【社労士×税理士が解説】障害者雇用率制度の段階的引上げ(2026年2.7%)|対象企業拡大と採用・配置の実務

【社労士×税理士が解説】障害者雇用率制度の段階的引上げ(2026年2.7%)|対象企業拡大と採用・配置の実務
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

障害者雇用率制度の段階的引上げ(2026年2.7%)|対象企業拡大と採用・配置の実務

2026年7月から、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%→2.7%に引き上げられ、対象企業も従業員40名以上→37.5名以上に拡大されます。これまで対象外だった中小企業も多くが新たに雇用義務を負うことに。納付金・社名公表のリスクから、合理的配慮、採用ルート、助成金活用まで、社労士と税理士の視点で体系的に整理しました。

🏆 結論:2026年7月改正は「対象企業拡大+雇用率引上げ」のダブル影響

2024年4月の2.3%→2.5%引上げに続き、2026年7月からは2.5%→2.7%となり、対象企業も従業員37.5名以上に拡大されます。100名超の未達成企業には月5万円/不足1名の納付金が徴収され、重大な未達成は社名公表対象に。採用ルートは「ハローワーク専門窓口+障害者就業・生活支援センター+民間エージェント」の3本立てが実務的で、特定求職者雇用開発助成金(最大240万円)等の助成金活用で費用負担を軽減できます。

障害者雇用率制度の基本構造

制度の根拠と目的

障害者雇用率制度は、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)第43条に基づき、事業主に一定割合以上の障害者雇用を義務付ける制度です。目的は、障害者が社会の一員として職業生活を営み、自立した生活を送れるようにすることにあります。

法定雇用率の段階的引上げスケジュール

参考: 厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化」

時期 民間企業 対象企業規模 国・地方公共団体
〜2024年3月2.3%43.5人以上2.6%
2024年4月〜2.5%40人以上2.8%
2026年7月〜2.7%37.5人以上3.0%

📢 2026年7月施行の改正ポイント

2023年1月の労働政策審議会障害者雇用分科会で決定された段階的引上げのうち、2段階目の引上げが2026年7月に実施されます。これまで対象外だった従業員数37.5〜39人の中小企業も新たに雇用義務を負うことになり、全国で約1万社が新規対象となる見込みです。従業員数は常用労働者(週30時間以上は1人、週20時間以上30時間未満は0.5人)で判定します。

常用労働者数の計算方法

法定雇用率の対象となる従業員数は、常用労働者ベースで計算します。

雇用すべき障害者数の計算

🧮 雇用すべき障害者数の計算(2026年7月以降)

【計算式】法定雇用障害者数 = 常用労働者数 × 法定雇用率(2.7%)
※小数点以下切り捨て

【例1】常用労働者40名の会社:40 × 2.7% = 1.08 → 1人
【例2】常用労働者100名の会社:100 × 2.7% = 2.7 → 2人
【例3】常用労働者500名の会社:500 × 2.7% = 13.5 → 13人

対象となる障害者の範囲

3つの障害区分

障害者雇用率制度の対象となる「障害者」には、以下の3区分があります。
区分 証明書類 実雇用率算入
身体障害者身体障害者手帳(1〜6級)1人(重度は2人カウント)
知的障害者療育手帳または判定機関の判定書1人(重度は2人カウント)
精神障害者精神障害者保健福祉手帳(1〜3級)1人(ダブルカウント対象外)

ダブルカウント制度

重度身体障害者・重度知的障害者を1人雇用することで2人分としてカウントできる制度です(身体1〜2級、療育A判定)。フルタイム勤務の場合の算定方法で、短時間(週20〜30時間)の場合は1人としてカウントされます。

短時間労働者の算定拡大(2024年4月〜)

2024年4月から、週10時間以上20時間未満の重度身体・知的・精神障害者も実雇用率の算定対象に加わりました。 短時間勤務を希望する障害者の受入れ枠が広がり、より柔軟な雇用形態での貢献が可能となりました。

