【税理士監修】令和7年度税制改正のポイント(所得税関連)|基礎控除引上げ・特定親族特別控除

【税理士監修】令和7年度税制改正のポイント(所得税関連)|基礎控除引上げ・特定親族特別控除
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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令和7年度税制改正のポイント(所得税関連)|基礎控除引上げ・特定親族特別控除

「103万円の壁は123万円に変わった?」「基礎控除が上がったらどのくらい税金が減るの?」。そんな疑問を持つ経営者・個人事業主に向けて、令和7年度税制改正の所得税関連の改正内容を、改正前後の比較表と年収別シミュレーション付きで完全ガイドします。

📢 令和7年度税制改正の適用時期

本改正は令和7年分以後の所得税に適用されます。ただし、給与等・公的年金等の源泉徴収への反映は令和8年1月以後です。令和7年分については、12月の年末調整で改正後の控除額が適用されます。令和7年11月までの毎月の源泉徴収には変更はありません。

🏆 結論:ほぼ全ての給与所得者が減税。低〜中所得者ほど恩恵が大きい

令和7年度税制改正では、①基礎控除の引上げ(48万→58万円、低所得者は最大95万円)、②給与所得控除の最低保障額の引上げ(55万→65万円)、③特定親族特別控除の創設の3つが柱です。これにより、いわゆる「103万円の壁」は「123万円の壁」に引き上がり、給与収入200万円以下の方は基礎控除が最大95万円に。年収400万円の給与所得者なら年間約1.5万円の減税、年収200万円なら約4.7万円の減税が見込まれます。経理担当者は令和7年12月の年末調整で新しい控除額を適用してください。

令和7年度税制改正(所得税関連)の全体像

令和7年度税制改正は、物価上昇局面における税負担の調整と就業調整対策を主な目的としています。所得税関連の改正は大きく3つの柱で構成されています。

改正項目 改正内容 適用時期
①基礎控除の引上げ48万→58万円(恒久)+所得に応じた上乗せ(令和7〜8年の時限措置)令和7年分以後
②給与所得控除の引上げ最低保障額を55万→65万円に引上げ令和7年分以後
③特定親族特別控除の創設19〜22歳の扶養親族の収入が増えても控除が段階的に減少する仕組み令和7年分以後

確定申告の基本的な流れは「確定申告の基礎知識|はじめてでもわかる手順と必要書類」を、所得控除の全体像は「所得控除の種類一覧と適用条件」をご覧ください。

基礎控除の引上げ|改正前後の比較表

基礎控除は、全ての納税者に適用される所得控除です。令和7年度改正では、合計所得金額2,350万円以下の方の控除額が10万円引き上げられ58万円になりました。さらに、低〜中所得者への配慮として、令和7年分・令和8年分に限り所得金額に応じた上乗せ措置が設けられています。

基礎控除額の改正前後比較

合計所得金額 改正前 令和7〜8年分(上乗せあり) 令和9年分以後(恒久)
132万円以下48万円95万円58万円
132万円超〜336万円以下48万円88万円58万円
336万円超〜489万円以下48万円68万円58万円
489万円超〜655万円以下48万円63万円58万円
655万円超〜2,350万円以下48万円58万円58万円
2,350万円超〜2,400万円以下48万円48万円48万円
2,400万円超〜2,450万円以下32万円32万円32万円
2,500万円超0円0円0円

💡 実務のポイント

合計所得金額132万円以下(給与収入のみの場合、年収約200万円以下)の方は、基礎控除が48万円から95万円へと約2倍に引き上げられます。パート・アルバイトの方にとって大きな減税です。ただし、この上乗せ措置は令和7〜8年分の時限措置であり、令和9年分以後は58万円に戻ります。恒久措置は10万円の引上げ(48万→58万円)のみです。

参考: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

給与所得控除の最低保障額引上げ|55万→65万円

給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に10万円引き上げられました。これにより、給与収入190万円以下の方の給与所得控除額が65万円になります。給与収入190万円超の方の控除額には変更ありません。

「103万円の壁→123万円の壁」の計算過程

項目 改正前 改正後(恒久)
給与収入(非課税の上限)103万円123万円
− 給与所得控除(最低保障額)▲55万円▲65万円
= 給与所得48万円58万円
− 基礎控除▲48万円▲58万円
= 課税所得0円0円

基礎控除の10万円引上げ+給与所得控除の10万円引上げ=合計20万円分が拡大し、所得税がかからない給与収入の上限が103万円から123万円に引き上がりました。

⚠️ 注意

「103万円の壁が123万円になった」のは所得税の話です。社会保険の「106万円の壁」「130万円の壁」は別の制度であり、今回の改正では変更されていません。また、住民税の基礎控除は43万円のまま据え置きで、住民税の非課税ラインは改正されていません。「123万円まで働いても何も負担が増えない」わけではない点に注意してください。

