年末調整とは|しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド

年末調整とは|しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の法人決算・会社設立を支援。
📋 税理士監修 🔷 社労士監修 🆕 令和7年度改正完全対応

給与計算担当者・経理担当者・経営者向けに、年末調整の仕組み・対象者・対象給与・必要書類・手続きの流れを完全ガイド。令和7年度税制改正(基礎控除58万円・給与所得控除65万円拡大)を踏まえた、税理士・社労士による実務目線の解説です。

🏆 結論:給与所得者の年間税額を確定させ、源泉徴収との差額を精算する制度

年末調整は、会社が給与所得者の1年間の給与・賞与の総額に対する所得税を確定し、毎月源泉徴収していた所得税との差額を清算する制度です(所得税法第190条)。給与所得者は通常、年末調整だけで所得税の納税が完結し、確定申告は不要です。対象者は年末まで在籍し1年間の給与額が2,000万円以下等の要件を満たす人。給与だけが対象で、副業の事業所得・賞与等は対象外です。令和7年度税制改正で基礎控除が48万→58万円(最大95万円)、給与所得控除最低保障額が55万→65万円に引き上げられ、令和7年12月の年末調整から適用されています。本記事ではしくみ・対象者・対象給与・手続きを体系的に解説します。

年末調整とは|制度の全体像

年末調整は、所得税法第190条以降に規定される制度で、給与所得者の1年間の所得税を確定し、毎月の源泉徴収との差額を精算する手続きです。会社が代行することで、給与所得者の多くは確定申告を行わずに所得税の納税が完結します。

年末調整の根本的な役割

役割 内容
①税額の確定1年間の給与・賞与から所得税の年税額を計算
②差額の清算源泉徴収済み税額との差額を還付または徴収
③控除の適用扶養控除・配偶者控除・各種保険料控除等を反映
④源泉徴収票の交付給与所得者に源泉徴収票を交付(法定調書としても提出)
⑤所得税の納税完結給与だけの所得者は確定申告が原則不要

源泉徴収と年末調整の関係

💡 源泉徴収と年末調整の関係

毎月の源泉徴収: 給与から所得税を概算で控除(源泉徴収税額表に基づく)
年末調整: 1年間の正確な所得税を計算し、毎月の源泉徴収との差額を清算

毎月の源泉徴収はあくまで概算であり、各種控除(扶養・配偶者・保険料等)は完全に反映されません。年末調整で各種控除を反映した正確な年税額を計算するため、多くの場合は還付(税金が戻る)になります。

年末調整の対象者|3つの判定基準

年末調整の対象となる「給与所得者」は、以下の3つの判定基準で決まります(所得税法第190条、所法施行令第319条)。原則は「給与所得者の扶養控除等申告書を会社に提出している人」かつ「年末まで在籍している人」です。

対象者の基本要件

要件 内容
①扶養控除等申告書の提出会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していること
②年末在籍12月31日まで会社に在籍していること(中途退職者の例外あり)
③年間給与2,000万円以下1年間の給与・賞与の総額が2,000万円以下であること

年末調整の対象者と非対象者

対象者(年末調整あり) 非対象者(年末調整なし)
年末まで在籍した正社員年間給与2,000万円超の人
年末まで在籍したパート・アルバイト扶養控除等申告書を提出していない人
12月の給与を受領した契約社員日雇労働者(継続的雇用でない)
役員(代表取締役・取締役等)12月の途中で他社へ転職した人(転職先で実施)
海外赴任から年内に帰国した人災害減免法の適用を受けている人

中途退職者の特例(早期年末調整)

原則として年末まで在籍が年末調整の要件ですが、以下のケースでは早期に年末調整を行う特例があります(所法第191条)。

早期年末調整の対象 事由
死亡退職本人が亡くなり、年内給与が確定したケース
心身障害による退職明らかに本年中に再就職困難な場合
12月支給給与の受領後退職12月の最終給与受領後に退職した人
海外赴任(非居住者へ)日本の居住者から非居住者に変わる出国時
パート・アルバイトの完全退職年内の給与総額が103万円以下で、それ以降の見込みもない場合

⚠️ 中途退職者の年末調整は原則不可

上記の特例以外、中途退職者(11月退職等)は年末調整の対象外となります。退職した会社では年末調整を行わず、源泉徴収票を発行するのみ。退職者は次のパターンで対応します:①転職先で年末調整を受ける(前職の源泉徴収票を提出)、②年内に再就職しない場合は自分で確定申告。実務では「退職時の源泉徴収票がないと転職先で年末調整できない」ため、退職者からの源泉徴収票発行依頼に迅速に対応することが重要です。

