【会計士×税理士が解説】自社株の評価引き下げ対策|類似業種比準方式の活用と注意点

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
自社株の評価引き下げ対策|類似業種比準方式の活用と注意点
「自社株の評価額が高すぎて事業承継が進まない」「どの引き下げ対策が自社に合っているのかわからない」とお悩みの経営者に向けて、自社株の評価引き下げ対策を10手法に整理し、効果・難易度・リスクの3軸で完全ガイドします。この記事を読めば、自社に最適な対策の優先順位がわかります。
🏆 結論:引き下げ対策は「どの比準要素に効くか」で選ぶ
自社株の評価引き下げは、類似業種比準方式の3要素(配当・利益・純資産)と純資産価額方式の含み益のどちらに作用するかを理解して対策を選ぶことが基本です。最も効果が大きいのは「利益の引き下げ」で、役員退職金の支給や大型設備投資が代表的な手法です。ただし、不自然な利益操作や資産構成の変動は税務調査で否認されるリスクがあり、すべての対策に「事業上の合理性」が求められます。対策の効果は一時的なものと永続的なものがあり、事業承継のタイムラインに合わせて組み合わせることが重要です。
自社株の評価額が高くなるしくみ
なぜ優良企業ほど自社株が高いのか
取引相場のない株式(自社株)の評価額は、会社の業績と資産内容を反映して計算されます。利益を安定的に出し、資産を蓄積している優良企業ほど評価額が高くなる構造です。
評価額が高くなると、相続・贈与時の税負担が重くなり、事業承継の最大の障壁になります。自社株は現金化が難しいにもかかわらず、高額の相続税・贈与税が課されるため、「黒字倒産」ならぬ「相続税倒産」のリスクすら生じます。
自社株の評価方法の基本は「取引相場のない株式(自社株)の評価方法」で解説していますので、評価のしくみをまだ理解されていない方は先にそちらをご確認ください。
引き下げ対策の2つのアプローチ
自社株の評価額を引き下げるアプローチは、大きく2つに分かれます。1つは類似業種比準方式の3つの比準要素(配当・利益・純資産)を下げるアプローチ。もう1つは純資産価額方式の含み益を減らす、または含み損を作るアプローチです。
| アプローチ |
対象となる評価方式 |
引き下げの方向性 |
| 比準要素の引き下げ | 類似業種比準方式 | 配当を減らす、利益を圧縮する、簿価純資産を減らす |
| 含み益の縮小 | 純資産価額方式 | 含み益のある資産を処分する、含み損のある資産を取得する |
10手法の比較一覧【効果×難易度×持続性】
自社株の評価引き下げに使われる主な手法を10種類に整理し、効果の大きさ・実行の難易度・効果の持続性の3軸で比較します。
| 手法 |
効果 |
難易度 |
持続性 |
効く要素 |
| ①役員退職金の支給 | ◎ | 中 | 一時的 | 利益c・純資産d・含み益 |
| ②配当の引き下げ・無配 | ○ | 低 | 継続的 | 配当b |
| ③大型設備投資・減価償却 | ◎ | 中 | 一時的 | 利益c・含み益 |
| ④不動産の取得 | ◎ | 高 | 永続的 | 含み益(時価と評価額の乖離) |
| ⑤役員報酬の増額 | ○ | 低 | 継続的 | 利益c・純資産d |
| ⑥高収益部門の分社化 | ◎ | 高 | 永続的 | 利益c・純資産d |
| ⑦従業員持株会の活用 | ○ | 高 | 永続的 | 株式数の分散(配当還元方式の適用) |
| ⑧金庫株(自己株式の取得) | ○ | 中 | 一時的 | 純資産d・発行済株式数 |
| ⑨持株会社スキーム | ◎ | 高 | 永続的 | 37%控除の二重適用 |
| ⑩不良資産の処分 | ○ | 中 | 一時的 | 利益c(損失計上)・含み益 |
※ 効果:◎=評価額を30%以上引き下げる可能性あり、○=10〜30%程度の引き下げ効果。個別の状況により異なります。
💡 実務のポイント
