公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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「税理士に頼まず法人決算を自分でやりたい」という経営者に向けて、自社で対応できるラインと税理士に依頼すべきラインの判断基準、自力で進める場合の具体的な手順とリスクを解説します。この記事を読めば、自社の状況に合った現実的な選択ができるようになります。


「税理士に頼まず法人決算を自分でやりたい」という経営者に向けて、自社で対応できるラインと税理士に依頼すべきラインの判断基準、自力で進める場合の具体的な手順とリスクを解説します。この記事を読めば、自社の状況に合った現実的な選択ができるようになります。
🏆 結論:自分でできるが「別表の壁」が最大の関門
法人決算を自分で行うこと自体は法的に問題ありません。ただし、法人税申告書の「別表」作成が最大のハードルです。年商1,000万円未満・従業員なし・取引が単純なマイクロ法人であれば、会計ソフト+申告ソフトの組み合わせで自力対応も可能です。一方、年商1,000万円超や消費税の課税事業者になった段階では、少なくとも「申告書作成のみ税理士に依頼」するハイブリッド型をおすすめします。
結論から言えば、法人決算を自分で行うことは法的にまったく問題ありません。会社法や法人税法は決算書の作成を義務づけていますが、「税理士が作成しなければならない」というルールは存在しません。
ただし、現実には法人税申告の約9割に税理士が関与しています。財務省の「国税庁実績評価書」によると、法人税の申告において税理士が関与した割合は約89%に上ります。個人の所得税申告(約23%)と比較すると、その差は歴然です。
法人決算が個人の確定申告と決定的に違うのは、法人税申告書(別表)の存在です。個人の確定申告書は収入と経費を記入して税額を計算するシンプルな構造ですが、法人税申告書は「別表1」から「別表16」まであり、各別表が相互に参照し合う複雑な構造になっています。
特に別表4(所得の金額の計算に関する明細書)は、会計上の利益から税務上の所得への調整(加算・減算)を行うもので、会計と税務の違いを正確に理解していないと作成できません。
💡 実務のポイント
決算を自力でやろうとして途中で挫折し、申告期限ギリギリに税理士に駆け込む経営者を毎年何人も見てきました。この場合、税理士側も短期間で処理しなければならないため、通常より高い費用がかかります。「自分でやるか、依頼するか」は事業年度の早い段階で決断するのが鉄則です。
①税理士費用の削減:税理士に決算申告のみ依頼する場合、一般的に15〜30万円の費用がかかります。顧問契約を含めると年間34〜80万円になることも。自社で対応すれば、この費用を事業に再投資できます。
②自社の財務状況を深く理解できる:決算書を自分で作成する過程で、なぜこの利益になったのか、どの費用が経営を圧迫しているのかを体感できます。これは税理士に丸投げした場合には得られない経営者としての成長です。
③経営判断のスピードが上がる:自分で数字を把握できる経営者は、月次の試算表を見て即座に改善アクションが取れます。税理士からの報告を待つタイムラグがなくなります。
| デメリット | 具体的なリスク | 想定される損失額 |
|---|---|---|
| 本業の時間を圧迫 | 慣れない作業に40〜80時間が必要 | 機会損失:時給5,000円×50時間=25万円 |
| 節税の機会損失 | 使える特例・控除を見落とす | 年間10〜50万円の余分な税金 |
| 申告ミスのペナルティ | 過少申告加算税・延滞税が課される | 本税の10〜15%+延滞税 |
| 税務調査の対応 | 税理士の署名がない申告書は調査対象になりやすいとの指摘もある | 調査対応の時間+追徴課税 |
| 融資審査への影響 | 税理士署名のない決算書は金融機関の信用度が下がる場合がある | 融資金利の上昇・融資不可 |
⚠️ 注意:節税の機会損失が最も痛い
経験上、自社で決算を行う経営者が最も損をするのは「使える特例を知らない」ことです。少額減価償却資産の即時償却(年間300万円まで)、中小企業投資促進税制、経営強化税制などは、申告書に明記しなければ適用されません。存在を知らなければ申告しようがないのです。
以下の5つのチェックポイントで、自社の状況を診断してみてください。
| # | チェックポイント | 自力OK | 税理士を検討すべき |
|---|---|---|---|
| 1 | 年間売上高 | 1,000万円未満 | 1,000万円以上(消費税課税事業者) |
| 2 | 従業員数 | 一人会社(役員のみ) | 従業員3名以上 |
| 3 | 取引の複雑さ | 単純売上・少数の経費科目 | 在庫あり・海外取引・建設業 |
| 4 | 経理の知識 | 簿記3級以上+会計ソフト利用経験 | 帳簿をつけたことがない |
| 5 | 融資の予定 | 当面なし | 銀行融資を検討中 |
判定:5項目すべてが「自力OK」に該当する場合のみ、自分で法人決算を行うことを検討してよいでしょう。1つでも「税理士を検討すべき」に該当する場合は、少なくとも「記帳は自分・申告は税理士」のハイブリッド型をおすすめします。
