公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
103万円・130万円・150万円の壁とは?パート収入と税金の関係
「年収いくらまで働けば損しない?」「103万円の壁が変わったと聞いたけど結局どうなった?」とお悩みのパート・アルバイトの方に向けて、年収の壁を段階別に整理し、手取りシミュレーションで最適な働き方を解説します。


「年収いくらまで働けば損しない?」「103万円の壁が変わったと聞いたけど結局どうなった?」とお悩みのパート・アルバイトの方に向けて、年収の壁を段階別に整理し、手取りシミュレーションで最適な働き方を解説します。
🏆 結論:所得税の壁は103万→123万円に引き上げ。ただし社会保険の壁は別制度
令和7年度税制改正により、所得税がかからない年収ラインは103万円から123万円に引き上げられました(基礎控除58万円+給与所得控除65万円)。しかし、社会保険の壁(106万円・130万円)は税制とは別の制度であり、変更されていません。「税金の壁」と「社会保険の壁」を混同すると損する働き方になるため、両方を理解したうえで判断することが重要です。
年収の壁とは、パートやアルバイトの収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、手取りが減る(または世帯の控除が減る)境目のことです。壁の種類は大きく「税金の壁」と「社会保険の壁」に分かれます。
| 年収の壁 | 制度区分 | 超えるとどうなる? | 改正状況 |
|---|---|---|---|
| 100万円→110万円 | 住民税 | 住民税が発生する | 令和7年分から110万円に引上げ |
| 103万円→123万円 | 所得税・扶養控除 | 本人に所得税が発生。扶養控除の対象外になる | 令和7年分から123万円に引上げ |
| 106万円 | 社会保険 | 勤務先の社保に加入義務(一定要件あり) | 賃金要件は撤廃予定(最低賃金1,016円到達後) |
| 130万円 | 社会保険 | 配偶者の社保の扶養から外れる | 変更なし(一時的収入増は扶養内に留まれる措置あり) |
| 150万円→160万円 | 配偶者特別控除 | 配偶者特別控除の満額ラインを超える | 令和7年分から160万円に引上げ |
| 201万円 | 配偶者特別控除 | 配偶者特別控除がゼロになる | 変更なし |
💡 実務のポイント
実務で最も多い相談は「103万円の壁が123万円になったから、130万円まで働いても大丈夫ですよね?」というものです。これは誤解で、123万円は所得税・扶養控除の壁であり、130万円は社会保険の扶養の壁です。制度が全く違うため、123万円を超えても社保の扶養は外れませんが、130万円を超えると国保・国年の保険料負担が発生します。
103万円の壁とは、パートやアルバイトの年収が103万円を超えると所得税が発生する境目のことです。具体的には、給与収入から給与所得控除と基礎控除を差し引いた金額が課税所得となり、これがゼロ以下なら所得税はかかりません。
| 項目 | 令和6年分まで | 令和7年分 | 令和8年分以降 |
|---|---|---|---|
| 基礎控除 | 48万円 | 58万円 | 62万円(本則) |
| 基礎控除の特例上乗せ(年収200万円以下) | — | +37万円=95万円 | +42万円=104万円 |
| 給与所得控除(最低保障額) | 55万円 | 65万円 | 74万円 |
| 非課税となる年収上限 | 103万円 | 160万円 | 178万円 |
| 扶養控除の収入基準 | 103万円以下 | 123万円以下 | 136万円以下 |
※令和7年分の基礎控除95万円は年収200万円以下の場合。年収に応じて特例上乗せ額が異なります。令和8年度改正は2025年12月閣議決定の税制改正大綱に基づく。
扶養控除の基準は「合計所得金額48万円以下」から「合計所得金額58万円以下」に引き上げられ、給与収入でいうと103万円から123万円になりました。なお、令和8年分以降はさらに136万円に引き上げられる見込みです。
📢 令和7年度・令和8年度税制改正のポイント
令和7年分(2025年分)から基礎控除58万円・給与所得控除65万円に引上げ。年収200万円以下の場合は基礎控除がさらに95万円まで上乗せされ、課税最低限は160万円に。令和8年分(2026年分)以降はさらに引上げられ、課税最低限は178万円になる見込みです。ただし、毎月の源泉徴収への反映は令和9年1月以後の給与等からとなり、令和7年分・令和8年分は年末調整で精算されます。
所得税よりも先に住民税が発生します。住民税の非課税ラインは、給与所得控除+住民税の非課税控除(45万円)で計算されます。令和7年分から給与所得控除が65万円に引き上げられたため、住民税がかからない年収上限は100万円から110万円になりました。
ただし、住民税の非課税基準は自治体によって異なる場合があります(1級地・2級地・3級地で控除額が変わります)。お住まいの自治体のホームページで確認するのが確実です。
106万円の壁は、勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が発生するラインです。ただし、全ての人に適用されるわけではなく、以下の要件を全て満たす場合に加入義務が生じます。
| No. | 要件 | 詳細 |
|---|---|---|
| 1 | 週の所定労働時間が20時間以上 | 雇用契約上の労働時間で判定 |
| 2 | 月額賃金が8.8万円以上 | 年収換算で約106万円(残業代・賞与は除く) |
| 3 | 2ヶ月を超える雇用見込み | 短期契約の更新がある場合も含む |
