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「決算書を作らないといけないが、何をどう書けばいいかわからない」という経営者・経理担当者に向けて、法人決算で必要な3つの計算書類の構造と作り方を5ステップで完全ガイドします。この記事を読めば、各書類がどうつながっているかを理解し、自社で作成する際のチェックポイントがわかります。


「決算書を作らないといけないが、何をどう書けばいいかわからない」という経営者・経理担当者に向けて、法人決算で必要な3つの計算書類の構造と作り方を5ステップで完全ガイドします。この記事を読めば、各書類がどうつながっているかを理解し、自社で作成する際のチェックポイントがわかります。
🏆 結論:決算書は「3つの計算書類」を正しい手順で作れば怖くない
法人の決算書は、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・株主資本等変動計算書(S/S)の3つが柱です。作成手順は「①決算整理仕訳→②残高試算表の確定→③損益計算書の作成→④貸借対照表の作成→⑤株主資本等変動計算書の作成」の5ステップ。会計ソフトを使えばほぼ自動で出力できますが、「何の数字がどの書類のどこに入るか」を理解しておくと、誤りの発見・税務調査への対応・銀行提出時の説明が格段に楽になります。
決算書とは、会社の一会計期間の経営成績と期末時点の財政状態を数字で表した書類です。正式には会社法では「計算書類」、金融商品取引法では「財務諸表」と呼ばれます。
法人が決算時に作成しなければならない主な書類は次の3つです。会社法第435条により、株式会社は各事業年度に計算書類を作成する義務があります。
| 書類名 | 何がわかるか | 時間軸 | 略称 |
|---|---|---|---|
| 貸借対照表 | 期末時点の資産・負債・純資産の状態 | ストック(一時点) | B/S |
| 損益計算書 | 一期間の収益・費用・利益 | フロー(一期間) | P/L |
| 株主資本等変動計算書 | 純資産の変動理由と金額 | フロー(一期間) | S/S |
※上場企業はこれに加えてキャッシュフロー計算書の作成義務がありますが、中小企業は法律上の作成義務はありません。
💡 実務のポイント
「決算書」という言葉は日常会話で使われますが、法律上の正式名称ではありません。税務署への確定申告で添付するのは「計算書類」であり、金融機関への提出時は「財務諸表」と呼ばれます。場面によって呼び名が変わりますが、中身は同じものです。
決算書は「作って終わり」ではなく、3つの異なる利害関係者のために作成するものです。第一に、税務署への法人税確定申告書の添付書類として。第二に、株主総会での経営報告資料として。第三に、銀行など金融機関への融資審査資料として使われます。
特に融資審査では、銀行員が損益計算書で「この会社は利益を出せているか」を確認し、貸借対照表で「返済余力はあるか」を見ます。実務では、決算書の数字の意味を経営者自身が説明できるかどうかが、融資の成否を分けることも少なくありません。
3つの書類はバラバラに存在するのではなく、互いにつながっています。この「つながり」を理解することが、正しい決算書を作る近道です。
| つながり | 具体的にどうリンクするか |
|---|---|
| P/L → B/S | 損益計算書の「当期純利益」が、貸借対照表の「繰越利益剰余金」に加算される |
| B/S → S/S | 貸借対照表の「純資産の部」の各項目と、株主資本等変動計算書の「当期末残高」が一致する |
| P/L → S/S | 損益計算書の「当期純利益」が、株主資本等変動計算書の「繰越利益剰余金」の当期変動額に記載される |
📊 公認会計士の視点
この3つの書類が「当期純利益」という一本の糸でつながっていることを理解すると、決算書のチェックが格段に楽になります。「P/Lの最終利益」「B/Sの純資産増加額(配当を考慮後)」「S/Sの繰越利益剰余金の変動額」が合致しなければ、どこかに計算ミスがあります。
決算書の作成は、全部で5つのステップに分かれます。日々の記帳が正しくできていれば、決算書の作成そのものはそれほど難しくありません。ポイントは「決算整理仕訳」をどれだけ丁寧にできるかです。
| Step | 作業内容 | ゴール | 必要な資料 |
|---|---|---|---|
| 1 | 決算整理仕訳 | 期末の正確な残高を確定 | 通帳残高・固定資産台帳・在庫表など |
| 2 | 残高試算表の確定 | 全勘定科目の貸借一致を確認 | 決算整理後の仕訳データ |
| 3 | 損益計算書の作成 | 当期純利益の算出 | 残高試算表の収益・費用科目 |
