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給与計算担当者・経理担当者・経営者向けに、年末調整の仕組み・対象者・対象給与・必要書類・手続きの流れを完全ガイド。令和7年度税制改正(基礎控除58万円・給与所得控除65万円拡大)を踏まえた、税理士・社労士による実務目線の解説です。
🏆 結論:給与所得者の年間税額を確定させ、源泉徴収との差額を精算する制度
年末調整は、会社が給与所得者の1年間の給与・賞与の総額に対する所得税を確定し、毎月源泉徴収していた所得税との差額を清算する制度です(所得税法第190条)。給与所得者は通常、年末調整だけで所得税の納税が完結し、確定申告は不要です。対象者は年末まで在籍し1年間の給与額が2,000万円以下等の要件を満たす人。給与だけが対象で、副業の事業所得・賞与等は対象外です。令和7年度税制改正で基礎控除が48万→58万円(最大95万円)、給与所得控除最低保障額が55万→65万円に引き上げられ、令和7年12月の年末調整から適用されています。本記事ではしくみ・対象者・対象給与・手続きを体系的に解説します。
年末調整とは|制度の全体像
年末調整は、所得税法第190条以降に規定される制度で、給与所得者の1年間の所得税を確定し、毎月の源泉徴収との差額を精算する手続きです。会社が代行することで、給与所得者の多くは確定申告を行わずに所得税の納税が完結します。
年末調整の根本的な役割
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| ①税額の確定 | 1年間の給与・賞与から所得税の年税額を計算 |
| ②差額の清算 | 源泉徴収済み税額との差額を還付または徴収 |
| ③控除の適用 | 扶養控除・配偶者控除・各種保険料控除等を反映 |
| ④源泉徴収票の交付 | 給与所得者に源泉徴収票を交付(法定調書としても提出) |
| ⑤所得税の納税完結 | 給与だけの所得者は確定申告が原則不要 |
源泉徴収と年末調整の関係
💡 源泉徴収と年末調整の関係
毎月の源泉徴収: 給与から所得税を概算で控除(源泉徴収税額表に基づく)
年末調整: 1年間の正確な所得税を計算し、毎月の源泉徴収との差額を清算
毎月の源泉徴収はあくまで概算であり、各種控除(扶養・配偶者・保険料等)は完全に反映されません。年末調整で各種控除を反映した正確な年税額を計算するため、多くの場合は還付(税金が戻る)になります。
年末調整の対象者|3つの判定基準
年末調整の対象となる「給与所得者」は、以下の3つの判定基準で決まります(所得税法第190条、所法施行令第319条)。原則は「給与所得者の扶養控除等申告書を会社に提出している人」かつ「年末まで在籍している人」です。
対象者の基本要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①扶養控除等申告書の提出 | 会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していること |
| ②年末在籍 | 12月31日まで会社に在籍していること(中途退職者の例外あり) |
| ③年間給与2,000万円以下 | 1年間の給与・賞与の総額が2,000万円以下であること |
年末調整の対象者と非対象者
| 対象者(年末調整あり) | 非対象者(年末調整なし) |
|---|---|
| 年末まで在籍した正社員 | 年間給与2,000万円超の人 |
| 年末まで在籍したパート・アルバイト | 扶養控除等申告書を提出していない人 |
| 12月の給与を受領した契約社員 | 日雇労働者(継続的雇用でない) |
| 役員(代表取締役・取締役等) | 12月の途中で他社へ転職した人(転職先で実施) |
| 海外赴任から年内に帰国した人 | 災害減免法の適用を受けている人 |
中途退職者の特例(早期年末調整)
原則として年末まで在籍が年末調整の要件ですが、以下のケースでは早期に年末調整を行う特例があります(所法第191条)。
| 早期年末調整の対象 | 事由 |
|---|---|
| 死亡退職 | 本人が亡くなり、年内給与が確定したケース |
| 心身障害による退職 | 明らかに本年中に再就職困難な場合 |
| 12月支給給与の受領後退職 | 12月の最終給与受領後に退職した人 |
