【会計士×税理士が解説】法人決算の流れを完全ガイド|初めての決算でも迷わない手順と必要書類一覧

【会計士×税理士が解説】法人決算の流れを完全ガイド|初めての決算でも迷わない手順と必要書類一覧
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

法人決算の流れを完全ガイド|初めての決算でも迷わない手順と必要書類一覧

「初めての決算で何から手をつければいいかわからない」という経営者に向けて、決算準備から申告・納税までの全手順と必要書類を8ステップで完全ガイドします。この記事を読めば、決算のスケジュール感がつかめ、自社で対応すべき範囲と税理士に依頼すべき範囲を判断できます。

🏆 結論:法人決算は「8ステップ」で完結する

法人決算は、①帳簿の整理 → ②残高確認 → ③決算整理仕訳 → ④試算表作成 → ⑤決算書作成 → ⑥取締役会・株主総会 → ⑦申告書作成・提出 → ⑧納税・書類保管 の8ステップです。期限は決算日の翌日から原則2ヶ月以内。初めての決算でも、2ヶ月前から逆算してスケジュールを組めば、期限に余裕を持って完了できます。自社の売上規模が年商3,000万円を超える場合や、従業員が5名以上いる場合は、税理士への依頼を強くおすすめします。

法人決算とは?個人事業主の確定申告との違い

法人決算とは、会社の1事業年度の収益・費用・資産・負債を集計し、決算書を作成して税務申告を行う一連の手続きのことです。会社法第435条により、すべての株式会社に計算書類の作成が義務づけられています。

個人事業主の確定申告と混同されがちですが、両者には大きな違いがあります。

比較項目 法人決算 個人の確定申告
計算期間自由に設定可(例:4月〜3月)1月1日〜12月31日(固定)
申告期限決算日の翌日から2ヶ月以内翌年2月16日〜3月15日
申告する税金法人税・法人住民税・法人事業税・消費税所得税・復興特別所得税・消費税
作成書類決算書+法人税申告書(別表)+勘定科目内訳明細書 等確定申告書+青色申告決算書
株主総会承認が必要(一人会社でも議事録作成)不要
難易度高い(別表の作成に専門知識が必要)比較的シンプル

💡 実務のポイント

実務では、個人事業から法人成りした直後の経営者が「確定申告と同じ感覚」で決算に臨んで戸惑うケースが多く見られます。法人決算は作成する書類の数も税金の種類も大幅に増えるため、法人成り1期目は税理士に依頼し、全体の流れを把握してから自社対応の範囲を広げていくのが現実的です。

法人決算の3つの目的

法人決算は単なる「税金の計算」ではなく、以下の3つの目的があります。

①税務申告のため(法人税法の義務):法人税法により、すべての法人は事業年度ごとに確定申告を行う義務があります。赤字であっても申告は必要です。申告を怠ると、無申告加算税や延滞税が課されます。

②経営状況の把握(経営判断の材料):決算書は「経営者の通信簿」とも呼ばれます。1年間の利益はいくらか、資金繰りは健全か、借入金の返済余力はあるかなど、経営判断に不可欠な情報が集約されます。

③利害関係者への報告(会社法の義務):株主への報告、金融機関の融資審査、取引先の与信調査など、決算書はさまざまな場面で活用されます。会社法により、株主総会での承認が義務づけられています。

法人決算の全体像【8ステップ一覧表】

法人決算の手続きは全部で8ステップです。以下の一覧表で全体像を把握してから、各ステップの詳細に進みましょう。

Step 作業内容 目安時期 担当者 完了の目安
1帳簿の整理・記帳の完了決算日2ヶ月前〜経理担当 or 経営者全取引の仕訳が会計ソフトに入力済み
2残高確認・実地棚卸決算日前後経理担当 + 現場帳簿残高と実際残高が一致
3決算整理仕訳決算日〜1ヶ月後税理士 or 経理担当減価償却・引当金・経過勘定の計上完了
4試算表の作成・検証Step3の直後経理担当 or 税理士貸借一致・前期比の異常値なし
5決算書の作成申告期限1ヶ月前税理士 or 会計ソフトB/S・P/L・SS・注記表が完成
6取締役会・株主総会の承認申告期限2〜3週間前代表取締役 + 株主議事録作成・署名完了
7税務申告書の作成・提出申告期限まで税理士法人税・消費税・地方税の申告完了
8納税・書類の保管申告期限と同日経理担当 or 経営者納税完了・書類を7年(欠損金は10年)保管