年末調整の対象となる給与

年末調整の対象となる「給与」の範囲は、所得税法上の給与所得に該当するもの全てです(所法第28条)。給与・賞与・各種手当が広く対象になりますが、退職金・賞与に対する別途課税分・福利厚生で非課税扱いのものは対象外です。

年末調整の対象となる給与の範囲

対象となる給与 取扱い
基本給全額が課税対象
残業手当・休日出勤手当全額が課税対象
役職手当・職務手当全額が課税対象
家族手当・住宅手当全額が課税対象
通勤手当(月額15万円以下)非課税(対象外)
通勤手当(月額15万円超部分)課税対象
賞与(ボーナス)全額が課税対象
期末手当・決算手当全額が課税対象
現物給与(社宅・社員食堂・無利息貸付等)原則課税(一部例外あり)
出張手当・日当合理的範囲内なら非課税
食事の現物支給(条件付き)本人負担額3,500円超+50%以上負担なら非課税
退職金対象外(別途退職所得として申告)

非課税の通勤手当(月額15万円ルール)

交通機関 非課税限度額
電車・バス等の公共交通機関月額15万円まで(実費)
自家用車(片道2km〜10km未満)月額4,200円まで
自家用車(片道10km〜15km未満)月額7,100円まで
自家用車(片道15km〜25km未満)月額12,900円まで
自家用車(片道25km以上)距離に応じて段階増

💡 実務のポイント

通勤手当の非課税限度額(月額15万円)は、新幹線通勤や遠距離通勤のサラリーマンに重要です。年間180万円までの通勤費用は非課税となり、給与所得から完全に除外できます。逆に、15万円超の通勤手当を支給すると超過分が課税対象となり、所得税・住民税の負担が生じます。実務では「単身赴任手当」「通勤手当」「家族手当」の区別が重要で、税務調査でも論点になりやすい項目です。社内規程で通勤費の支給ルールを明確化することが重要です。

令和7年度税制改正の影響

令和7年度税制改正により、基礎控除と給与所得控除が大幅に引き上げられ、令和7年12月1日施行で「令和7年分以後の所得税」に適用されます。年末調整実務にも大きな影響があるため、給与計算担当者は必ず内容を把握すべきです。

令和7年度改正の3つの主要変更

改正項目 改正前 改正後
基礎控除(合計所得655万円以下)48万円58万円(低・中所得は最大95万円)
給与所得控除(最低保障額)55万円65万円
扶養親族の所得要件48万円以下58万円以下

基礎控除の所得別控除額(令和7年・8年限定)

合計所得金額 給与年収目安 基礎控除額
132万円以下約200万円以下95万円
132万円超336万円以下約475万円以下88万円
336万円超489万円以下約665万円以下68万円
489万円超655万円以下約850万円以下63万円
655万円超2,350万円以下約2,545万円以下58万円
2,350万円超段階的減額48万円〜0円

※令和7年・8年の暫定措置。令和9年以降は合計所得2,350万円以下が一律58万円に統一予定。

📢 「103万円の壁」が「160万円の壁」に

基礎控除48→95万円(最大)と給与所得控除最低保障額55→65万円の引上げにより、給与所得者の課税最低限が103万円から大幅に上昇。低所得者では給与年収約160万円までは所得税ゼロとなります。さらに令和8年度税制改正大綱では給与所得控除最低保障額を69万円に再引上げの方針も示されており、課税最低限は178万円まで上昇する見込みです。これに伴い、パート・アルバイトの就業調整(年収の壁)の基準も大きく変動するため、年末調整実務でも要注意です。

年末調整の必要書類

年末調整では複数の申告書類を会社に提出します。令和2年改正で「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」(基・配・所申告書)が統合され、令和7年から「特定親族特別控除申告書」も追加されました。

年末調整の主な申告書類

申告書 提出時期 主な記載内容
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)年初・採用時扶養親族・配偶者・障害者控除等の情報
給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(基・配・所申告書)年末調整時本人の合計所得・配偶者の所得・調整控除
給与所得者の保険料控除申告書年末調整時生命保険・地震保険・社会保険料等
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書年末調整時(2年目以降)住宅ローン控除の金額・残高
特定親族特別控除申告書(令和7年新設)年末調整時合計所得58万超123万円以下の特定扶養親族の情報

