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研究開発税制の活用方法|試験研究費の税額控除の計算と申告手順
「うちの会社でも研究開発税制は使えるの?」とお困りの経営者・経理担当者に向けて、3つの制度の使い分け・控除率の計算方法・申告手順を完全ガイドします。この記事を読めば、自社の試験研究費がいくらの税額控除につながるかを計算できます。


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🏆 結論:中小企業は控除率12〜17%で法人税を最大35%まで控除できる
研究開発税制は3制度で構成されています。中小企業は「中小企業技術基盤強化税制」を使えば控除率12〜17%(一般型より有利)、さらにオープンイノベーション型を併用すれば法人税額の最大45%まで控除可能です。製造業だけでなく、ソフトウェア開発やサービス開発も対象になります。
研究開発税制とは、企業が研究開発を行っている場合に、法人税額から試験研究費の一定割合を控除できる制度です。租税特別措置法第42条の4に規定されており、民間企業の研究開発投資を促進してイノベーション創出につなげることが目的です。
制度は以下の3つで構成されています。
| 比較項目 | ①一般型 | ②中小企業型 | ③オープンイノベーション型 |
|---|---|---|---|
| 正式名称 | 一般試験研究費の額に係る税額控除制度 | 中小企業技術基盤強化税制 | 特別試験研究費の額に係る税額控除制度 |
| 対象法人 | 全ての青色申告法人 | 中小企業者等(適用除外事業者を除く) | 全ての青色申告法人 |
| 控除率 | 1〜14%(増減割合に応じて変動) | 12〜17%(増減割合に応じて変動) | 20〜30%(研究相手先に応じて固定) |
| 控除上限 | 法人税額の25%(上乗せあり) | 法人税額の25%(上乗せで最大35%) | 法人税額の10%(①②とは別枠) |
| ①との重複 | — | ×(選択適用) | ○(別枠で併用可能) |
| 最大控除上限(併用時) | 法人税額の35% | 法人税額の45% | — |
💡 実務のポイント
中小企業の場合、一般型ではなく②中小企業型を選択した方が控除率が高くなります。さらに大学や公的研究機関との共同研究があれば③オープンイノベーション型を別枠で併用でき、最大で法人税額の45%まで控除可能です。「一般型より中小企業型の方が有利」という点を見落としているケースを実務で何度か見てきました。
研究開発税制の対象となる「試験研究費」は、製品の製造・技術の改良・考案・発明に係る試験研究のために要する費用、および対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究費です。人文・社会科学分野の研究は対象外です。
| 費用の種類 | 対象 | 注意点 |
|---|---|---|
| 研究専従者の人件費 | ○ | 「専ら従事する者」に限定。兼務者は従事割合で按分 |
| 研究用の原材料費 | ○ | 試作品の材料費、実験用の消耗品等 |
| 外部への委託研究費 | ○ | 研究開発の委託先に支払う費用 |
| 研究用設備の減価償却費 | ○ | 試験研究に使用する固定資産の償却費 |
| 技術研究組合の賦課金 | ○ | 技術研究組合法に基づく費用 |
| サービス開発に係る費用 | ○ | 対価を得て提供する新たな役務の開発に限る |
| 量産開始後の製造費用 | × | 開発完了後の量産費用は対象外 |
| 性能向上を目的としないデザイン設計・試作 | × | 令和5年度改正で対象外に明確化 |
| 複写販売用ソフトウェアの原本開発費 | × | 販売用ソフトの開発は繰延資産 |
| 人文・社会科学分野の研究 | × | 自然科学に限定(マーケティング調査等は対象外) |
⚠️ 注意:「専ら従事する者」の判定が最大のハードル
試験研究費の中で最も金額が大きくなるのは人件費ですが、「専ら従事する者」の判定が税務調査で争点になりやすいポイントです。研究開発と他業務を兼務している社員の場合は、作業日報やプロジェクト管理ツールで従事時間を記録し、合理的な按分基準を設けることが重要です。記録がないと税務調査で全額否認されるリスクがあります。
中小企業者等が適用できる「中小企業技術基盤強化税制」は、一般型よりも控除率が高く設定されています。控除率は増減試験研究費割合(前3年平均からの増減率)に応じて12%〜17%の間で変動します。
| 増減試験研究費割合 | 中小企業型の控除率 | 一般型の控除率(参考) |
|---|---|---|
| △25%(大幅減少) | 12% | 2% |
| 0%(前年並み) | 12% | 約7.5% |
| +5% | 12% | 9% |
| +12% | 12% | 11.1% |
| +12%超(上乗せ措置) | 最大17% | 最大14% |
※中小企業型の控除率は、増減試験研究費割合が12%以下の場合は一律12%。12%超の場合は「12%+(増減割合−12%)×0.375」で算出(上限17%)。
控除上限は原則として法人税額の25%ですが、以下の場合には上乗せ措置があります。
| 上乗せ条件 | 追加上限 |
|---|---|
| 増減試験研究費割合が12%超 | 法人税額の最大10%を追加(計35%) |
| 試験研究費割合(対売上比率)が10%超 | 法人税額の最大10%を追加(計35%) |
| オープンイノベーション型を併用 | 法人税額の10%を別枠追加(計45%) |
📐 シミュレーション前提条件
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| ① 控除率の計算 | 12%+(25%−12%)×0.375=16.875% |
| ② 税額控除限度額(①×試験研究費) | 1,500万円×16.875%=253.1万円 |
| ③ 控除上限額(法人税額×35%) | 2,000万円×35%=700万円 |
| ④ 実際の控除額(②と③の小さい方) | 253.1万円 |
※概算値です。小数点以下の端数処理により実際の金額は異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