年間100社以上の自社株対策を支援してきた経験上、最も効果が大きいのは「①役員退職金の支給」と「⑥高収益部門の分社化」の組み合わせです。退職金で一時的に利益を大幅に圧縮し、その直後に株式を移転する。さらに分社化で恒久的に親会社の利益水準を下げる。この「一時的対策+恒久的対策」の組み合わせが最も成功率の高いパターンです。
類似業種比準方式の3要素を下げる方法
配当金額(b)の引き下げ
配当金額は3要素の中で最もコントロールしやすい要素です。株主総会の決議で配当をゼロにすれば、比準要素bはゼロになります。
ただし、注意点が2つあります。1つ目は、配当金額は直前期と直前々期の2期平均で計算されるため、無配にしてから効果が出るまで最低2期かかることです。2つ目は、特別配当や記念配当は類似業種比準方式の配当金額から除外されるため、通常配当を減額して特別配当に振り替える方法が使えることです。
🧮 シミュレーション
通常配当を年500万円出していた会社が、通常配当をゼロにして同額を特別配当として支給した場合、株主が受け取る金額は変わりませんが、類似業種比準方式の配当要素はゼロになります。配当の比準割合(b/B)がゼロになることで、3要素の平均が約33%下がる効果があります。
利益金額(c)の引き下げ
利益金額は3要素の中で最も評価額へのインパクトが大きい要素です。利益を圧縮する主な方法は次のとおりです。
役員退職金の支給は最も効果が大きい手法です。先代経営者が退任する際に退職金を支給することで、当期の利益を大幅に圧縮できます。退職金は損金に算入できるため、法人税の節税にもなります。適正額は一般に「最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率」で計算されます。功績倍率は社長で3.0倍程度が目安です。
大型設備投資も有効です。中小企業向けの税額控除や特別償却を活用すれば、投資額の一部を即時に費用化できます。中小企業経営強化税制の即時償却を利用すれば、設備投資額の全額を当期の減価償却費として計上でき、利益を大きく圧縮できます。
⚠️ 注意
利益金額は「法人税申告書の別表四の課税所得」がベースであり、非経常的な利益(固定資産売却益・保険差益等)は除外して計算します。また、直前期の利益と直前2期の平均利益のいずれか低い方を選択できるため、年度によって有利な方を選ぶことが重要です。
純資産価額(d)の引き下げ
簿価純資産(d)は、資本金等の額と利益積立金額の合計です。長年利益を蓄積してきた会社ほどこの値は大きくなります。純資産を直接的に減らすには、利益を圧縮する(上記の方法)か、含み損のある資産を売却して損失を計上するか、配当で社外に流出させるかの方法があります。
ただし、純資産は会社の財務基盤そのものであるため、過度に減らすと会社の信用力や融資条件に悪影響を及ぼします。この要素の引き下げは、利益の圧縮と連動して「結果として下がる」形にするのが実務上の定石です。
純資産価額方式の含み益を減らす方法
不動産の取得による評価減効果
現金を不動産に変えると、純資産価額方式の評価額が下がります。土地は路線価で評価されるため時価の約80%、建物は固定資産税評価額で評価されるため時価の約60%が目安です。1億円の現金を不動産に変えると、評価上は6,000万〜8,000万円に圧縮される効果があります。
さらに、賃貸用不動産にすれば貸家建付地・貸家としての減額も加わります。不動産を活用した相続税対策の詳細は「不動産を活用した相続税対策」をご参照ください。
含み損のある資産の保有と含み益のある資産の処分
純資産価額方式では、すべての資産を相続税評価額に評価替えします。含み益のある上場株式や遊休不動産がある場合、これを課税時期前に売却すれば含み益が帳簿上の利益として実現し、すでに法人税が課された後の金額になるため、純資産価額方式での37%控除の対象から外れます。
📊 公認会計士の視点
含み益の処分は「実現益に対する法人税の負担」と「純資産価額方式での37%控除がなくなること」のトレードオフです。法人実効税率(約34%)と37%控除を比較すると、処分しない方が有利なケースが多い点に注意が必要です。個別の資産ごとに「処分した場合」と「保有し続けた場合」のシミュレーションを行い、判断してください。
