【4士業ワンストップ解説】中小企業経営強化税制とは|A・B・D・E類型の認定要件と即時償却100%・税額控除10%の選び方

【4士業ワンストップ解説】中小企業経営強化税制とは|A・B・D・E類型の認定要件と即時償却100%・税額控除10%の選び方
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

中小企業経営強化税制とは?即時償却・税額控除の選択と申請手順

「設備投資で使える税制の優遇があるって聞いたけど、どう申請すればいいの?」「即時償却と税額控除、うちの会社はどっちが得?」とお悩みの中小企業経営者に向けて、中小企業経営強化税制の4つの類型・即時償却と税額控除の選択基準・経営力向上計画の認定手続きを完全ガイドします。

🏆 結論:中小企業経営強化税制の3つの要点

①経営力向上計画の認定を受けて新品設備を取得すると、即時償却(全額経費化)or 税額控除10%(資本金3,000万超は7%)を選択できる。②設備類型はA(生産性向上)・B(収益力強化)・D(経営資源集約化)・E(経営規模拡大)の4つ。C類型は令和7年3月31日で廃止。③適用期限は令和9年3月31日まで。設備取得前に証明書と計画認定を取得することが原則。資金繰り重視なら即時償却、トータル減税なら税額控除が有利です。

中小企業経営強化税制とは?制度の基本を3分で理解

中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備を取得した場合に、即時償却または税額控除を選択適用できる制度です。

わかりやすく言えば、「設備投資をしたとき、その費用を一括で経費にできる(即時償却)か、法人税を直接安くできる(税額控除)か、どちらかを選べる」という制度です。中小企業の設備投資を後押しするための税制優遇措置として、平成29年(2017年)に創設されました。

制度の概要

項目 内容
対象者青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人・従業員1,000人以下の個人事業主等)
措置内容即時償却(全額経費化)or 税額控除10%(資本金3,000万超は7%)を選択
対象設備経営力向上計画に記載された新品の機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア(一定のもの)
適用期限平成29年4月1日〜令和9年3月31日
前提条件経営力向上計画の主務大臣による認定が必要

参考: 国税庁「No.5434 中小企業経営強化税制」

💡 実務のポイント

年間100社以上の決算を担当してきた経験上、この制度を「知らなかった」ために適用し損ねている中小企業が非常に多いです。特に製造業・飲食業・小売業で機械装置やPOSシステムを購入する場合は、ほぼ確実に対象になります。設備投資を計画したら、まず「経営強化税制が使えないか」を税理士に確認してください。

4つの設備類型(A・B・D・E)を完全比較

中小企業経営強化税制の対象設備は、目的別に4つの類型に分かれています。令和7年度改正でC類型(デジタル化設備)が廃止され、E類型(経営規模拡大設備)が新設されました。

4類型の完全対照表

項目 A類型(生産性向上) B類型(収益力強化) D類型(経営資源集約化) E類型(経営規模拡大)
目的生産効率・エネルギー効率等の向上投資利益率の向上M&A後の積極的な投資売上高100億円超を目指す設備投資
対象設備機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア+建物(E類型併用時)機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア機械装置・工具・器具備品・建物・建物附属設備・ソフトウェア
証明書工業会等の証明書経済産業大臣の確認書経済産業大臣の確認書税理士・公認会計士の事前確認書+経済産業大臣の確認書
主な要件生産効率等が旧モデルから年平均1%以上向上年平均投資利益率7%以上事業承継等の計画に基づく設備年平均投資利益率7%以上+経営規模拡大要件
措置内容即時償却 or 税額控除10%(7%)即時償却 or 税額控除10%(7%)即時償却 or 税額控除10%(7%)特別償却15〜25% or 税額控除1〜2%(賃上げ率連動)
申請の手間比較的容易(メーカー経由)やや複雑(投資計画策定)やや複雑複雑(建物が対象のため)

⚠️ C類型(デジタル化設備)は廃止済み

令和7年度税制改正により、C類型は令和7年3月31日をもって廃止されました。デジタル化設備であっても、A類型またはB類型の要件を満たす場合は引き続き適用可能です。IT投資を計画中の企業は、A類型での適用を検討してください。