📐 シミュレーション前提条件
| パターン | 直接費用 | 時間コスト | 合計 | 節税効果 |
|---|---|---|---|---|
| A. 全部自分でやる | 約5万円 | 約30万円 | 約35万円 | 低い |
| B. 記帳は自分、申告は税理士 | 約20万円 | 約10万円 | 約30万円 | 中程度 |
| C. 顧問契約+決算 | 約40万円 | 約5万円 | 約45万円 | 高い |
※概算値です。税理士事務所・地域・取引量により異なります。
📊 公認会計士の視点
パターンBの「ハイブリッド型」は費用対効果が最も高い選択肢です。日常の記帳を自分で行うことで会社の数字を理解でき、申告書作成という専門性の高い部分だけを税理士に任せるため、リスクと費用のバランスが取れます。1期目だけ税理士に全部任せて流れを把握し、2期目からハイブリッド型に移行する経営者も多くいます。
自力で法人決算に挑戦する場合の具体的な手順です。法人決算の全体像は「法人決算の流れを完全ガイド|初めての決算でも迷わない手順と必要書類一覧」で詳しく解説していますが、ここでは「自分でやる場合」に特化したポイントを説明します。
法人決算を自分でやるなら、会計ソフトの導入は必須です。手書きの帳簿で法人の決算書を正確に作成することは現実的ではありません。
| 会計ソフト | 年額目安 | 特徴 | 申告書作成 |
|---|---|---|---|
| freee会計 | 約2.6万円〜 | 簿記知識が少なくても使いやすいUI | freee申告(別途)で対応 |
| マネーフォワードクラウド | 約3.6万円〜 | 銀行連携が豊富。仕訳提案が正確 | 申告ソフト別途必要 |
| 弥生会計Next | 約3万円〜 | 長年の実績。操作ガイドが充実 | 申告ソフト別途必要 |
クラウド会計ソフトの最大のメリットは、銀行口座やクレジットカードとの自動連携です。取引データが自動的に取り込まれるため、手入力の手間とミスを大幅に削減できます。
決算日の時点で、帳簿上の残高と実際の残高を突き合わせます。現金は実際に数え、預金は通帳の残高と一致しているかを確認します。売掛金・買掛金は取引先ごとの残高を照合し、在庫がある場合は実地棚卸を行います。
減価償却費の計上、未払費用・前払費用の振替、引当金の計上など、決算整理仕訳を行います。ここが自力で最も難しいステップです。会計ソフトによっては減価償却の自動計算機能がありますが、経過勘定(前払・未払)の計上は手動で判断する必要があります。
⚠️ ここで間違えやすいポイント3選
①消費税の課税区分ミス:非課税と不課税の混同は仕入税額控除の計算に直結します。
②減価償却費の計算誤り:定額法と定率法の混同、耐用年数の誤り、中古資産の年数計算ミス。
③期ずれ(計上時期の誤り):決算月の売上を翌月に計上してしまうと「売上除外」として税務調査で問題になります。
会計ソフトから貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表を出力します。クラウド会計ソフトであれば、ボタン一つでPDF出力が可能です。
ここが「自力で法人決算」の最大の関門です。法人税申告書は別表1〜別表16まであり、自社に該当する別表をすべて作成する必要があります。
最低限作成が必要な別表は以下の4つです。
別表1(確定申告書):法人税額を算出する本体。別表2(同族会社の判定):株主構成と持株比率を記載。別表4(所得の金額の計算):会計上の利益→税務上の所得への調整。別表5(一)(利益積立金額の計算):繰越利益剰余金等の残高管理。
このほか、減価償却資産がある場合は別表16、交際費がある場合は別表15なども必要です。
💡 実務のポイント:申告ソフトの活用
別表を手書きで作成するのは現実的ではありません。freee申告や全力法人税などの申告ソフトを利用すれば、会計ソフトのデータを取り込んで別表を自動生成できます。ただし、加算・減算項目の判断は自分で行う必要があるため、最低限の税務知識は不可欠です。
一人会社であっても、株主総会の「みなし決議」(書面決議)を行い、議事録を作成する必要があります。議事録がないと、税務調査で不利な扱いを受けることがあります。
法人税申告書はe-Tax(電子申告)で提出できます。消費税と地方税の申告書も忘れずに提出してください。納税はダイレクト納付が便利です。
「どの程度の知識があれば自力でできるのか?」という質問をよく受けます。以下の表で自己診断してみてください。
| 知識カテゴリ | 必要なレベル | 学習方法 |
|---|---|---|
| 簿記の基礎 | 日商簿記3級程度(仕訳の仕組み・勘定科目の分類が理解できる) | 簿記3級テキスト(1〜2ヶ月で習得可能) |
| 消費税の基本 | 課税・非課税・不課税の区別ができる | 国税庁タックスアンサー+会計ソフトの消費税設定ガイド |
| 法人税の概要 | 損金不算入・益金不算入の代表的な項目を知っている | 「法人税のあらまし」(国税庁発行) |
| 会計ソフトの操作 | 仕訳の入力・残高確認・決算書出力ができる | 各ソフトのヘルプセンター・YouTube動画 |
