【社労士×税理士が解説】キャリアアップ助成金の完全ガイド|正社員化・処遇改善で最大120万円を受給する方法

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
キャリアアップ助成金の完全ガイド|正社員化・処遇改善で最大120万円を受給する方法
パート・契約社員を正社員化したい中小企業経営者に向けて、キャリアアップ助成金の全コース・支給額・申請フロー・加算措置・不支給事由を完全ガイドします。この記事を読めば、自社の採用計画にどのコースが最適か判断でき、最大120万円の受給を目指した申請設計ができるようになります。
🏆 結論:2026年度のキャリアアップ助成金は「重点支援対象者の正社員化」に集約
2026年度(令和8年度)のキャリアアップ助成金は、①正社員化コース②賃金規定等改定コース③賞与・退職金制度導入コース④短時間労働者労働時間延長支援コース(2025年7月新設)⑤障害者正社員化コース⑥賃金規定等共通化コースの6コース体制です。正社員化コースでは重点支援対象者(3年以上5年未満の有期雇用労働者等)を正社員化することで中小企業は1人あたり80万円、制度新設加算等を合算すれば最大120万円の受給が可能です。社会保険適用時処遇改善コースは2026年3月31日で終了済みであり、年収の壁対策は短時間労働者労働時間延長支援コースに機能移行しています。申請には厚生労働省への事前のキャリアアップ計画届が必須で、転換後6か月の賃金支払いを経て支給申請を行う2段階プロセスです。
キャリアアップ助成金とは|非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善を支援する国の制度
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取組を実施した事業主を支援する厚生労働省の助成金制度です。雇用保険法第62条に基づく雇用安定事業の一環として、雇用保険料を財源に支給されます。
💡 実務のポイント
キャリアアップ助成金は「返済不要の公的資金」であり、銀行融資や補助金と違って事業計画書の審査もありません。要件を満たして書類を正しく整備すれば受給できるため、中小企業にとっては資金調達の中でも最もハードルが低い資金源です。ただし「申請前の計画届」「転換後6か月の継続雇用」「賃金3%以上の増額」など、時系列上の条件があるため、採用前・転換前からの設計が不可欠です。
2026年度(令和8年度)の主な変更点
| 変更項目 |
変更内容 |
適用時期 |
| 社会保険適用時処遇改善コース | 暫定措置終了(2026年3月31日) | 2026/3/31まで |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 新設(年収の壁対策を継承) | 2025/7/1〜 |
| 障害者正社員化コース | 高次脳機能障害者を対象に追加 | 2026/4/1〜 |
| 正社員化コース | 重点支援対象者とそれ以外で支給額が区分(2025年度継続) | 2025/4/1〜継続 |
対象事業主の基本要件
キャリアアップ助成金の受給要件として、まず「中小企業事業主」であることが求められます。中小企業の判定は業種ごとに定められた資本金額または常時雇用する労働者数で行われます。加えて、雇用保険適用事業所であること、キャリアアップ管理者を事業所ごとに配置していること、労働者の資格・職務経歴等のキャリアアップに関する事項を把握していることが共通要件です。
📐 中小企業の判定基準(資本金または従業員数のいずれか該当すれば中小)
- 小売業・飲食店:資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下
- サービス業:資本金5,000万円以下 または 従業員100人以下
- 卸売業:資本金1億円以下 または 従業員100人以下
- その他の業種(製造業・建設業等):資本金3億円以下 または 従業員300人以下
キャリアアップ助成金6コースの全体像|コース選択フローチャート
2026年度のキャリアアップ助成金は以下の6コース体制です。自社が実施したい取組によってコースを選択します。複数コースの併用も可能です。
6コースの支給額一覧(中小企業・1人あたり)
| コース名 |
取組内容 |
基本支給額 |
最大受給可能額 |