「あなたの設備はどの類型?」判定フロー

判定ステップ 条件 該当する類型
Step1M&A後の設備投資か?Yes → D類型
Step2売上高100億円超を目指す投資計画か?Yes → E類型
Step3メーカーから工業会証明書を取得できるか?Yes → A類型(最も手続きが簡単)
Step4投資利益率7%以上の投資計画を策定できるか?Yes → B類型
Step5上記いずれにも該当しない→ 中小企業投資促進税制(特別償却30% or 税額控除7%)を検討

実務では、多くの設備がA類型で対応可能です。メーカーに「工業会等の証明書を発行できますか?」と確認するところから始めるのが最も効率的です。

即時償却と税額控除の違い|どちらを選ぶべきか

中小企業経営強化税制では、即時償却と税額控除のどちらか一方を選択します。一度選択すると変更できないため、自社の状況に合った選択が重要です。

即時償却と税額控除の比較表

比較項目 即時償却 税額控除10%(7%)
しくみ取得価額の全額を初年度に経費計上法人税額から取得価額の10%(7%)を控除
初年度の節税効果大きい(課税所得が大幅に圧縮)限定的(法人税額の20%上限)
トータル(耐用年数全体)の節税額ゼロ(課税の繰延べ)永久減税(取得価額の10%が確定的に減る)
資金繰りへの効果大きい(初年度のキャッシュフロー改善)限定的
向いている企業今期だけ利益が大きい・資金繰り重視安定利益・トータル減税重視

具体シミュレーション:2,000万円の機械装置を購入した場合

📐 シミュレーション前提条件

  • 取得価額:2,000万円(耐用年数10年・定額法)
  • 資本金1,000万円の中小法人(税額控除率10%)
  • 課税所得:毎年2,000万円で安定
  • 法人税実効税率:約34%
項目 即時償却 税額控除10% 通常の減価償却
初年度の減税効果約680万円200万円+68万円約68万円
10年間の税負担軽減合計0円(繰延べ)200万円(永久減税)0円
初年度の資金効果

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

🧮 選択の判断基準

今期だけ特別に利益が大きい(不動産売却益・保険解約返戻金など)→ 即時償却。毎年安定した利益が出ている → 税額控除。来期以降赤字が見込まれる → 即時償却。借入金の返済が重い → 即時償却(キャッシュフロー改善)。投資額が大きく法人税額の20%上限に達しそう → 即時償却(税額控除は上限あり)。

減価償却の基本的なしくみは「減価償却の基礎知識|耐用年数・計算方法・特別償却をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

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経営力向上計画の認定申請手順|A類型の場合

A類型は最も利用者が多く、手続きも比較的シンプルです。全体の流れは4ステップで、設備取得から税務申告まで含めると約3〜4ヶ月が目安です。

A類型の申請タイムライン

ステップ 対応内容 所要期間 注意点
①証明書取得メーカーを通じて工業会等に「生産性向上要件証明書」の発行を依頼数日〜2ヶ月設備取得前に申請が必要
②計画申請証明書(写し)を添付して経営力向上計画を主務大臣に申請約30日(標準処理期間)認定経営革新等支援機関のサポート推奨
③設備取得認定を受けた後に設備を取得し、事業の用に供する取得は認定後が原則
④税務申告確定申告書に証明書・認定書の写しを添付して申告期末後2ヶ月以内適用額明細書の添付必須

📢 例外:設備取得後の計画申請(60日ルール)

原則は「計画認定→設備取得」の順序ですが、やむを得ない場合は設備取得後60日以内に計画申請書が行政庁に到達すれば認められます。また、設備を取得し事業の用に供した年度内に認定を受ける必要があります。ただし、リスクがあるため原則どおりの手順を推奨します。

B類型・D類型の申請手順(追加ステップ)

B類型とD類型は、工業会証明書の代わりに「投資計画の策定→税理士・公認会計士による事前確認→経済産業局への確認申請→経済産業大臣の確認書取得」というプロセスが加わります。A類型よりも手続きが多いため、設備取得の2〜3ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。

