セルフメディケーション税制とは?医療費控除との違いと確定申告のやり方

セルフメディケーション税制とは?医療費控除との違いと確定申告のやり方
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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「ドラッグストアの薬代で税金が戻るって本当?」「医療費控除とどちらを選べばいい?」とお悩みの方に向けて、セルフメディケーション税制の対象医薬品・適用条件・医療費控除との損得シミュレーション・確定申告の手順を税理士が解説します。

🏆 結論:薬代が年間1.2万円超なら使える「もう一つの医療費控除」

セルフメディケーション税制とは、健康診断等を受けている人が対象医薬品(スイッチOTC医薬品等)を年間1.2万円超購入した場合に、超えた部分(上限8.8万円)を所得から差し引ける制度です。通常の医療費控除(10万円超が条件)に届かない方でも使える点が最大のメリットです。ただし、医療費控除とは選択適用のため、両方を同時に使うことはできません。

セルフメディケーション税制とは?しくみと計算式

セルフメディケーション税制とは、2017年に始まった医療費控除の特例で、対象となるOTC医薬品(市販薬)の購入費が年間1万2,000円を超えた場合に、その超えた金額を所得から差し引ける所得控除です。控除額の上限は8万8,000円で、確定申告が必要です。

📐 セルフメディケーション税制の計算式

控除額 = 対象医薬品の年間購入額 − 1万2,000円
※控除額の上限は8万8,000円(購入額10万円が上限)

この制度の大きなポイントは、通常の医療費控除では「年間10万円超」という高いハードルがある一方、セルフメディケーション税制では「年間1.2万円超」という低いハードルで控除が受けられることです。花粉症の薬や風邪薬を定期的に購入している方なら、意外と簡単に超えます。

参考: 国税庁「No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(セルフメディケーション税制)」

セルフメディケーション税制の3つの適用条件

セルフメディケーション税制を利用するためには、以下の3つの条件を全て満たす必要があります。

条件 内容 具体例
「一定の取組」を行っていること健康診断、人間ドック、予防接種、がん検診など
対象医薬品の年間購入額が1.2万円超本人+生計を一にする家族分の合計
通常の医療費控除を受けていないこと医療費控除との選択適用(併用不可)

「一定の取組」とは?【判定チェック表】

条件①の「一定の取組」は、確定申告をする本人が行っていれば足り、家族全員が行う必要はありません。会社員なら年1回の定期健康診断を受けていれば条件を満たします。

一定の取組の種類 会社員 個人事業主 主婦・無職 年金受給者
勤務先の定期健康診断
特定健康診査(メタボ健診)
人間ドック
予防接種(インフルエンザ等)
市区町村のがん検診
市区町村の健康増進事業の健康診査

💡 実務のポイント

「一定の取組」に要した費用自体はセルフメディケーション税制の控除対象にはなりません。たとえばインフルエンザの予防接種代3,500円は「取組の証明」にはなりますが、控除の計算に含めることはできません。控除の対象はあくまで「対象医薬品の購入費」のみです。

対象医薬品の見分け方【3つの確認方法】

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、スイッチOTC医薬品(医療用から市販薬に転用されたもの)と、2022年以降に追加された一定のOTC医薬品です。対象かどうかは以下の3つの方法で確認できます。

確認方法 具体的な確認手順 注意点
パッケージのマーク「セルフメディケーション税控除対象」の共通識別マーク表示義務がないため、マークがない対象商品もある
レシートの表示対象商品名の横に★マーク等が印字される店舗により★以外のマーク(●等)の場合あり
厚労省の対象品目一覧厚生労働省HPに掲載のExcelリストで商品名を検索月1回程度更新される

参考: 厚生労働省「セルフメディケーション税制 対象品目一覧」

対象になる主な医薬品カテゴリ

対象医薬品は風邪薬、鎮痛剤、アレルギー用薬、胃腸薬、水虫薬、湿布薬など多岐にわたります。2022年以降は対象範囲が拡充され、スイッチOTC以外の一部の医薬品も追加されました。具体的には、風邪の諸症状、アレルギーの諸症状、腰痛・関節痛・肩こりの貼付薬など、日常でよく購入する薬の多くが対象です。

実務で意外と知られていないのが、花粉症の市販薬が対象に含まれることです。春先に花粉症の薬を数ヶ月間購入すると、それだけで1.2万円を超えるケースがあります。対象かどうか迷ったら、ドラッグストアの薬剤師に確認するのが確実です。