| 4 | 貸借対照表の作成 | 期末の財政状態を表示 | 残高試算表の資産・負債・純資産科目 |
| 5 | 株主資本等変動計算書の作成 | 純資産の変動を明示 | B/Sの純資産+P/Lの当期純利益 |
決算書作成の最初のステップは、期中の帳簿を期末の実態に合わせる「決算整理仕訳」です。日々の記帳だけでは、期末の正確な残高にならない科目が多数あるため、このステップが不可欠です。
| 項目 | 何をするか | 影響する書類 |
|---|---|---|
| 減価償却費の計上 | 固定資産の当期分の費用を計上 | P/L(費用増)・B/S(資産減) |
| 棚卸資産の評価 | 期末在庫の金額を確定し、売上原価を算出 | P/L(売上原価)・B/S(商品) |
| 貸倒引当金の設定 | 回収不能リスクのある売掛金に引当金を計上 | P/L(費用増)・B/S(引当金増) |
| 経過勘定の処理 | 前払費用・未払費用・前受収益・未収収益を計上 | P/L・B/S両方 |
| 法人税等の計上 | 当期の法人税・住民税・事業税を見積計上 | P/L(税金)・B/S(未払法人税等) |
| 現金・預金の実査 | 帳簿残高と実際残高の差異を調整 | B/S(現金・預金) |
⚠️ 注意
決算整理仕訳の漏れは、決算書全体の数字を狂わせます。実務でよく見る漏れは「減価償却費の計上忘れ」「期末在庫の棚卸漏れ」「経過勘定の計上漏れ」の3つです。特に初めての決算では、決算整理チェックリストを用意して一つひとつ確認することをおすすめします。
| □ | チェック項目 | よくあるミス |
|---|---|---|
| ☐ | 現金・預金の残高は通帳・金庫と一致しているか | 入出金の計上時期ズレ |
| ☐ | 売掛金・買掛金の残高は取引先と一致しているか | 請求書の計上漏れ |
| ☐ | 棚卸資産は実地棚卸の金額と一致しているか | 仕掛品の計上漏れ |
| ☐ | 固定資産台帳と帳簿の減価償却累計額は一致しているか | 耐用年数の誤り |
| ☐ | 前払費用・未払費用は期間按分できているか | 保険料・家賃の按分漏れ |
| ☐ | 貸倒引当金の設定は適正か | 繰入率の誤り |
| ☐ | 法人税等の見積額を計上したか | 地方税(住民税・事業税)の計上漏れ |
決算整理仕訳をすべて入力したら、残高試算表(T/B: Trial Balance)を出力し、全勘定科目の借方合計と貸方合計が一致することを確認します。この「貸借一致」が確認できれば、決算書の材料が揃ったことを意味します。
残高試算表のチェックで重要なのは、単に「貸借が合っている」だけでなく、各科目の残高が「ありえる金額か」を経営者の目で確認することです。
たとえば、現金残高が帳簿上500万円あるのに、実際には金庫に10万円しかない――こういったケースは、現金の出入りの記帳漏れが原因です。残高試算表の段階で異常値に気づければ、決算書に間違いを持ち越さずに済みます。
💡 実務のポイント
会計ソフトを使っている場合、残高試算表は自動で出力されます。ただし、「自動だから正しい」とは限りません。入力ミス(勘定科目の選択間違い、貸借の逆入力など)は試算表の段階では検出されないことがあります。前期の試算表と並べて、大きく動いた科目がないかを比較するのが効果的です。
損益計算書の作成手順は、残高試算表から収益科目と費用科目を抜き出し、所定の区分に並べ替えることです。損益計算書は「5つの利益」を段階的に計算していく構造になっています。
| 利益の名前 | 計算式 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 売上高 − 売上原価 | 本業の商品力・サービス力 |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 | 本業での稼ぐ力 |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 | 経常的な収益力(利息・配当含む) |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 | 臨時的な要因を含む利益 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 | 最終的な利益(B/SとS/Sに連動) |
法人が外部に提出する損益計算書は「報告式」で作成するのが一般的です。報告式とは、収益と費用を交互に配置し、上から順に利益を計算していく形式です。