| 海外赴任(非居住者へ) | 日本の居住者から非居住者に変わる出国時 |
| パート・アルバイトの完全退職 | 年内の給与総額が103万円以下で、それ以降の見込みもない場合 |
⚠️ 中途退職者の年末調整は原則不可
上記の特例以外、中途退職者(11月退職等)は年末調整の対象外となります。退職した会社では年末調整を行わず、源泉徴収票を発行するのみ。退職者は次のパターンで対応します:①転職先で年末調整を受ける(前職の源泉徴収票を提出)、②年内に再就職しない場合は自分で確定申告。実務では「退職時の源泉徴収票がないと転職先で年末調整できない」ため、退職者からの源泉徴収票発行依頼に迅速に対応することが重要です。
年末調整の対象となる給与
年末調整の対象となる「給与」の範囲は、所得税法上の給与所得に該当するもの全てです(所法第28条)。給与・賞与・各種手当が広く対象になりますが、退職金・賞与に対する別途課税分・福利厚生で非課税扱いのものは対象外です。
年末調整の対象となる給与の範囲
| 対象となる給与 | 取扱い |
|---|---|
| 基本給 | 全額が課税対象 |
| 残業手当・休日出勤手当 | 全額が課税対象 |
| 役職手当・職務手当 | 全額が課税対象 |
| 家族手当・住宅手当 | 全額が課税対象 |
| 通勤手当(月額15万円以下) | 非課税(対象外) |
| 通勤手当(月額15万円超部分) | 課税対象 |
| 賞与(ボーナス) | 全額が課税対象 |
| 期末手当・決算手当 | 全額が課税対象 |
| 現物給与(社宅・社員食堂・無利息貸付等) | 原則課税(一部例外あり) |
| 出張手当・日当 | 合理的範囲内なら非課税 |
| 食事の現物支給(条件付き) | 本人負担額3,500円超+50%以上負担なら非課税 |
| 退職金 | 対象外(別途退職所得として申告) |
非課税の通勤手当(月額15万円ルール)
| 交通機関 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 電車・バス等の公共交通機関 | 月額15万円まで(実費) |
| 自家用車(片道2km〜10km未満) | 月額4,200円まで |
| 自家用車(片道10km〜15km未満) | 月額7,100円まで |
| 自家用車(片道15km〜25km未満) | 月額12,900円まで |
| 自家用車(片道25km以上) | 距離に応じて段階増 |
💡 実務のポイント
通勤手当の非課税限度額(月額15万円)は、新幹線通勤や遠距離通勤のサラリーマンに重要です。年間180万円までの通勤費用は非課税となり、給与所得から完全に除外できます。逆に、15万円超の通勤手当を支給すると超過分が課税対象となり、所得税・住民税の負担が生じます。実務では「単身赴任手当」「通勤手当」「家族手当」の区別が重要で、税務調査でも論点になりやすい項目です。社内規程で通勤費の支給ルールを明確化することが重要です。
令和7年度税制改正の影響
令和7年度税制改正により、基礎控除と給与所得控除が大幅に引き上げられ、令和7年12月1日施行で「令和7年分以後の所得税」に適用されます。年末調整実務にも大きな影響があるため、給与計算担当者は必ず内容を把握すべきです。
令和7年度改正の3つの主要変更
| 改正項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 基礎控除(合計所得655万円以下) | 48万円 | 58万円(低・中所得は最大95万円) |
| 給与所得控除(最低保障額) | 55万円 | 65万円 |
| 扶養親族の所得要件 | 48万円以下 | 58万円以下 |
基礎控除の所得別控除額(令和7年・8年限定)
| 合計所得金額 | 給与年収目安 | 基礎控除額 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 約200万円以下 | 95万円 |
| 132万円超336万円以下 | 約475万円以下 | 88万円 |
| 336万円超489万円以下 | 約665万円以下 | 68万円 |
| 489万円超655万円以下 | 約850万円以下 | 63万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 約2,545万円以下 | 58万円 |