年収別の減税額シミュレーション

令和7年度改正により、各年収帯でどのくらい所得税が減るかをシミュレーションします。

📐 シミュレーション前提条件

  • 給与収入のみ。扶養親族なし。社会保険料控除は給与の15%と仮定
  • 令和7年分(上乗せ措置あり)の基礎控除額で計算
  • 復興特別所得税(2.1%)を含む
給与年収 基礎控除(改正前→後) 改正前の所得税 改正後の所得税 減税額
150万円48万→95万約14,200円0円▲約14,200円
200万円48万→95万約46,800円0円▲約46,800円
300万円48万→88万約56,000円約35,500円▲約20,500円
400万円48万→88万約87,600円約72,400円▲約15,200円
600万円48万→68万約206,000円約185,600円▲約20,400円
800万円48万→58万約470,000円約449,600円▲約20,400円
1,200万円48万→58万約1,073,000円約1,049,600円▲約23,400円

※概算値です。社会保険料控除・生命保険料控除等の金額により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

🧮 シミュレーション

年収200万円の方は改正前に約4.7万円だった所得税が0円になり、全額が減税されます。一方、年収800万円の方は約2万円の減税にとどまります。上乗せ措置のおかげで、低〜中所得者ほど恩恵が大きい設計になっています。ただし、上乗せ措置は令和7〜8年分の時限措置です。令和9年分以後の恒久的な減税額は、全年収帯で約1万〜2万円程度になります。

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特定親族特別控除の創設|大学生のアルバイト問題への対応

令和7年度改正では、19歳以上23歳未満の扶養親族(いわゆる大学生年代)を対象とした「特定親族特別控除」が新たに創設されました。従来の特定扶養控除(63万円)では、子の給与収入が103万円を超えると控除が一気にゼロになっていましたが、新制度では収入が増えても控除が段階的に減少します。

特定親族特別控除の控除額一覧

特定親族の合計所得金額(給与収入の目安) 親の控除額 改正前との比較
58万円以下(年収123万円以下)63万円従来の特定扶養控除と同額
58万円超〜85万円以下(年収123万超〜150万円以下)63万円改正前は0円だった
85万円超〜123万円以下(年収150万超〜188万円以下)61万〜3万円(段階的に減少)改正前は0円だった
123万円超(年収188万円超)0円改正前と同じ

💡 実務のポイント

従来は、大学生の子がアルバイトで年収103万円を超えると、親の特定扶養控除63万円が一気に消え、親の税負担が約10万〜20万円増えるケースがありました。新制度では年収150万円までは63万円の控除が維持され、150万円超でも段階的に減少するため、「103万円を超えないように調整する」必要がなくなります。大学生のアルバイトの就業調整が大幅に緩和される見込みです。

扶養親族等の所得要件の変更

基礎控除と給与所得控除の引上げに伴い、扶養控除等の対象となる扶養親族の所得要件も引き上げられています。

項目 改正前 改正後
扶養親族の合計所得金額要件48万円以下58万円以下
給与収入のみの場合の上限103万円以下123万円以下
配偶者控除の合計所得金額要件48万円以下58万円以下

年末調整の基本的な流れは「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」をご覧ください。

個人事業主・フリーランスへの影響

基礎控除の引上げは、個人事業主・フリーランスにも適用されます。ただし、給与所得控除の引上げは給与所得者のみが対象であり、事業所得者には関係ありません。

個人事業主にとっての改正の影響

項目 影響
基礎控除の引上げ適用あり。合計所得金額に応じた控除額が適用される
給与所得控除の引上げ適用なし(給与所得がない場合)
青色申告特別控除との関係変更なし。65万円控除+基礎控除58万円=計123万円の控除が可能
配偶者・扶養親族の所得要件48万円→58万円に引上げ。配偶者のパート収入が123万円まで配偶者控除の対象に

青色申告のメリットについては「青色申告のメリットと届出方法」をご覧ください。

経理担当者向け|年末調整対応タイムライン

令和7年度改正は年末調整で適用されるため、経理担当者は以下のスケジュールで対応してください。

時期 対応事項 注意点
令和7年1〜11月毎月の源泉徴収は従来の税額表で実施(変更なし)改正前の税額表を使用し続ける
令和7年6月末新様式の源泉徴収簿等が国税庁HPに公開予定給与ソフトのアップデートを確認
令和7年8月末以降「令和7年分年末調整のしかた」が国税庁HPに公開予定改正後の事務手続きを確認
令和7年10〜11月従業員から新様式の申告書を回収「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書」に名称変更
令和7年12月改正後の控除額で年末調整を実施1〜11月との差額が還付される形になる
令和8年1月以降改正後の源泉徴収税額表で毎月の源泉徴収を実施新しい税額表を使用。扶養控除等申告書の記載欄が変更