AYUSAWA PARTNERS
自社株の引き下げシミュレーションは鮎澤パートナーズへ
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役員退職金による引き下げシミュレーション
役員退職金の支給が自社株の評価額にどれほどの影響を与えるかを、具体的な数値で確認します。
📐 シミュレーション前提条件
- 会社:年商5億円の卸売業(中会社の中、L=0.75)
- 発行済株式数:20,000株、資本金1,000万円
- 先代社長の退職金:月額報酬150万円 × 在任30年 × 功績倍率3.0 = 1億3,500万円
- 退職金支給前の当期利益(課税所得):8,000万円
| 項目 |
対策前 |
対策後(退職金支給) |
変化 |
| 当期利益(課税所得) | 8,000万円 | ▲5,500万円(赤字) | 利益要素cがゼロに |
| 簿価純資産 | 3億円 | 2億1,000万円 | ▲30% |
| 類似業種比準価額(1株) | 2,400円 | 960円 | ▲60% |
| 純資産価額(1株) | 8,500円 | 6,200円 | ▲27% |
| 併用方式(L=0.75) | 3,925円 | 2,270円 | ▲42% |
| 全株式の評価額 | 7,850万円 | 4,540万円 | ▲3,310万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
退職金1億3,500万円の支給により、自社株の評価額が約42%(3,310万円)下がる試算です。この効果は退職金を支給した期の決算に限定されるため、退職金支給後すみやかに株式の移転(贈与・事業承継税制の適用)を行うことが重要です。
3大スキームの比較:持株会社・従業員持株会・金庫株
比準要素の調整に加え、株式の保有構造そのものを変えるスキームも有効です。代表的な3つのスキームを比較します。
| 項目 |
持株会社スキーム |
従業員持株会 |
金庫株(自己株式取得) |
| しくみ | オーナーと事業会社の間に持株会社を設立し、持株会社が事業会社の株式を保有 | 従業員が組成した持株会にオーナーの株式を売却(配当還元方式で評価) | 会社が自社の株式を買い取り(発行済株式数が減少) |
| 主な効果 | 法人税額等相当額(37%)の二重控除。事業会社の含み益に対する37%控除+持株会社の純資産価額計算でさらに37%控除 | 配当還元方式による低額での株式移転。オーナーの持株比率を下げて相続財産を圧縮 | オーナーに現金が入り納税資金を確保。発行済株式数の減少で1株当たり純資産は上昇するが、オーナーの持株数自体が減少 |
| 効果の持続性 | 永続的 | 永続的(持株会が維持される限り) | 一時的(株式の消却まで含めれば永続的) |
| 実行の難易度 | 高(新会社設立・株式交換・組織再編が必要) | 高(持株会規約の整備・民主的運営が必要) | 中(株主総会の特別決議・分配可能額の範囲内) |
| 注意点・リスク | 株式等保有特定会社に該当すると純資産価額方式のみで評価され効果が激減。持株比率を50%以下に保つ工夫が必要 | 持株会が形骸化すると同族株主と認定されるリスク。従業員の退職時の買取価格が論点に | 会社からオーナーへの対価支払いがみなし配当として課税される可能性。分配可能額を超えると違法配当に |
| 向いているケース | 含み益の大きい資産(土地・有価証券)を多数保有する会社 | 従業員が一定数いて、福利厚生の一環として運営できる会社 | 少数株主が存在し、株式の集約と納税資金の確保を同時に行いたいケース |
💡 実務のポイント
持株会社スキームで最もよく見かける失敗は、持株会社が「株式等保有特定会社」に該当してしまうケースです。株式等の保有割合が50%以上になると、類似業種比準方式が使えず純資産価額方式のみでの評価になり、37%の二重控除の効果はあっても類似業種比準方式の低評価メリットが消えます。不動産等の事業用資産を持株会社にも保有させて、株式等の割合を50%未満に保つことが設計上のポイントです。
