公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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法人事業概況説明書の書き方|記載例付きで全項目を解説
「法人事業概況説明書って何を書けばいいの?」と迷う経理担当者・経営者に向けて、令和6年3月改訂の現行様式に沿って表面・裏面の全項目を記載例付きで完全ガイドします。この記事を読めば、金額の単位ミスや月別売上高と主要科目の不一致といった頻出トラブルを防ぎ、スムーズに書類を完成できます。
🏆 結論:決算書を先に固めてから、最後に作成するのがベスト
法人事業概況説明書とは、法人の事業内容・従業員数・売上推移・主要科目などを記載して法人税の確定申告書に添付する書類です。法人税法施行規則第35条により添付が義務づけられています。決算書や勘定科目内訳明細書の数字を転記する項目が多いため、「決算書を確定させてから最後に作成する」のが実務上のベストな順序です。現在使用するのは令和6年3月1日以後終了事業年度分から改訂された様式で、電帳法適用状況欄と年末調整関係書類の電子化欄が追加されています。
法人事業概況説明書とは?提出義務と位置づけ
法人事業概況説明書とは、税務署が法人の事業内容や経営状況を把握するために作成・提出を求める書類です。平成18年度の税制改正で提出が義務化され、法人税の確定申告書に添付して税務署に提出します。根拠となるのは法人税法施行規則第35条で、確定申告書への添付書類のひとつとして「事業等の概況に関する書類」が定められています。
提出が必要な法人と提出時期
法人税の確定申告を行う法人のうち、税務署が所管する法人(おおむね資本金1億円未満の中小法人)が提出対象です。提出期限は確定申告書と同じく、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内です。3月決算法人なら5月末が期限になります。申告期限の延長特例を受けている場合は、延長後の期限に合わせて提出します。
会社事業概況書との違い(資本金1億円以上の法人)
国税局の調査課が所管する法人(原則として資本金1億円以上の法人など)は、法人事業概況説明書ではなく「会社事業概況書」という別の書類を提出します。記載項目はより詳細で、グループ会社の状況や経理・監査の体制などを記載します。様式は国税庁ホームページの「会社事業概況書(調査課所管法人用)」からダウンロードできます。中小法人が誤って会社事業概況書を使う必要はありません。自社がどちらに該当するか迷う場合は、過去の申告書綴りでどちらを提出していたかを確認するのが早道です。
提出しなかった場合のペナルティ
法人事業概況説明書の未提出に対する直接的な罰則規定はありません。ただし、提出義務のある書類を出さないことは税務署の心証に影響し、税務調査の対象として選定されやすくなる可能性があります。また、補助金・給付金・融資の申請時に「申告書一式の控え」として概況説明書の写しの提出を求められることが実務上よくあります。出していないと申請のたびに困ることになるため、必ず提出しておきましょう。
💡 実務のポイント
国税庁の記載要領では、法人事業概況説明書は他の書類とホチキス止めせず、申告書に挟み込んで提出するよう案内されています。OCR(機械読み取り)用紙のため、折ったり汚したりしないことも求められています。e-Taxで電子申告する場合はデータで送信するため、紙の提出は不要です。
最新様式の入手方法と改訂ポイント
現在使用する様式は、令和6年3月1日以後終了事業年度分から適用されている改訂版です(2026年6月時点で最新)。国税庁ホームページから無料でダウンロードできます。改訂で変わったのは次の2点です。
| 改訂箇所 | 内容 |
|---|---|
| 表面「5 PC利用状況」の(7)電帳法適用状況 | 優良な電子帳簿の保存等を行っている場合は「優良」、それ以外は「一般」、国税関係書類をスキャナ保存している場合は「スキャナ」にチェックする欄が設けられた |
| 裏面「20 年末調整関係書類の電子化の状況」 | 年末調整手続でのシステム利用、申告書の電磁的方法での受付の可否、マイナポータル連携での取得状況などを記載する欄が新設された |
参考: 国税庁「法人事業概況説明書(令和6年3月1日以後終了事業年度分)」/国税庁「法人事業概況説明書の様式改訂のお知らせ」
⚠️ 注意:古い様式を使い回さない