🔷 社労士の視点

今回の所得税改正に伴い、扶養親族等の所得要件が引き上げられたことで、従業員の扶養控除等申告書の見直しが必要になるケースがあります。特に、配偶者の年収が103万円超〜123万円以下の従業員は、改正後は扶養控除の対象に復帰する可能性があります。10月の申告書回収時に従業員に改正内容を周知し、正しい記載を促しましょう。

その他の所得税関連の改正

確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)の拠出限度額引上げ

老後の資産形成を促進する観点から、確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられます。マッチング拠出の要件緩和(事業主掛金を超えられないという要件の廃止)も行われます。

住宅ローン控除の拡充(子育て世帯等向け)

子育て世帯(18歳以下の扶養親族を有する者)及び若者夫婦世帯(自身または配偶者が39歳以下)に対して、住宅ローン控除の借入限度額が上乗せされます。これは令和7年限りの措置です。

生命保険料控除の拡充(子育て世帯向け)

23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料控除(一般枠)の最高限度額が4万円から6万円に引き上げられます。これは令和8年分限りの措置です。

よくある質問(FAQ)

令和7年度の改正はいつから適用されますか?
令和7年分以後の所得税に適用されます。ただし、給与の源泉徴収への反映は段階的で、令和7年1〜11月は従来の税額表を使用し、12月の年末調整で改正後の控除額を適用して精算します。令和8年1月以降は新しい源泉徴収税額表に基づく毎月の源泉徴収が始まります。
住民税の基礎控除も引き上げられましたか?
住民税の基礎控除は43万円のまま据え置きで、引き上げは行われていません。給与所得控除の最低保障額は住民税も65万円に引き上げられましたが、基礎控除が変わらないため、住民税の非課税ラインの変更幅は限定的です。
個人事業主も基礎控除の引上げの恩恵を受けられますか?
はい。基礎控除の引上げは全ての納税者に適用されますので、個人事業主も恩恵を受けられます。ただし、給与所得控除の引上げは給与所得者のみが対象であり、事業所得者には適用されません。
基礎控除の上乗せ措置(最大95万円)はいつまで続きますか?
令和7年分と令和8年分の2年間の時限措置です。令和9年分以後の基礎控除額は、合計所得金額2,350万円以下の方について一律58万円(改正前の48万円から10万円引上げ)の恒久措置となります。
年末調整で改正後の控除が適用されなかった場合はどうすればいいですか?
確定申告を行うことで、改正後の基礎控除額を適用して税額を再計算し、源泉徴収された所得税との差額の還付を受けることができます。特に、令和7年中に退職して年末調整を受けていない方は確定申告で精算する必要があります。
配偶者のパート年収が110万円の場合、改正後は配偶者控除を受けられますか?
はい。改正後は配偶者の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみなら123万円以下)であれば配偶者控除の対象です。年収110万円の場合、給与所得は110万円−65万円=45万円で、58万円以下ですので配偶者控除を受けられます。改正前は103万円を超えると配偶者控除の対象外でした。
定額減税は令和7年分にも適用されますか?
定額減税(所得税3万円・住民税1万円)は令和6年分の措置であり、令和7年分以後には適用されません。令和7年分以降は、基礎控除の引上げ等による恒常的な減税に置き換わる形です。定額減税の仕組みは「定額減税の仕組みと適用方法」をご覧ください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 基礎控除が48万→58万円に引上げ(恒久)。令和7〜8年分は最大95万円の上乗せ措置あり
  • 給与所得控除の最低保障額が55万→65万円に引上げ。「103万円の壁」は「123万円の壁」に
  • 特定親族特別控除が新設され、大学生のアルバイト年収150万円まで親の控除63万円を維持
  • 扶養親族の所得要件も48万→58万円に引上げ(給与年収103万→123万円に対応)
  • 経理担当者は令和7年12月の年末調整で改正後の控除額を適用。1〜11月の源泉徴収は変更なし
  • 令和8年1月以降は新しい源泉徴収税額表で毎月の源泉徴収を実施
  • 社会保険の「106万円の壁」「130万円の壁」は今回変更なし。住民税の基礎控除も据え置き

令和7年度改正は「低〜中所得者ほど恩恵が大きい」設計です。従業員への改正内容の周知と、年末調整の事務準備を早めに進めましょう。改正の影響について個別のシミュレーションが必要な場合は、税理士にご相談ください。

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