【社労士×税理士が解説】障害者雇用の助成金と納付金制度|月5万円の負担回避と支援策

【社労士×税理士が解説】障害者雇用の助成金と納付金制度|月5万円の負担回避と支援策
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

障害者雇用の助成金と納付金制度|月5万円の負担回避と支援策

障害者雇用納付金は法定雇用率未達成の100人超企業に課され、不足1人あたり月5万円(年60万円)。一方、雇用達成企業には調整金月2.9万円、助成金は最大240万円/人が支給されます。申告期限・必要書類・助成金の活用ロジックまで、社労士と税理士の視点で体系的に整理しました。

🏆 結論:納付金を「罰金」と捉えるより「助成金活用で相殺+プラス」を設計する

障害者雇用納付金は不足1人あたり月5万円・年60万円と重い負担ですが、同じ1人を雇用すれば特定求職者雇用開発助成金で最大240万円(2〜3年支給)、トライアル雇用助成金で月8万円、調整金で月2.9万円が受給可能です。納付金を回避するだけでなく、助成金を重複受給することで採用コストを大幅に抑えられます。年度初めの申告申請(4月1日〜5月15日)の期限管理と、JEEDへの電子申告システム活用が実務の要点です。

障害者雇用納付金制度の全体像

制度の目的と根拠法令

障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)第53条に基づき、事業主間の経済的負担の公平化を目的とする制度です。 徴収した納付金を原資として、達成企業への調整金・報奨金および障害者雇用助成金の財源が確保される仕組みです。

4つの制度の金額まとめ

制度 対象企業 金額
納付金(徴収)100人超未達成不足1人につき月5万円
調整金(支給)100人超超過達成超過1人につき月2.9万円
報奨金(支給)100人以下超過1人につき月2.1万円
助成金(支給)全企業最大240万円/人(特定求職者雇用開発助成金)

調整金・報奨金の上限設定

📢 2024年4月改正の上限設定

2024年4月の法改正により、調整金・報奨金に支給対象人数の上限が設定されました:①調整金(月2.9万円):年120人月を超える支給対象人数には、超過分の支給額が月2.3万円に減額、②報奨金(月2.1万円):年420人月を超える支給対象人数には、超過分の支給額が月1.6万円に減額。これは、多額の調整金を特例子会社に集中させる運用に対する見直し措置です。

参考: 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」

納付金の計算方法

基本計算式

🧮 納付金額の計算

【計算式】納付金額 = 不足人数 × 5万円 × 12か月

不足人数 = 法定雇用障害者数 − 実雇用障害者数
法定雇用障害者数 = 常用労働者数 × 法定雇用率(2.5%、2026年7月〜2.7%)

3パターンのシミュレーション

パターン 常用労働者数 法定雇用障害者数 実雇用0名の場合の年額納付金
パターンA150名3名3名×5万円×12か月=180万円
パターンB300名7名7名×5万円×12か月=420万円
パターンC1,000名25名25名×5万円×12か月=1,500万円
※2026年7月以降は法定雇用率2.7%で計算(上表は2.5%ベース)。常用労働者1,000名では、2.7%適用時は法定27名で、未達成時の年額納付金は最大1,620万円。

減額特例(対象企業拡大時)

2024年4月から対象になった従業員数40名超の企業、2026年7月から対象になる37.5名超の企業については、5年間の経過措置として納付金を月4万円に減額する特例があります。初年度の負担を軽減する配慮です。

申告申請の手続き

申告申請期限(重要)

⚠️ 期限を過ぎると支給金は受給不可

申告申請期限を過ぎると、調整金・報奨金・特例調整金・特例報奨金は一切支給されません。納付金申告のみは納税義務があるため遅延申告しても受理されますが、延滞金が発生します。年度初めの4月〜5月は人事担当者の業務が集中する時期のため、3月中に社内で書類準備を完了させる運用が実務的です。

区分 企業規模 令和8年度の期限
納付金申告・調整金申請常用100人超令和8年4月1日〜5月15日
報奨金申請常用100人以下令和8年4月1日〜7月31日
納付金の納付常用100人超令和8年5月15日(申告と同時)
調整金・報奨金の支給達成企業令和8年10月〜12月

申告申請に必要な書類

電子申告申請システム

JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の電子申告申請システムから、オンラインで申告申請が可能です。以下の特徴があります。

納付金の納付方法

納付方法の選択肢

納付方法 対応状況
Pay-easy(ペイジー)ATM・インターネットバンキングで納付可
口座振替事前に口座登録要
金融機関窓口(納付書)都市銀行・信用金庫・一部外資系で可