前年の控えをコピーして使うと、改訂前の様式には電帳法適用状況欄や年末調整電子化欄そのものがありません。会計ソフト・申告ソフトを最新版に更新するか、国税庁サイトから現行様式をダウンロードして作成してください。なお、改訂前に必要だった軽減税率対象の場合の会計ソフト名への「(軽減)」の付記は、現行様式では不要になっています。
全体構成と金額の単位ルール
法人事業概況説明書は表面・裏面の2ページ構成で、表面に11項目、裏面に9項目(項目12〜20)の合計20項目が並びます。各項目の記載に入る前に、書類全体に共通する「金額の単位ルール」を押さえておくと、最も多い単位ミスを防げます。
金額の単位早見表(ここを間違えると桁が変わる)
| 記載欄 | 単位 | 端数処理 |
|---|---|---|
| 主要科目・代表者に対する報酬等・当期課税売上高・月別の売上高等(原則すべて) | 千円 | 千円未満切捨て |
| 海外取引状況の「取引金額」 | 百万円 | 百万円未満切捨て |
| 月別の売上高等の「源泉徴収税額」 | 円 | 円単位そのまま |
このほか記載要領では、切捨ての結果ゼロになった場合や金額がない場合は「0」と書かずに空欄のままとすること、マイナスの金額は数字の一つ上の桁に「△」または「-」を付すこと(「▲」は使用不可)、数字は1枠1文字の右詰めで書くことが定められています。
表面の項目一覧(項目1〜11)
| No. | 項目名 | 記載内容の概要 |
|---|---|---|
| 1 | 事業内容 | 営む事業の概要(詳細は裏面「12 事業形態」へ) |
| 2 | 支店・子会社の状況 | 国内外の支店数・子会社数・出資割合 |
| 3 | 海外取引状況 | 輸出入の有無・相手国・取引金額(百万円単位) |
| 4 | 期末従事員等の状況 | 常勤役員・従業員等の人数、賃金の定め方、社宅・寮の有無 |
| 5 | PC利用状況 | PCの利用・OS・利用形態・会計ソフト名・電帳法適用状況 |
| 6 | 販売形態 | 電子商取引(ネット取引)の有無・販売チャネル |
| 7 | 株主又は株式所有異動の有無 | 株主や持株数の異動の有無(株式交付の該当表示を含む) |
| 8 | 経理の状況 | 現金・通帳の管理者、試算表の作成状況、源泉徴収対象所得、消費税(当期課税売上高・経理方式)、社内監査 |
| 9 | 役員又は役員報酬額の異動の有無 | 役員の異動・報酬額の変更の有無 |
| 10 | 主要科目 | B/S・P/Lの主要科目の金額(千円単位) |
| 11 | 代表者に対する報酬等の金額 | 同族会社の場合のみ記載 |
裏面の項目一覧(項目12〜20)
| No. | 項目名 | 記載内容の概要 |
|---|---|---|
| 12 | 事業形態 | 兼業の状況・事業内容の特異性 |
| 13 | 主な設備等の状況 | 事業用の主な設備の名称・数量等 |
| 14 | 決済日等の状況 | 売上・仕入・外注費の締切日と決済日、給料の支給日 |
| 15 | 帳簿類の備付状況 | 作成・備え付けている帳簿書類の名称 |
| 16 | 税理士の関与状況 | 関与税理士の氏名・事務所所在地・関与業務の範囲 |
| 17 | 加入組合等の状況 | 加入している組合・団体名 |
| 18 | 月別の売上高等の状況 | 月別の売上高・仕入金額・外注費・人件費・源泉徴収税額(円単位)・従事員数 |
| 19 | 当期の営業成績の概要 | 売上増減の要因など経営に影響した特殊事情 |
| 20 | 年末調整関係書類の電子化の状況 | 年末調整手続のシステム利用・電子データ受付の可否(令和6年3月新設) |
法人決算の全体的な流れと提出書類の関係は「法人決算の流れを完全ガイド」で、申告書一式の構成は「法人税の確定申告に必要な書類一覧」で解説しています。
表面の書き方|項目1〜11のポイントと記載例
表面は「会社の基本情報」と「決算数値の要約」で構成されます。順番に見ていきますが、作成の実務では決算数値を転記する項目10・11を最後に書くのが効率的です。
項目1:事業内容
営んでいる事業をシンプルに記載します。「ソフトウェア開発業」「飲食店経営」「建設業(内装工事)」など、総務省の日本標準産業分類や申告書に記載する事業種目を参考にすると適切です。詳細は裏面の「12 事業形態」欄で書くため、ここでは1〜2行で十分です。
項目2・3:支店・子会社の状況と海外取引状況
