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賃上げ促進税制とは|中小企業向け最大45%税額控除の要件と計算
「給与を上げたら税金が安くなるって本当?」「うちは赤字だが賃上げ税制は使える?」と疑問を持つ経営者・経理担当者に向けて、2024年度改正後の賃上げ促進税制を完全ガイドします。この記事を読めば、自社が中小企業向け45%控除の対象か判定でき、給与増加額3,000万円なら最大1,350万円の税負担軽減という具体的な節税額を試算できます。
🏆 結論:給与等を1.5%以上増やせば最大45%の税額控除。赤字でも5年繰越可
賃上げ促進税制は、青色申告法人が雇用者給与等支給額を前年度比一定割合以上増加させた場合に、増加額の一部を法人税額から控除できる制度(租税特別措置法第42条の12の5)。中小企業向けの最大控除率は45%(通常15% + 給与増額2.5%以上で+15% + 教育訓練費5%増で+10% + 子育て両立支援で+5%)。2024年度改正で5年間の繰越控除が新設され、赤字法人や創業期企業も将来の黒字年度で控除可能になりました。給与等3,000万円増加の場合、最大1,350万円(3,000万円×45%)の法人税負担軽減が可能で、賃上げ分の損金算入と合わせて実質的には賃上げ額の約75%が税負担軽減として戻る計算です。
賃上げ促進税制の全体像
制度の目的と概要
賃上げ促進税制は、企業の積極的な賃上げを支援するための税額控除制度です。2022年度税制改正で「人材確保等促進税制」と「所得拡大促進税制」が統合されて誕生し、2024年度改正で大幅に拡充されました。 賃上げを行った企業は2重のメリットを享受できます。①賃上げ分の人件費が法人税の損金として算入される(実効税率約34%として34%分の税負担軽減)、②さらに増加額の最大45%が税額控除される。両方合算すると、賃上げ額の約75%が税負担軽減として戻る計算です。💡 実務のポイント
経営者から「賃上げしても会社にメリットがあるのか」とよく質問されますが、答えは明確に「ある」です。給与増加額の約75%が実質的に税負担軽減として戻るため、賃上げの実質的なコストは増加額の約25%。例えば全社員に総額500万円の昇給をすると、実質的な追加負担は約125万円。賃上げによる従業員のモチベーション向上・離職率低下のメリットを考えれば、極めて費用対効果の高い投資です。
3つの企業区分
賃上げ促進税制は、企業規模により3つの区分があり、それぞれ要件と控除率が異なります。| 区分 | 対象企業 | 最大控除率 |
|---|---|---|
| ①中小企業向け | 資本金1億円以下または常時従業員1,000人以下(青色申告法人) | 45% |
| ②中堅企業向け | 常時従業員2,000人以下(中小企業以外) | 35% |
| ③全企業向け | 上記以外の大企業 | 35% |
適用期間
2024年4月1日から2027年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用されます(3年間の時限措置)。3月決算の場合、令和7年3月期・令和8年3月期・令和9年3月期の3事業年度が対象です。中小企業向け賃上げ促進税制の要件【1.5%通常要件】
通常要件:給与等支給額1.5%以上増加
中小企業向けの通常要件は、「雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加」のみです。前年度比1.5%以上増加すれば、増加額の15%が法人税額から控除されます。📐 通常要件の計算式
雇用者給与等支給額の増加割合 =
(当期の給与等支給額 − 前期の給与等支給額)÷ 前期の給与等支給額
→ 1.5%以上なら適用可
給与等支給額の定義
雇用者給与等支給額とは、当期の所得計算上損金算入された国内雇用者に対する給与等の支給額です。具体的には次の範囲です。- 基本給・諸手当・賞与(給与所得として課税されるもの)
- 給与等の支給に充てるための助成金等の交付があった場合は、その額を控除
- 役員給与・役員の親族等への給与は除外
- 個人事業主の事業主自身への給与は除外
⚠️ 役員給与は対象外
役員報酬の増加分は、賃上げ促進税制の対象になりません。また、役員の親族等(同族会社の役員の家族等)への給与も対象外です。一般社員のみの給与増加額で計算するため、役員家族のみの小規模法人は対象外となる可能性があります。同族会社では「誰が役員か」「誰が役員の親族か」の判定を正確に行う必要があります。
1.5%増加判定の具体例
🧮 判定例
前期の雇用者給与等支給額:1億円
当期の雇用者給与等支給額:1億200万円
増加割合:(10,200 − 10,000) ÷ 10,000 = 2.0% ≥ 1.5%
→ 通常要件を満たし、増加額200万円の15%=30万円の税額控除が可能
上乗せ要件【最大45%まで段階的に上昇】
上乗せ要件の構造
中小企業向けの控除率は、3段階の上乗せ要件を満たすことで最大45%まで上昇します。| 要件 | 内容 | 控除率上乗せ |