除外率制度の廃止に向けた段階的縮小

従来、建設業・鉄道業等の特定業種には、障害者の就業が困難として除外率制度(雇用率対象労働者数を減算)が適用されてきました。2025年4月から除外率が一律10ポイント引き下げられ、2026年以降も段階的に縮小される予定です。
業種 2024年度まで 2025年4月〜
貨物運送業30%20%
建設業20%10%
鉄道業25%15%
船員等による船舶運航等70%/80%60%/70%

未達成企業へのペナルティ

障害者雇用納付金(常用労働者100人超)

⚠️ 納付金の金額と徴収要件

常用労働者100人超の企業で法定雇用率未達成の場合、不足1人につき月額5万円(年間60万円)の納付金が徴収されます(障害者雇用納付金制度)。例えば、常用労働者500名の企業で本来必要な13名を雇用できず10名のみの場合、3名不足×月5万円×12か月 = 年間180万円の納付金が発生します。これは罰金ではなく「企業間の経済的負担の調整」を目的とする制度ですが、実質的な経営コストとなります。

参考: 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度」

常用労働者100人以下の企業の取扱い

常用労働者100人以下の企業は、現時点では納付金の徴収対象外です。ただし、法定雇用率達成義務自体は適用されるため、未達成の場合は次の行政指導の対象となります。

行政指導と社名公表のステップ

  1. 毎年6月1日時点の障害者雇用状況報告(障害者雇用促進法第43条第7項)
  2. 雇用率が著しく低い場合、障害者の雇入れ計画書の作成命令
  3. 計画期間中(2年間)の履行指導
  4. 適正実施勧告
  5. 勧告に従わない場合、企業名の公表(厚生労働省HPで氏名・本社所在地・改善状況等)

調整金・報奨金(達成企業への支給)

法定雇用率を超えて雇用する企業には、以下の支給金があります。

採用・配置の実務

採用ルートの3本立て

実務的な採用ルートは以下の3つです。複数を並行活用することで、自社の業務に合う人材に出会う確率が高まります。
採用ルート 特徴 費用
ハローワーク障害者専門窓口求人掲載無料・助成金連携がスムーズ無料
障害者就業・生活支援センター定着支援・生活面サポートも受けられる無料
障害者雇用専門民間エージェント候補者プールが大きく採用スピードが早い年収の15〜30%

合理的配慮義務(障害者雇用促進法第36条の3)

事業主は、障害者からの申出があった場合、過重な負担とならない範囲で合理的配慮を提供する義務があります。
障害種別 合理的配慮の例
身体(車椅子)バリアフリー化・作業台高さ調整・専用駐車場
視覚音声読上げソフト・点字資料・拡大機器
聴覚筆談・チャットツール・手話通訳・光警報装置
知的作業手順の写真化・シンプルな指示・ジョブコーチ
精神短時間勤務・静かな作業環境・定期面談・通院配慮
発達口頭指示の文書化・ルーティン業務の切り出し・刺激軽減

💡 実務のポイント

合理的配慮は「過重な負担」を理由に拒否できる余地がありますが、企業の経営規模・業務内容に応じた個別判断が必要です。弊所が関与した従業員60名のIT企業では、聴覚障害者の採用時に社内チャットでのコミュニケーション原則化(会議もリアルタイム文字起こしツール導入、月額2万円)を実施。費用対効果で過重負担には該当せず、健常者含めた業務の可視化・効率化にも寄与しました。採用・配置時の合理的配慮は、本人との対話で具体的に決定することが実務の基本です。

AYUSAWA PARTNERS

障害者雇用対応の体制整備をサポート

初回相談無料。社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士がワンストップで、採用計画立案・助成金申請・税務処理までサポートします。

鮎澤パートナーズに相談する

活用できる助成金

特定求職者雇用開発助成金(障害者コース)