年末調整に必要な添付書類

添付書類 必要な場面
生命保険料控除証明書生命保険料控除を受ける場合
地震保険料控除証明書地震保険料控除を受ける場合
社会保険料控除証明書国民年金保険料等の証明
小規模企業共済等掛金払込証明書iDeCo・小規模企業共済の控除
住宅借入金等特別控除証明書(年末残高証明書等)住宅ローン控除2年目以降
前職の源泉徴収票中途入社者で前職給与がある場合

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年末調整の手続きの流れ|6ステップ

年末調整は11月初旬から1月末までの3か月にわたる長期間の業務です。給与計算担当者は逆算してスケジュールを組む必要があります。

年末調整の6ステップ

ステップ 内容 目安時期
STEP1従業員への申告書配布・記入依頼11月初旬
STEP2申告書・添付書類の回収・チェック11月下旬
STEP3年税額の計算(課税給与・控除・年税額)12月上旬〜中旬
STEP4差額の精算(12月給与で還付/徴収)12月給与支給時
STEP5源泉徴収票の交付・法定調書合計表の作成1月中旬
STEP6税務署・市区町村への提出(法定調書・給与支払報告書)1月31日まで

年末調整の重要期限

提出物 期限 提出先
源泉徴収票(従業員交付用)1月31日まで従業員本人
法定調書合計表+源泉徴収票(税務署用)1月31日まで所轄税務署
給与支払報告書1月31日まで従業員の居住市区町村
所得税・復興特別所得税徴収高計算書1月10日(または7月10日)所轄税務署

年税額の計算ステップ

年末調整での年税額計算は、給与収入から各種控除を差し引いて課税所得を算出し、所得税の税率を適用するという基本的な流れです。実務では給与計算ソフトが自動計算しますが、仕組みは把握しておくべきです。

年税額計算の5ステップ

🧮 年税額の計算フロー

STEP1: 年間給与・賞与の総額を集計
STEP2: 給与所得控除を差し引いて給与所得を算出
STEP3: 各種所得控除を差し引いて課税所得を算出
STEP4: 所得税の税率を適用して所得税額を算出
STEP5: 復興特別所得税(2.1%上乗せ)+税額控除(住宅ローン控除等)を反映

還付/徴収額 = 年税額 − 源泉徴収済みの所得税合計

具体的なシミュレーション(年収500万円・配偶者あり・子1人)

🧮 年税額シミュレーション

前提:給与収入500万円、配偶者(専業主婦)、扶養親族1人(子)、社会保険料60万円、生命保険控除10万円

STEP1: 給与収入 = 500万円
STEP2: 給与所得 = 500万円 − 144万円(給与所得控除) = 356万円
STEP3: 課税所得 = 356万円 − (基礎控除58万 + 配偶者控除38万 + 扶養控除38万 + 社保60万 + 生命保険10万) = 152万円
STEP4: 所得税 = 152万円 × 5% = 7.6万円
STEP5: 復興特別所得税 = 7.6万円 × 2.1% = 約1,600円
年税額 ≒ 約7.8万円

年末調整と確定申告の違い

多くの給与所得者は年末調整で所得税の納税が完結しますが、一部のケースでは別途確定申告が必要となります。両者の違いを理解しておくことが重要です。

年末調整と確定申告の使い分け

項目 年末調整のみで完結 確定申告が必要
給与所得2,000万円超×
副業所得(20万円超)×
2か所以上から給与受領×
医療費控除(10万円超)×
寄附金控除(ふるさと納税6超等)×○(ワンストップ特例除く)
住宅ローン控除1年目×
譲渡所得・不動産所得・配当所得×
通常の給与所得のみ×

年末調整実務でのトラブル事例

年末調整は計算量が膨大で、毎年トラブルが頻発します。実務でよく見る5つのトラブル事例を整理します。

5つのトラブル事例と対策

トラブル 原因・対策
①扶養控除の誤り扶養親族の所得状況確認漏れ→不当な扶養控除→修正申告
②前職給与の合算漏れ中途入社者の前職源泉徴収票未提出→所得税不足→修正申告
③保険料控除証明書の紛失従業員が証明書を紛失→控除適用漏れ→確定申告で取り戻し
④源泉徴収票の未提出退職時の発行依頼忘れ→転職先で年末調整不可
⑤令和7年改正の対応漏れ基礎控除58万円・給与所得控除65万円の未反映→税額計算ミス