💡 実務のポイント

地方銀行協会に加盟する地方銀行の本支店窓口における納付書取扱は、令和8年(2026年)3月31日で終了しました。第二地方銀行はすでに令和6年3月で終了しています。地方銀行をメインバンクとする企業は、Pay-easyまたは口座振替への切替えが必要です。電子申告申請システムからのPay-easy納付がもっとも効率的で、納付額も自動計算されます。

分割納付(延納)制度

納付金額が100万円以上の場合、事業主の申請により3期分割で納付することが可能です。

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活用できる助成金の詳細

特定求職者雇用開発助成金(障害者コース)

ハローワーク等の紹介で障害者を継続雇用した場合に支給される主要助成金です。

参考: 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金」

対象者 大企業 中小企業 支給期間
身体・知的障害者(重度以外)50万円120万円2年
身体・知的障害者(短時間)30万円80万円2年
重度身体・重度知的・45歳以上・精神障害者100万円240万円3年
上記短時間50万円80万円3年

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

障害者を原則3か月の試行雇用する場合に支給されます。本採用移行後は特定求職者雇用開発助成金の対象にもなり、両制度を合わせて活用することで最大の効果を得られます。

障害者作業施設設置等助成金

障害者の雇用継続のための作業施設・設備の設置改修費用について、以下の助成が受けられます。 対象となる施設・設備:バリアフリー化工事、スロープ・手すり設置、点字ブロック、エレベーター改修、障害者対応トイレ、車椅子対応机、音声読上げソフト、手話通訳装置、情報保障機器等。

障害者介助等助成金

対象 助成額
職場介助者の配置1人につき月13万円(10年間)
手話通訳担当者の委嘱1回につき6千円(年28万8千円上限)
職場支援員の配置1人につき月4万円(2年間)

障害者能力開発助成金

障害者の能力開発のための研修費用について、助成率3/4・上限1,000万円の助成があります。社内訓練・外部委託訓練のいずれも対象です。

納付金・助成金の税務処理

税務上の取扱いまとめ

区分 税務処理 計上時期
納付金(支払)損金算入(租税公課)支払時または発生主義
調整金(受取)益金算入(雑収入)支給決定通知時
報奨金(受取)益金算入(雑収入)支給決定通知時
特定求職者雇用開発助成金益金算入(雑収入)支給決定通知時
施設設置等助成金益金+圧縮記帳選択可支給決定通知時
消費税納付金・助成金ともに不課税

📊 税理士の視点

施設設置等助成金で固定資産を取得した場合、圧縮記帳の適用を検討すべきです。法人税法第42条(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)により、助成金相当額を固定資産の取得価額から控除できるため、初年度の課税所得を大幅に抑えられます。弊所が関与した製造業では、バリアフリー化工事900万円のうち助成金600万円を圧縮記帳し、初年度の法人税負担を約200万円軽減した実績があります。ただし圧縮記帳は将来の減価償却費が減少するため、長期的な税負担はトータルで平準化される点に留意が必要です。

納付金回避+助成金活用の戦略シナリオ

常用労働者300名企業の3年間シミュレーション

🧮 納付金支払いvs障害者5名雇用の3年間コスト比較

【条件】常用300名、法定雇用率2.7%適用で必要8名、現状2名雇用 → 不足6名

【シナリオA:納付金支払い継続】
3年間の納付金 = 6名 × 5万円 × 12か月 × 3年 = 1,080万円(費用)

【シナリオB:障害者5名追加雇用】
・人件費(年収250万円×5名×3年) = 3,750万円(費用)
・社会保険料会社負担 = 約565万円(費用)
・特定求職者雇用開発助成金 = 120万円×3名+240万円×2名 = 840万円(収入)
・トライアル雇用助成金(初月3か月) = 8万円×3か月×5名 = 120万円(収入)
・残り1名不足分の納付金 = 1名×5万円×36か月 = 180万円(費用)

【差引コスト差】シナリオB−A = 人件費等4,315万 + 残納付金180万 − 助成金960万 − 節減納付金1,080万 = 約2,455万円の追加コスト
ただし、5名の労働力(年商貢献)を考えれば経営的には合理的判断となるケースが多い。

3つの戦略選択肢

戦略 適している企業 主なメリット
① 納付金支払継続採用体制構築が困難な中小短期的な人事負担なし
② 段階的直接雇用従業員100〜500名助成金活用で人件費抑制
③ 特例子会社設立従業員500名超・10名以上雇用予定専用業務設計で定着率最大化

関連する論点・次にすべきこと

障害者雇用の助成金と納付金制度は、法定雇用率の遵守、合理的配慮、採用実務と密接に関連します。以下の記事も併せてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