ハローワーク等の紹介で障害者を継続雇用する場合、1人あたり最大240万円の助成金が支給されます。
対象者 中小企業の支給額 支給期間
身体・知的障害者(重度以外)120万円(短時間:80万円)2年
重度身体・重度知的・45歳以上・精神障害者240万円(短時間:80万円)3年

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

障害者を原則3か月試行雇用する場合、月額最大8万円(精神・発達障害者は最大12か月)の助成金が支給されます。本採用移行後は特定求職者雇用開発助成金の対象にもなります。

障害者作業施設設置等助成金

障害者の雇用継続のための作業施設・設備の設置改修費用について、助成率2/3・上限450万円の助成が受けられます。バリアフリー改修・障害者対応機器の導入等が対象です。

障害者介助等助成金

手話通訳者の委嘱費用・職場介助者の雇用費用等について、助成率3/4・上限月13万円の助成があります。

税務・会計面での留意点

納付金・調整金の税務処理

📊 税理士の視点

障害者雇用納付金は、法人税法上全額損金算入可能です(法人税基本通達9-5-13)。一方、調整金・報奨金は雑収入として益金算入されます。助成金も原則雑収入扱いで、交付決定通知時点で収益計上します。障害者雇用のための設備改修費用は、一定額以上なら固定資産として減価償却対象となり、助成金で補填された部分は圧縮記帳の選択が可能です。弊所が関与した製造業では、バリアフリー化工事600万円のうち助成金400万円を圧縮記帳処理し、初年度の課税所得を抑える節税効果を実現しました。

障害者雇用にかかる人件費の算定

法定雇用率対象となる障害者の給与は、当然ながら最低賃金以上である必要があります(最低賃金法第4条)。また労働基準法第3条により、障害を理由とする賃金・労働時間の差別的取扱いは禁止されます。ただし、最低賃金の減額特例許可(最低賃金法第7条)を受けることで、著しい低労働能率の場合に例外的な取扱いが可能です。減額特例は都道府県労働局長の許可が必要で、安易に適用すべきではありません。

特例子会社制度の活用

特例子会社とは

特例子会社制度は、親会社が障害者雇用のための子会社を設立することで、子会社の障害者を親会社の法定雇用率算定に含められる制度です(障害者雇用促進法第44条)。

設立の要件

メリットとデメリット

メリット デメリット
障害特性に応じた業務設計が可能子会社設立の初期費用
専任の支援担当者配置で定着率向上継続的な管理コスト
親会社の本業と分離された運営厚労大臣認定の手続き煩雑
グループ内の複数社で共同利用本社人事との分離による一体感低下
特例子会社は、従業員500名超の大企業で採用されることが多く、中小企業では直接雇用のほうが現実的なケースが多いです。

関連する論点・次にすべきこと

障害者雇用率制度は、外国人雇用と並ぶ「多様な人材活用」の柱であり、就業規則整備や助成金活用と密接に関連します。以下の記事も併せてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