国内の支店・営業所・出張所・工場・倉庫等の総数、海外支店や子会社の数を記載します。海外子会社がある場合は出資割合50%以上のものの数と、出資割合の高い順に2社の名称・出資割合(小数点以下切捨て)も記載します。海外取引がある場合は、輸入・輸出の区分ごとに主な相手国・商品名・取引金額を百万円単位で記載し、輸出入以外の取引(役務の提供、手数料、ロイヤルティーなど)は該当区分にチェックを付けます。国内のみで完結している中小企業は、支店数の記入とチェック以外ほぼ空欄で問題ありません。
項目4:期末従事員等の状況
決算日時点の人数を、常勤役員・職種別従業員(事務員、技術者、販売員など職種名を自分で記入)に分けて記載します。「計のうち代表者家族数」には代表者の家族である従事員の人数を書きます。記載要領上、同居・別居は問わず、代表者本人は含めません。アルバイト数も「計のうち」として記載します。あわせて賃金の定め方(固定給/歩合給/併用)と社宅・寮の有無もチェックします。
項目5:PC利用状況と電帳法適用状況
PCの利用有無(タブレットやオフコンも含む)、OS、利用業務(財務管理・給与管理など)、会計ソフトの利用有無と名称(クラウド会計も含む)、メールソフト名を記載します。令和6年3月改訂で加わった(7)電帳法適用状況では、優良な電子帳簿(過少申告加算税の軽減措置の対象)の保存等を行っていれば「優良」、それ以外の電子帳簿保存なら「一般」、スキャナ保存をしていれば「スキャナ」にチェックします。会計ソフトで記帳していれば、多くの中小企業は「一般」に該当します。
項目6・7:販売形態と株主異動の有無
電子商取引(インターネット取引)の有無を、売上・仕入・経費の別にチェックします。ネット販売の売上がある場合は、自社ホームページか他社のプラットフォーム(モール等)かのチェックも必要です。項目7では、株主の異動や株主間の持株数の異動があればチェックし、それが会社法上の株式交付によるものなら「株式交付」にも印を付けます。
項目8・9:経理の状況と役員異動
項目8では、現金出納や預金通帳の管理責任者の氏名と代表者との関係(親族/他人)、試算表の作成頻度(毎月/おおむね月ごと/決算時のみ)、当期に取り扱った源泉徴収の対象所得(給与・報酬料金・配当など)をチェックします。消費税の「当期課税売上高」(千円単位)と経理方式(税込/税抜)もこの項目8の中にあります。売上は税抜経理で固定資産や経費の一部だけ税込経理にしている場合は、「税抜」にチェックするのが記載要領上のルールです。項目9では、役員の異動または役員報酬額の変更の有無をチェックします。役員報酬を期中に改定した場合もここは「有」です。
項目10:主要科目(最も重要な項目)
貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)の主要科目の金額を千円単位(千円未満切捨て)で記載します。原則は決算書の確定額ですが、申告調整(別表四・別表五(一)での加減算)がある場合は交際費を除いて調整後の額を記載します。つまり交際費だけは扱いが逆で、損金不算入額を反映する前の「支出額の合計」をそのまま書きます。科目ごとの細かいルールが記載要領に定められているので、間違えやすいものを一覧にまとめます。
| 科目 | 記載ルール(国税庁の記載要領より) |
|---|---|
| 売上(収入)高 | 値引き・割戻し等を控除した後の額。兼業売上は内書きで記載 |
| 交際費 | 支出額の合計(申告調整前)。他の科目と扱いが逆なので注意 |
| 役員報酬・従業員給料・労務費 | 退職金は含めない。労務費は福利厚生費等を除く |
| 受取手形・売掛金 | 貸倒引当金の控除前の額。受取手形に融通手形は含めない |
| 建物・機械装置・車両船舶 | 減価償却累計額を控除した後の帳簿価額 |
| 土地 | 借地権等の額を含める |
| 買掛金 | 原価性のある未払金等を含める |
| 個人借入金 | 銀行・信用金庫・信用組合「以外」からの借入金の合計(役員借入金など) |
| 資産の部合計 | 負債の部合計+純資産の部合計と一致するよう検算する |
⚠️ 注意:交際費を「調整後」で書いてしまうミス
実務で実際にあったケースとして、年商8,000万円の卸売業の経理担当者が、別表十五で計算した損金不算入額を差し引いた後の金額を交際費欄に記載してしまい、勘定科目内訳明細書や決算書の交際費と数字が合わず、税務署から電話で照会を受けたことがあります。記載要領のとおり「支出額の合計」を書いていれば不要だった対応です。概況説明書の数字は他の提出書類と突合されることを前提に記載しましょう。
項目11:代表者に対する報酬等の金額(同族会社のみ)