納付金と調整金を同じ企業が同じ年度に受け取ることはありますか?
ありません。納付金は法定雇用率未達成企業が支払い、調整金は超過達成企業が受け取る制度なので、同一企業が同一年度に両方の対象となることはありません。ただし、年度中に従業員数や障害者雇用数が変動する場合、月ごとの状況で判定されるため、年度後半で達成した場合でも、前半の未達成分については納付金が発生します。年度を通じて達成状態を維持することが、納付金を完全回避する条件です。
特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金は併用できますか?
はい、併用可能です。実務的には、①トライアル雇用助成金で最初の3か月(精神・発達は12か月)の支援を受けつつ、本採用後は②特定求職者雇用開発助成金に切り替えて2〜3年の継続支援を受けます。この併用により、中小企業の場合は最初の1年で月8万円×3か月+月10万円×9か月=合計114万円、2年目以降は月10万円×12か月=120万円等、複数年にわたる手厚い支援が受けられます。
障害者雇用納付金の納付期限を過ぎた場合、どうなりますか?
納付期限(令和8年度は5月15日)を過ぎても納付義務は消滅せず、延滞金が付加されて徴収されます。延滞金の利率は年14.6%(納期限後2か月以内は年7.3%)で、国税の延滞税と同水準です。また、未納が続くと差押え等の強制徴収の対象となる可能性もあります。分割納付(延納)制度を活用することで、資金繰りへの影響を軽減できる場合があります。
常用労働者100人以下の企業ですが、納付金を支払う義務はありますか?
現時点で、常用労働者100人以下の企業は納付金の徴収対象外です。ただし、法定雇用率達成義務自体は適用されるため、著しい未達成は行政指導・企業名公表の対象となります。また、超過達成している場合は報奨金(月2.1万円/人)の支給対象になるため、積極的な障害者雇用のメリットは中小企業にも存在します。将来的には、納付金徴収の対象企業規模が拡大される可能性も議論されています。
特例子会社を設立すると、親会社の調整金・報奨金の支給額はどう変わりますか?
特例子会社の障害者雇用は、親会社の実雇用率に算入されます。したがって、特例子会社で多くの障害者を雇用すれば、親会社としての調整金支給額が増加します。ただし、2024年4月改正により調整金に上限(年120人月まで月2.9万円、超過分は月2.3万円)が設定されたため、特例子会社に多額の調整金が集中する運用への抑制が図られました。特例子会社設立時は、将来の調整金上限を織り込んだ採算計算が重要です。
障害者が途中で退職した場合、特定求職者雇用開発助成金はどうなりますか?
助成金は、原則として実際に雇用していた期間に応じて分割支給されます。途中退職した場合、退職までの期間に対応する分のみが支給対象となります。ただし、会社側の都合による解雇・退職勧奨の場合は、残期間の支給は打ち切られます。また、同じハローワーク紹介者であっても、再雇用者は原則として新規対象外となります。定着支援のための継続的な合理的配慮と職場環境整備が、助成金を最大限活用する鍵です。
助成金の申請を社労士に依頼するメリットはありますか?
はい、主に3つのメリットがあります:①複数助成金の併用設計(特定求職者・トライアル・キャリアアップ等の組み合わせ最適化)、②申請書類の作成・提出代行(行政書類に不慣れな企業でも正確に手続き完了)、③不支給リスクの低減(要件充足の事前確認)。社労士は助成金申請を業として行える国家資格者(社会保険労務士法第2条)であり、費用は通常成功報酬型(受給額の10〜20%)で設定されるため、不支給時の費用負担はありません。障害者雇用は書類が煩雑なため、社労士の活用が費用対効果に優れます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 障害者雇用納付金は法定雇用率未達成100人超企業で不足1人あたり月5万円・年60万円
  • 調整金(月2.9万円)は100人超超過達成、報奨金(月2.1万円)は100人以下超過達成
  • 2024年4月から調整金・報奨金に人月上限設定(特例子会社の調整金集中を抑制)
  • 申告申請期限は4月1日〜5月15日(報奨金は7月31日まで)、期限後は支給不可
  • 特定求職者雇用開発助成金は中小企業で最大240万円/人(3年間)
  • トライアル雇用助成金(月8万円)と特定求職者雇用開発助成金は併用可能
  • 施設設置等助成金は助成率2/3・上限450万円、圧縮記帳で節税効果
  • JEEDの電子申告申請システムで申告から納付までオンライン完結
障害者雇用の納付金制度は「未達成企業からの徴収」と「達成企業への支給」の仕組みで、適切な採用戦略と助成金の重畳活用により、実質的な人件費負担を大きく抑えることができます。納付金をただ支払い続けるより、助成金を活用した直接雇用・特例子会社化のいずれかを選択するほうが、経営的にも社会的にも合理的なケースが多数です。鮎澤パートナーズでは、社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士が連携し、納付金申告から助成金申請、税務処理までワンストップでサポートします。

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