| 別表の基本構造 | 別表4の加算・減算の意味がわかる | 申告ソフトのガイド+税務署の無料相談 |
実務で実際に見てきた「自力で決算して失敗した」パターンを紹介します。同じ轍を踏まないための参考にしてください。
12月決算の会社で、12月に納品した案件の請求書を翌年1月に発行。12月の売上に計上しなかった結果、税務調査で「売上除外」として指摘され、修正申告+過少申告加算税の対象に。実務では、請求書の発行日ではなく「役務の提供が完了した日」が売上の計上日です。
社長が会社の口座から個人的な支出を行い、仮払金として処理。決算日になっても精算せず「役員貸付金」として残高が残った結果、税務調査で「認定利息」(利息を取るべきなのに取っていない)として課税対象に。
設立3期目で前々期の課税売上が1,000万円を超えていたにもかかわらず、消費税の申告を行わなかった。結果、無申告加算税+延滞税で想定外の出費に。
交際費の損金不算入額を別表4に加算し忘れた。会計上は経費として計上しているが、税務上は一部が損金にならない(年間800万円超の部分)。この調整を忘れると過少申告になります。
紙の領収書を整理せずにダンボール箱に放り込み、数年後の税務調査で証拠書類が見つからない。経費として認められず、追徴課税の対象に。
💡 実務のポイント
上記のパターン1〜4はすべて、税理士がレビューしていれば事前に発見できるものです。「全部自分でやる」のではなく、「作成は自分、最終チェックだけ税理士に依頼する」という方法でも、これらのリスクを大幅に減らせます。年1回のスポットレビューであれば、5〜10万円程度で依頼できる事務所も多いです。
「税理士に依頼する=丸投げ」ではありません。自社の状況に合わせて、以下の4パターンから選択できます。
| パターン | 自分がやること | 税理士がやること | 年間費用目安 |
|---|---|---|---|
| ①完全自力 | 記帳→決算書→申告書すべて | なし | 3〜5万円(ソフト代のみ) |
| ②申告書のみ依頼 | 記帳→決算書作成 | 申告書(別表)の作成・提出 | 15〜25万円 |
| ③決算+申告を依頼 | 日常の記帳 | 決算整理→決算書→申告書 | 20〜35万円 |
| ④顧問契約(丸投げ) | 請求書・領収書の提出のみ | 記帳→決算→申告+節税相談 | 34〜80万円 |
法人成りしたばかりの方は「個人事業主の法人成りベストタイミング|売上・利益の判断基準と手続き」も参考になります。また、設立直後の届出については「会社設立の流れと費用を完全ガイド」をご覧ください。
自力で法人決算を進める場合、税務署の無料相談サービスは心強い味方です。
①電話相談:国税局の電話相談センターに電話すると、税務相談官が一般的な税務の質問に回答してくれます。具体的な計算方法や別表の書き方などを教えてもらえます。
②確定申告期の無料相談会:申告期限前には税務署が無料相談会を開催します。法人税の相談にも対応していますが、混雑時は待ち時間が長いのがデメリットです。
③e-Taxの操作サポート:e-Taxヘルプデスクに電話すると、電子申告の操作方法を教えてもらえます。申告書の内容に関する相談は税務署に行う必要があります。
⚠️ 注意:税務署の回答には限界がある
税務署の相談は「一般的な税務の質問」には回答してくれますが、「あなたの会社にとって最適な節税方法」は教えてくれません。税務署の立場は「正しく申告するための支援」であり、「税金を安くするためのアドバイス」ではないからです。節税の提案は税理士にしかできない業務です。
法人決算を自分で行うなら、決算期だけでなく年間を通じて準備が必要です。3月決算の場合の月別スケジュールを示します。
| 時期 | やるべきこと | 自力の場合の注意点 |
|---|---|---|
| 毎月 | 記帳・試算表の確認・証憑書類の整理 | 溜め込まない。毎月30分〜1時間で終わらせる |
| 9月(中間) | 中間申告(前期法人税20万円超の場合) | 予定申告なら前期の半額を納付するだけ |
| 1月〜2月 | 決算対策の検討・決算前の記帳追い込み | 減価償却資産の取得は決算月前に完了させる |
| 3月 | 棚卸・残高確認・3月分の記帳完了 | 決算日当日の現金実査・預金照合を忘れずに |
| 4月前半 | 決算整理仕訳→試算表確定→決算書出力 | 迷ったら税務署に電話相談 |
| 4月後半 | 法人税申告書(別表)の作成 | 申告ソフトを活用。手書きは非推奨 |
| 5月上旬 | 株主総会の書面決議・議事録作成 | 議事録の雛形はネットで入手可能 |
| 5月31日まで | 申告書提出・納税 | ギリギリは危険。5月中旬には完了させる |
📋 この記事のポイント
法人決算を自分でやるかどうかは、「できるか」ではなく「自社にとって合理的か」で判断すべきです。費用を削減できても、本業の時間を大幅に割くことになれば結果的にマイナスです。まずは自社の状況を5つのチェックポイントで診断し、最適なパターンを選択してください。
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