📊 公認会計士の視点

決算は「期限日にまとめてやる作業」ではなく、「日常の記帳の集大成」です。月次で試算表を確認し、残高のズレを早期に発見しておく会社は、決算作業に1〜2週間で済みます。逆に、1年分の領収書を決算期に一気に整理する会社は、記帳だけで1ヶ月以上かかることも珍しくありません。

【ステップ1】帳簿の整理・記帳の完了

決算作業の第一歩は、事業年度中のすべての取引が会計ソフトに正しく入力されているかを確認することです。「決算整理」の前に、そもそも日常の記帳に漏れがないかのチェックが重要です。

記帳の完了チェックリスト

確認項目 よくあるミス
銀行口座の入出金をすべて仕訳済みかネットバンクの自動連携後の未確認仕訳の放置
現金出納帳と実際の現金残高が一致しているかレシートの紛失による記帳漏れ
クレジットカード利用分をすべて計上したか決算月のカード利用が翌月引落で計上漏れ
売上の請求書控えは決算月分まで揃っているか翌月入金の売掛金を計上忘れ
仕入・外注の請求書は決算月分まで揃っているか翌月払いの買掛金を計上忘れ
固定資産の取得・売却を正しく処理したか少額資産の即時償却忘れ
給与・社会保険料の計上は完了しているか決算月末日が休日の場合の未払給与計上漏れ

⚠️ 注意

売上・仕入の計上時期は「発生主義」が原則です。入金・支払のタイミングではなく、取引が発生した日(商品を引き渡した日、サービスを提供した日)で計上する必要があります。決算月に納品したが翌月入金の売上を計上漏れすると、税務調査で売上除外として指摘される重大なリスクがあります。

準備しておくべき書類一覧

決算作業をスムーズに進めるために、以下の書類を事前に準備しましょう。

社内で準備するもの:総勘定元帳、補助元帳、現金出納帳、預金通帳(全口座の決算月末残高が確認できるもの)、売上に関する請求書控え(決算月分まで)、仕入・経費に関する請求書(決算月分まで)、領収書(日付順に整理)、給与台帳・賃金台帳、固定資産台帳、在庫(棚卸資産)リスト、契約書(新規締結・変更分)、借入金の返済予定表

法人の基本書類:登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、定款、前期の決算書・申告書一式、税務署への届出書類の控え

【ステップ2】残高確認・実地棚卸

帳簿上の残高と実際の残高を突き合わせる作業です。ここで差異が見つかれば、ステップ3の決算整理仕訳で修正します。

現金・預金の残高確認

現金は実際に数え(実査)、帳簿残高と一致するかを確認します。預金は通帳記帳またはネットバンキングの残高証明書で確認します。法人口座が複数ある場合は、すべての口座の残高を突き合わせてください。

実務では、経費の立替払いが社長の個人カードで処理されているケースが頻繁に見られます。決算時にまとめて精算すると金額が大きくなりがちで、「役員貸付金」として処理される場合もあるため、月次で精算する習慣をつけることが重要です。

売掛金・買掛金の残高確認

売掛金は得意先ごとの残高を確認し、回収不能の可能性がある債権がないかをチェックします。買掛金は仕入先ごとの残高を確認し、請求書の金額と一致しているかを照合します。

棚卸資産(在庫)の実地棚卸

商品や原材料の在庫がある業種では、決算日に実地棚卸を行う必要があります。帳簿上の在庫数量と実際の数量を照合し、差異があれば原因を調査して修正します。

💡 実務のポイント

在庫を抱えるビジネスでは、棚卸は決算の中で最も時間がかかる作業の一つです。飲食業では食材の在庫確認、建設業では仕掛工事の原価集計が必要になります。決算日当日に棚卸ができない場合は、決算日に近い日に実施し、その後の入出庫を調整して決算日時点の数量を算出する方法もあります。