会社規模を大きくする対策
評価方式の併用比率(L値)は会社規模で決まるため、会社規模を一段階上げるだけで類似業種比準方式の比率が高くなり、評価額が下がります。
| 規模変更 |
L値の変化 |
実現方法の例 |
| 小会社→中会社の小 | 0.50→0.60 | 従業員を5人超にする、取引金額を基準以上にする |
| 中会社の小→中会社の中 | 0.60→0.75 | 従業員を20人超にする、取引金額を2億円以上にする |
| 中会社の中→中会社の大 | 0.75→0.90 | 従業員を30人超にする、総資産を7億円以上にする |
会社規模の判定基準の詳細は「取引相場のない株式(自社株)の評価方法」で解説しています。
否認リスクの判定チェックリスト
自社株の引き下げ対策は合法ですが、「株式評価額の引き下げを目的とした不自然な行為」は税務調査で否認されるリスクがあります。以下の5項目で各対策のリスクを事前チェックしてください。
| チェック項目 |
確認内容 |
否認リスクが高い例 |
| ①事業上の合理性 | その対策が事業目的として合理的に説明できるか | 株式移転の直前に不要な不動産を購入し、移転後すぐ売却 |
| ②タイミングの自然さ | 対策のタイミングが株式移転の直前に集中していないか | 贈与の1ヶ月前に急遽退職金を支給し、1ヶ月後に贈与 |
| ③金額の相当性 | 退職金や報酬の金額が過大でないか | 功績倍率が同業種の水準を大幅に超える退職金 |
| ④資産構成変動の目的 | 課税時期前の資産構成の変動に株価引き下げ以外の理由があるか | 株式等保有特定会社の該当を回避するための不動産購入 |
| ⑤一貫性と継続性 | 対策が長期的な経営計画の一部として位置づけられているか | 分社化後の子会社が事業実態を持たない |
⚠️ 注意
財産評価基本通達189-4は、課税時期前に資産構成の変動(株式保有割合の変動等)があった場合で、その変動が「株式保有割合を引き下げることを目的として行われたと認められるとき」は変動前の状態で判定する旨を定めています。また、総則6項(いわゆる「伝家の宝刀」)により、通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められる場合は、国税庁長官の指示により他の合理的な方法で評価するとされています。形式的に通達の要件を満たしていても、租税回避と認定される可能性があることに留意が必要です。
対策のタイムラインと優先順位
事業承継の3〜5年前から始める対策
自社株の引き下げ対策は、一朝一夕には効果が出ないものが多く、計画的に進める必要があります。事業承継のタイムラインに合わせた対策の優先順位は次のとおりです。
| 時期 |
実施する対策 |
理由 |
| 5年前〜 | 持株会社スキームの検討、従業員持株会の設立、配当政策の見直し | 組織再編や持株会の設立は時間がかかる。配当は2期平均で計算されるため早めに着手 |
| 3年前〜 | 会社規模の引き上げ、不動産の取得、高収益部門の分社化 | 資産構成の変動はタイミングが近すぎると否認リスクが高い |
| 1年前〜 | 役員退職金の準備、大型設備投資の実行、不良資産の処分 | 利益の圧縮効果は当期に集中。退職金の支給は退任と同時に |
| 承継時 | 株式の贈与・事業承継税制の適用・金庫株の活用 | 評価額が最も低いタイミングで株式を移転する |
事業承継税制の活用については「事業承継税制の全体像」をご参照ください。相続税の基本的なしくみは「相続税の計算方法」で解説しています。
ケーススタディ:年商8億円の製造業D社の場合
創業40年の製造業D社のオーナー社長(70歳)が長男に事業承継するケースで、複数の対策を組み合わせたシミュレーションを見てみましょう。
📐 D社の現況
- 会社規模:中会社の大(L=0.90)
- 発行済株式数:30,000株
- 当期利益:1億2,000万円、配当:年600万円