医療費控除との違い【7項目比較表】

セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は、どちらか一方を選択して適用します。以下の比較表で違いを確認してください。

比較項目 通常の医療費控除 セルフメディケーション税制
対象費用診察料・薬代・入院費・交通費等対象OTC医薬品の購入費のみ
適用の最低ライン年間10万円超(所得200万円未満は所得の5%)年間1.2万円超
控除額の上限200万円8.8万円
健診等の要件不要必要(定期健診・予防接種等)
年末調整での適用不可(確定申告必須)不可(確定申告必須)
併用どちらか一方を選択(併用不可)
向いている人病院の通院・入院が多い人市販薬で対処する健康な人

参考: 国税庁「No.1131 セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」

医療費控除の対象一覧と計算方法の詳細は、「医療費控除の対象一覧と計算方法|確定申告のやり方までわかりやすく解説」で解説しています。

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どちらを選ぶ?損得分岐シミュレーション【4パターン】

医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらを選ぶべきかは、「医療費の合計額」と「対象医薬品の購入額」で決まります。以下の4パターンで判断してください。

📐 シミュレーション前提条件

  • 所得200万円以上(医療費控除の差引額は10万円)
  • 対象医薬品の購入額は医療費の合計に含まれるものとする
  • 保険金等の補填額なし
パターン 医療費合計 うち対象薬品 医療費控除額 セルフメディ控除額 有利な方
A5万円3万円適用不可1.8万円セルフメディ
B12万円5万円2万円3.8万円セルフメディ
C15万円3万円5万円1.8万円医療費控除
D30万円8万円20万円6.8万円医療費控除

判断のポイントは明快です。医療費合計が10万円に届かない場合はセルフメディケーション税制一択。10万円を超える場合は、それぞれの控除額を計算して大きい方を選びましょう。対象医薬品の購入額が医療費の大部分を占める場合は、意外とセルフメディケーション税制の方が有利になるケースもあります。

💡 実務のポイント

確定申告の相談で「医療費控除はよく知っているけど、セルフメディケーション税制は知らなかった」という方が毎年多くいらっしゃいます。特にドラッグストアで花粉症の薬や胃薬を毎月購入している方は、レシートを1年分集めると3〜5万円になるケースが珍しくありません。レシートの★マークを確認する習慣をつけてください。

年収別×購入額別の節税額シミュレーション

セルフメディケーション税制を適用した場合の節税額を、年収と購入額の組み合わせで確認できます。

年収(給与) 税率 購入額2万円 購入額5万円 購入額10万円
300万円5%1,200円5,700円13,200円
500万円10%1,600円7,600円17,600円
700万円20%2,400円11,400円26,400円

※所得税+住民税の合計節税額。概算値です。実際の税額は各種控除の適用状況により異なります。

年収700万円の方が対象医薬品を年間5万円購入した場合、確定申告するだけで約1.1万円の税金が戻ってきます。手間は30分程度(e-Taxなら自宅で完結)なので、時給換算でも十分にメリットがあります。

確定申告の手順【4ステップ】

ステップ1:レシートを集計する

1年間(1月1日〜12月31日)に購入した対象医薬品のレシートを集め、合計額を計算します。レシートに★マーク等がついている商品が対象です。合計額が1.2万円を超えていれば制度を利用できます。

ステップ2:「一定の取組」の証明書類を準備する

定期健康診断の結果通知表、予防接種の領収書など、「一定の取組」を行ったことを証明する書類を準備します。確定申告書への添付は不要ですが、5年間の保管義務があります。

ステップ3:セルフメディケーション税制の明細書を作成する

「セルフメディケーション税制の明細書」に、薬局・ドラッグストアごとに対象医薬品の購入額を記入します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に沿って入力するだけで自動計算されます。

ステップ4:確定申告書を提出する

確定申告書にセルフメディケーション税制の明細書を添付して提出します。e-Taxなら自宅から電子申告が可能です。レシートの提出は不要ですが、5年間は保管してください。

⚠️ 注意:ふるさと納税との併用時の注意

セルフメディケーション税制のために確定申告をする場合、ふるさと納税のワンストップ特例は無効になります。ふるさと納税分も確定申告に含めて申告する必要があるため、寄附金受領証明書を準備してください。

確定申告の基本的な手順は「確定申告とは?やり方・必要書類・期限をわかりやすく解説」、所得控除の全体像は「所得控除とは?15種類の一覧表と適用条件を完全ガイド」で解説しています。