この欄は同族会社の場合のみ記載します。代表者に対する報酬・賃借料・支払利息のほか、代表者への貸付金・仮払金、代表者からの借入金・仮受金の期末残高を千円単位で記入します。中小企業の大半は同族会社に該当するため、実質的にはほぼ全社が記載する欄です。税務署は同族会社と代表者の間の資金のやり取りを特にチェックするため、正確な記載が重要です。
⚠️ 注意:代表者貸付金・仮払金の残高が大きい場合
代表者への貸付金が多額に計上されていると、税務調査で「会社の経費や資金を私的に流用しているのではないか」と疑われるリスクが高まります。弊所が立ち会った同族会社の調査では、貸付金残高が3期連続で増加して約800万円に達しており、使途を説明できなかった部分が役員賞与(認定賞与)と認定されて、源泉所得税の追徴につながったケースがあります。この欄は毎期の残高推移を税務署側が把握できる欄なので、決算前に貸付金を確認し、早期に解消する計画を立てましょう。
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鮎澤パートナーズに相談する裏面の書き方|項目12〜20のポイント
裏面は「事業の実態」と「月次の数字」を記載するページです。特に項目18「月別の売上高等の状況」は、この書類全体で最もトラブルが多い欄なので重点的に解説します。
項目12・13:事業形態と主な設備等の状況
項目12では、兼業がある場合にその種目と兼業割合(%)を記載し、事業内容の特異性(例:受注生産のみ、フランチャイズ加盟、特定取引先への依存など)があれば記載します。表面の項目1「事業内容」より一段詳しい説明を書く欄です。項目13には、事業に使っている主な設備(製造機械、車両、店舗内装、サーバー等)の名称と数量を記載します。賃借している設備も含めて構いません。
項目14:決済日等の状況
売上(現金売上・掛売上の別)、仕入、外注費について締切日と決済日を、給料について締切日と支給日を記載します。「月末締め翌月末払い」のような取引サイトをそのまま書く欄です。税務署はこの欄と決算書の売掛金・買掛金残高との整合性を見るため、実際の取引条件を正確に記載しましょう。
項目15〜17:帳簿類・税理士の関与・加入組合
項目15には作成・備え付けている帳簿書類の名称(総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、固定資産台帳など)を記載します。項目16は関与税理士の氏名・事務所所在地・電話番号と、関与状況(申告書の作成、決算書の作成、伝票の整理、総勘定元帳の記帳、補助簿の記帳、税務相談、調査立会、源泉徴収関係事務)のチェックです。顧問税理士がいる場合は税理士側で記載するのが通常です。項目17には加入している事業組合・商工会議所・業界団体などを記載します。記帳に必要な帳簿の種類は「勘定科目内訳明細書の書き方」とあわせて確認すると整理しやすくなります。
項目18:月別の売上高等の状況(トラブル最頻出)
月別の売上(収入)金額・仕入金額・外注費・人件費・源泉徴収税額・従事員数を記載し、合計欄と前期の実績も記入します。ここで最も多いトラブルが、「月別売上高の年間合計」と「項目10 主要科目の売上高」が一致しない問題です。
| ケース | 対応方法 |
|---|---|
| 決算整理仕訳(売上の計上時期調整など)で月別と決算額がずれた | 決算月に整理仕訳分を反映させて合計を一致させるのが基本 |
| 補助金・融資の申請で概況説明書の控えを提出する予定がある | 審査側は月別合計と決算書の一致を確認するため、あらかじめ一致させておくのが安全 |
実際に、2025年に小規模事業者持続化補助金の申請を支援した小売業(売上3区分・年商4,500万円)のケースでは、月別欄の年間合計と決算書の売上高のズレを事務局から指摘され、修正版の概況説明書を再提出することになりました。補助金や融資の申請を予定している会社は、月別合計=主要科目の売上高=決算書の売上高、の三者一致を作成時点で確認しておきましょう。月次の数字を期中から整えておくには「決算書の作り方」で解説している月次決算の習慣が有効です。
⚠️ 注意:源泉徴収税額の単位だけ「円」
項目18の金額は基本的に「千円」単位ですが、「源泉徴収税額」欄だけは「円」単位です。様式の欄外にも単位の注意書きがあるほど間違いが多いポイントで、千円単位で書くと金額が1/1000になってしまいます。毎月の源泉所得税の納付書(または納期の特例の納付書)の金額と突合しながら円単位で転記してください。