具体的には、まず売上高から始まり、売上原価を差し引いて売上総利益を算出。次に販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いて営業利益を求め、営業外収益・費用を加減して経常利益、特別利益・損失を加減して税引前当期純利益、最後に法人税等を差し引いて当期純利益を算出します。
🧮 シミュレーション:年商3,000万円・IT企業のP/L例
売上高3,000万円 − 売上原価600万円 = 売上総利益2,400万円 → 販管費(人件費1,500万円+家賃180万円+その他420万円)2,100万円を差し引いて 営業利益300万円 → 支払利息20万円を差し引いて 経常利益280万円 → 法人税等約84万円を差し引いて 当期純利益196万円。この196万円がB/Sの繰越利益剰余金に加算されます。
販管費は損益計算書で最も科目数が多い区分です。中小企業で頻出する科目を整理します。
人件費(給与・賞与・法定福利費・福利厚生費)、地代家賃、通信費、旅費交通費、消耗品費、減価償却費、交際費、支払手数料、租税公課、保険料、広告宣伝費、外注費などが代表的な科目です。科目の選択に迷ったら、「勘定科目の選び方に一貫性があるか」を重視してください。同じ性質の支出を毎期同じ科目で処理し続けることが、前期との比較を可能にします。
なお、勘定科目の詳しい分類と実務上の判断基準については、「勘定科目の内訳と使い分け」で詳しく解説しています。
貸借対照表の作成手順は、残高試算表から資産・負債・純資産の科目を抜き出し、所定の区分に並べることです。貸借対照表は左側(借方)に「資産」、右側(貸方)に「負債」と「純資産」を配置し、左右の合計が必ず一致する構造です。
| 借方(左側):資産 | 貸方(右側):負債+純資産 | ||
|---|---|---|---|
| 流動資産 | 現金・預金、売掛金、棚卸資産 | 流動負債 | 買掛金、短期借入金、未払金、未払法人税等 |
| 有価証券、前払費用、未収入金 | 前受金、預り金、賞与引当金 | ||
| 短期貸付金 | 固定負債 | 長期借入金、退職給付引当金 | |
| 固定資産 | 有形(土地・建物・車両・備品) | 純資産 | 資本金 |
| 無形(ソフトウェア・特許権)、投資その他(投資有価証券・敷金) | 資本剰余金(資本準備金等) | ||
| 繰延資産 | 創立費・開業費 | 利益剰余金(繰越利益剰余金等) | |
資産・負債を「流動」と「固定」に分ける基準は2つあります。1つは「1年基準(ワンイヤールール)」で、決算日の翌日から1年以内に回収・支払が完了するものを流動に分類します。もう1つは「営業循環基準」で、通常の営業活動の中で発生する売掛金・買掛金・棚卸資産などは、回収期間にかかわらず流動に分類します。
実務では、営業循環基準を先に適用し、それに該当しない項目に1年基準を適用するのが正しい手順です。たとえば、売掛金は回収に14ヶ月かかるケースでも、営業活動から生じたものなので流動資産に分類されます。
①貸借の一致確認:「資産の合計」=「負債の合計+純資産の合計」が鉄則です。合計が合わない場合は、どこかの科目に入力ミスがあります。
②マイナス表示科目の扱い:貸倒引当金と減価償却累計額は、資産のマイナス項目として表示します。売掛金1,000万円に対して貸倒引当金10万円を設定している場合、売掛金の直下に「△10万円」と表示するのが原則です。
③繰越利益剰余金の金額チェック:前期末の繰越利益剰余金に、当期純利益を加算し、配当金を差し引いた金額が当期末の繰越利益剰余金になります。この計算が合わない場合、P/LかB/Sのどちらかにミスがあります。
株主資本等変動計算書は、貸借対照表の「純資産の部」に記載された各項目が、当期中にどのような原因で、いくら変動したかを一覧表で示す書類です。2006年の新会社法で作成が義務化されました。
株主資本等変動計算書は、横軸に純資産の各勘定科目(資本金・資本準備金・利益準備金・繰越利益剰余金など)を並べ、縦軸に「当期首残高」「当期変動額(変動事由ごと)」「当期変動額合計」「当期末残高」を配置する一覧表形式です。
| 項目 | 資本金 | 資本準備金 | 利益準備金 | 繰越利益剰余金 | 株主資本合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 当期首残高 | 1,000 | 500 | 50 | 800 | 2,350 |
| 剰余金の配当 | — | — | 10 | △110 | △100 |
| 当期純利益 | — | — | — | 196 | 196 |
| 当期変動額合計 | — | — | 10 | 86 | 96 |
| 当期末残高 | 1,000 | 500 | 60 | 886 | 2,446 |
