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退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出するかしないかで、源泉徴収される税額が大きく変わります。この記事では、退職金額別の税額差シミュレーション・申告書A〜E欄の書き方・提出し忘れた場合の確定申告手順を解説します。


退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出するかしないかで、源泉徴収される税額が大きく変わります。この記事では、退職金額別の税額差シミュレーション・申告書A〜E欄の書き方・提出し忘れた場合の確定申告手順を解説します。
🏆 結論:申告書を提出すれば退職金の税負担は大幅に軽減される
「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると退職所得控除が適用され、退職金800万円(勤続20年)の場合の所得税は約0円です。提出しなければ一律20.42%が源泉徴収され約163万円が天引きされます。提出し忘れても確定申告で還付を受けられますが、半年〜1年ほど資金が拘束されるため、退職前に必ず提出しましょう。
退職所得の受給に関する申告書とは、退職金(退職手当等)を受け取る人が、退職金の支払者(会社・共済組合など)に対して提出する書類です。所得税法第203条第1項に基づいて提出が求められています。
この申告書を提出することで、退職所得控除(たいしょくしょとくこうじょ:勤続年数に応じて退職金から差し引ける非課税枠)が適用され、正しい税額で源泉徴収が行われます。申告書がなければ、支払者は退職金の全額に対して一律20.42%の源泉徴収を行わなければなりません。
所得税法第203条および所得税法施行規則第77条により、退職手当等の支払を受ける者は、その支払者に対して申告書を提出することが定められています。ただし、提出しなかった場合に罰則はなく、確定申告で精算することが可能です。
💡 実務のポイント
実務では、退職手続きの際に会社の人事部門から申告書を渡されるのが一般的です。しかし中小企業では退職手続きに慣れていないケースもあり、申告書の交付自体が漏れることがあります。退職が決まったら自分から「退職所得の受給に関する申告書はいつ記入しますか?」と確認することをおすすめします。
申告書の提出先は退職金の支払者(勤務先の会社)であり、税務署ではありません。税務署長から特に提出を求められた場合を除き、税務署への提出は不要です。支払者が申告書を保管します。
提出期限は、退職金の支払を受ける日の前日です。退職日当日ではなく「支払日の前日」であることに注意してください。
申告書を提出するかしないかで、源泉徴収される税額は桁違いに変わります。以下の比較表で、退職金額別の税額差を確認してください。
📐 シミュレーション前提条件
| 退職金額 | 提出あり(正規計算) | 提出なし(一律20.42%) | 税額差 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 0円 | 約102.1万円 | 約102.1万円 |
| 800万円 | 0円 | 約163.4万円 | 約163.4万円 |
| 1,000万円 | 約5.1万円 | 約204.2万円 | 約199.1万円 |
| 1,500万円 | 約36.0万円 | 約306.3万円 | 約270.3万円 |
| 2,000万円 | 約77.0万円 | 約408.4万円 | 約331.4万円 |
| 3,000万円 | 約200.5万円 | 約612.6万円 | 約412.1万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
退職金800万円(勤続20年)では、退職所得控除800万円をそのまま差し引けるため課税退職所得は0円となり、所得税はかかりません。一方、申告書を提出しなければ約163万円が源泉徴収されます。たった1枚の書類を出すか出さないかで、手取りが100万円以上変わるのです。
⚠️ 注意
申告書を提出しなかった場合でも、確定申告をすれば過大に徴収された税額は還付されます。ただし、還付までに数ヶ月〜半年程度かかるため、退職直後の生活資金に影響する可能性があります。申告書は必ず退職前に提出しましょう。
退職所得控除額は勤続年数に応じて以下のように計算します。退職金の税額計算の基本については「退職金の税金の計算方法|退職所得控除・分離課税のしくみ」で詳しく解説しています。
| 勤続年数 | 退職所得控除額の計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
| 障害者退職の場合 | 上記の計算額 + 100万円 |
勤続年数は1年未満の端数を切り上げます。例えば勤続年数が15年3ヶ月の場合は16年として計算します。
在職中に障害者になったことが直接の原因で退職した場合、退職所得控除額に100万円が加算されます。この加算を受けるには、申告書のA欄で「障害」に○をつけ、障害者手帳のコピーを添付する必要があります。
実務では、障害者退職の加算を知らずに「一般」で提出してしまうケースがあります。もし提出後に気づいた場合は、勤務先の担当者に申告書の訂正を依頼してください。訂正前に退職金が支払われてしまった場合は、確定申告で精算します。
申告書はA欄からE欄の5つのセクションに分かれています。全員がA欄を記入する必要がありますが、B〜E欄は該当する場合にのみ記入します。
| あなたの状況 | 記入が必要な欄 |
|---|---|
