公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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中小企業経営強化税制とは?即時償却・税額控除の選択と申請手順
「設備投資で使える税制の優遇があるって聞いたけど、どう申請すればいいの?」「即時償却と税額控除、うちの会社はどっちが得?」とお悩みの中小企業経営者に向けて、中小企業経営強化税制の4つの類型・即時償却と税額控除の選択基準・経営力向上計画の認定手続きを完全ガイドします。


中小企業経営強化税制とは?即時償却・税額控除の選択と申請手順
「設備投資で使える税制の優遇があるって聞いたけど、どう申請すればいいの?」「即時償却と税額控除、うちの会社はどっちが得?」とお悩みの中小企業経営者に向けて、中小企業経営強化税制の4つの類型・即時償却と税額控除の選択基準・経営力向上計画の認定手続きを完全ガイドします。
🏆 結論:中小企業経営強化税制の3つの要点
①経営力向上計画の認定を受けて新品設備を取得すると、即時償却(全額経費化)or 税額控除10%(資本金3,000万超は7%)を選択できる。②設備類型はA(生産性向上)・B(収益力強化)・D(経営資源集約化)・E(経営規模拡大)の4つ。C類型は令和7年3月31日で廃止。③適用期限は令和9年3月31日まで。設備取得前に証明書と計画認定を取得することが原則。資金繰り重視なら即時償却、トータル減税なら税額控除が有利です。
中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備を取得した場合に、即時償却または税額控除を選択適用できる制度です。
わかりやすく言えば、「設備投資をしたとき、その費用を一括で経費にできる(即時償却)か、法人税を直接安くできる(税額控除)か、どちらかを選べる」という制度です。中小企業の設備投資を後押しするための税制優遇措置として、平成29年(2017年)に創設されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人・従業員1,000人以下の個人事業主等) |
| 措置内容 | 即時償却(全額経費化)or 税額控除10%(資本金3,000万超は7%)を選択 |
| 対象設備 | 経営力向上計画に記載された新品の機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア(一定のもの) |
| 適用期限 | 平成29年4月1日〜令和9年3月31日 |
| 前提条件 | 経営力向上計画の主務大臣による認定が必要 |
💡 実務のポイント
年間100社以上の決算を担当してきた経験上、この制度を「知らなかった」ために適用し損ねている中小企業が非常に多いです。特に製造業・飲食業・小売業で機械装置やPOSシステムを購入する場合は、ほぼ確実に対象になります。設備投資を計画したら、まず「経営強化税制が使えないか」を税理士に確認してください。
中小企業経営強化税制の対象設備は、目的別に4つの類型に分かれています。令和7年度改正でC類型(デジタル化設備)が廃止され、E類型(経営規模拡大設備)が新設されました。
| 項目 | A類型(生産性向上) | B類型(収益力強化) | D類型(経営資源集約化) | E類型(経営規模拡大) |
|---|---|---|---|---|
| 目的 | 生産効率・エネルギー効率等の向上 | 投資利益率の向上 | M&A後の積極的な投資 | 売上高100億円超を目指す設備投資 |
| 対象設備 | 機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア | 機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア+建物(E類型併用時) | 機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェア | 機械装置・工具・器具備品・建物・建物附属設備・ソフトウェア |
| 証明書 | 工業会等の証明書 | 経済産業大臣の確認書 | 経済産業大臣の確認書 | 税理士・公認会計士の事前確認書+経済産業大臣の確認書 |
| 主な要件 | 生産効率等が旧モデルから年平均1%以上向上 | 年平均投資利益率7%以上 | 事業承継等の計画に基づく設備 | 年平均投資利益率7%以上+経営規模拡大要件 |
| 措置内容 | 即時償却 or 税額控除10%(7%) | 即時償却 or 税額控除10%(7%) | 即時償却 or 税額控除10%(7%) | 特別償却15〜25% or 税額控除1〜2%(賃上げ率連動) |
| 申請の手間 | 比較的容易(メーカー経由) | やや複雑(投資計画策定) | やや複雑 | 複雑(建物が対象のため) |
⚠️ C類型(デジタル化設備)は廃止済み
令和7年度税制改正により、C類型は令和7年3月31日をもって廃止されました。デジタル化設備であっても、A類型またはB類型の要件を満たす場合は引き続き適用可能です。IT投資を計画中の企業は、A類型での適用を検討してください。
