【税理士監修】配当控除とは?計算方法と確定申告のメリット・デメリット

【税理士監修】配当控除とは?計算方法と確定申告のメリット・デメリット
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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配当控除とは?計算方法と確定申告のメリット・デメリット

株式の配当金で確定申告すべきかわからない方に向けて、配当控除の計算方法・3つの課税方式の比較・課税所得別の最適な申告方法を完全ガイドします。この記事を読めば、自分の所得水準に合った最も有利な申告方法を判断できます。

🏆 結論:課税所得695万円以下なら総合課税で配当控除を受けるのが有利

配当控除とは、国内株式の配当金を総合課税で確定申告した場合に、配当所得の10%(住民税2.8%)を税額から直接差し引ける制度です。課税所得695万円以下なら、源泉徴収(20.315%)より総合課税の実効税率が低くなるため、確定申告で税金を取り戻せます。ただし、令和5年分以降は所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなったため、住民税の負担増や国民健康保険料への影響も考慮して判断する必要があります。

配当控除とは?制度の基本的なしくみ

配当控除とは、法人税と所得税の二重課税を調整するための税額控除制度です。企業が稼いだ利益にはまず法人税が課され、その税引後の利益から株主に配当が支払われます。この配当にさらに所得税が課されると、同じ利益に法人税と所得税の二重課税が生じてしまいます。配当控除はこの二重課税の負担を軽減する目的で設けられています。

配当控除の控除率

配当の種類 所得税の控除率 住民税の控除率
株式の配当金(課税総所得1,000万円以下の部分)10%2.8%
株式の配当金(課税総所得1,000万円超の部分)5%1.4%
証券投資信託の収益分配金(課税総所得1,000万円以下)5%1.4%
証券投資信託の収益分配金(課税総所得1,000万円超)2.5%0.7%

参考: 国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」

⚠️ 配当控除を受けるには総合課税での確定申告が必須

配当控除は「申告不要制度」や「申告分離課税」を選択した場合は適用されません。配当控除を受けるには、確定申告で「総合課税」を選択する必要があります。

配当控除の対象となる配当・ならない配当【判定表】

すべての配当金が配当控除の対象になるわけではありません。以下の判定表で確認してください。

配当の種類 配当控除 理由
国内上場株式の配当金日本法人の利益に法人税が課された後の配当
国内非上場株式の配当金総合課税で申告(申告分離課税は選択不可)
国内株式投資信託の普通分配金控除率は株式配当の1/2
外国株式の配当金×日本の法人税が課されていない(外国税額控除は適用可)
J-REIT(不動産投資信託)の分配金×法人税が実質非課税のため二重課税が生じない
外国株式投資信託の分配金×外貨建て資産の運用益は配当控除の対象外
特定公社債等の利子×利子所得であり配当所得ではない
NISA口座内の配当金×そもそも非課税のため控除の概念がない

💡 実務のポイント:米国株の配当は外国税額控除で対応

米国株式の配当金は配当控除の対象外ですが、米国で源泉徴収された税金(通常10%)については「外国税額控除」を確定申告で適用できます。外国税額控除は総合課税・申告分離課税のどちらでも適用可能です。米国株と日本株の両方を保有している場合は、それぞれの最適な申告方法が異なる可能性があるため注意が必要です。

3つの課税方式の比較【正味税率表】

上場株式等の配当金には、①申告不要(源泉徴収で完結)、②総合課税(配当控除あり)、③申告分離課税(損益通算可能)の3つの課税方式があります。

課税所得 所得税率 総合課税の正味税率 申告不要/申告分離 有利な方式
〜195万円5%約7.2%20.315%総合課税
195万〜330万円10%約7.2%20.315%総合課税
330万〜695万円20%約17.4%20.315%総合課税
695万〜900万円23%約20.5%20.315%ほぼ同等
900万〜1,000万円33%約30.7%20.315%申告不要
1,000万円超33%〜約35.6%〜20.315%申告不要

※総合課税の正味税率=(所得税率−配当控除率10%)×1.021+(住民税率10%−配当控除率2.8%)。国内上場株式の配当の場合。
※概算値です。個別の状況により異なります。