【ステップ3】決算整理仕訳を行う

決算整理仕訳とは、日常の記帳では処理しきれない項目を、決算日に合わせて正しく修正するための仕訳です。法人決算で最も専門知識が求められるステップです。

決算整理仕訳の詳しい仕訳パターンは「決算整理仕訳とは?必要な仕訳パターンと実務の注意点」で解説していますが、ここでは全体像を押さえましょう。

必ず行う決算整理仕訳の一覧

仕訳の種類 内容 見落としリスク
減価償却費の計上固定資産の取得価額を耐用年数に応じて費用配分中古資産の耐用年数の算出ミス
売上原価の算出期首棚卸+当期仕入−期末棚卸棚卸資産の評価方法の届出漏れ
経過勘定の計上前払費用・未払費用・前受収益・未収収益の振替保険料・家賃の期間按分忘れ
貸倒引当金の計上回収不能リスクのある債権に対する引当一括評価の繰入限度額の計算ミス
未払法人税等の計上当期の法人税・住民税・事業税の見積計上事業税の損金算入時期の誤り
消費税の整理仮払消費税・仮受消費税の精算課税区分の誤り(非課税・不課税の混同)

減価償却については「法人の減価償却の仕組みと実務|定額法・定率法・耐用年数表の使い方」で詳しく解説しています。

⚠️ 注意:消費税の課税区分ミスは税務調査で最も指摘されやすい

年間100社以上の決算を見てきた経験上、初めての決算で最も多いミスは消費税の課税区分の誤りです。特に「非課税」と「不課税(課税対象外)」の区別を間違えるケースが頻発します。例えば、海外への送金手数料は非課税ですが、海外取引先への支払いそのもの(国外取引)は不課税です。この区別は仕入税額控除の計算に影響するため、正確な処理が不可欠です。

【ステップ4】試算表の作成・検証

決算整理仕訳が完了したら、試算表(決算整理後試算表)を作成します。試算表は、すべての勘定科目の残高を一覧にしたもので、貸借対照表と損益計算書の元データになります。

試算表で確認すべき5つのポイント

①貸借の一致:借方合計と貸方合計が一致しているか。不一致の場合は仕訳のどこかに入力ミスがあります。

②前期比較での異常値:前期と比べて大きく増減している科目がないか。売上が横ばいなのに交際費が2倍になっていたら、計上ミスの可能性があります。

③マイナス残高の有無:資産科目にマイナス残高がある場合は仕訳の貸借逆転の可能性が高いです。

④仮勘定の残高ゼロ確認:仮払金・仮受金・仮払消費税・仮受消費税がゼロになっているか(精算漏れがないか)。

⑤現預金残高と通帳の一致:ステップ2の確認結果と最終残高が整合しているか。

試算表の詳しい作り方は「試算表の作り方と見方|月次試算表で経営判断を正しく行う方法」で解説しています。

【ステップ5】決算書(計算書類)を作成する

試算表の検証が完了したら、いよいよ決算書を作成します。会社法で作成が義務づけられている計算書類は以下の4種類+附属明細書です。

作成が必要な決算書一覧

書類名 略称 わかること 作成の根拠
貸借対照表B/S決算日時点の資産・負債・純資産の状態会社法435条
損益計算書P/L1年間の収益・費用・利益会社法435条
株主資本等変動計算書S/S純資産(資本金・利益剰余金等)の変動会社法435条
個別注記表会計方針・重要な後発事象等の注記会社法435条
附属明細書計算書類の補足情報(固定資産明細等)会社法435条

決算書の具体的な作成方法は「決算書の作り方|貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書」で詳しく解説しています。また、完成した決算書の見方は「経営者のための決算書の読み方|5つの指標で会社の健全性を判断する方法」をご参照ください。

