【税理士監修】小規模企業共済等掛金控除とは?iDeCo・小規模企業共済の掛金上限と節税効果

【税理士監修】小規模企業共済等掛金控除とは?iDeCo・小規模企業共済の掛金上限と節税効果
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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小規模企業共済等掛金控除とは?iDeCo・小規模企業共済の掛金上限と節税効果

「iDeCoや小規模企業共済の掛金で節税できると聞いたが、どれくらい得なのか?」という方に向けて、3制度の掛金上限・節税額・受取時の税制を完全比較します。この記事を読めば、自分に合った制度を選び、年末調整や確定申告で正しく控除を受けられます。

🏆 結論:掛金全額が所得控除、最も節税効果の高い控除の1つ

小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済・iDeCo(個人型確定拠出年金)・企業型DCのマッチング拠出・心身障害者扶養共済の掛金を支払った場合に、その全額を所得から控除できる制度です。生命保険料控除のような上限額がなく、支払った掛金がそのまま控除されるため、所得控除の中でも最も節税効果の高い制度の1つです。

小規模企業共済等掛金控除とは?基本的なしくみ

小規模企業共済等掛金控除とは、所得税法第75条に定められた所得控除です。対象となる掛金を支払った場合に、その年に支払った掛金の全額を所得から差し引けます。生命保険料控除(最大12万円)や地震保険料控除(最大5万円)と異なり、控除額に上限がないのが最大の特徴です。

個人事業主の方から「どの制度に加入すべきか」という相談をよく受けますが、答えは「まず小規模企業共済に加入し、余裕があればiDeCoも併用する」のが実務上の定石です。理由は後述しますが、小規模企業共済には貸付制度がある点が大きいのです。

控除の対象となる3つの制度

制度 運営主体 主な対象者
小規模企業共済中小企業基盤整備機構個人事業主・小規模企業の経営者・役員
iDeCo(個人型確定拠出年金)国民年金基金連合会20歳以上65歳未満の国民年金被保険者
企業型DC(マッチング拠出)企業企業型DCを導入する企業の従業員
心身障害者扶養共済地方公共団体心身障害者を扶養する人

参考: 国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」

所得控除の全体像については、「所得控除の一覧と適用要件」で15種類すべてを解説しています。

3制度の掛金上限と加入要件【完全比較表】

小規模企業共済・iDeCo・企業型DCは、それぞれ掛金の上限額や加入要件が異なります。以下の表で横断的に比較してください。

項目 小規模企業共済 iDeCo 企業型DC
加入対象者個人事業主・小規模企業の経営者・役員20歳〜65歳未満の国民年金被保険者企業型DC導入企業の従業員
掛金上限(月額)7万円(一律)第1号:6.8万円、第2号:2万〜2.3万円、第3号:2.3万円事業主掛金と合算で5.5万円まで
掛金上限(年額)84万円最大81.6万円最大66万円
掛金設定単位500円単位(月1,000〜7万円)1,000円単位(月5,000円〜)企業の規定による
運用予定利率による付利(元本保証型)自己運用(投資信託等)自己運用(投資信託等)
受取方法一括/分割/併用一括/年金/併用一括/年金/併用
受取時の税制退職所得/公的年金等の雑所得退職所得/公的年金等の雑所得退職所得/公的年金等の雑所得
途中解約可能(加入1年以上で掛金の80%以上戻る)原則60歳まで引出し不可原則60歳まで引出し不可
貸付制度あり(年利0.9〜1.5%)なしなし

💡 実務のポイント

小規模企業共済が個人事業主に人気がある理由の1つは「貸付制度」です。掛金の範囲内で低金利の貸付が受けられるため、事業資金が急に必要になった場合のセーフティネットになります。iDeCoには貸付制度がなく、60歳まで引き出せないため、資金繰りの不安がある事業主は小規模企業共済を優先するのが実務上の定石です。

立場別の最適な選び方【判定表】

どの制度に加入すべきかは、ご自身の立場(個人事業主・会社員・会社役員)によって異なります。以下の判定表を参考にしてください。

あなたの立場 加入可能な制度 おすすめの優先順位 最大年間控除額
個人事業主小規模企業共済+iDeCo①小規模企業共済 → ②iDeCo165.6万円
小規模企業の役員小規模企業共済+iDeCo①小規模企業共済 → ②iDeCo108〜111.6万円
会社員(企業型DCなし)iDeCoのみiDeCo27.6万円
会社員(企業型DCあり)企業型DC+iDeCo①企業型DC → ②iDeCo企業の制度による
公務員iDeCoのみiDeCo14.4万円

⚠️ 小規模企業共済の加入要件

小規模企業共済に加入できるのは、常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主または法人の役員です。従業員規模が要件を超えている場合は加入できませんのでご注意ください。フリーランスの方は、事業所得で申告していれば加入対象になります。