|---|---|---|
| 通常要件 | 給与等支給額が前年度比1.5%以上増加 | 15% |
| 上乗せ① | 給与等支給額が前年度比2.5%以上増加 | +15% |
| 上乗せ② | 教育訓練費が前年度比5%以上増加(かつ給与等支給額の0.05%以上) | +10% |
| 上乗せ③ | プラチナくるみんまたはえるぼし(二段階目以上)認定 | +5% |
| 最大合計 | 通常 + 上乗せ①〜③ | 45% |
上乗せ①:給与等支給額2.5%以上増加
通常要件の1.5%増加を超えて、2.5%以上増加させた場合、控除率が15%上乗せされます(合計30%)。1ポイントの違いで控除率が2倍になる強力なインセンティブです。上乗せ②:教育訓練費の増加
教育訓練費を前年度比5%以上増加させ、かつその額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合、控除率が10%上乗せされます。| 教育訓練費の範囲 | 具体例 |
|---|---|
| 外部講師招聘費 | 研修講師謝礼・交通費・宿泊費 |
| 外部研修参加費 | セミナー参加費・eラーニング受講料 |
| 教材費・施設利用費 | テキスト購入費・研修施設使用料 |
上乗せ③:子育て両立・女性活躍支援(2024年度改正で新設)
2024年度税制改正で新設された上乗せ要件です。以下のいずれかの認定を受けている場合に控除率が5%上乗せされます。- プラチナくるみん認定:次世代育成支援対策推進法に基づく特例認定
- えるぼし認定(二段階目以上):女性活躍推進法に基づく認定(評価項目5項目中3〜4項目以上)
- プラチナえるぼし認定:えるぼしの最上位認定
🔷 社労士の視点
えるぼし認定・くるみん認定は、社会保険労務士が支援する代表的な業務領域です。認定取得には行動計画の策定・公表、一定期間の運用実績、データ集計・分析が必要で、申請から認定まで通常6か月〜1年かかります。賃上げ促進税制の5%上乗せに加え、求人広告での認定マーク利用、補助金の優遇措置等のメリットもあるため、取得すれば多方面で効果が出ます。中小企業でも認定取得は可能で、社労士主導での計画策定を推奨します。
2024年度改正の目玉:5年繰越控除
赤字企業でも将来の黒字で控除可能に
📢 2024年度税制改正:繰越控除制度の新設
2024年度改正で、賃上げを実施した年度の法人税額が控除限度(後述)に満たず、控除しきれなかった金額を最大5年間繰り越せる制度が新設されました。赤字企業や創業期企業など、当期の法人税負担が小さい企業でも、将来の黒字化を見据えて積極的に賃上げが可能になりました。ただし、繰越控除を行う事業年度の雇用者給与等支給額が前年度を超えている必要がある点に注意してください。
繰越控除のシミュレーション
🧮 繰越控除の活用例
給与等支給額を前年度比2.5%増加させた中小企業(増加額500万円・控除率30%)の例:
計算上の税額控除額:500万円 × 30% = 150万円
当期の法人税額が30万円(赤字繰越中で控除限度額が低い)
→ 30万円は当期に控除、残り120万円は最大5年間繰越可能
翌期に黒字化して法人税額200万円なら、繰越分120万円を控除して納税額80万円に圧縮
控除限度額の計算
当期の法人税額の20%が上限
賃上げ促進税制で計算した税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。これを超える部分は5年間繰越控除されます。📐 控除限度額
控除限度額 = 当期の法人税額 × 20%
当期実際の控除額 = min(計算上の税額控除額, 控除限度額)
繰越可能額 = 計算上の税額控除額 − 当期実際の控除額(5年間)
控除限度額を超える計算例
🧮 シミュレーション
中小企業A社:給与等支給額を前年度比3%増加(増加額600万円)、教育訓練費を6%増加、控除率は40%(通常15+上乗せ①15+上乗せ②10)
計算上の税額控除額:600万円 × 40% = 240万円
当期の法人税額:500万円
控除限度額:500万円 × 20% = 100万円
当期実際の控除額:100万円
繰越可能額:240万円 − 100万円 = 140万円(最大5年間)
AYUSAWA PARTNERS
賃上げ促進税制の適用判定を承ります
給与等支給額の集計・控除率の判定・繰越控除の戦略立案まで、税理士・社会保険労務士のワンストップで対応します。えるぼし・くるみん認定の取得支援も可能。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する適用税負担シミュレーション【3パターン】
給与等支給額1億円・3,000万円増加の中小企業
給与等支給額を前年度比3,000万円増加(前年1億円→当年1.3億円・30%増)させた中小企業の節税効果を、控除率別に試算します。| パターン | 控除率 | 税額控除額 | 損金算入による節税 | 合計税負担軽減 |
|---|---|---|---|---|
| 通常要件のみ | 15% | 450万円 | 1,007万円 | 1,457万円 |