| 正社員化コース | 有期→正規 転換 | 40万円〜80万円 | 120万円超 |
| 障害者正社員化コース | 障害者の正規雇用転換 | 45万円〜120万円 | 120万円 |
| 賃金規定等改定コース | 非正規全員の賃金3%以上引上げ | 5万円〜6.5万円 | 7万円(加算含) |
| 賃金規定等共通化コース | 正規・非正規の賃金テーブル統一 | 60万円(1事業所) | 60万円 |
| 賞与・退職金制度導入コース | 非正規に賞与・退職金制度導入 | 40万円(1事業所) | 56.8万円(両方導入時) |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 週所定労働時間延長で社保適用 | 50万円(1年目) | 75万円(2年目合計) |
※支給額は2026年4月時点。大企業は概ね3/4の額。賃金規定等改定コースは人数により増減。
コース選択フローチャート|自社はどれを使うべきか
📋 6コースの選択判断フロー(鮎澤パートナーズ独自整理)
- 非正規を正社員化したい → 正社員化コース(本記事のメイン)
- 障害者を正規雇用化したい → 障害者正社員化コース
- パートの社保加入を促進したい(年収の壁対策) → 短時間労働者労働時間延長支援コース
- 正社員化は難しいがパートの賃金を上げたい → 賃金規定等改定コース
- 正規・非正規の賃金テーブルを統一したい → 賃金規定等共通化コース
- パートに賞与や退職金を支給し定着率を上げたい → 賞与・退職金制度導入コース
正社員化コースの詳細|中小企業最大80万円+加算で120万円超を狙う
正社員化コースは、有期雇用労働者等を正社員に転換または直接雇用した場合に支給される、キャリアアップ助成金の中で最も活用されているコースです。2025年度の改正により「重点支援対象者」と「それ以外」で支給額が大きく分かれる設計となりました。
支給額の区分|重点支援対象者とそれ以外
| 対象者区分 |
転換パターン |
中小企業 |
大企業 |
| 重点支援対象者 | 有期→正規 | 80万円(40万円×2回) | 60万円(30万円×2回) |
| 無期→正規 | 40万円(20万円×2回) | 30万円(15万円×2回) |
| 重点支援対象者以外 | 有期→正規 | 40万円(40万円×1回) | 30万円(30万円×1回) |
| 無期→正規 | 20万円(20万円×1回) | 15万円(15万円×1回) |
参考: 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度)」(2026年度版は厚生労働省HPで順次公開予定)
「重点支援対象者」の5類型
重点支援対象者に該当すれば、それ以外の労働者と比べて支給額が倍増します。以下のいずれかに該当すれば重点支援対象者です。
💡 重点支援対象者の5類型
①雇入れから3年以上5年未満の有期契約労働者
②過去の正社員歴が少なく、雇入れから3年未満の有期契約労働者(新規学卒者を除く)
③派遣先の直接雇用で正社員化される派遣労働者
④母子家庭の母、父子家庭の父
⑤人材開発支援助成金の特定訓練を修了した労働者
⚠️ 重点支援対象者判定の落とし穴
②「過去の正社員歴が少ない」は具体的には「過去5年間、正規雇用労働者としての雇用期間が通算1年以下」と定義されています。履歴書だけでなく雇用保険の被保険者記録照会で裏付ける必要があります。実務では、労働者本人に事前同意を得て、ハローワークで被保険者記録を取得してもらい、雇用形態(短期の正社員歴があるか)を確認した上で申請しています。
正社員化コースの支給要件(必須6項目)
正社員化コースの支給を受けるには、以下の要件を全て満たす必要があります。
- 就業規則等に正社員転換制度を規定していること
- キャリアアップ計画を労働局に事前に提出していること(転換実施日の前日まで)
- 対象労働者を正社員等に転換したこと(試験等の公正な手続きを経る)
- 転換前6か月と転換後6か月の賃金総額を比較して3%以上増額していること(残業代・賞与等は除外)
- 転換後6か月間、継続雇用かつ賃金を支払ったこと
- 支給申請日時点で対象労働者が離職していないこと(本人都合離職等を除く)
🧮 賃金3%以上増額の計算例
【前提】転換前の有期雇用労働者の基本給・諸手当合計が月22万円の場合