参考: 中小企業庁「支援措置活用の手引き」

対象設備の要件と金額基準

経営強化税制の対象となる設備には、種類ごとに最低取得価額が定められています。

設備の種類 最低取得価額 具体例
機械装置160万円以上NC旋盤、製造ライン、建設機械、太陽光発電設備
工具30万円以上測定工具、検査工具
器具備品30万円以上電子計算機(サーバー等)、冷蔵設備
建物附属設備60万円以上空調設備、エレベーター、照明設備
ソフトウェア70万円以上会計ソフト、生産管理システム、POSシステム
建物(E類型のみ)工場、店舗(新設・増設時)

⚠️ 対象外となるもの

中古品、貸付用設備、暗号資産マイニング用設備、コインランドリー業(主たる事業でない場合)の設備は対象外です。また、所有権移転外リース取引で取得した設備は即時償却は適用不可ですが、税額控除は適用可能です。

経営強化税制・投資促進税制・少額減価償却の3制度比較

中小企業が設備投資時に使える税制優遇は複数あります。どの制度を使うかで節税効果が大きく変わるため、比較表で整理します。

項目 経営強化税制 投資促進税制 少額減価償却資産特例
措置内容即時償却 or 税額控除10%(7%)特別償却30% or 税額控除7%全額経費化
対象金額設備種類ごと(160万円以上等)160万円以上等30万円未満(年300万円限度)
計画認定必要(経営力向上計画)不要不要
優遇度◎(最大)△(少額のみ)
手間多い少ない最小

💡 実務のポイント

高額な設備(160万円以上の機械装置など)を取得する場合は、手間をかけてでも経営強化税制を使うべきです。即時償却は投資促進税制の特別償却30%と比較して、初年度に全額を経費化できるため、節税効果が格段に大きくなります。一方、30万円未満の設備は少額減価償却資産特例で十分です。

令和7年度改正の影響|C類型廃止とE類型新設

令和7年度税制改正により、経営強化税制には以下の変更が加えられました。

主な変更点

変更内容 改正前 改正後
A類型の指標旧モデル比で生産性等が年平均1%以上向上指標を見直し(単位時間当たり生産量等に限定)
B類型の投資利益率年平均5%以上年平均7%以上
C類型(デジタル化設備)対象あり廃止(令和7年3月31日終了)
E類型(経営規模拡大設備)新設(建物が対象設備に追加)
適用期限令和7年3月31日令和9年3月31日(2年延長)
暗号資産マイニング業用設備対象対象外に追加

令和7年度改正の法人税関連の全体像については、「令和7年度税制改正のポイント(法人税関連)|防衛特別法人税・賃上げ税制・経営強化税制」で詳しく解説しています。

経営力向上計画の書き方と認定のコツ

経営力向上計画は、中小企業等経営強化法に基づく事業計画です。記載内容は、企業概要、現状認識、経営力向上の目標・内容、実施時期、必要な資金等です。

計画策定のポイント

現場で多くの計画認定を支援してきた経験上、認定審査でつまずくポイントは主に3つです。1つ目は「経営力向上の目標が抽象的すぎる」こと。「生産性を向上させる」ではなく「○○設備の導入により、1日あたりの生産量を○○個から○○個に増加させる」と定量的に書きましょう。2つ目は「設備と目標の関連が不明確」なこと。なぜその設備が経営力向上に必要なのかを論理的に記載します。3つ目は「証明書の日付が計画申請日より後になっている」ケースです。証明書は計画申請前に取得する必要があります。

計画策定に不安がある場合は、認定経営革新等支援機関(税理士事務所・商工会議所等)のサポートを受けることをお勧めします。鮎澤パートナーズも認定支援機関として計画策定を支援しています。

会社設立直後の設備投資については、「会社設立の流れ|設立手続き・届出・費用を完全ガイド」、法人成りのタイミングについては「法人成りのタイミング|個人事業主が法人化すべき売上の目安」もご参照ください。

活用事例|業種別の設備投資パターン

ケース1:製造業(機械装置・A類型)

年商5,000万円の金属加工業がNC旋盤(取得価額800万円)を導入。メーカーから工業会証明書を取得し、A類型で申請。即時償却を選択し、当期の課税所得を800万円圧縮。法人税額を約180万円節減しました。

ケース2:飲食業(器具備品・A類型)

年商8,000万円の居酒屋チェーンが業務用冷蔵庫・調理機器(合計500万円)を導入。税額控除10%を選択し、50万円の法人税減税を実現。安定利益が見込めるため、永久減税の税額控除を選択しました。