よくある質問

アルバイトでも年末調整は必要ですか?
扶養控除等申告書を提出していて年末まで在籍している場合は対象となります。アルバイトの年間給与が103万円以下なら基本的に所得税はゼロですが、月途中の給与で源泉徴収されている場合は年末調整で全額還付されます。実務ではアルバイト全員に扶養控除等申告書を提出してもらい、原則として全員を年末調整の対象とするのが一般的です。
年末調整しないとどうなりますか?
会社の義務違反となります。会社は所得税法第190条以降で年末調整の実施が義務付けられています。実施しないと「源泉所得税の不納付加算税」(本来の税額の10%、自主的に納付した場合は5%)等のペナルティが科されます。さらに従業員側は自分で確定申告する必要が生じ、会社の信頼性が大きく損なわれます。実務では中小企業でも必ず実施する必要があります。
12月の途中で退職した場合、年末調整はどうなりますか?
原則として年末調整の対象外で、源泉徴収票の発行のみ。退職者は次の選択肢があります:①年内に転職した場合は転職先で前職含めて年末調整、②年内に再就職しない場合は自分で確定申告。実務では退職者からの源泉徴収票発行依頼に対し、すぐに対応することが重要です。発行が遅れると転職先での年末調整に影響します。
役員・代表取締役も年末調整の対象ですか?
給与所得者として年末調整の対象です。給与収入2,000万円以下の役員・代表取締役は通常の従業員と同様に年末調整を行います。役員報酬2,000万円超の人や、報酬以外に大きな所得がある人は確定申告が必要となります。実務では「役員も従業員と同じ書類で年末調整する」のが基本ルールです。
海外赴任から戻った場合、年末調整はどうなりますか?
年内に帰国し年末まで日本で勤務した場合は対象となります。日本での給与収入のみが対象で、海外赴任中の収入(現地法人からの給与等)は対象外。実務では「日本居住者・非居住者の境目の年」の年末調整は複雑で、租税条約・外国税額控除との関係も問題になるため、税理士への相談が必須です。
扶養親族が増えたら年末調整で控除を増やせますか?
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で異動を申告すれば反映できます。年中に子が生まれた・離婚した・扶養親族の所得が変わった等の場合、その都度会社に異動申告書を提出します。年末調整時にも改めて確認するため、確定情報を会社に伝えることが重要です。実務では令和7年改正により扶養親族の所得要件が48万円→58万円に引き上げられたため、所得の境界線にある親族の扶養判定に注意が必要です。
住宅ローン控除は年末調整で受けられますか?
2年目以降は年末調整で受けられます。住宅ローン控除1年目は確定申告が必須ですが、2年目以降は「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅ローン残高証明書」を会社に提出すれば年末調整で控除可能です。実務では住宅ローン1年目の従業員に対し、2年目以降の手続きを案内することが重要です。
医療費控除は年末調整で受けられますか?
年末調整では受けられません。医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税ワンストップ特例を除く)・雑損控除は確定申告でのみ受けられる控除です。年末調整で控除できるのは「扶養控除・配偶者控除・基礎控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・障害者控除・寡婦・ひとり親控除・勤労学生控除・住宅ローン控除(2年目以降)」のみとなります。

📋 この記事のポイント

  • 年末調整は給与所得者の年税額を確定し源泉徴収との差額を清算する制度(所得税法190条)
  • 対象者は扶養控除等申告書を提出し年末まで在籍した給与所得者(年収2,000万円以下)
  • 対象給与は基本給・残業手当・賞与・現物給与等で、通勤手当15万円以下・退職金は対象外
  • 令和7年改正で基礎控除48→58万円(最大95万円)、給与所得控除最低保障55→65万円に引上げ
  • 扶養親族の所得要件も48万円→58万円に変更
  • 必要書類は扶養控除等申告書・基・配・所申告書・保険料控除申告書・住宅ローン控除申告書等
  • 11月初旬から1月末まで3か月にわたる長期業務
  • 医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除1年目は年末調整不可・確定申告必須

📋 まとめ

  • 年末調整は給与所得者の1年間の所得税を確定する重要な制度
  • 対象者は扶養控除等申告書を提出し年末まで在籍する給与所得者(年収2,000万円以下)
  • 給与・賞与・各種手当が広く対象、通勤手当15万円以下・退職金は対象外
  • 令和7年度税制改正で基礎控除最大95万円・給与所得控除最低保障65万円に拡大
  • 11月から1月まで3か月にわたる長期業務、計画的なスケジュール管理が重要
  • 医療費控除・寄附金控除・1年目住宅ローン控除は確定申告でのみ受けられる
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