📊 公認会計士の視点

中小企業(非公開会社)の場合、個別注記表は多くの項目を省略できます。ただし、重要な会計方針(減価償却の方法、棚卸資産の評価方法など)と重要な後発事象は必ず記載してください。「うちは小さい会社だから注記は不要」と思い込んでいる経営者が多いのですが、記載義務は会社の規模に関係なくあります。

【ステップ6】取締役会・株主総会での承認

作成した決算書は、会社法の規定に基づき、取締役会と株主総会での承認が必要です。一人会社(株主=代表取締役が1名のみ)であっても、形式上の手続きと議事録の作成は省略できません。

中小企業の機関設計パターン別の手続き

会社の形態 必要な手続き 議事録
一人会社(取締役1名・株主1名)株主総会の「みなし決議」(書面決議)で可株主総会議事録を作成・保管
取締役会非設置・複数株主定時株主総会を招集(招集通知+開催)株主総会議事録を作成・保管
取締役会設置・監査役あり監査→取締役会承認→株主総会承認取締役会議事録+株主総会議事録

株主総会議事録の書き方は「株主総会議事録の書き方|決算承認・役員報酬決議の記載例」で詳しく解説しています。

💡 実務のポイント

一人会社の場合、「株主総会をやっていない」というケースが非常に多いのですが、税務調査で議事録の提示を求められることがあります。特に役員報酬の改定時は株主総会決議が根拠となるため、議事録が存在しないと損金不算入のリスクが生じます。毎期の決算承認と合わせて、5分で終わる書面決議でも必ず議事録を残してください。

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【ステップ7】税務申告書の作成・提出

決算書をもとに、各種税金の申告書を作成します。法人が申告・納付する主な税金は4種類です。

法人が申告する4つの税金と提出先

税金の種類 提出先 申告書 申告期限
法人税所轄税務署法人税申告書(別表1〜16等)決算日翌日から2ヶ月以内
消費税所轄税務署消費税申告書決算日翌日から2ヶ月以内
法人事業税・法人住民税都道府県税事務所地方税申告書(第6号様式等)決算日翌日から2ヶ月以内
法人市民税市区町村役場法人市民税申告書決算日翌日から2ヶ月以内

※東京23区の場合、法人事業税・法人住民税・法人市民税は都税事務所に一括提出です。

法人税申告書の添付書類一覧

法人税の確定申告書には、以下の書類を添付して提出します。

必須添付書類:決算報告書(B/S・P/L・S/S・個別注記表)、勘定科目内訳明細書(16種類)、法人事業概況説明書、適用額明細書(租税特別措置法の特例を適用する場合)

該当する場合に添付:消費税申告書、法人税の別表(別表1〜別表16まで、該当するもの)

勘定科目内訳明細書の書き方は「勘定科目内訳明細書の書き方|16種類の記載ポイントを科目別に解説」、法人事業概況説明書は「法人事業概況説明書の書き方|記載例付きで全項目を解説」をご覧ください。

申告方法の比較

申告方法 メリット デメリット
e-Tax(電子申告)24時間提出可。控えが自動保存。郵送不要初回の利用登録・電子証明書の準備が必要
窓口持参その場で受付印をもらえる税務署の開庁時間(平日8:30〜17:00)に限定
郵送時間を気にせず提出可到着日が提出日。期限日ギリギリは危険

📢 申告期限の延長特例

定款で「定時株主総会を事業年度終了後3ヶ月以内に開催する」と定めている場合、所轄税務署に「申告期限の延長の特例の申請書」を提出することで、法人税の申告期限を1ヶ月延長できます(延長期間分の利子税が発生します)。ただし、消費税には延長特例がないため、消費税は原則どおり2ヶ月以内に申告・納付が必要です。

【ステップ8】納税・決算書類の保管

申告書の提出と同時に、各税金の納付を行います。納付期限は申告期限と同日(決算日翌日から2ヶ月以内)です。

納税方法の選択肢

法人税の納付方法は主に4つあります。ダイレクト納付(e-Taxから口座引落し)が最も手間がかからず、期日指定も可能なためおすすめです。他に、クレジットカード納付(手数料が発生)、コンビニ納付(30万円以下の場合のみ)、金融機関窓口での納付があります。