項目19:当期の営業成績の概要
前年と比較して売上が大きく増減した場合や、事業内容の変更、災害・休業の影響などがあった場合に記載します。「特になし」でも問題ありませんが、大きな変動があるのに空欄だと税務署から問い合わせが来ることがあります。実務で記載することが多い例は、「○月に新規事業として○○を開始」「主要取引先の○○社との取引終了により売上が前年比20%減少」「○月に本店を移転」などです。ここに合理的な理由を書いておくことが、後述する税務調査の選定リスクを下げる予防線になります。
項目20:年末調整関係書類の電子化の状況(令和6年3月新設)
年末調整手続でのシステム利用の有無、利用しているシステム(国税庁提供の年末調整控除申告書作成用ソフトウェア/市販ソフト/自社製)、扶養控除等申告書などを電子データで受け付けているか、保険料控除証明書のマイナポータル連携の利用状況などをチェックします。国税庁の改訂案内では、源泉所得税について税理士の関与がない場合はこの欄の記載を省略して差し支えないとされています。判断に迷ったら、紙で年末調整をしている会社は「システム利用:無」を基本にチェックすれば足ります。
記載例で見る|年商3,000万円のIT企業の場合
架空のIT企業C社(ソフトウェア開発業、資本金500万円、3月決算、従業員5名)の法人事業概況説明書の主要部分をシミュレーションします。
📐 シミュレーション前提条件
- 年商3,000万円(受託開発2,400万円+自社プロダクト600万円)
- 売上原価(外注費中心)1,200万円
- 役員報酬:月額50万円×12=600万円
- 従業員給料:月額合計60万円×12=720万円
- 地代家賃:月額15万円×12=180万円
| 記載欄 | 記載内容(例) |
|---|---|
| 1 事業内容 | ソフトウェア開発業 |
| 4 期末従事員等の状況 | 常勤役員1名、技術者3名、事務員1名(計のうちアルバイト数1名) |
| 5 PC利用状況 | 利用有・OS:Windows/Mac・会計ソフト:クラウド会計(名称を記載)・電帳法適用状況:一般 |
| 8 経理の状況(消費税) | 当期課税売上高 30,000千円・税抜経理方式 |
| 10 主要科目:売上(収入)高 | 30,000千円 |
| 10 主要科目:売上原価(うち外注費) | 12,000千円 |
| 10 主要科目:役員報酬 | 6,000千円 |
| 10 主要科目:従業員給料 | 7,200千円 |
| 10 主要科目:地代家賃 | 1,800千円 |
| 18 月別売上(受託開発) | 月平均 2,000千円(検収月により変動) |
| 18 月別売上(自社プロダクト) | 月平均 500千円 |
| 18 源泉徴収税額 | 毎月の給与に係る源泉所得税を円単位で記載 |
※概算値です。個別の状況により異なります。
法人事業概況説明書でよく間違えるポイント6選
ミス①:金額の単位を間違える
原則は「千円」単位(千円未満切捨て)ですが、源泉徴収税額は「円」単位、海外取引の取引金額は「百万円」単位です。また、切捨ての結果ゼロになった場合は「0」ではなく空欄にします。記入前に各欄の単位を必ず確認してください。
ミス②:月別売上高の合計と主要科目の売上高が合わない
決算整理仕訳の反映漏れや、月次集計と決算書のズレで起きます。補助金・融資の申請を予定している場合は、月別合計・主要科目・決算書の三者を一致させてから提出するのが安全です。
ミス③:交際費を申告調整後の金額で書いてしまう
主要科目は申告調整がある場合に調整後の額を書きますが、交際費だけは例外で「支出額の合計」を記載します。逆に書くと勘定科目内訳明細書と一致せず、税務署からの照会の原因になります。
ミス④:同族会社でないのに「代表者に対する報酬等」を記入してしまう
項目11は同族会社の場合のみ記載する欄です。同族会社に該当しない場合は空欄にします。逆に、同族会社なのに記載を漏らすと、税務署からの問い合わせにつながります。
ミス⑤:古い様式を使って電帳法・年末調整の欄が抜ける
令和6年3月1日以後終了事業年度分から様式が改訂されており、改訂前の用紙には「電帳法適用状況」欄と「年末調整関係書類の電子化の状況」欄がありません。前年の控えの使い回しではなく、国税庁サイトの現行様式または最新版の会計・申告ソフトで作成しましょう。
ミス⑥:前年と同じ内容をそのまま転記してしまう
一度作成すれば翌年は半分程度を流用できますが、従業員数の変動、役員の異動、事業内容の変更、決済条件の変更などは毎年更新が必要です。前年の控えをコピーして金額だけ変える場合、「数値以外の変更点」も忘れずに見直しましょう。