| 初めて退職金を受け取る(他に退職金の受給歴なし) | A欄のみ |
| 同年中に他の支払者からも退職金を受け取った | A欄 + B欄 + E欄 |
| 前年以前4年以内に退職金を受け取ったことがある | A欄 + C欄 + E欄 |
| 前年以前19年以内にiDeCo等の老齢給付金を一時金で受け取った | A欄 + C欄 + E欄 |
| 転籍(グループ会社間異動)で勤続期間を通算している | A欄 + D欄 |
A欄は退職するすべての人が記入する欄です。以下の3項目を記入します。
①「退職手当等の支払いを受けることとなった年月日」には退職日を記入します。②「退職の区分」は通常の退職なら「一般」に、障害退職なら「障害」に○をつけます。退職年の1月1日時点で生活保護を受けている場合は「有」にも○をつけます。③「勤続期間」には入社日と退職日を記入し、勤続年数は1年未満の端数を切り上げて記入します。
特定役員退職手当等(役員として勤続5年以下で支払われる退職金)に該当する場合は、A欄内の「特定役員等勤続期間」の「有」に○をつけて期間を記入します。
同じ年に会社からの退職金と企業年金基金からの一時金を両方受け取るようなケースでは、B欄の記入が必要です。先に受け取った退職金の「退職所得の源泉徴収票」から、勤続期間と退職金額の情報を転記します。
A欄の勤続期間とB欄の勤続期間が重複する場合は、「通算勤続期間」の欄に重複を除いた期間を記入します。支払者は、両方の退職金を合算して退職所得控除額を計算し、正しい源泉徴収額を算出します。
前年以前4年以内(iDeCo等の確定拠出年金は前年以前19年以内)に退職手当等を受け取ったことがある場合は、C欄に記入が必要です。退職所得控除額が調整されるため、過去に受け取った退職金の情報を正確に記入することが重要です。
💡 実務のポイント
C欄の記入を要するケースで最も多いのが、数年前にiDeCoの老齢給付金を一時金で受け取っていた場合です。退職金とiDeCoは別物と思い込んでC欄を空白にしてしまうと、退職所得控除額が二重に適用され、後日税務署から不足税額を指摘されることがあります。iDeCoの一時金受領歴がある方は必ず支給決定通知書を確認してください。
グループ会社間の転籍で前の会社の勤続期間を通算している場合に記入します。具体的には、A欄またはB欄の勤続期間に、前の退職手当等の勤続期間が通算されているときに該当します。
B欄またはC欄に退職手当等の記載がある場合、その支払者の所在地と名称をE欄に記入します。先に受け取った「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」から転記すれば問題ありません。
退職金はさまざまな支払者から受け取る可能性があり、提出先と手続きが異なります。
| 退職金の種類 | 提出先 | 備考 |
|---|---|---|
| 会社からの退職金 | 勤務先の人事・総務部門 | 最も一般的なケース |
| 企業年金基金の一時金 | 企業年金基金 | 勤務先ではないので注意 |
| 中退共の退職金 | 中退共本部 | 請求書の退職所得申告書欄に記入することで代替可 |
| iDeCo一時金 | 運営管理機関(証券会社等) | 老齢給付金の一時金受取時に提出 |
| 小規模企業共済の一時金 | 中小機構 | 共済金請求書に申告書欄あり |
同じ年に複数の退職金を受け取る場合は、受け取る順番を事前に決め、2番目以降の支払者に対しては先に受け取った退職金の「退職所得の源泉徴収票」を添付して申告書を提出します。
💡 実務のポイント
中退共の退職金を請求する際に「退職所得の受給に関する申告書」を別途用意する必要があるかどうかは、中退共が第一支払か第二支払かで異なります。中退共のみから退職金を受給する場合や中退共が第一支払の場合は、請求書の退職所得申告書欄に記入すれば、別途の申告書提出は不要です。
申告書を提出しなかった場合、退職金の全額に20.42%の源泉徴収が行われます。この場合でも、確定申告をすることで正しい税額との差額が還付されます。
確定申告に必要な書類は以下の3点です。
| 書類名 | 入手先 | 記載内容 |
|---|---|---|
| 退職所得の源泉徴収票 | 退職金の支払者 | 退職金額・源泉徴収税額・勤続期間 |
| 確定申告書B(第一表・第二表・第三表) | 国税庁「確定申告書等作成コーナー」 | 退職所得は分離課税のため第三表も使用 |
| マイナンバーカード(またはマイナンバー通知カード+身分証明書) | — | 本人確認用 |
確定申告の基本的な手続きについては「確定申告とは?基本の流れ・必要書類・期限をわかりやすく解説」もご覧ください。
退職金から退職所得控除額を差し引き、1/2をかけた金額が課税退職所得金額です。この金額に所得税の税率を適用して正しい税額を算出します。正規の税額と、すでに源泉徴収された20.42%の税額との差額が還付金になります。
確定申告の期間は退職金を受け取った年の翌年2月16日〜3月15日です。ただし、還付申告(税金を取り戻す申告)であれば、翌年1月1日から5年間いつでも提出できます。
e-Taxで申告する場合は、「確定申告書等作成コーナー」の「退職所得」の欄に源泉徴収票の情報を入力すれば、自動で正しい税額と還付金額が計算されます。
⚠️ 注意
確定申告で退職所得を申告する場合、医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)の適用を受けるために確定申告書を提出するときにも、退職所得の金額を含めて申告する必要があります。これは申告書を提出済みの方も同様です。