| 上乗せ①追加 | 30% | 900万円 | 1,007万円 | 1,907万円 |
| 上乗せ②追加 | 40% | 1,200万円 | 1,007万円 | 2,207万円 |
| 最大(上乗せ③含む) | 45% | 1,350万円 | 1,007万円 | 2,357万円 |
※損金算入による節税は実効税率33.58%で計算(3,000万円×33.58%=1,007万円)。賃上げ額3,000万円に対して、最大控除パターンで2,357万円の税負担軽減=賃上げの実質コストは643万円(21%)にまで圧縮。
賃上げの実質コスト
賃上げ額3,000万円に対する実質的な追加負担を整理します。| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 賃上げ総額 | 3,000万円 |
| 税負担軽減(最大45%控除+損金算入) | ▲2,357万円 |
| 実質的な追加負担 | 643万円(21%) |
適用手続きと申告
確定申告書への添付書類
賃上げ促進税制を適用するためには、確定申告書に以下の書類を添付します。- 別表六(二十四):給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
- 給与等支給額の計算根拠資料:源泉徴収簿等から集計した雇用者給与等支給額の内訳
- 教育訓練費の明細(上乗せ②適用時):費目別の集計表と請求書等の写し
- 認定書のコピー(上乗せ③適用時):プラチナくるみんまたはえるぼし認定書
⚠️ 申告期限の厳守
賃上げ促進税制は、確定申告書の提出と同時に別表の添付が必須です。期限後申告でも適用は可能ですが、修正申告では新規適用ができません。当初申告で適用を忘れて、後から税額控除を取り戻すことはできない点に注意してください。決算時の確認で必ず適用判定を行ってください。
参考: 国税庁 No.5926 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
賃上げ促進税制を最大化する5つのコツ
コツ1:給与等支給額の集計範囲を正確に把握
役員給与・役員親族給与・助成金等を除外した「純粋な雇用者給与等支給額」を正確に集計します。源泉徴収簿から機械的に転記するだけでは誤算定リスクがあります。コツ2:賞与支給時期で1.5%/2.5%の境界を狙う
決算前の業績次第で、決算賞与の支給有無を調整することで増加率を1.5%/2.5%の閾値を超えるよう設計できます。1%上乗せで控除率が2倍になるため、賞与の僅かな増加が大きな節税につながります。コツ3:教育訓練費を計画的に増加
研修・セミナー・eラーニング等の費用を前年度比5%増加させれば、上乗せ②で控除率10%が追加されます。1年限りでなく中期的な人材育成計画として位置づけることが理想です。コツ4:くるみん・えるぼし認定の取得
社労士の支援で1年がかりで認定取得すれば、控除率5%上乗せに加え、求人広告での認定マーク利用などの副次的メリットも得られます。コツ5:繰越控除を見据えた中期戦略
当期赤字でも積極的に賃上げを実施し、繰越控除を活用する戦略も有効です。創業期や業績一時悪化期にも適用可能なため、長期視点で節税効果を享受できます。賃上げ促進税制を使えないケース・落とし穴
適用除外となる主なケース
- 白色申告法人(青色申告法人のみが対象)
- 役員報酬のみ増加で従業員給与が減少した場合
- 雇用者数が大幅に減少して給与等支給額が増えても1人あたりは減少したケース
- 適用期間(2024年4月〜2027年3月)外の事業年度
- 大法人の100%子法人等の場合は中小企業向け45%は使えない(中堅企業向け35%は使える可能性あり)
判定の落とし穴:合併・分割時の取扱い
📊 公認会計士の視点
合併・分割等の組織再編があった場合、前年度の雇用者給与等支給額の比較対象が複雑になります。原則として、合併存続法人の前年度給与等+被合併法人の前年度給与等を合算して比較するなど、再編形態ごとに調整計算が必要です。M&Aを実施した法人で賃上げ促進税制を適用する際は、税理士確認が不可欠です。
よくある質問
📋 この記事のポイント
- 賃上げ促進税制は給与等支給額を前年度比1.5%以上増加させた中小企業に税額控除を与える制度
- 中小企業向けの最大控除率は45%(通常15%+上乗せ①15%+上乗せ②10%+上乗せ③5%)
- 上乗せ③(子育て両立・女性活躍支援)は2024年度改正で新設、プラチナくるみんまたはえるぼし二段階目以上で適用
- 2024年度改正で5年間の繰越控除が新設、赤字法人や創業期企業も将来の黒字年度で活用可能
- 控除限度額は当期の法人税額の20%。超過分は5年繰越
- 賃上げ3,000万円・最大控除パターンで2,357万円の税負担軽減=実質コストは643万円(21%)
- 役員給与・役員の親族給与・海外雇用者給与は対象外
- 適用には別表六(二十四)の確定申告書添付が必須、当初申告でないと適用不可
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