会計ソフト別:法人事業概況説明書の作成方法
freee会計の場合
「決算申告」メニューの法人事業概況説明書から、会計データを連携して作成できます。月別売上高や主要科目は自動集計されますが、事業内容・事業形態・営業成績の概要などの文章欄は手入力が必要です。
弥生会計の場合
事業所設定や消費税設定の情報を取り込んで自動入力されますが、手修正が必要な箇所があります。OCR用紙や汎用用紙への印刷にも対応しています。
税務申告ソフト(達人シリーズ等)の場合
会計データのインポート機能で主要科目や月別売上高を自動入力でき、e-Taxへのデータ送信もシームレスに行えます。税理士事務所はこの方式が主流です。
e-Taxで提出する場合の取り扱い
e-Taxで電子申告する場合、法人事業概況説明書もデータで送信します。会計ソフトや申告ソフトからe-Tax用のデータを出力し、法人税申告書と一緒に送信すれば、紙での別途提出は不要です。注意点は「申告書本体だけ送信して概況説明書の添付を忘れる」ケースで、送信前に添付書類の一覧に概況説明書が含まれているかを確認しましょう。申告期限と納付スケジュールの全体像は「法人の税務カレンダー」で確認できます。
税務調査で法人事業概況説明書のどこが見られるか
税務調査の事前準備で、調査官は法人事業概況説明書を必ず確認しています。この書類は税務署のKSKシステム(国税総合管理システム)に蓄積され、調査対象の選定や事前分析の材料になります。特に注目されるポイントを3つ紹介します。
ポイント①:月別売上高の季節変動パターン
通常は季節変動がないはずの業種で、特定の月だけ売上が急増・急減していると、売上の期ずれ(翌期の売上を前倒し・先送りして計上するなど)を疑われます。弊所が立ち会った3月決算の建設業の調査では、例年動きの少ない2月・3月に売上が集中していたことから、工事完成基準の計上時期を重点的に確認された例があります。
ポイント②:人件費率と従事員数の整合性
同業他社と比較して人件費率が異常に高い場合、架空の従業員(いわゆる幽霊社員)の存在を疑われることがあります。項目4の期末従事員数、項目18の月別人件費・従事員数、源泉徴収税額の3点はセットで整合性を確認されます。
ポイント③:代表者への貸付金・仮払金の推移
項目11の代表者への貸付金や仮払金が前年より増加している場合、その増加理由を調査で質問されます。役員貸付金は認定賞与や認定利息の論点に直結するため、概況説明書の段階で残高の推移を把握されていると考えておきましょう。
💡 実務のポイント:法人事業概況説明書は「自社の自己紹介」
税務署は管内の数万社の法人をすべて熟知しているわけではありません。法人事業概況説明書は「うちの会社はこういう事業を、こういう規模でやっています」という自己紹介です。正確かつ丁寧に書いておくことで、税務署に不要な疑念を持たれるリスクを減らせます。数字の見方そのものは「決算書の読み方と経営指標の見方」も参照してください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
📋 この記事のポイント
- 法人事業概況説明書は法人税の確定申告書への添付が義務(法人税法施行規則第35条)。表面11項目・裏面9項目の全20項目
- 現行様式は令和6年3月1日以後終了事業年度分からの改訂版。電帳法適用状況欄と年末調整電子化欄が追加されている
- 金額は原則「千円」単位だが、源泉徴収税額は「円」、海外取引金額は「百万円」。単位ミスが最頻出
- 主要科目は申告調整後の額が原則だが、交際費だけは「支出額の合計」を記載する
- 月別売上高の合計・主要科目・決算書の三者一致を確認。補助金・融資の申請時に突合される
- 同族会社は項目11の代表者貸付金・仮払金の残高推移が税務調査でチェックされる
- 決算書を確定させてから最後に作成し、e-Tax送信時は添付漏れに注意する
法人事業概況説明書は、決算書と勘定科目内訳明細書が固まっていれば1〜2時間で作成できる書類です。ただし、単位ルールや科目別の記載要領など細かい約束事が多く、他の提出書類との整合性まで含めると、初めての方には負担の大きい作業でもあります。決算・申告の全体像から見直したい方は「法人決算の流れを完全ガイド」を、申告書類の構成は「法人税の確定申告に必要な書類一覧」をご覧ください。
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