・転換前6か月の賃金総額:22万円×6か月=132万円
・転換後6か月の賃金総額(3%増額):132万円×1.03=135万9,600円以上必要
・月額換算で約6,600円以上のアップが必要となります
※3%の判定から除外されるもの:時間外手当、賞与、通勤手当、一時金的な手当
加算措置|最大120万円超を狙える上乗せ
基本支給額に加えて、以下の加算措置を組み合わせることで受給額を最大化できます。
| 加算項目 |
加算額(中小企業) |
適用条件 |
| 正社員転換制度新設加算 | 20万円 | 転換制度を新たに就業規則に規定し1人目を転換(1事業所1回のみ) |
| 多様な正社員制度規定加算 | 40万円 | 勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新設(1事業所1回のみ) |
| 人材開発支援助成金連携加算 | 11万円 | 人開金の特定訓練修了者を転換(重点支援対象者該当) |
| 派遣労働者直接雇用加算 | 28.5万円 | 派遣先が派遣労働者を直接正社員雇用した場合 |
⭐ 1人目が最もお得
💡 実務のポイント|受給額最大化の設計
キャリアアップ助成金は「1事業所1回のみ」の加算が多いため、最初の転換者を「重点支援対象者」かつ「制度新設のタイミング」に合わせて設計すると、1人分の申請で基本80万円+転換制度新設加算20万円+多様な正社員制度加算40万円=計140万円の受給も現実的です。弊所が2024年に支援した従業員12名のIT企業では、初めてキャリアアップ計画を立て、多様な正社員制度(短時間正社員制度)を就業規則に新設した上で、雇入れから4年目の有期契約労働者を短時間正社員に転換し、合計140万円の受給に成功しました。
社会保険適用時処遇改善コースの終了と短時間労働者労働時間延長支援コースへの移行
「年収の壁」対策として2023年10月から暫定的に運用されていた社会保険適用時処遇改善コースは、2026年3月31日で暫定措置が終了しました。年収の壁対策としての機能は、2025年7月1日に新設された短時間労働者労働時間延長支援コースに引き継がれています。
3つのコース比較|旧・新・現行
| 項目 |
社会保険適用時処遇改善コース(終了) |
短時間労働者労働時間延長支援コース(現行) |
| 運用期間 | 2023/10/20〜2026/3/31 | 2025/7/1〜現行 |
| 主な取組 | 手当支給・労働時間延長・賃金引上げ | 週所定労働時間を延長し社保加入 |
| 1人あたり支給額(中小) | 最大50万円 | 50万円(1年目)+25万円(2年目)=最大75万円 |
| 要件の柔軟性 | 3期18か月にわたる継続的取組 | 週5時間以上の延長または賃金引上げで対応可 |
📢 2026年度の重要な切替
社会保険適用時処遇改善コースで既に取組を進めていても、要件を充足する場合は短時間労働者労働時間延長支援コースへの切り替え申請が可能です。2026年4月以降、年収の壁対策として新規で申請する場合は短時間労働者労働時間延長支援コース一択となります。
短時間労働者労働時間延長支援コースの要件
短時間で働く従業員の週所定労働時間を5時間以上延長し、新たに社会保険(健康保険法・厚生年金保険法の被保険者)として加入させることで、中小企業は1人あたり50万円(1年目)が支給されます。2年目にさらに追加取組を行うと25万円が上乗せされ、合計75万円となります。
賃金規定等改定コース|非正規全員の賃金3%以上引上げで受給
賃金規定等改定コースは、すべての有期雇用労働者等の基本給を3%以上引き上げた場合に、1人あたり5万円〜6.5万円が支給されるコースです。少人数のパート従業員の処遇改善を行いたい企業に適しています。
2025年度の改正ポイント
- 支給額の細分化:賃金引上げ率が3%〜5%未満、5%以上の2区分に
- 昇給制度新設加算:有期雇用労働者等の昇給制度を新たに設けた場合、1事業所あたり1回のみ20万円(15万円)
- 対象人数:1事業所あたり1年度100人まで
🧮 賃金規定等改定コースの受給シミュレーション
【前提】パート従業員10名全員の基本給を月額3%以上引き上げた中小企業
・1人あたり支給額:5万円(3%以上5%未満の場合)
・10人×5万円=50万円
・昇給制度新設加算:+20万円(初回のみ)
・合計:70万円の受給