掛金別×所得税率別の節税効果シミュレーション

掛金の全額が所得控除されるため、節税額は「掛金 × (所得税率 + 住民税率10%)」で計算できます。

📐 シミュレーション前提条件

  • 所得税の各控除額に税率を乗じて計算(復興特別所得税2.1%は省略)
  • 住民税は一律10%で計算
  • 他の所得控除の影響は考慮しない概算値
年間掛金 税率15%(5%+住10%) 税率20%(10%+住10%) 税率30%(20%+住10%) 税率33%(23%+住10%)
24万円(月2万)3.6万円4.8万円7.2万円7.9万円
48万円(月4万)7.2万円9.6万円14.4万円15.8万円
84万円(月7万)12.6万円16.8万円25.2万円27.7万円
165.6万円(共済84万+iDeCo81.6万)24.8万円33.1万円49.7万円54.6万円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

🧮 個人事業主が小規模企業共済とiDeCoを満額併用した場合

年間掛金165.6万円(小規模企業共済84万円+iDeCo81.6万円)を全額控除。所得税率20%の場合、年間の節税額は約49.7万円(所得税33.1万円+住民税16.6万円)です。20年間継続すると、節税額だけで約994万円になります。

確定申告の基本的な手続きについては、「確定申告の基礎知識」で解説しています。

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受取時の税制と退職所得控除【10年ルール改正に注意】

掛金の拠出時には全額が所得控除されますが、将来の受取時には課税されます。ただし、受取方法に応じて退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、大幅に税負担が軽減されます。

受取方法別の税制

受取方法 所得区分 適用される控除
一括受取退職所得退職所得控除(加入年数×40万円 or 70万円)
分割受取(年金)公的年金等の雑所得公的年金等控除
一括+分割の併用退職所得+雑所得両方の控除を適用

📢 令和7年度改正:退職所得控除の「5年ルール」→「10年ルール」

2026年1月1日以降に支払われる退職一時金から、退職所得控除の重複排除期間が5年から10年に延長されました。小規模企業共済とiDeCoの両方に加入している方は、一括受取のタイミングを10年以上離す計画が重要になります。たとえば60歳でiDeCoを受取り、65歳で退職金を受取る予定の方は、退職所得控除を満額利用できない可能性があります。

小規模企業共済の詳細解説

加入要件と従業員数の基準

業種 常時使用する従業員数
建設業・製造業・運輸業・不動産業・農業等20人以下
商業(卸売業・小売業)・サービス業5人以下
士業法人(税理士法人・弁護士法人等)の役員5人以下
フリーランス事業所得で申告していれば対象

共済金の受取区分と金額

小規模企業共済の受取金額は、加入年数と掛金月額に応じて決まります。共済金の種別は廃業・死亡・法人成り・解約などの事由によって異なり、共済金A(廃業・死亡等)が最も有利で、任意解約(解約手当金)が最も不利です。

💡 実務のポイント

加入期間が20年未満で任意解約した場合、解約手当金は掛金合計額を下回ります。とくに加入から12ヶ月未満の解約では解約手当金がゼロです。「節税目的で加入したが資金繰りが厳しくなってすぐ解約」というケースでは、かえって損をすることがあります。加入する際は、少なくとも3年以上は継続する見通しで掛金を設定してください。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の詳細解説

加入区分別の掛金上限額

加入者の区分 掛金上限(月額) 掛金上限(年額)
第1号被保険者(個人事業主等)6.8万円81.6万円
第2号被保険者(企業型DCなし・DBなし)2.3万円27.6万円
第2号被保険者(企業型DCあり)2万円24万円
第2号被保険者(DB等あり)1.2万円14.4万円
第3号被保険者(専業主婦・主夫)2.3万円27.6万円

※第1号被保険者の掛金上限は、国民年金基金・付加保険料との合算で6.8万円です。2027年以降は月7.5万円に引き上げ予定です。

iDeCoの3つの税制メリット

iDeCoには、掛金拠出時・運用時・受取時の3段階で税制優遇があります。掛金全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になるのは拠出時のメリットです。運用期間中の運用益は非課税で再投資でき、通常の金融商品にかかる約20%の税金が免除されます。受取時には退職所得控除または公的年金等控除が適用されます。

青色申告を行っている個人事業主の方は、「青色申告のメリットと手続き」の青色申告特別控除と小規模企業共済等掛金控除を組み合わせることで、大幅な節税が可能です。

法人成り時の小規模企業共済一時金の取扱い

個人事業主が法人成りした場合、小規模企業共済の共済金を受け取ることになります。この場合の共済金は「共済金A」として一括受取の場合は退職所得として扱われます。

📊 公認会計士の視点

法人成りの際に受け取る小規模企業共済の一時金は退職所得として課税されますが、退職所得控除が適用されるため、加入年数が長いほど税負担は軽くなります。一方、法人成り後は法人の役員として改めて小規模企業共済に加入できますので、法人成りを理由に共済を解約する必要はありません。法人の役員として継続加入する選択肢もあります。

年末調整・確定申告での申告方法

給与所得者(年末調整で控除を受ける場合)

手順 内容
①証明書の入手10〜11月頃に届く「払込証明書」を保管
②申告書への記入「給与所得者の保険料控除申告書」の小規模企業共済等掛金控除欄に掛金額を記入
③提出払込証明書を添付して勤務先に提出