| 2,350万円超 | 段階的減額 | 48万円〜0円 |
※令和7年・8年の暫定措置。令和9年以降は合計所得2,350万円以下が一律58万円に統一予定。
📢 「103万円の壁」が「160万円の壁」に
基礎控除48→95万円(最大)と給与所得控除最低保障額55→65万円の引上げにより、給与所得者の課税最低限が103万円から大幅に上昇。低所得者では給与年収約160万円までは所得税ゼロとなります。さらに令和8年度税制改正大綱では給与所得控除最低保障額を69万円に再引上げの方針も示されており、課税最低限は178万円まで上昇する見込みです。これに伴い、パート・アルバイトの就業調整(年収の壁)の基準も大きく変動するため、年末調整実務でも要注意です。
年末調整の必要書類
年末調整では複数の申告書類を会社に提出します。令和2年改正で「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」(基・配・所申告書)が統合され、令和7年から「特定親族特別控除申告書」も追加されました。
年末調整の主な申告書類
| 申告書 | 提出時期 | 主な記載内容 |
|---|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶) | 年初・採用時 | 扶養親族・配偶者・障害者控除等の情報 |
| 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(基・配・所申告書) | 年末調整時 | 本人の合計所得・配偶者の所得・調整控除 |
| 給与所得者の保険料控除申告書 | 年末調整時 | 生命保険・地震保険・社会保険料等 |
| 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | 年末調整時(2年目以降) | 住宅ローン控除の金額・残高 |
| 特定親族特別控除申告書(令和7年新設) | 年末調整時 | 合計所得58万超123万円以下の特定扶養親族の情報 |
年末調整に必要な添付書類
| 添付書類 | 必要な場面 |
|---|---|
| 生命保険料控除証明書 | 生命保険料控除を受ける場合 |
| 地震保険料控除証明書 | 地震保険料控除を受ける場合 |
| 社会保険料控除証明書 | 国民年金保険料等の証明 |
| 小規模企業共済等掛金払込証明書 | iDeCo・小規模企業共済の控除 |
| 住宅借入金等特別控除証明書(年末残高証明書等) | 住宅ローン控除2年目以降 |
| 前職の源泉徴収票 | 中途入社者で前職給与がある場合 |
年末調整の手続きの流れ|6ステップ
年末調整は11月初旬から1月末までの3か月にわたる長期間の業務です。給与計算担当者は逆算してスケジュールを組む必要があります。
年末調整の6ステップ
| ステップ | 内容 | 目安時期 |
|---|---|---|
| STEP1 | 従業員への申告書配布・記入依頼 | 11月初旬 |
| STEP2 | 申告書・添付書類の回収・チェック | 11月下旬 |
| STEP3 | 年税額の計算(課税給与・控除・年税額) | 12月上旬〜中旬 |
| STEP4 | 差額の精算(12月給与で還付/徴収) | 12月給与支給時 |
| STEP5 | 源泉徴収票の交付・法定調書合計表の作成 | 1月中旬 |
| STEP6 | 税務署・市区町村への提出(法定調書・給与支払報告書) | 1月31日まで |
年末調整の重要期限
| 提出物 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票(従業員交付用) | 1月31日まで | 従業員本人 |
| 法定調書合計表+源泉徴収票(税務署用) | 1月31日まで | 所轄税務署 |
| 給与支払報告書 | 1月31日まで | 従業員の居住市区町村 |
| 所得税・復興特別所得税徴収高計算書 | 1月10日(または7月10日) | 所轄税務署 |
年税額の計算ステップ
年末調整での年税額計算は、給与収入から各種控除を差し引いて課税所得を算出し、所得税の税率を適用するという基本的な流れです。実務では給与計算ソフトが自動計算しますが、仕組みは把握しておくべきです。