※単位:万円。上記は資本金1,000万円・配当100万円・当期純利益196万円の中小企業の例。
株主資本等変動計算書の作成は、以下の4ステップで進めます。
①当期首残高の記入:前期の株主資本等変動計算書の当期末残高をそのまま転記します。前期の貸借対照表の純資産の部の金額と一致していることを確認してください。
②当期変動額の記入:当期中に発生した純資産の変動を、変動事由ごとに記入します。中小企業で多い変動事由は「当期純利益(または当期純損失)」と「剰余金の配当」です。増資した場合は「新株の発行」も記入します。
③当期変動額合計の計算:②で記入した各変動事由の金額を合計します。
④当期末残高の計算:当期首残高に当期変動額合計を加減して算出します。この金額が、当期の貸借対照表の純資産の部と一致していれば正しく作成できています。
💡 実務のポイント
中小企業の株主資本等変動計算書は、上場企業に比べてシンプルなケースがほとんどです。増資や自己株式の取得がなければ、変動事由は「当期純利益」と「配当」だけで済むことも多く、B/SとP/Lの数字を転記するだけで完成します。会計ソフトでは自動生成されるため、手動で作るより「自動生成された内容が正しいかチェックする」ことに注力しましょう。
参考: 中小企業庁「中小企業の会計 31問31答」問6 株主資本等変動計算書
損益計算書を「作る」だけでなく「読む」ことができると、経営判断に直結します。ここでは中小企業の経営者が押さえるべき3つの視点を解説します。
売上総利益率(粗利率)=売上総利益÷売上高×100 は、商品やサービスの「稼ぐ力」を示す指標です。業種によって水準は異なりますが、飲食業で60〜70%、小売業で25〜35%、IT・コンサルで70〜90%が目安です。粗利率が前期より下がっていれば、仕入コストの上昇か、値引き販売の増加を疑います。
営業利益率=営業利益÷売上高×100 は、本業でどれだけ効率よく利益を出しているかの指標です。中小企業では5%以上あれば良好、10%以上あれば優良といえます。粗利は出ているのに営業利益が少ない場合は、販管費(特に人件費と家賃)の見直しが必要です。
融資審査で最も重視されるのは経常利益です。特別利益(固定資産売却益など)や特別損失は一時的なもので、来期以降の継続性が見込めないため、銀行は経常利益をベースに返済能力を判断します。「当期純利益が大きくても、中身が特別利益ばかり」という決算書は、融資審査では評価されにくいことを覚えておいてください。
貸借対照表を読みこなすと、会社の「体力」がわかります。経営判断に使える3つの指標を紹介します。
自己資本比率=純資産÷総資産×100 は、会社の資金のうち「返す必要のないお金」がどれだけあるかを示します。30%以上あれば安全、50%以上なら非常に健全です。逆に10%を切っている場合は、借金への依存度が高く、金利上昇や売上減少に弱い財務体質といえます。
流動比率=流動資産÷流動負債×100 は、1年以内に支払う必要のある負債を、1年以内に回収できる資産でどれだけカバーできるかの指標です。200%以上が理想、最低でも120%は確保したいところです。100%を切ると、資金ショートのリスクが高い状態です。
🧮 シミュレーション:自己資本比率と流動比率の計算例
A社:総資産5,000万円、純資産2,500万円、流動資産3,000万円、流動負債1,500万円 → 自己資本比率50%(健全)、流動比率200%(理想的)
B社:総資産5,000万円、純資産500万円、流動資産1,200万円、流動負債1,800万円 → 自己資本比率10%(危険水域)、流動比率67%(資金ショートリスクあり)
同じ総資産でも、調達方法と資産構成の違いで財務の安全性は大きく異なります。
固定比率=固定資産÷純資産×100 は、長期保有する固定資産が自己資本でまかなわれているかを見る指標です。100%以下が望ましく、返済不要の自己資本で固定資産を調達できていることを意味します。100%を超えている場合は、固定資産の一部を借入金で購入していることになります。
年間100社以上の決算書を見てきた経験から、中小企業が特によく間違えるポイントを5つ紹介します。
決算月の末日に納品した取引の売上を、翌月の入金日に計上してしまうケースです。売上は「納品・役務提供が完了した日」に計上するのが原則(発生主義)です。入金基準で処理すると、決算をまたぐ取引の売上が翌期にずれ、利益が過少計上されます。税務調査で指摘されると、修正申告+過少申告加算税の対象になります。
国税庁が定める法定耐用年数と異なる年数で償却しているケースです。たとえば、普通自動車の耐用年数は6年ですが、軽自動車は4年です。中古資産の場合は見積耐用年数の計算が必要です。耐用年数を間違えると、毎期の減価償却費が過大または過少になり、利益と税額の両方に影響します。