| 4 | 学生でないこと | 休学中は対象になる場合あり |
| 5 | 従業員数51人以上の企業に勤務 | 2024年10月から51人以上に拡大済み |
🔷 社労士の視点
106万円の壁の賃金要件(月額8.8万円)は、全都道府県の最低賃金が1,016円以上になった時点で撤廃されることが令和7年年金制度改正法で決まっています。撤廃後は、週20時間以上勤務のパートは年収に関係なく社保加入義務が生じる見込みです。企業規模要件も段階的に縮小・撤廃される方向です。
なお、社保に加入すると保険料負担は増えますが、将来の年金額の増加や、傷病手当金・出産手当金などの給付が受けられるようになるメリットもあります。「損」か「得」かは長期的な視点で考える必要があります。
130万円の壁は、配偶者の社会保険(健康保険)の被扶養者から外れるラインです。106万円の壁が適用されない人(従業員50人以下の企業に勤務している場合など)でも、年収が130万円を超えると自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。
130万円の判定は「見込み年収」で行います。過去の収入ではなく、今後1年間の収入見込みが130万円を超えるかどうかで判断します。月収でいうと約10万8,333円が目安です。
なお、繁忙期の残業などで一時的に収入が増えた場合については、勤務先が「一時的な収入増である」ことを証明すれば、引き続き扶養に留まれる措置が設けられています。
⚠️ 注意
130万円を超えた場合、年間の国保+国年の保険料負担は約25万円〜30万円にのぼります。仮に年収が130万円から135万円に5万円増えても、手取りはかえって減るケースがあります。これが「130万円の壁」が最も怖い壁と言われる理由です。働く時間を増やすなら、手取りが回復する年収160万円以上を目指すのが現実的です。
配偶者控除・配偶者特別控除は、パートで働く配偶者(妻)の収入に応じて、世帯主(夫)の税金を減らす制度です。控除を受けるのは「妻」ではなく「夫」側である点に注意してください。
配偶者の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合、年収123万円以下)であれば、世帯主は配偶者控除38万円を受けられます。ただし、世帯主の合計所得金額が900万円を超えると控除額が段階的に減り、1,000万円を超えると控除自体が受けられません。
配偶者の年収が123万円を超えても、201万円未満であれば「配偶者特別控除」として段階的に控除が受けられます。令和7年度改正により、満額(38万円)が受けられる上限が150万円から160万円に引き上げられました。
| 配偶者の年収 | 配偶者(特別)控除額 | 備考 |
|---|---|---|
| 123万円以下 | 38万円 | 配偶者控除 |
| 123万円超〜160万円以下 | 38万円 | 配偶者特別控除(満額) |
| 160万円超〜201万円未満 | 36万円→段階的に減少→0円 | 配偶者特別控除(逓減) |
| 201万円以上 | 0円 | 控除なし |
※世帯主の合計所得金額が900万円以下の場合。900万円超では控除額が減少します。
所得控除の全体像については「所得控除の種類一覧」で詳しく解説しています。
実際に年収がいくらだと手取りはどうなるのか?6パターンで比較します。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 100万円 | 110万円 | 123万円 | 130万円 | 150万円 | 170万円 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 所得税(本人) | 0円 | 0円 | 0円 | 約3,500円 | 0円 | 約5,000円 |
| 住民税(本人) | 0円 | 0円 | 約1.3万円 | 約2万円 | 約3.5万円 | 約5.5万円 |
| 社保料(本人) | 0円 | 約16万円 | 約18万円 | 約19万円 | 約22万円 | 約25万円 |
| 世帯主の控除減少による増税 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 約3.8万円 |
| 世帯の手取り増減(年収100万円を基準) | 基準 | ▲6万円 | +3.7万円 | +8.5万円 | +24.5万円 | +31.7万円 |
※概算値です。社保加入状況・世帯主の年収・自治体により異なります。106万円の壁が適用されるケース(51人以上企業勤務)で計算。正確な計算は税理士・社労士にご相談ください。
注目すべきは110万円の手取りです。106万円の壁を超えて社保に加入すると、保険料が約16万円発生し、年収100万円時点より世帯の手取りが減ってしまいます。この「働き損ゾーン」を避けるには、年収を106万円未満に抑えるか、思い切って130万円以上を目指すかの判断が必要です。
自分にとってどの壁が重要なのかは、勤務先の規模や家族構成によって異なります。以下の表で確認してください。
| あなたの状況 | 影響する壁 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 51人以上企業でパート(週20時間以上) | 106万円→130万円→160万円 | 106万円を超えると社保加入。働くなら130万円以上を目指す |
| 50人以下企業でパート | 123万円→130万円→160万円 | 106万円の壁は不適用。130万円が最大の壁 |
| 学生アルバイト | 123万円(扶養控除)→130万円 | 親の扶養控除(63万円→38万円)への影響が大きい |