セルフメディケーション税制の注意点

よくある間違い

間違いパターン 正しい取扱い
医療費控除と併用できると思っている選択適用。どちらか一方のみ
健診費用を控除対象に含めてしまう健診費用は「取組の証明」のみ。控除対象外
対象外の医薬品を含めてしまうレシートの★マークで対象品を確認
家族が健診を受けていないからダメだと思う健診の要件は申告者本人のみ。家族は不要

制度の適用期限

セルフメディケーション税制は、当初2021年末までの時限措置でしたが、2022年以降5年間延長され、令和8年(2026年)12月31日まで適用されます。延長の際に対象医薬品の範囲も拡充されました。

📊 公認会計士の視点

セルフメディケーション税制は控除額の上限が8.8万円と小さいため、「手間に見合わない」と思われがちですが、年収700万円の方なら最大で約2.6万円の節税になります。e-Taxを使えば30分程度で完了するため、時給5万円相当の効率です。ドラッグストアのレシートをファイルにまとめておくだけで、確定申告時の手間は最小限に抑えられます。

セルフメディケーション税制を税理士に相談するメリット

セルフメディケーション税制の確定申告は比較的シンプルですが、医療費控除とどちらを選ぶべきかの判断に迷う場合は、税理士に相談するのが確実です。特に、医療費が10万円前後で微妙なケースや、ふるさと納税・住宅ローン控除と併用するケースでは、全体の税額を最適化するためのシミュレーションが重要になります。

青色申告のメリットは「青色申告のメリット|特別控除65万円の条件と届出の方法」、年末調整の基本は「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」で解説しています。

よくある質問(FAQ)

セルフメディケーション税制は年末調整で受けられますか?
いいえ、セルフメディケーション税制は年末調整では処理できません。医療費控除と同様に、確定申告が必要です。会社員の方でも、自分で確定申告書を提出する必要があります。
医療費控除とセルフメディケーション税制は両方使えますか?
いいえ、どちらか一方を選択して適用します。両方を同時に使うことはできません。それぞれの控除額を計算して、控除額が大きい方を選ぶのが基本です。
ビタミン剤やサプリメントは対象ですか?
いいえ、ビタミン剤やサプリメントはセルフメディケーション税制の対象外です。対象となるのは、スイッチOTC医薬品等の「医薬品」に限られます。健康食品やサプリメントは医薬品ではないため、対象になりません。
ドラッグストアで買った全ての薬が対象ですか?
いいえ、対象となるのは厚生労働省が指定した特定の医薬品のみです。対象商品にはパッケージに識別マークが付いているか、レシートに★マーク等が表示されます。全ての市販薬が対象ではないため、レシートのマークで必ず確認してください。
インフルエンザの予防接種代は控除の対象になりますか?
予防接種代自体はセルフメディケーション税制の控除対象にはなりません。ただし、予防接種を受けたことは「一定の取組」の証明になります。つまり、予防接種を受けていれば制度を利用する「資格」は満たしますが、接種費用は控除額の計算には含めません。
家族が健康診断を受けていなくても制度は使えますか?
はい、使えます。「一定の取組」の要件は確定申告をする本人のみに課されており、家族全員が健康診断を受けている必要はありません。本人が年1回の定期健康診断や予防接種等を受けていれば、家族の薬購入分も合算して控除を受けられます。
セルフメディケーション税制はいつまで使える制度ですか?
令和8年(2026年)12月31日までの購入分が対象です。当初は2021年末までの時限措置でしたが、2022年に5年間延長されました。延長時に対象医薬品の範囲も拡充され、以前より多くの市販薬が対象になっています。今後の再延長については、税制改正の動向を注視する必要があります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • セルフメディケーション税制は対象OTC医薬品の年間購入額が1.2万円超で使える
  • 控除額の上限は8.8万円。通常の医療費控除(上限200万円)とは選択適用
  • 適用には「一定の取組」(健診・予防接種等)を申告者本人が行っている必要がある
  • 対象医薬品はパッケージのマーク・レシートの★マーク・厚労省HPで確認できる
  • 医療費が10万円未満なら本制度一択。10万円前後なら両方の控除額を比較して判断
  • 年末調整では不可。確定申告が必須(ふるさと納税のワンストップ特例も無効になる)
  • 令和8年(2026年)12月31日までの時限措置

セルフメディケーション税制は「知っている人だけが得をする」制度です。ドラッグストアのレシートを確認して、対象医薬品の★マークがついていないか、今日から意識してみてください。所得控除の全体像は「所得控除とは?15種類の一覧表と適用条件を完全ガイド」で確認できます。

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