減価償却の詳しい計算方法については、「減価償却の基礎知識」で解説しています。
1年分の保険料や家賃を一括で支払っている場合、決算日をまたぐ分は「前払費用」として資産計上する必要があります。この処理を忘れると費用が過大計上され、利益が過少になります。逆に、期末時点で発生しているが未払いの費用(水道光熱費の月末分など)は「未払費用」として負債に計上する必要があります。
棚卸資産の評価方法(最終仕入原価法・移動平均法など)を途中で変更すると、前期との比較が困難になります。評価方法は届出により選択できますが、一度選んだ方法は原則として継続適用する必要があります。
法人税・住民税・事業税を決算書に計上し忘れるケースです。法人税等は「見積額」で計上し、確定申告後の差額は翌期で調整します。この計上を忘れると、損益計算書の当期純利益が過大に表示され、貸借対照表の未払法人税等が計上されないことになります。
現在の中小企業は、ほぼすべてが会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生会計など)を使って決算書を作成しています。会計ソフトは日々の仕訳から自動で決算書を生成してくれますが、「自動=正確」とは限りません。
原則1:入力データの正確性を担保する。会計ソフトは入力されたデータをもとに決算書を出力します。入力時に勘定科目を間違えたり、金額を間違えたりすると、そのまま決算書に反映されます。少なくとも月次で残高を確認し、異常値がないかチェックする習慣をつけてください。
原則2:決算整理仕訳は手動で入力する。減価償却は会計ソフトの固定資産モジュールで自動計算されることが多いですが、経過勘定の処理や棚卸資産の評価、貸倒引当金の設定は手動入力が必要です。決算整理仕訳チェックリスト(本記事のステップ1参照)を使って漏れを防いでください。
原則3:出力後に「前期との比較」を行う。会計ソフトが出力した決算書を、前期の決算書と並べて比較します。売上が変わっていないのに販管費が2倍になっている、前期にあった固定資産が消えている、などの異常があれば、入力ミスの可能性が高いです。
💡 実務のポイント
会計ソフトの自動仕訳機能(銀行口座連携など)は便利ですが、科目の推測が間違っていることがよくあります。特に「支払手数料」と「租税公課」、「消耗品費」と「備品」の境界は会計ソフトが判断を誤りやすいポイントです。自動仕訳をそのまま確定せず、必ず内容を確認する習慣をつけてください。
決算書は自分で作ることも可能ですが、以下のケースでは税理士への依頼を強くおすすめします。
| 判断ポイント | 自社対応が可能 | 税理士に依頼推奨 |
|---|---|---|
| 年商 | 1,000万円以下 | 1,000万円超 |
| 取引の複雑さ | 単一事業・取引先少数 | 複数事業・輸出入あり |
| 固定資産 | ほぼなし | 不動産・車両・設備あり |
| 従業員数 | なし(1人法人) | 1名以上(給与計算連動) |
| 融資予定 | 当面なし | 今後1年以内に融資を検討 |
融資を予定している場合は特に注意が必要です。銀行員は決算書の「整合性」を細かく見ます。B/SとP/LとS/Sの三表が正しく連動していない決算書は、信頼性に欠けると判断される可能性があります。
法人決算を自分でやるか税理士に依頼するかの詳しい判断基準は、「法人決算を自分でやる方法と注意点」で解説しています。また、決算の全体的な流れについては「法人決算の流れ」をご覧ください。
| 提出先 | 提出書類 | 期限 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人税確定申告書+決算書(計算書類)一式 | 事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内 |
| 都道府県税事務所 | 法人事業税・住民税申告書+決算書写し | 同上 |
| 市区町村 | 法人住民税申告書+決算書写し | 同上 |
| 株主総会 | 計算書類(承認決議のため) | 定時株主総会 |
| 金融機関(任意) | 決算書一式(融資審査・モニタリング) | 融資契約に基づく |
法人税法上、決算書(計算書類)の保存期間は7年間です。ただし、欠損金の繰越控除の適用を受ける場合は10年間の保存が必要です(法人税法施行規則第59条)。実務上は、10年間保存しておくのが安全です。
決算書の作成が完了した後に必要な手続き(株主総会議事録の作成、決算公告の義務など)については、「法人決算の流れ」で詳しく解説しています。
📋 この記事のポイント