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鮎澤パートナーズに相談する申告書を提出すれば原則として確定申告は不要ですが、以下のケースでは確定申告が必要です。
| ケース | 確定申告が必要な理由 |
|---|---|
| 医療費控除やふるさと納税の適用を受ける場合 | 退職所得を含めて申告する必要がある |
| 年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合 | 給与所得の精算が必要(退職所得とは別に) |
| 転職先で前職の源泉徴収票を提出しなかった場合 | 給与所得の合算ができていない |
| 申告書の記載に誤りがあり、徴収不足税額がある場合 | 勤務先での徴収不足額は確定申告では精算不可(勤務先に訂正を依頼) |
年末調整の基本については「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」も参考になります。
申告書の様式は国税庁のホームページからダウンロードできます。令和8年(2026年)1月1日以後に退職する場合は最新様式を使用してください。令和4年1月以降の改正で「短期退職手当等」の欄が追加されているため、旧様式では対応できません。
参考: 国税庁「退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)」
2021年4月1日の国税通則法改正により、税務関係書類への押印義務は廃止されました。最新様式には押印欄自体がありません。
退職金の支払者は、申告書を受け取った場合は退職所得控除を適用して正しい税額を源泉徴収します。申告書を受け取っていない場合は退職金の全額に20.42%を源泉徴収しなければなりません。
退職金にかかる源泉徴収税額の計算には「退職所得の源泉徴収税額の速算表」を使用します。
受け取った申告書は支払者が保管します。税務署への提出は原則不要ですが、税務署長から提出を求められた場合にはすみやかに提出する必要があります。保管期間は7年間です。
申告書の記載事項に誤りがあったために源泉徴収税額が不足していた場合、支払者はすみやかに不足税額を徴収して納付しなければなりません。この徴収不足税額は確定申告では精算できないため、勤務先での対応が必要です。
💡 実務のポイント
年間の退職手続き件数が少ない中小企業の経理担当者にとって、退職所得の源泉徴収計算は慣れない業務です。特に同年に複数の退職金が支給されるケースや、iDeCo一時金との調整が必要なケースでは、税理士に相談して正確な計算を行うことをお勧めします。
退職金の税務で実際に見かけることが多い間違いを5つ整理しました。
| よくある間違い | 正しい取扱い |
|---|---|
| ❌ 申告書を税務署に提出した | ✅ 提出先は退職金の支払者(勤務先)。税務署ではない |
| ❌ 申告書を出したので確定申告は絶対不要 | ✅ 医療費控除等を受ける場合は確定申告が必要。退職所得の金額も含めて申告する |
| ❌ iDeCoの一時金は退職金と無関係 | ✅ iDeCoの一時金も退職所得に該当。前年以前19年以内に受領歴があればC欄に記入が必要 |
| ❌ 出し忘れたら税金は取り戻せない | ✅ 確定申告(還付申告)をすれば5年以内は還付可能 |
| ❌ 障害者退職でも「一般」に○をつけた | ✅ 障害退職の場合は「障害」に○をつけ、100万円の加算を受ける(障害者手帳コピー添付) |
退職金額が同じでも、勤続年数によって退職所得控除額が変わるため、税額も変わります。退職金1,500万円のケースで比較します。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 課税退職所得 | 所得税(復興税込) | 未提出時との差額 |
|---|---|---|---|---|
| 10年 | 400万円 | 550万円 | 約79.5万円 | 約226.8万円 |
| 15年 | 600万円 | 450万円 | 約57.3万円 | 約249.0万円 |
| 20年 | 800万円 | 350万円 | 約36.0万円 | 約270.3万円 |
| 25年 | 1,150万円 | 175万円 | 約8.9万円 | 約297.4万円 |
| 30年 | 1,500万円 | 0円 | 0円 | 約306.3万円 |
※未提出時の源泉徴収額:1,500万円 × 20.42% = 約306.3万円(全パターン共通)。概算値です。正確な計算は税理士にご相談ください。
勤続30年であれば退職所得控除1,500万円で退職金と同額のため課税所得はゼロです。申告書を出さなければ約306万円が源泉徴収され、確定申告で全額還付を受けることになります。所得控除の全体像については「所得控除の全14種類一覧|適用条件・控除額・申告方法を完全解説」をご覧ください。
退職金の受取人本人が死亡した場合、遺族に支払われる死亡退職金は所得税ではなく相続税の課税対象です。死亡後3年以内に支払いが確定した退職手当金等には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。
したがって、死亡退職金の場合は「退職所得の受給に関する申告書」の提出は不要です。
📋 この記事のポイント
退職所得の受給に関する申告書は、退職金の税負担を大幅に軽減するための重要な書類です。提出期限は退職金の支払日の前日ですので、退職が決まったら早めに勤務先に確認し、必ず提出してください。青色申告のメリットについては「青色申告のメリット・デメリット|白色申告との違いを徹底比較」も参考にしてください。
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