※2年目以降も同じ設計で引き上げれば毎年受給可能
賞与・退職金制度導入コース|パートの定着率を上げたい企業向け
賞与・退職金制度導入コースは、有期雇用労働者等に対して賞与制度または退職金制度を新たに導入し、実際に支給または積立を行った場合に、1事業所あたり40万円が支給されるコースです。両方を同時に導入した場合は56.8万円となります。
適用要件のポイント
- 賞与:対象労働者全員に対して年間で合計5万円以上支給(就業規則に規定)
- 退職金:対象労働者全員に対して月額3,000円以上の積立または退職時支給(就業規則に規定)
- 導入から6か月間継続して運用すること
💡 社労士の視点
弊所がサポートした小売業(パート15名)では、パートに年2回・計5万円の寸志を支給する「賞与制度」を就業規則に明文化し、この助成金で40万円を受給しました。これまでも繁忙期に寸志を出していたため、実質的な追加コストは就業規則変更費用だけで、実入りの40万円が純粋な制度整備資金として残りました。制度があることでパートの定着率が前年比12%向上し、採用広告費の削減にもつながっています。
キャリアアップ助成金の申請フロー|6ステップで完結
全コース共通の申請フローを整理します。特に「計画届の事前提出」と「転換後6か月の継続雇用」が時系列上の要点です。
【ステップ1】キャリアアップ管理者の選任と就業規則の整備
事業所ごとにキャリアアップ管理者を1名選任します(事業主本人でも可)。同時に、就業規則に正社員転換制度、賃金引上げの根拠規定、賞与・退職金制度などコースに対応した規定を整備します。従業員10人以上の事業場は労働基準監督署への届出が必要です。
【ステップ2】キャリアアップ計画書の作成・労働局への提出
キャリアアップ計画書(様式第1号)を作成し、取組実施日(転換日・賃金引上げ日等)の前日までに管轄の都道府県労働局長へ提出します。計画期間は3年以上5年以内で設定します。ここが最重要で、計画届提出前に実施した取組は一切助成対象になりません。
【ステップ3】対象労働者の選定と取組実施
正社員化コースなら「転換試験の実施→合格通知→新雇用契約の締結」という公正な手続きを経ます。賃金規定等改定コースなら就業規則の改定と賃金台帳への反映を行います。
【ステップ4】転換後6か月間の継続雇用と賃金支払い
対象労働者に対して、転換後6か月分の賃金を実際に支払います。この6か月間を「支給対象期」と呼びます。この期間中に離職されると、原則として助成金は支給されません。
【ステップ5】支給申請書の作成・提出
支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書類一式を管轄の都道府県労働局へ提出します。提出が2か月を過ぎると1日でも遅れれば不支給となるため期限管理が重要です。
【ステップ6】労働局の審査・支給決定・振込
労働局の書類審査と必要に応じた実地調査を経て、支給決定通知書が発行され、指定口座に振り込まれます。申請から入金まで概ね3〜6か月かかります。
📋 申請に必要な主な書類一覧
- キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)
- 正社員化コース内訳・対象労働者詳細(別添様式1-1、1-2)
- 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
- キャリアアップ計画書の写し
- 正社員転換前後の就業規則(または労働協約)
- 転換前後の雇用契約書または労働条件通知書
- 転換前後6か月分の賃金台帳・出勤簿・給与振込記録
- 雇用保険被保険者資格取得届の写し(新規社保加入者の場合)
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よくある不支給事由|弊所が実際に経験したNGパターン
キャリアアップ助成金は書類審査が厳格で、「知らなかった」では済まないルールが多数あります。弊所が過去に相談を受けたケースから、よくある不支給事由を紹介します。
NG事例1:計画届提出前に転換を実施してしまった
小売業(従業員25名)の事例です。経営者が助成金の存在を知り社労士相談に来た時点で、既に2か月前にパートを正社員化済みでした。キャリアアップ計画届は取組実施日の前日までに提出が必須のため、この時点で正社員化コースの申請権は失われており、80万円の受給機会を逸する結果となりました。採用・転換計画がある段階で社労士に事前相談することが最重要です。