📢 令和5年分以降の重要変更:課税方式の統一

令和5年分(2023年分)以降、所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなりました。以前は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」と分けることで住民税の負担増を避けられましたが、現在はこの方法が使えません。そのため、総合課税を選ぶと住民税の税率7.2%(10%−2.8%)が適用され、申告不要時の5%より負担が増えます。上記の正味税率表はこの統一ルールを反映しています。

あなたはどの課税方式が有利?【4ステップ判定フロー】

ステップ 判定内容 結果
上場株式等の譲渡損失はありますか?Yes → 申告分離課税で損益通算が有利。ステップ④へ
配当所得を含めた課税所得はいくらですか?695万円以下 → 総合課税が有利(ステップ③へ)
695万円超 → 申告不要が有利(ステップ④へ)
国民健康保険料・扶養控除への影響は?総合課税で申告すると合計所得が増え、国保料・介護保険料が上がる可能性あり。配偶者控除・扶養控除の所得判定にも影響
最終判断税額の差額と国保料等の増加額を比較し、トータルで有利な方を選択

💡 実務のポイント:国保加入者は要注意

会社員(社会保険加入者)であれば、配当所得を申告しても健康保険料に影響しません。しかし、個人事業主や退職者など国民健康保険に加入している方は、総合課税で配当所得を申告すると合計所得金額が増え、国保料が上がる可能性があります。配当控除で節税した金額よりも国保料の増加額が大きければ、申告しない方がトータルで有利です。

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配当控除のシミュレーション【課税所得別】

年間配当金50万円を受け取った場合に、課税方式の違いでどれだけ税額が変わるかを試算します。

📐 シミュレーション前提条件

  • 配当金額:年間50万円(国内上場株式の配当)
  • 源泉徴収額:50万円×20.315%=101,575円
  • 所得税と住民税の課税方式は統一(令和5年分以降のルール)
  • 国民健康保険料への影響は考慮しない(社会保険加入者を想定)
課税所得 申告不要の税額 総合課税の税額 差額(節税効果)
300万円101,575円約36,000円約65,500円の節税
500万円101,575円約87,000円約14,500円の節税
695万円101,575円約87,000円約14,500円の節税
900万円101,575円約102,600円約1,000円の負担増
1,200万円101,575円約153,500円約52,000円の負担増

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

総合課税で確定申告するメリット・デメリット

メリット

総合課税で確定申告する最大のメリットは配当控除を受けられることです。課税所得695万円以下であれば、源泉徴収で支払った税金の一部を取り戻せます。また、各種所得控除(医療費控除・ふるさと納税など)との組み合わせで、さらに課税所得を下げることも可能です。

デメリット

総合課税のデメリットは、配当所得が合計所得金額に加算される点です。これにより以下の影響が生じる可能性があります。

影響項目 内容
国民健康保険料所得割の算定基礎が増え、保険料が上がる可能性
配偶者控除・扶養控除合計所得金額の判定に影響し、控除が受けられなくなる可能性
介護保険料自己負担割合が上がる可能性(特に高齢者)
児童手当・各種給付金所得制限がある給付金の判定に影響する可能性

申告分離課税のメリット・デメリット

申告分離課税を選択する最大のメリットは、上場株式等の譲渡損失と配当所得を損益通算できることです。株式投資で売却損が出ている年は、配当金と相殺することで税負担を減らせます。

ただし、申告分離課税では配当控除は適用されません。また、源泉徴収ありの特定口座内であれば確定申告をしなくても口座内で自動的に損益通算されるため、特定口座を利用している場合は手間の観点で申告不要の方が楽です。確定申告の基礎知識は「確定申告とは?対象者・期限・必要書類をわかりやすく解説」をご覧ください。

確定申告の手続き方法

必要書類

書類 入手先
確定申告書国税庁HP(確定申告書等作成コーナー)/ 税務署
特定口座年間取引報告書証券会社から1月中旬〜2月上旬に送付
支払通知書(一般口座の場合)配当金の支払元(証券会社・信託銀行等)
源泉徴収票(給与所得者の場合)勤務先

申告書への記入のポイント

総合課税を選択する場合は、確定申告書の「所得金額等」欄の「配当」に配当所得を記入し、「税額控除等」の「配当控除」欄に計算した控除額を記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すれば、課税方式を選択するだけで自動計算されるため、手計算の必要はありません。

所得控除の全体像は「所得控除一覧|全15種類の適用要件と控除額」、年末調整との関係は「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」をご参照ください。