2026年7月から新規対象になる会社はどのように準備すればよいですか?
従業員37.5〜39名の企業が新たに対象となります。準備順序は、①自社の常用労働者数の正確な把握(短時間労働者0.5人換算を含む)、②ハローワークの障害者専門窓口への事前相談、③社内の受入れ部署・業務の検討(特例子会社設立は500名超の大企業向け、中小は直接雇用が現実的)、④合理的配慮の可否検討、⑤採用活動の開始(2026年初頭には動き始めることを推奨)——の5ステップです。採用から定着までに半年〜1年を要するため、2026年1〜3月には採用活動を始めることが現実的です。
納付金と罰金はどう違いますか?
障害者雇用納付金は罰金ではなく、企業間の経済的負担の公平を図る調整金です(障害者雇用促進法第53条)。罰金とは性質が異なり、納付しても法的な不利益は課されません。ただし、実質的には企業にとってコスト増となり、納付金を支払い続けるより積極的に雇用するほうが経済合理的なケースが多いです。また、納付金を支払ったから雇用義務を免れるわけではなく、雇入れ計画書の作成命令・社名公表は別途適用される点に注意が必要です。
精神障害者保健福祉手帳を持っているパート社員はカウントできますか?
はい、精神障害者保健福祉手帳保有者は実雇用率の算定対象です。週20時間以上30時間未満のパートは0.5人としてカウント可能。2024年4月からは週10時間以上20時間未満でも0.5人としてカウント可能になりました。本人が手帳の存在を雇用主に申告していない場合はカウントできないため、採用後の適切なヒアリング(プライバシー配慮のもと)が重要です。
障害者雇用の「ダブルカウント」とは何ですか?
重度身体障害者(身体1・2級)・重度知的障害者(療育A判定)をフルタイム(週30時間以上)で雇用する場合、1人の雇用で2人分としてカウントする制度です。短時間(週20〜30時間)の場合は1人としてカウント、週10〜20時間の場合は0.5人です。精神障害者については、ダブルカウントは適用されません。重度障害者の雇用は企業側に負担が大きいため、算定上の優遇が設けられています。
特例子会社と直接雇用、どちらを選ぶべきですか?
企業規模と障害者雇用数で判断します。目安は以下の通り:①従業員500名超で10名以上の障害者雇用が見込まれる場合は特例子会社化の検討価値あり、②従業員100〜500名で数名の障害者雇用なら直接雇用が現実的、③従業員100名以下は原則として直接雇用——です。特例子会社は設立・運営コストが高いため、スケールメリットがないと採算に合いません。中小企業では、障害者雇用専門のジョブコーチを活用した直接雇用が推奨されます。
社名公表された場合、どのような影響がありますか?
厚生労働省のWebサイトで社名・本社所在地・改善状況等が公表され、大きなレピュテーションリスクとなります。具体的な影響として、①取引先からの契約打ち切り・新規取引拒否(CSR重視の大企業は特に)、②採用活動への悪影響(求職者の忌避)、③金融機関の評価低下(ESG投資の観点)、④メディア報道等が想定されます。社名公表に至るまでには複数の行政指導段階があるため、計画的な対応で十分回避可能です。
常用労働者の数え方で、派遣社員・契約社員はどう扱いますか?
派遣社員は派遣元の労働者として扱われるため、派遣先の常用労働者数には含めません。契約社員は、1年以上雇用見込みで週20時間以上勤務なら常用労働者として含めます。ただし、有期契約で1年未満の短期雇用は含めません。自社の常用労働者数を正確に把握するには、毎年6月1日時点の名簿を基準に判定することが重要です。派遣社員の多い会社では、正社員数+契約社員数で判定するため、派遣活用で常用労働者数を実質的に抑える運用も可能です(ただし偽装請負リスクは別途要検討)。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 2026年7月から障害者法定雇用率が2.5%→2.7%、対象企業も37.5名以上に拡大
  • 未達成100名超企業には月5万円/不足1名の障害者雇用納付金
  • 重度障害者のダブルカウント・短時間労働者の0.5人換算で算定
  • 2024年4月から週10〜20時間の重度障害者も0.5人として算定対象
  • 採用ルートはハローワーク・就業支援センター・民間エージェントの3本立て
  • 特定求職者雇用開発助成金は中小企業で最大240万円/人
  • 合理的配慮は本人との対話で具体的に決定、過重負担なら拒否可能
  • 大企業は特例子会社で柔軟な業務設計、中小は直接雇用が現実解
2026年7月の法定雇用率2.7%引上げと対象企業拡大は、全国約1万社の中小企業を新規対象に加える大きな変化です。ハローワーク・就業支援センター・民間エージェントを組み合わせた採用戦略、合理的配慮による職場環境整備、助成金の積極活用——この3本柱で対応することが実務の定石です。鮎澤パートナーズでは、社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士が連携し、採用計画立案から助成金申請、税務処理までワンストップでサポートします。

AYUSAWA PARTNERS

障害者雇用対応は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士がワンストップで、法定雇用率診断・採用計画・助成金申請までサポートします。

鮎澤パートナーズに相談する