| 判定ステップ | 条件 | 該当する類型 |
|---|---|---|
| Step1 | M&A後の設備投資か? | Yes → D類型 |
| Step2 | 売上高100億円超を目指す投資計画か? | Yes → E類型 |
| Step3 | メーカーから工業会証明書を取得できるか? | Yes → A類型(最も手続きが簡単) |
| Step4 | 投資利益率7%以上の投資計画を策定できるか? | Yes → B類型 |
| Step5 | 上記いずれにも該当しない | → 中小企業投資促進税制(特別償却30% or 税額控除7%)を検討 |
実務では、多くの設備がA類型で対応可能です。メーカーに「工業会等の証明書を発行できますか?」と確認するところから始めるのが最も効率的です。
中小企業経営強化税制では、即時償却と税額控除のどちらか一方を選択します。一度選択すると変更できないため、自社の状況に合った選択が重要です。
| 比較項目 | 即時償却 | 税額控除10%(7%) |
|---|---|---|
| しくみ | 取得価額の全額を初年度に経費計上 | 法人税額から取得価額の10%(7%)を控除 |
| 初年度の節税効果 | 大きい(課税所得が大幅に圧縮) | 限定的(法人税額の20%上限) |
| トータル(耐用年数全体)の節税額 | ゼロ(課税の繰延べ) | 永久減税(取得価額の10%が確定的に減る) |
| 資金繰りへの効果 | 大きい(初年度のキャッシュフロー改善) | 限定的 |
| 向いている企業 | 今期だけ利益が大きい・資金繰り重視 | 安定利益・トータル減税重視 |
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 即時償却 | 税額控除10% | 通常の減価償却 |
|---|---|---|---|
| 初年度の減税効果 | 約680万円 | 200万円+68万円 | 約68万円 |
| 10年間の税負担軽減合計 | 0円(繰延べ) | 200万円(永久減税) | 0円 |
| 初年度の資金効果 | ◎ | ○ | △ |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
🧮 選択の判断基準
今期だけ特別に利益が大きい(不動産売却益・保険解約返戻金など)→ 即時償却。毎年安定した利益が出ている → 税額控除。来期以降赤字が見込まれる → 即時償却。借入金の返済が重い → 即時償却(キャッシュフロー改善)。投資額が大きく法人税額の20%上限に達しそう → 即時償却(税額控除は上限あり)。
減価償却の基本的なしくみは「減価償却の基礎知識|耐用年数・計算方法・特別償却をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
A類型は最も利用者が多く、手続きも比較的シンプルです。全体の流れは4ステップで、設備取得から税務申告まで含めると約3〜4ヶ月が目安です。
| ステップ | 対応内容 | 所要期間 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①証明書取得 | メーカーを通じて工業会等に「生産性向上要件証明書」の発行を依頼 | 数日〜2ヶ月 | 設備取得前に申請が必要 |
| ②計画申請 | 証明書(写し)を添付して経営力向上計画を主務大臣に申請 | 約30日(標準処理期間) | 認定経営革新等支援機関のサポート推奨 |
| ③設備取得 | 認定を受けた後に設備を取得し、事業の用に供する | − | 取得は認定後が原則 |
| ④税務申告 | 確定申告書に証明書・認定書の写しを添付して申告 | 期末後2ヶ月以内 | 適用額明細書の添付必須 |
📢 例外:設備取得後の計画申請(60日ルール)
原則は「計画認定→設備取得」の順序ですが、やむを得ない場合は設備取得後60日以内に計画申請書が行政庁に到達すれば認められます。また、設備を取得し事業の用に供した年度内に認定を受ける必要があります。ただし、リスクがあるため原則どおりの手順を推奨します。
B類型とD類型は、工業会証明書の代わりに「投資計画の策定→税理士・公認会計士による事前確認→経済産業局への確認申請→経済産業大臣の確認書取得」というプロセスが加わります。A類型よりも手続きが多いため、設備取得の2〜3ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。
経営強化税制の対象となる設備には、種類ごとに最低取得価額が定められています。
| 設備の種類 | 最低取得価額 | 具体例 |
|---|---|---|
| 機械装置 | 160万円以上 | NC旋盤、製造ライン、建設機械、太陽光発電設備 |
| 工具 | 30万円以上 | 測定工具、検査工具 |
| 器具備品 | 30万円以上 | 電子計算機(サーバー等)、冷蔵設備 |
| 建物附属設備 | 60万円以上 | 空調設備、エレベーター、照明設備 |