書類の保管期間

書類の種類 法人税法上の保存期間 会社法上の保存期間
決算書(B/S・P/L等)7年10年
総勘定元帳・仕訳帳7年10年
請求書・領収書7年
契約書7年10年
法人税申告書の控え—(実務上は永久保管推奨)

参考: 国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

⚠️ 欠損金がある場合は10年保管

青色申告法人で欠損金額(赤字)が生じた事業年度の帳簿書類は、10年間の保存が義務づけられています。欠損金の繰越控除制度を利用する場合、保存期間内に帳簿がないと控除が認められないことがあります。赤字決算の年度は特に注意して書類を保管してください。

決算スケジュールのモデルケース【3月決算の場合】

3月31日決算の法人を例に、逆算方式でスケジュールを組むと以下のようになります。申告期限の5月31日から逆算して、各ステップにどの程度の期間を確保すべきかを示しています。

時期 作業内容 ポイント
2月上旬〜記帳の追い込み・書類収集2月分までの記帳を完了させ、3月は日次で処理
3月31日決算日:残高確認・実地棚卸現金実査・預金照合・在庫カウント
4月1日〜15日決算整理仕訳・試算表作成減価償却費・未払費用・引当金の計上
4月15日〜30日決算書の作成・税理士との確認B/S・P/L・勘定科目内訳明細書・概況説明書
5月上旬株主総会の開催・議事録作成一人会社でも書面決議で議事録を残す
5月中旬税務申告書の作成法人税申告書(別表)・消費税申告書・地方税申告書
5月31日(期限)申告書の提出・納税e-Taxで電子申告+ダイレクト納付がおすすめ

🧮 シミュレーション:決算にかかる期間の目安

月次決算を行っている会社 → 決算整理から申告完了まで約3〜4週間
年1回まとめて記帳する会社 → 記帳から申告完了まで約6〜8週間
税理士に丸投げの場合 → 資料を渡してから約4〜6週間(繁忙期は遅延の可能性あり)

決算対策としてやるべきこと【決算2ヶ月前チェックリスト】

決算日を迎える前に、以下の項目を確認しておくことで、決算作業がスムーズになり、かつ適正な節税効果も得られます。

利益が出ている場合の決算対策

①経費の前倒し計上:翌期に予定している消耗品の購入や修繕を、決算月までに実施することで当期の経費に計上できます。ただし、翌期のサービスに対する前払いは、原則として当期の経費にはなりません(短期前払費用の特例が適用できる場合を除く)。

②少額減価償却資産の活用:青色申告法人で資本金1億円以下の中小企業は、40万円未満の減価償却資産を取得時に全額経費にできます(年間合計300万円が上限)。パソコンやソフトウェアの入替えを決算前に実施するのは効果的です。

③役員報酬の見直し(翌期分):当期の利益が予想以上に大きい場合、翌期から役員報酬を増額して法人利益を圧縮する方法があります。ただし、役員報酬の変更は定期同額給与のルール上、事業年度開始から3ヶ月以内に行う必要があります。詳しくは「役員報酬の基本ルール|定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の違い」をご覧ください。

④倒産防止共済(経営セーフティ共済)の活用:掛金が全額損金になるため、利益調整に活用できます。月額5,000円〜20万円まで。

赤字の場合の決算対策

赤字決算であっても、以下の点を確認してください。

①青色申告の欠損金繰越:青色申告法人であれば、赤字(欠損金)を10年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます。この制度を活用するために、赤字の年度でも必ず申告を行ってください。

②法人住民税の均等割:赤字でも法人住民税の均等割(東京23区の場合、最低7万円/年)は必ず発生します。納税資金の確保を忘れないでください。

💡 実務のポイント

決算対策で「不要なものを買って経費にする」のは本末転倒です。100万円の不要な備品を買っても、節税効果は法人税率分の約23万円にすぎず、77万円のキャッシュが流出します。節税よりも「必要な支出を前倒しする」「使える制度を漏れなく適用する」という視点が重要です。