配当控除を活用した節税テクニック

NISA口座との使い分け

NISA口座の配当金はそもそも非課税のため、配当控除の対象外です。したがって、配当控除を活用するなら、NISA口座以外の課税口座で受け取る配当金が対象になります。課税所得が低い方は、NISA枠を超える投資分について総合課税で配当控除を受けることで、追加の節税が可能です。

損益通算と配当控除の使い分け

同じ年に株式の売却損と配当金がある場合、申告分離課税で損益通算するか、総合課税で配当控除を受けるかの選択になります。両方を同時に使うことはできません。

📊 公認会計士の視点

判断基準はシンプルです。「売却損×20.315%」と「配当控除で戻る税額」を比較してください。売却損が大きければ申告分離課税で損益通算した方が節税額が大きくなります。売却損が小さいか売却損がない場合は、課税所得695万円以下なら総合課税で配当控除を受ける方が有利です。なお、特定口座内で自動的に損益通算されている場合は、確定申告しなくても損益通算の恩恵を受けられます。

よくある質問(FAQ)

配当控除を受けるにはどうすればいいですか?
確定申告で「総合課税」を選択し、配当所得と配当控除額を申告書に記入します。申告不要制度(源泉徴収のまま)や申告分離課税を選んだ場合は配当控除を受けられません。国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すれば、課税方式を選ぶだけで自動計算されます。
配当控除は課税所得がいくらまでなら有利ですか?
国内上場株式の配当の場合、課税所得695万円以下であれば、総合課税で配当控除を受けた方が源泉徴収(20.315%)よりも税負担が軽くなります。ただし、令和5年分以降は所得税と住民税で同じ課税方式を選ぶ必要があるため、住民税の負担増や国民健康保険料への影響を含めたトータルで判断してください。
外国株式(米国株など)の配当金も配当控除を受けられますか?
外国株式の配当金は配当控除の対象外です。日本の法人税が課されていないため、二重課税の調整が不要だからです。ただし、外国で源泉徴収された税金については「外国税額控除」を確定申告で適用できます。外国税額控除は総合課税・申告分離課税のどちらでも適用可能です。
特定口座(源泉徴収あり)を使っていますが、確定申告した方がいいですか?
課税所得695万円以下で株式の売却損がなければ、総合課税で確定申告して配当控除を受けることで税金が還付される可能性があります。ただし、国民健康保険に加入している方は、保険料の増加で逆効果になる場合があります。社会保険加入の会社員で課税所得が低い方にとっては、メリットが大きいケースが多いです。
株式の売却損がある場合、配当金と損益通算できますか?
はい、申告分離課税を選択すれば、上場株式等の譲渡損失と配当所得を損益通算できます。特定口座(源泉徴収あり)内であれば、確定申告しなくても同一口座内で自動的に損益通算されます。複数の口座間で損益通算したい場合や、損失を翌年以降に繰り越したい場合は確定申告が必要です。
NISA口座の配当金に配当控除は使えますか?
NISA口座の配当金はそもそも非課税のため、配当控除の対象外です。NISA口座で受け取る配当金は受取方法を「株式数比例配分方式」にしておく必要があります(これ以外の受取方式だと非課税になりません)。
令和5年分以降、所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなったと聞きましたが、影響はありますか?
大きな影響があります。以前は所得税を総合課税、住民税を申告不要とすることで、配当控除の恩恵を受けつつ住民税の負担増を避けられました。現在は両方を統一する必要があるため、総合課税を選ぶと住民税も7.2%(10%−2.8%)が適用され、申告不要時の5%より負担が増えます。この結果、総合課税が有利になるのは課税所得695万円以下のケースに限定されるようになりました。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 配当控除は二重課税調整のための税額控除。総合課税の確定申告でのみ適用可能
  • 国内上場株式の配当は所得税10%・住民税2.8%が控除される
  • 課税所得695万円以下なら総合課税が有利、695万円超なら申告不要(源泉徴収)が有利
  • 令和5年分以降、所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなり、有利な課税所得ラインが下がった
  • 外国株式の配当金・J-REITの分配金・NISA口座の配当金は配当控除の対象外
  • 株式の売却損がある場合は申告分離課税で損益通算を優先。売却損がなければ配当控除を検討
  • 国民健康保険加入者は、保険料増加の影響を含めたトータルで判断が必要

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