ケース3:IT企業(ソフトウェア・B類型)

年商1億円のシステム開発会社が基幹業務システム(取得価額1,200万円)を導入。投資利益率7%以上の投資計画を策定し、B類型で申請。即時償却により当期の利益を圧縮し、翌期の設備投資資金を確保しました。

よくある質問(FAQ)

経営力向上計画の認定にはどのくらい時間がかかりますか?
標準処理期間は約30日です。ただし、申請内容に不備がある場合は差し戻しで追加日数がかかります。設備取得の2〜3ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。A類型の場合、工業会証明書の発行にも数日〜2ヶ月程度かかるため、トータルで3〜4ヶ月を見込んでください。
設備を先に買ってしまった場合でも適用できますか?
設備取得後60日以内に計画申請書が行政庁に到達し、かつ設備を事業の用に供した年度内に認定を受ければ適用可能です。ただし、認定されない場合は税制優遇を受けられないリスクがあるため、原則どおり「計画認定→設備取得」の順序を推奨します。
リースで取得した設備にも適用できますか?
所有権移転外リース取引の場合、即時償却は適用できませんが、税額控除は適用可能です。所有権移転リース取引(実質的に購入と同等)の場合は、即時償却・税額控除ともに適用できます。リース契約の種類を確認してください。
中古品は対象になりますか?
なりません。中小企業経営強化税制の対象は新品の設備に限られます。中古設備の場合は、中小企業投資促進税制(特別償却30%)を検討してください。
個人事業主でも適用できますか?
はい、常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主で、青色申告書を提出している方は適用可能です。法人と同様に経営力向上計画の認定が必要です。
即時償却と税額控除は併用できますか?
同一の設備について、即時償却と税額控除を併用することはできません。いずれか一方を選択する必要があります。ただし、複数の設備を取得する場合、設備Aは即時償却、設備Bは税額控除と、設備ごとに異なる選択をすることは可能です。
税額控除の上限は法人税額の何%ですか?
法人税額の20%が上限です。控除しきれなかった場合、経営強化税制には繰越控除の制度はありません(賃上げ促進税制と異なる点)。法人税額が少ない企業は、即時償却を選んだ方が節税効果が大きくなる可能性があります。
経営力向上計画の認定後、設備の内容を変更できますか?
認定後に設備を変更・追加する場合は、変更認定申請が必要です。設備の追加は変更申請で対応できますが、認定済みの設備を削除する変更はできない点に注意してください。
他の税制優遇(投資促進税制等)と併用できますか?
同一の設備に対して、経営強化税制と投資促進税制を重複適用することはできません。ただし、E類型の投資計画期間中は投資促進税制の適用が制限される点にも注意が必要です。設備ごとに最も有利な制度を選択してください。
適用期限の令和9年3月31日とはいつまでのことですか?
令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度が対象です。3月決算法人であれば2027年3月期(2026年4月〜2027年3月)が最後の適用対象事業年度です。12月決算法人であれば2026年12月期(2026年1月〜12月)が最後です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 経営強化税制は即時償却(全額経費化)or 税額控除10%(7%)を選択可能。設備投資の税制優遇としては最大級
  • 4類型(A/B/D/E)のうち、A類型が最もシンプル。メーカーに工業会証明書を依頼するところから開始
  • C類型(デジタル化設備)は令和7年3月31日で廃止。E類型(100億企業向け・建物対象)が新設
  • 即時償却は課税の繰延べ(初年度キャッシュフロー改善)。税額控除は永久減税(トータル税負担軽減)
  • 設備取得前に証明書と計画認定を取得するのが原則。取得後は60日以内の申請が必要
  • 適用期限は令和9年3月31日。設備投資を検討中の企業は早めの対応を

中小企業経営強化税制は、適切に活用すれば設備投資のコストを大幅に軽減できる制度です。「使える制度を知っているかどうか」で税負担が数百万円変わることもあります。設備投資を計画したら、まず顧問税理士に「経営強化税制が使えるか」を確認してください。

法人決算の全体的な流れは「法人決算の流れ|決算書の作り方・申告期限・税理士への依頼方法」で解説しています。役員報酬と設備投資のバランスについては「役員報酬の基礎知識|決め方・変更ルール・税務リスクを解説」もあわせてご覧ください。

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