年税額計算の5ステップ
🧮 年税額の計算フロー
STEP1: 年間給与・賞与の総額を集計
STEP2: 給与所得控除を差し引いて給与所得を算出
STEP3: 各種所得控除を差し引いて課税所得を算出
STEP4: 所得税の税率を適用して所得税額を算出
STEP5: 復興特別所得税(2.1%上乗せ)+税額控除(住宅ローン控除等)を反映
還付/徴収額 = 年税額 − 源泉徴収済みの所得税合計
具体的なシミュレーション(年収500万円・配偶者あり・子1人)
🧮 年税額シミュレーション
前提:給与収入500万円、配偶者(専業主婦)、扶養親族1人(子)、社会保険料60万円、生命保険控除10万円
STEP1: 給与収入 = 500万円
STEP2: 給与所得 = 500万円 − 144万円(給与所得控除) = 356万円
STEP3: 課税所得 = 356万円 − (基礎控除58万 + 配偶者控除38万 + 扶養控除38万 + 社保60万 + 生命保険10万) = 152万円
STEP4: 所得税 = 152万円 × 5% = 7.6万円
STEP5: 復興特別所得税 = 7.6万円 × 2.1% = 約1,600円
年税額 ≒ 約7.8万円
年末調整と確定申告の違い
多くの給与所得者は年末調整で所得税の納税が完結しますが、一部のケースでは別途確定申告が必要となります。両者の違いを理解しておくことが重要です。
年末調整と確定申告の使い分け
| 項目 | 年末調整のみで完結 | 確定申告が必要 |
|---|---|---|
| 給与所得2,000万円超 | × | ○ |
| 副業所得(20万円超) | × | ○ |
| 2か所以上から給与受領 | × | ○ |
| 医療費控除(10万円超) | × | ○ |
| 寄附金控除(ふるさと納税6超等) | × | ○(ワンストップ特例除く) |
| 住宅ローン控除1年目 | × | ○ |
| 譲渡所得・不動産所得・配当所得 | × | ○ |
| 通常の給与所得のみ | ○ | × |
年末調整実務でのトラブル事例
年末調整は計算量が膨大で、毎年トラブルが頻発します。実務でよく見る5つのトラブル事例を整理します。
5つのトラブル事例と対策
| トラブル | 原因・対策 |
|---|---|
| ①扶養控除の誤り | 扶養親族の所得状況確認漏れ→不当な扶養控除→修正申告 |
| ②前職給与の合算漏れ | 中途入社者の前職源泉徴収票未提出→所得税不足→修正申告 |
| ③保険料控除証明書の紛失 | 従業員が証明書を紛失→控除適用漏れ→確定申告で取り戻し |
| ④源泉徴収票の未提出 | 退職時の発行依頼忘れ→転職先で年末調整不可 |
| ⑤令和7年改正の対応漏れ | 基礎控除58万円・給与所得控除65万円の未反映→税額計算ミス |
よくある質問
📋 この記事のポイント
- 年末調整は給与所得者の年税額を確定し源泉徴収との差額を清算する制度(所得税法190条)
- 対象者は扶養控除等申告書を提出し年末まで在籍した給与所得者(年収2,000万円以下)
- 対象給与は基本給・残業手当・賞与・現物給与等で、通勤手当15万円以下・退職金は対象外
- 令和7年改正で基礎控除48→58万円(最大95万円)、給与所得控除最低保障55→65万円に引上げ
- 扶養親族の所得要件も48万円→58万円に変更
- 必要書類は扶養控除等申告書・基・配・所申告書・保険料控除申告書・住宅ローン控除申告書等
- 11月初旬から1月末まで3か月にわたる長期業務
- 医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除1年目は年末調整不可・確定申告必須
📋 まとめ
- 年末調整は給与所得者の1年間の所得税を確定する重要な制度
- 対象者は扶養控除等申告書を提出し年末まで在籍する給与所得者(年収2,000万円以下)
- 給与・賞与・各種手当が広く対象、通勤手当15万円以下・退職金は対象外
- 令和7年度税制改正で基礎控除最大95万円・給与所得控除最低保障65万円に拡大
- 11月から1月まで3か月にわたる長期業務、計画的なスケジュール管理が重要
- 医療費控除・寄附金控除・1年目住宅ローン控除は確定申告でのみ受けられる
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