🧮 決算前の即効性のある節税策

決算月直前の節税対策として有効なのが「短期前払費用の特例」です。年払い家賃・年払い保険料を一括で損金算入できる仕組みについて、適用要件と否認されるケースを「短期前払費用の特例とは?要件・具体例・否認されるケース」で詳しく解説しています。

法人決算を自分でやるか、税理士に依頼するかの判断基準

法人決算を税理士に依頼せず自社で行うこと自体は、法的に問題ありません。ただし、法人税申告書(特に別表)の作成には高度な専門知識が必要であり、ミスのリスクは個人の確定申告の比ではありません。

自分でやるか税理士に依頼するかの判断フローチャート

判断ポイント 自社対応OK 税理士に依頼推奨
年商(売上高)1,000万円未満1,000万円以上
従業員数0〜2名3名以上
取引の複雑さ単純な売上・経費のみ海外取引・在庫あり・建設業 等
消費税免税事業者課税事業者(特にインボイス対応)
経理の知識簿記2級以上+会計ソフト経験あり簿記の知識がほぼない
節税への関心最低限でよい積極的に節税したい

法人決算を自分で行う具体的な方法は「法人決算は自分でできる?税理士なしで進める方法・リスク・判断基準」で詳しく解説しています。

🧮 コスト比較:自社対応 vs 税理士依頼

自社対応の場合:会計ソフト年額1〜3万円 + 経営者の作業時間40〜80時間
税理士に決算のみ依頼:15〜30万円(年商や取引量による)
税理士に顧問+決算を依頼:月額2〜5万円 + 決算料10〜20万円 = 年間34〜80万円
経営者の時給を5,000円とすると、自社対応でも人件費は20〜40万円。売上規模が大きくなるほど、税理士に依頼して本業に集中した方が費用対効果が高いケースが多いです。

決算後に忘れがちな手続き

申告・納税が完了したら決算は終わりと思いがちですが、以下の手続きが残っている場合があります。

中間申告・予定納税

前期の法人税額が20万円を超える場合、当期の中間申告が必要です(事業年度開始から6ヶ月後の翌日から2ヶ月以内)。中間申告には「予定申告」(前期の法人税額の半分を納付)と「仮決算」(6ヶ月分の仮決算を行う)の2つの方法があります。

決算公告

株式会社は、会社法により決算公告が義務づけられています。官報掲載、日刊新聞掲載、電子公告のいずれかの方法で行います。罰則(100万円以下の過料)がありますが、中小企業では実施していないケースも多いのが実情です。詳しくは「決算公告の義務と方法|官報・電子公告・新聞公告の費用と手続き」をご覧ください。

決算内容に誤りが見つかった場合

申告後に誤りが見つかった場合の対応は、税金を多く納めていたか少なく納めていたかで異なります。税金を少なく申告していた場合は「修正申告」を行います。自主的に修正申告すれば過少申告加算税は課されませんが、延滞税は発生します。税金を多く申告していた場合は「更正の請求」を行います。申告期限から5年以内であれば請求可能です。

⚠️ 期限を過ぎてしまった場合

申告期限を過ぎた場合、無申告加算税・延滞税・重加算税といったペナルティが課されます。各加算税の税率・計算方法・軽減策については、「法人税の無申告加算税・延滞税・重加算税|ペナルティの計算と対処法」で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