| 配偶者(夫の年収900万円以下) | 123万円→130万円→160万円→201万円 | 配偶者特別控除の段階的減少を考慮 |
| 配偶者(夫の年収1,000万円超) | 130万円のみ | 配偶者控除・配偶者特別控除は適用なし |
夫婦の税金を考える際には、配偶者控除だけでなく、関連する複数の制度を総合的に理解する必要があります。
配偶者控除・配偶者特別控除は、世帯主(控除を受ける側)の所得にも制限があります。世帯主の合計所得金額が900万円を超えると控除額が26万円に減り、950万円超で13万円、1,000万円超で控除自体がゼロになります。この点は意外と知られていません。
💡 実務のポイント
現場で意外に多い相談が「夫の年収が高くなって配偶者控除が使えなくなった」というケースです。世帯主の年収が約1,195万円(合計所得金額1,000万円)を超えると配偶者控除・配偶者特別控除は一切受けられません。この場合、妻の年収が103万円でも123万円でも世帯主側の税金は変わらないため、「壁」を気にする必要がなくなります。
令和7年度改正では、19歳以上23歳未満の子(大学生年代)について「特定親族特別控除」が新設されました。従来は子の年収が103万円を超えると扶養控除63万円が一気にゼロになっていましたが、改正後は123万円までは扶養控除の対象となり、123万円超〜150万円程度までは段階的に控除額が減少する仕組みになっています。
高齢の親や障害のある家族を扶養している場合は、一般の扶養控除より大きな控除が受けられます。
| 控除の種類 | 控除額 | 対象者 |
|---|---|---|
| 一般の扶養控除 | 38万円 | 16歳以上の扶養親族 |
| 特定扶養控除 | 63万円 | 19歳以上23歳未満の扶養親族 |
| 老人扶養控除(同居) | 58万円 | 70歳以上の扶養親族(同居) |
| 老人扶養控除(別居) | 48万円 | 70歳以上の扶養親族(別居) |
| 障害者控除(一般) | 27万円 | 障害者に該当する扶養親族 |
| 特別障害者控除(同居) | 75万円 | 特別障害者で同居の扶養親族 |
いずれも扶養親族の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみなら123万円以下)であることが条件です。なお、老人扶養控除と障害者控除は併用可能で、70歳以上の同居の親が特別障害者の場合は58万円+75万円=133万円の控除を受けられます。
確定申告の全体像については「確定申告の基礎知識」をご覧ください。
パート収入とは別に、預貯金の利子や株式の配当金がある方も多いでしょう。これらの所得が扶養判定にどう影響するかも押さえておく必要があります。
預貯金の利子は源泉分離課税(所得税15.315%+住民税5%)であり、合計所得金額には含まれません。つまり、利子がいくらあっても扶養控除の判定には影響しません。一方、上場株式の配当金は、確定申告で総合課税を選択すると合計所得金額に含まれるため、扶養から外れる可能性があります。申告不要を選択すれば合計所得金額に含まれません。
📊 公認会計士の視点
NISA口座での運用益は非課税であり、合計所得金額にも含まれません。パート勤務で扶養の範囲内を気にしている方がNISAを活用しても、扶養判定には一切影響しない点は覚えておくと安心です。
税制上の扶養基準は123万円に引き上げられましたが、企業が支給する「配偶者手当(家族手当)」の基準は企業の就業規則次第です。多くの企業は103万円を基準としたまま改定していない可能性があります。
配偶者手当の平均支給額は月額約1.7万円、年額にして約21万円という調査結果もあります。仮に年収を123万円に増やしたことで配偶者手当が打ち切られると、世帯全体では手取りが減ることになりかねません。年収を引き上げる前に、必ず勤務先の人事部に配偶者手当の支給基準を確認してください。
結局、「いくらまで働くのが得か?」は一概には言えませんが、判断のための基本的な考え方を整理します。
| パターン | 年収の目安 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 扶養内で抑える | 106万円未満 or 130万円未満 | 社保料負担なし。世帯の手取り最大化 | 将来の年金が増えない。収入の上限あり |
| 社保に入って中間で働く | 130万円〜160万円 | 厚生年金で将来の年金UP。傷病手当金等が受けられる | 手取りが一時的に減る「逆転ゾーン」あり |
| 壁を気にせずしっかり稼ぐ | 160万円以上 | 手取りが確実に増加。年金も増える | 勤務時間が大幅に増える |
給与所得の計算方法や給与所得控除の詳しいしくみは「給与所得とは?計算方法・給与所得控除・年収別シミュレーション」で解説しています。年末調整の流れについては「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」もあわせてご確認ください。
📋 この記事のポイント
年収の壁は税制と社会保険の2つの制度が絡むため複雑ですが、「税金の壁」と「社保の壁」を分けて考えれば整理できます。自分の状況に合った働き方を判断するには、世帯全体のシミュレーションが欠かせません。迷ったら税理士・社労士に相談してみてください。
参考: 国税庁「No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか」
AYUSAWA PARTNERS
年収の壁のご相談は鮎澤パートナーズへ
初回相談無料。税理士・社労士が、あなたの世帯に最適な働き方をシミュレーションします。配偶者控除・社会保険の扶養判定もワンストップで対応。
鮎澤パートナーズに相談する