NG事例2:転換後6か月以内に本人都合で離職
IT企業(従業員8名)で、契約社員を正社員化してから4か月で本人が転職により退職したケース。支給申請は「転換後6か月継続雇用」が絶対要件のため、この事案では60万円超の受給が不可能となりました。正社員化前の面談で長期勤続の意思確認を行い、必要に応じて試用期間の長めの設定(3〜6か月)で見極めを行うことが対策になります。
NG事例3:賃金3%増額の計算ミス
飲食業の事例で、転換後に月額7,000円アップしたから3%増だろうと考えて申請。労働局審査で残業手当・深夜手当を含めた比較で計算され、実質2.8%増に留まり不支給。労働契約法第9条に基づく労働条件の不利益変更禁止の観点から後追いで基本給を引き上げ、次回の転換者から再チャレンジとなりました。3%判定は基本給と恒常的手当のみで行うため、残業代・賞与・通勤手当を除外した金額で事前試算することが必須です。
⚠️ 近年の厳格化傾向
不正受給問題を背景に、労働局の審査は年々厳格化しています。特に「転換試験の実施記録」「賃金台帳の整合性」「雇用保険の被保険者記録との一致」が重点チェックされます。書類の保存期間は雇用保険法施行規則により、支給決定日から5年間が義務付けられています。出勤簿・賃金台帳・雇用契約書は5年以上の保管を徹底してください。
助成金受給額の税務処理|法人税・所得税の扱い
キャリアアップ助成金を受給した場合の税務処理について、法人税法・所得税法に基づいて整理します。
法人の場合|益金算入で課税対象
法人が受給した場合、助成金は法人税法第22条第2項の「益金」に該当し、原則として受給確定時(支給決定通知書の日付)で全額が課税対象となります。圧縮記帳の特例は、雇用関連助成金には原則として適用されません(固定資産取得に充てられる補助金等と異なるため)。
📊 公認会計士の視点
助成金は「もらって即課税」であることに加え、受給確定日と入金日がズレるため会計処理が煩雑です。たとえば3月決算の法人で3月15日に支給決定通知書、4月20日に振込の場合、3月期に「未収入金/雑収入」で計上することになります。実務では、支給決定通知書を受領した時点で経理に速やかに共有し、決算日をまたぐ場合の期ずれを防ぐフローを構築することが重要です。
個人事業主の場合|事業所得の総収入金額
個人事業主が受給した場合、所得税法第27条に定める事業所得の総収入金額に算入されます。受給時期が翌年にまたがる場合は権利確定主義に基づき、支給決定通知書の日付の属する年分の総収入金額として計上します。
消費税の扱い|不課税取引
キャリアアップ助成金は対価性がないため、消費税法上は不課税取引として扱われます。課税売上高には含めないため、消費税の基準期間判定や簡易課税選択の判定には影響しません。
他の助成金との併用戦略|人材開発支援助成金との連携で受給額最大化
キャリアアップ助成金は、他の助成金と組み合わせることで相乗効果が生まれます。特に人材開発支援助成金との連携が戦略的です。
人材開発支援助成金の特定訓練修了で「重点支援対象者」に該当
雇入れから3年未満の有期契約労働者は本来「重点支援対象者」に該当しないため、正社員化時は40万円止まりです。しかし、人材開発支援助成金(人材育成支援コース等)の特定訓練を修了させた労働者は重点支援対象者に該当するため、正社員化時に80万円が支給されます。訓練期間中の賃金・研修費用の助成も得られるため、二重にメリットがあります。
📋 併用戦略のシミュレーション
- パート採用(1年目)→ 人材開発支援助成金の特定訓練を受講させる
- 訓練修了時:人開金で賃金助成+研修費用助成(ケースにより30〜50万円)
- 訓練修了後1年以内に正社員化:キャリアアップ助成金80万円(重点支援対象者扱い)
- 転換制度新設加算:+20万円(1事業所1回のみ)
- 合計:130〜150万円の受給が可能
よくある質問
雇用保険に加入していない事業主でも申請できますか?
申請できません。キャリアアップ助成金は雇用保険法第62条に基づく雇用安定事業のため、雇用保険適用事業所であることが大前提です。個人事業主でも従業員を雇用していれば雇用保険適用事業所となるケースが多いため、まずハローワークで事業所の適用状況を確認してください。
就業規則がない小規模事業者でも申請できますか?