法人決算の申告期限に間に合わないとどうなりますか?
期限内に申告しないと「無申告加算税」(原則15〜20%)が課されます。さらに納税が遅れた日数に応じて「延滞税」も加算されます。どうしても間に合わない場合は、概算でもいいので期限内に申告し、後から修正申告をする方がペナルティは軽くなります。
赤字でも法人決算は必要ですか?
はい、赤字でも必ず申告が必要です。法人税は0円でも、法人住民税の均等割(東京23区で最低7万円/年)は発生します。また、青色申告法人であれば赤字(欠損金)を10年間繰り越せるため、申告しないとこの繰越控除の権利を失います。
設立1期目の決算で特に注意すべきことは何ですか?
設立1期目は事業年度が1年に満たないケースが多く、減価償却費の月割計算や、消費税の免税判定(資本金1,000万円未満なら原則2期目まで免税)に注意が必要です。また、設立時に届出を出し忘れている場合(青色申告の承認申請など)は、1期目の決算で不利になることがあります。
合同会社でも株主総会は必要ですか?
合同会社には株主総会の制度はありません。代わりに、社員(出資者)全員の同意や、定款に基づく意思決定方法で決算を承認します。ただし、決算書の作成・税務申告の義務は株式会社と同じです。
法人税申告書の「別表」とは何ですか?
法人税申告書は「別表1」から「別表16」まであり、それぞれ異なる内容を記載します。別表1が確定申告書の本体で、それ以外は明細書です。すべての法人が全別表を提出するわけではなく、該当する取引や制度がある場合にのみ作成します。最低限必要なのは別表1・別表2(同族会社の判定)・別表4(所得の計算)・別表5(利益積立金等)です。
決算月(事業年度)は変更できますか?
はい、定款を変更し、株主総会の決議を経れば変更可能です。変更した場合は税務署に「異動届出書」を提出します。繁忙期と決算月が重なっている場合や、資金繰りの都合で変更するケースがあります。決算月の選び方は「決算期(決算月)の決め方|会社設立時に知っておくべき7つの判断基準」をご覧ください。
税務調査は決算後いつ頃来ますか?
税務調査は申告後すぐに来ることは少なく、一般的には申告から1〜3年後に行われることが多いです。ただし、明らかな申告漏れが疑われる場合は早期に来ることもあります。帳簿書類の保管期間(7年、欠損金がある場合は10年)は、税務調査に備えるためでもあります。
会計ソフトは何を使えばいいですか?
中小企業に人気の会計ソフトは、freee会計、マネーフォワードクラウド会計、弥生会計の3つです。銀行口座やクレジットカードとの自動連携機能があるクラウド型がおすすめです。ただし、法人税の申告書(別表)は会計ソフトだけでは作成できないため、申告ソフト(freee申告、達人シリーズ等)が別途必要になるか、税理士に依頼することになります。
電子帳簿保存法への対応は必要ですか?
電子帳簿保存法により、電子メールやクラウドサービスで送受信した請求書・領収書等の電子取引データは、電子データのまま保存することが義務づけられています。紙に印刷して保管する方法は原則として認められません。クラウド会計ソフトを利用していれば自動的に対応できるケースが多いですが、メールで受領した請求書PDFの保存方法などは確認しておきましょう。
法人税の税率はどのくらいですか?
資本金1億円以下の中小法人の場合、年間所得800万円以下の部分は15%、800万円超の部分は23.2%です。これに法人住民税(法人税額の約17%)と法人事業税(所得の約3〜7%)が加わるため、実効税率はおおむね30〜35%程度になります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 法人決算は8ステップで完結する(帳簿整理→残高確認→決算整理仕訳→試算表→決算書→株主総会→申告→納税・保管)
  • 申告期限は決算日翌日から原則2ヶ月以内。3月決算なら5月31日が期限
  • 法人税・消費税・法人事業税・法人住民税の4税を申告・納付する
  • 一人会社でも株主総会の議事録作成は必須(省略すると税務調査で不利)
  • 帳簿書類は法人税法上7年、会社法上10年の保存が必要(欠損金がある年度は10年)
  • 月次で記帳・試算表確認を行っている会社は決算がスムーズ
  • 年商1,000万円超・従業員3名以上なら税理士への依頼を検討すべき

法人決算は、正確な記帳と計画的なスケジュール管理が成功のカギです。特に設立1期目は不慣れなことが多いため、2ヶ月前から逆算して準備を進めましょう。「自分でどこまでやるか」と「税理士にどこから任せるか」の線引きを早めに決めることが、コストと品質のバランスを取る最善の方法です。

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