💡 実務のポイント

iDeCoの掛金は「個人型年金加入者掛金」の欄に記入します。企業型DCのマッチング拠出は「企業型年金加入者掛金」の欄です。記入欄を間違えやすいので注意してください。なお、企業型DCの事業主掛金は会社が処理するため、個人で申告する必要はありません。

個人事業主(確定申告で控除を受ける場合)

確定申告書第一表の「小規模企業共済等掛金控除」欄に年間の掛金合計額を記入し、第二表の該当欄にも記載します。払込証明書の添付が必要です。

年末調整の全体的な流れについては、「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」をご覧ください。

小規模企業共済とiDeCoの併用シミュレーション

個人事業主が両制度を併用した場合の、掛金パターン別の節税効果を見てみましょう。

📐 シミュレーション前提条件

  • 個人事業主(第1号被保険者)、課税所得500万円、所得税率20%と仮定
  • 住民税10%を加算して合計30%で計算
パターン 小規模共済 iDeCo 年間掛金合計 年間節税額
共済のみ(月3万)36万円0円36万円10.8万円
共済満額(月7万)84万円0円84万円25.2万円
共済+iDeCo併用84万円81.6万円165.6万円49.7万円

※概算値です。20年間継続すると、最大パターンで約994万円の節税効果になります。

注意点とよくある間違い

よくある間違い 正しい対応 影響
払込証明書を紛失して控除を受けなかった再発行を申請するか、確定申告で控除節税額を丸々損する
生命保険料控除の欄に記入してしまった「小規模企業共済等掛金控除」欄に記入控除額が過少になる
掛金を資金繰りの都合で滞納減額手続きで継続。滞納12ヶ月で失効失効すると解約手当金が大幅に減る
iDeCoと小規模共済の受取を同じ年に行った10年以上離す計画を立てる退職所得控除が満額使えず税負担増

よくある質問(FAQ)

小規模企業共済とiDeCoは併用できますか?
はい、併用できます。個人事業主の場合、小規模企業共済(年間最大84万円)とiDeCo(年間最大81.6万円)を合わせて年間最大165.6万円の掛金を全額所得控除できます。それぞれ別の制度として、掛金上限は独立して計算されます。
会社員でもiDeCoに加入できますか?
はい、20歳以上65歳未満の厚生年金被保険者であれば加入可能です。ただし、掛金の上限は企業型DCやDB等の加入状況によって異なり、企業型DCもDBもない場合は月額2.3万円、企業型DCに加入している場合は月額2万円が上限です。
小規模企業共済の掛金は途中で変更できますか?
はい、月額1,000円から7万円の範囲で500円単位でいつでも増額・減額ができます。ただし、掛金を減額した場合、減額分は「掛止め」扱いとなり、その部分の運用利率が低下します。できれば無理のない範囲で一定額を維持するのが理想です。
iDeCoの掛金は年末調整で控除できますか?
はい、給与所得者は年末調整で控除を受けられます。「給与所得者の保険料控除申告書」の「小規模企業共済等掛金控除」欄の「個人型年金加入者掛金」に金額を記入し、払込証明書を添付して勤務先に提出してください。
法人成りした場合、小規模企業共済はどうなりますか?
法人成りにより個人事業を廃止した場合、共済金A(最も有利な区分)として受け取ることができます。一括受取の場合は退職所得として課税され、退職所得控除が適用されます。なお、法人の役員として改めて加入し直すことも可能です。
小規模企業共済を加入から1年未満で解約するとどうなりますか?
加入から12ヶ月未満で任意解約した場合、解約手当金はゼロです。掛金は全額戻ってきません。また、掛金を12ヶ月以上滞納した場合も契約が失効します。加入する際は、少なくとも1年以上は継続できる見通しで掛金額を設定してください。
iDeCoの掛金上限は今後変わりますか?
はい、2027年からiDeCoの掛金上限が引き上げられる予定です。第1号被保険者(個人事業主等)は月6.8万円→月7.5万円に、第2号被保険者の一部も上限が引き上げられます。最新情報はiDeCo公式サイトで確認してください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 小規模企業共済等掛金控除は掛金全額が所得控除(上限なし)
  • 対象は小規模企業共済・iDeCo・企業型DC(マッチング拠出)・心身障害者扶養共済の4制度
  • 個人事業主は小規模企業共済(年84万)+iDeCo(年81.6万)で最大165.6万円の控除
  • 小規模企業共済は貸付制度あり・途中解約可能、iDeCoは運用益非課税・60歳まで引出不可
  • 受取時は退職所得控除または公的年金等控除が適用。2026年から10年ルールに注意
  • 年末調整(給与所得者)または確定申告(個人事業主)で控除を申告

小規模企業共済等掛金控除は、将来の備えをしながら現在の税負担を軽減できる非常に有利な制度です。とくに個人事業主の方は、両制度を満額活用することで年間50万円近い節税効果を得られます。まずは無理のない掛金で始めてみることをおすすめします。

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