🧮 シミュレーションの読み方
この例では、試験研究費1,500万円に対して約253万円の法人税額が控除されます。実質的に試験研究費の約17%が戻ってくる計算です。もし一般型を選択した場合の控除率は約14%で、控除額は約210万円。中小企業型を選ぶだけで約43万円多く控除できることがわかります。
オープンイノベーション型は、大学・公的研究機関・他企業との共同研究や委託研究に対して、一般型・中小企業型よりも高い控除率(20〜30%)が適用される制度です。中小企業型とは別枠で併用可能なため、対象となる研究があれば積極的に活用すべきです。
| 研究の相手先 | 控除率 |
|---|---|
| 国の試験研究機関・大学等との共同研究・委託研究 | 30% |
| 革新的な共同研究・国立研究開発法人の成果実用化研究 | 25% |
| 他の法人との共同研究・委託研究(上記以外) | 20% |
| 新規高度研究業務従事者(博士人材等)の人件費 | 20% |
🏭 D社(従業員30名・資本金2,000万円・製造業)
💡 実務のポイント
「うちみたいな町工場が大学と共同研究なんてできるの?」と思われるかもしれませんが、地方の国立大学には産学連携の窓口があり、中小企業との共同研究を積極的に受け入れているところも多いです。顧問先の食品メーカー(従業員12名)が地元大学の食品科学研究室と新商品の品質試験で共同研究を行い、オープンイノベーション型の控除率30%を活用した事例があります。
研究開発税制の申告は、確定申告書に所定の明細書を添付して行います。事前の計画認定は不要ですが、試験研究費の集計と証拠書類の整備が重要です。
対象となる費用(人件費・原材料費・外注費・減価償却費等)を個別に集計します。人件費は研究専従者の従事時間に基づいて按分計算し、作業日報やプロジェクト管理記録を証拠として保存してください。
比較試験研究費(過去3年間の試験研究費の平均)を算出し、当期の試験研究費との増減割合を計算します。この割合が控除率と控除上限額に影響します。
中小企業者等であれば中小企業型を選択し、オープンイノベーション型の対象となる費用があれば別枠で計算します。一般型と中小企業型は選択適用(重複不可)です。
法人税の確定申告書に以下の別表を添付します。
| 適用制度 | 添付する別表 |
|---|---|
| 一般型 or 中小企業型 | 別表六(十四)「試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書」+適用額明細書 |
| オープンイノベーション型 | 別表六(十五)「特別試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書」+適用額明細書 |
法人税の確定申告期限(事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内)までに提出します。研究開発税制は当初申告要件があるため、確定申告書に記載がないと更正の請求では適用を受けられません。
法人決算の全体フローは「法人決算の流れと手順」で詳しく解説しています。
中小企業以外の大企業が適用する一般型の控除率は、増減試験研究費割合に応じて1%〜14%の間で変動します。中小企業型と比べて控除率が低い分、増加インセンティブが大きく設計されています。
| 増減試験研究費割合 | 控除率の算式 |
|---|---|
| +5%超の場合 | 9%+(増減割合−5%)×0.3(上限14%) |
| +5%以下の場合 | 9%−(5%−増減割合)×0.1(下限1%) |
| △25%未満の場合 | 一律1% |
なお、一般型には「特定税額控除規定の不適用措置」が適用されるため、中小企業者等以外の法人は一定の要件(継続雇用者の給与等支給額が前年度を上回るなど)を満たさないと制度自体が利用できない場合があります。設備投資に関する他の税制との組み合わせは「令和7年度税制改正のポイント(法人税関連)」も参考にしてください。
研究開発税制と投資促進税制・経営強化税制は、対象となる費用が異なるため原則として併用可能です。ただし、同一の減価償却資産について研究開発税制の試験研究費と経営強化税制の対象設備として二重に計上することはできません。研究専用の設備は研究開発税制の試験研究費(減価償却費)として計上し、生産用の設備は経営強化税制を適用するなど、使い分けを明確にしてください。
投資促進税制の詳細は「中小企業投資促進税制とは?対象設備・特別償却・税額控除の要件」をご覧ください。
研究開発税制による税額控除は、防衛特別法人税の基準法人税額の計算では除外されます。つまり、研究開発税制で法人税額が減っても、防衛特別法人税の基準法人税額には影響しません。詳しくは「防衛特別法人税とは?税率・適用時期・中小企業への影響」で解説しています。
製造業は研究開発税制との親和性が最も高い業種です。新製品の開発、既存製品の品質改良、生産プロセスの改善に伴う試験・検証などが対象になります。試作品の材料費、研究員の人件費、外部試験機関への委託費を漏れなく集計することがポイントです。
ソフトウェアの新規開発に係る費用も試験研究費に該当します。ただし、受注開発(特定顧客向けのカスタマイズ)は対象外になる可能性があるため、自社プロダクト開発やサービス開発の費用と区別して集計する必要があります。
「対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究」もサービス開発税制として対象になります。ビッグデータを活用した新サービスの開発なども令和5年度改正で対象範囲が拡大されました。ただし、単なるマーケティング調査やビジネスモデルの検討は対象外です。
会社設立直後の方で研究開発に取り組む場合は「会社設立の流れ」も合わせて確認してください。
📋 この記事のポイント
研究開発税制は中小企業にとって非常に有利な制度ですが、試験研究費の集計や証拠書類の整備に手間がかかるため、活用を見送っている企業も少なくありません。特に製造業・IT企業・サービス開発を行う企業は、自社の費用が試験研究費に該当するかどうかを一度税理士に相談されることをおすすめします。
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