 注意
補助金によっては、投資促進税制との併用を制限している場合があります。特に公募要領に「税制優遇との併用不可」と明記されているケースもあるため、補助金申請時に必ず確認してください。圧縮記帳の対象となる譲渡資産や買換資産の要件は法人税法上細かく定められており、誤った適用は税務調査で否認されるリスクがあります。
圧縮記帳の基本的なしくみは「減価償却の基礎知識と計算方法」でも触れていますので、そちらも参考にしてください。
中小企業投資促進税制の手続きは、経営強化税制と比べてシンプルです。事前の計画認定は不要で、確定申告時に所定の書類を添付するだけで完了します。
| 選択する措置 | 添付書類 |
|---|---|
| 特別償却 | ①対象設備の償却限度額の計算に関する明細書 ②適用額明細書 |
| 税額控除 | ①控除を受ける金額に関する明細書 ②適用額明細書 |
| 選択する措置 | 必要な対応 |
|---|---|
| 特別償却 | 青色申告決算書「㋬割増(特別)償却費」欄に金額を記入+「摘要」に措法10条の3と記載。特別償却の付表を添付 |
| 税額控除 | 確定申告書に明細書を添付 |
💡 実務のポイント
手続き自体は簡単ですが、「設備を取得しただけ」では適用を受けられません。取得した設備をその事業年度中に事業の用に供する(実際に使い始める)ことが条件です。期末に購入して据え付けただけの状態では、翌事業年度での適用になります。12月決算の会社が12月末に機械を購入し、試運転が1月にずれ込んだために適用を逃したケースがありました。
中小企業投資促進税制と経営強化税制は、どちらも中小企業の設備投資を支援する制度ですが、優遇の大きさ・手続きの手間・対象設備の範囲が異なります。
| 比較項目 | 投資促進税制 | 経営強化税制 |
|---|---|---|
| 特別償却 | 30% | 100%(即時償却) |
| 税額控除(3,000万円以下) | 7% | 10% |
| 税額控除(3,000万円超) | 選択不可 | 7% |
| 計画認定 | 不要 | 経営力向上計画の認定必要(1〜2ヶ月) |
| 器具・備品 | 対象外 | 対象(30万円以上) |
| 建物附属設備 | 対象外 | 対象(60万円以上) |
| パソコン | 対象外 | 対象(A類型で条件あり) |
| 建物 | 対象外 | B類型拡充で一部対象(100億企業向け) |
経営強化税制の詳しい要件や申請手順は「中小企業経営強化税制とは?即時償却・税額控除の選択と申請手順」で解説しています。
| あなたのケース | おすすめ制度 | 理由 |
|---|---|---|
| 機械装置160万円以上、急ぎの投資 | 投資促進税制 | 計画認定不要で即適用 |
| 機械装置160万円以上、時間に余裕あり | 経営強化税制 | 即時償却or税額控除10%で優遇が大きい |
| パソコン・冷蔵ケースなど器具備品 | 経営強化税制 | 投資促進税制では対象外 |
| 30万円未満の少額設備 | 少額減価償却資産特例 | 全額即時損金(合計300万円まで) |
| 資本金3,000万円超で税額控除したい | 経営強化税制 | 投資促進税制では税額控除を選べない |
脱炭素化に向けた設備投資に特化した「カーボンニュートラル投資促進税制」も中小企業が活用できる制度です。投資促進税制とは対象設備や優遇内容が異なります。
| 比較項目 | 投資促進税制 | カーボンニュートラル税制 |
|---|---|---|
| 対象設備 | 機械装置・ソフトウェア等 | 脱炭素化に資する設備(生産工程の省エネ等) |
| 対象企業 | 中小企業者等のみ | 大企業も含む全法人 |
| 優遇内容 | 特別償却30% or 税額控除7% | 特別償却50% or 税額控除5〜10% |
| 事前認定 | 不要 | 事業適応計画の認定が必要 |
省エネ設備やEV(電気自動車)の導入を検討している場合は、カーボンニュートラル投資促進税制の方が優遇が大きい場合があります。ただし、事業適応計画の認定手続きが必要なため、手間とのバランスを考えて選択してください。詳しくは「カーボンニュートラル投資促進税制とは?脱炭素化設備への税額控除」をご覧ください。
🏭 A社(従業員15名・資本金1,000万円・製造業)
🚚 B社(従業員8名・資本金500万円・運送業)
💻 C社(従業員20名・資本金300万円・IT企業)
実務で経験した「投資促進税制の適用で失敗するパターン」をまとめました。以下のチェックリストで事前に確認してください。
| 確認 | チェック項目 | よくある失敗 |
|---|---|---|
| □ | 青色申告の承認を受けているか? | 設立初年度に青色申告の届出を出し忘れ |
| □ | 設備は新品か? | 中古品を購入して申告し、税務調査で否認 |
| □ | 事業年度中に事業の用に供したか? | 期末購入→翌期稼働で適用時期がずれる |
| □ | 金額基準を満たしているか? | 159万円の機械で適用申告し、1万円不足で否認 |
| □ | 対象設備の種類に該当するか? | パソコンやデジタル複合機を誤って申告 |
| □ | みなし大企業に該当しないか? | 親会社が大企業で適用不可 |
| □ | 適用期限内か? | 2027年4月以降の取得で適用切れ |
| □ | 経営強化税制のE類型を適用していないか? | E類型の計画期間中は投資促進税制が使えない |
設備投資の税務全般については「法人決算の流れと手順」も参考にしてください。また、会社設立直後の方は「会社設立の流れ」で青色申告届出の手順も確認しておきましょう。
📋 この記事のポイント
設備投資を検討している方は、まず自社の設備がどの税制に該当するかを判定フローで確認し、投資のスケジュールと認定手続きの余裕を踏まえて最適な制度を選択してください。判断に迷う場合は、税理士に相談して具体的なシミュレーションを行うことをおすすめします。
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