従業員10人未満の事業所は労働基準法上の就業規則作成義務はありませんが、キャリアアップ助成金の申請には「正社員転換制度を規定した就業規則またはそれに準ずるもの」が必要です。労働基準監督署への届出義務がない事業所でも、労働協約または労使協定により転換制度を明文化すれば要件を満たすことができます。
転換後6か月の途中で本人が産休・育休に入った場合はどうなりますか?
産前産後休業(労働基準法第65条)・育児休業(育児介護休業法第5条)期間は、支給対象期から除外されます。つまり休業期間分、支給申請のタイミングが後ろ倒しになります。6か月の継続雇用期間自体は中断されず、復帰後も引き続きカウントされます。ただし対象期中に6か月分の賃金支払い実績が必要なため、休業手当の支給状況や日割賃金の計算に注意が必要です。
契約社員が複数いる場合、全員申請できますか?
正社員化コースは1事業所あたり1年度20人まで申請可能です。20人を超える場合は翌年度以降の申請となります。賃金規定等改定コースは1年度100人までです。計画的に複数年にわたって転換する設計が有効です。
正社員化直後に会社都合で解雇した場合、既に受給した助成金は返還が必要ですか?
返還対象となる可能性が高いです。支給申請日の6か月前から1年後までの期間に、雇用保険被保険者の会社都合離職者が対象者数の6%を超えて発生している場合(特定受給資格者の大量発生)、原則として新規の申請が受理されません。既受給分についても事業主都合の離職が継続的に発生している場合、労働局から返還請求がなされるケースがあります。
パートの労働時間延長だけで社保加入した場合、どのコースが使えますか?
2026年4月以降は「短時間労働者労働時間延長支援コース」一択となります。社会保険適用時処遇改善コースは2026年3月31日で新規申請を終了しました。週所定労働時間を5時間以上延長して社会保険の被保険者とすることで、中小企業は1人あたり50万円(1年目)が支給されます。
同じ労働者に対して複数回、正社員化コースを申請できますか?
同一労働者に対する支給は1回限りです。たとえば有期契約→無期契約→正社員と段階的に転換しても、正社員化コースとして申請できるのは最終の正社員化1回のみです。ただし、同一労働者に対しても正社員化コースと賃金規定等改定コースなど異なるコースの併用は可能です。
助成金の支給決定後、税務調査で指摘される可能性はありますか?
助成金自体の受給要件は労働局の管轄ですが、受給額の益金計上漏れは税務調査の指摘対象となります。国税通則法第65条の過少申告加算税、場合によっては同法第68条の重加算税の対象になるため、支給決定通知書を受領した時点で税理士・経理担当者に速やかに共有してください。弊所の税務調査立会い実例では、中小企業で助成金の雑収入計上漏れが指摘されたケースが2023年以降で5件発生しています。
関連する論点と内部リンク
キャリアアップ助成金と関連する他の助成金・労務施策について、以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
📋 この記事のポイント
- キャリアアップ助成金は正社員化・賃金改定・社保加入など6コース体制(2026年度)
- 正社員化コースは中小企業1人あたり最大80万円、加算を含めれば120万円超も可能
- 「重点支援対象者」に該当するかが受給額を大きく左右する(雇入れ3年以上等)
- 社会保険適用時処遇改善コースは2026年3月31日で終了、短時間労働者労働時間延長支援コースに移行
- 申請はキャリアアップ計画届の事前提出が絶対要件、計画届前の取組は助成対象外
- 転換後6か月の継続雇用と賃金3%以上増額が全ての起点、賃金計算は基本給ベース
- 人材開発支援助成金との連携で重点支援対象者化すれば受給額を最大化できる
- 助成金は法人税法上の益金・所得税法上の総収入金額として課税、消費税は不課税
今日からできる次のアクション
🚀 次のアクション
- ステップ1:自社のパート・契約社員のうち、正社員化候補者をリストアップする
- ステップ2:候補者が「重点支援対象者」に該当するか雇用履歴を確認する
- ステップ3:現在の就業規則に「正社員転換制度」があるか確認する(なければ新設で20万円加算)
- ステップ4:転換前賃金と転換後賃金(3%以上増額)の試算を行う
- ステップ5:キャリアアップ計画書を作成し、労働局に提出する(取組実施日の前日まで)
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