| ソフトウェア | 70万円以上 | 会計ソフト、生産管理システム、POSシステム |
| 建物(E類型のみ) | − | 工場、店舗(新設・増設時) |
⚠️ 対象外となるもの
中古品、貸付用設備、暗号資産マイニング用設備、コインランドリー業(主たる事業でない場合)の設備は対象外です。また、所有権移転外リース取引で取得した設備は即時償却は適用不可ですが、税額控除は適用可能です。
中小企業が設備投資時に使える税制優遇は複数あります。どの制度を使うかで節税効果が大きく変わるため、比較表で整理します。
| 項目 | 経営強化税制 | 投資促進税制 | 少額減価償却資産特例 |
|---|---|---|---|
| 措置内容 | 即時償却 or 税額控除10%(7%) | 特別償却30% or 税額控除7% | 全額経費化 |
| 対象金額 | 設備種類ごと(160万円以上等) | 160万円以上等 | 30万円未満(年300万円限度) |
| 計画認定 | 必要(経営力向上計画) | 不要 | 不要 |
| 優遇度 | ◎(最大) | ○ | △(少額のみ) |
| 手間 | 多い | 少ない | 最小 |
💡 実務のポイント
高額な設備(160万円以上の機械装置など)を取得する場合は、手間をかけてでも経営強化税制を使うべきです。即時償却は投資促進税制の特別償却30%と比較して、初年度に全額を経費化できるため、節税効果が格段に大きくなります。一方、30万円未満の設備は少額減価償却資産特例で十分です。
令和7年度税制改正により、経営強化税制には以下の変更が加えられました。
| 変更内容 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| A類型の指標 | 旧モデル比で生産性等が年平均1%以上向上 | 指標を見直し(単位時間当たり生産量等に限定) |
| B類型の投資利益率 | 年平均5%以上 | 年平均7%以上 |
| C類型(デジタル化設備) | 対象あり | 廃止(令和7年3月31日終了) |
| E類型(経営規模拡大設備) | − | 新設(建物が対象設備に追加) |
| 適用期限 | 令和7年3月31日 | 令和9年3月31日(2年延長) |
| 暗号資産マイニング業用設備 | 対象 | 対象外に追加 |
令和7年度改正の法人税関連の全体像については、「令和7年度税制改正のポイント(法人税関連)|防衛特別法人税・賃上げ税制・経営強化税制」で詳しく解説しています。
経営力向上計画は、中小企業等経営強化法に基づく事業計画です。記載内容は、企業概要、現状認識、経営力向上の目標・内容、実施時期、必要な資金等です。
現場で多くの計画認定を支援してきた経験上、認定審査でつまずくポイントは主に3つです。1つ目は「経営力向上の目標が抽象的すぎる」こと。「生産性を向上させる」ではなく「○○設備の導入により、1日あたりの生産量を○○個から○○個に増加させる」と定量的に書きましょう。2つ目は「設備と目標の関連が不明確」なこと。なぜその設備が経営力向上に必要なのかを論理的に記載します。3つ目は「証明書の日付が計画申請日より後になっている」ケースです。証明書は計画申請前に取得する必要があります。
計画策定に不安がある場合は、認定経営革新等支援機関(税理士事務所・商工会議所等)のサポートを受けることをお勧めします。鮎澤パートナーズも認定支援機関として計画策定を支援しています。
会社設立直後の設備投資については、「会社設立の流れ|設立手続き・届出・費用を完全ガイド」、法人成りのタイミングについては「法人成りのタイミング|個人事業主が法人化すべき売上の目安」もご参照ください。
年商5,000万円の金属加工業がNC旋盤(取得価額800万円)を導入。メーカーから工業会証明書を取得し、A類型で申請。即時償却を選択し、当期の課税所得を800万円圧縮。法人税額を約180万円節減しました。
年商8,000万円の居酒屋チェーンが業務用冷蔵庫・調理機器(合計500万円)を導入。税額控除10%を選択し、50万円の法人税減税を実現。安定利益が見込めるため、永久減税の税額控除を選択しました。
年商1億円のシステム開発会社が基幹業務システム(取得価額1,200万円)を導入。投資利益率7%以上の投資計画を策定し、B類型で申請。即時償却により当期の利益を圧縮し、翌期の設備投資資金を確保しました。
📋 この記事のポイント
中小企業経営強化税制は、適切に活用すれば設備投資のコストを大幅に軽減できる制度です。「使える制度を知っているかどうか」で税負担が数百万円変わることもあります。設備投資を計画したら、まず顧問税理士に「経営強化税制が使えるか」を確認してください。
法人決算の全体的な流れは「法人決算の流れ|決算書の作り方・申告期限・税理士への依頼方法」で解説しています。役員報酬と設備投資のバランスについては「役員報酬の基礎知識|決め方・変更ルール・税務リスクを解説」もあわせてご覧ください。
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