- 簿価純資産:5億円、相続税評価額ベースの純資産:9億円(土地の含み益4億円)
- 類似業種比準価額:1株4,800円、純資産価額:1株18,000円
- 対策前の評価額(併用方式):1株6,120円 → 全株式1億8,360万円
| 実施した対策 |
効果 |
| ①配当を無配に変更(特別配当に振替) | 配当要素bがゼロ。2期後に効果が確定 |
| ②先代社長に退職金1億8,000万円を支給(月額150万円×40年×功績倍率3.0) | 当期利益が▲6,000万円の赤字に。利益要素cがゼロ。簿価純資産も大幅減少 |
| ③従業員持株会に株式3,000株を配当還元方式(1株500円)で売却 | オーナーの持株が27,000株に減少。相続財産が1億500万円分圧縮 |
3つの対策の組み合わせにより、対策後の類似業種比準価額は1株約1,200円まで低下し、併用方式での評価額は1株約2,880円、27,000株×2,880円=約7,776万円となります。対策前の1億8,360万円から約1億584万円の引き下げ(▲57.6%)です。
💡 実務のポイント
このケーススタディのポイントは、退職金による一時的な効果と、無配政策・従業員持株会による恒久的な効果を組み合わせている点です。退職金の効果は当期限りですが、翌期以降も類似業種比準方式の利益要素は2期平均で計算されるため、赤字の翌期は直前2期平均が大幅に下がります。このタイミングを逃さず贈与(または事業承継税制の適用)を行うことが成功の鍵です。
自社株対策を税理士に依頼すべき理由
自社株の引き下げ対策は、評価方法の知識だけでなく、法人税・所得税・相続税の横断的な知識と、組織再編・会社法の理解が必要です。とくに次の場面では専門家のサポートが不可欠です。
退職金の適正額の算定(功績倍率が過大とされないためのエビデンス整備)、持株会社スキームの設計(株式等保有特定会社に該当しないための資産構成のコントロール)、従業員持株会の設立(規約の整備と民主的運営体制の構築)、対策のタイミングの最適化(否認リスクを回避するための計画的なスケジューリング)、そして事業承継税制との組み合わせ(引き下げ後に税制を適用することで猶予税額自体を最小化)です。
贈与税の基本については「贈与税のしくみと基礎知識」をご参照ください。
よくある質問(FAQ)
自社株の引き下げ対策はいつから始めるべきですか?
理想は事業承継の5年前からです。持株会社の設立や従業員持株会の整備には時間がかかり、資産構成の変動は直前すぎると否認リスクが高まります。遅くとも3年前には税理士と相談を開始することをお勧めします。
配当をゼロにすると株主から反発がありませんか?
オーナーが100%保有している会社であれば株主総会で無配を決議するのは容易です。通常配当をゼロにしつつ特別配当で同額を支給すれば、株主が受け取る金額は変わらず、類似業種比準方式の配当要素だけがゼロになります。
退職金を過大に支給するとどうなりますか?
退職金が「不相当に高額」と認定されると、過大部分は損金不算入となり、法人税の追徴課税を受けます。適正額は「最終月額報酬×在任年数×功績倍率」で計算するのが一般的で、功績倍率は社長で2.0〜3.0倍程度が目安です。同業種・同規模の退職金支給事例を収集してエビデンスを整備しておくことが重要です。
持株会社スキームのデメリットは何ですか?
主なデメリットは3つです。1つ目は、持株会社が株式等保有特定会社に該当すると類似業種比準方式が使えなくなることです。2つ目は、設立や株式移転のコスト(登記費用・税理士報酬等)がかかることです。3つ目は、グループ経営の管理コスト(決算・申告が2社分)が増えることです。メリットとデメリットを比較した上で判断してください。
従業員持株会への売却価格は自由に決められますか?
従業員持株会の会員は通常「同族株主以外」に該当するため、配当還元方式による評価額(一般的に非常に低額)以上であれば税務上の問題はありません。ただし、持株会が形骸化して実質的にオーナー一族が支配していると認定されると、原則的評価方式が適用され、低額譲渡として贈与税の問題が生じます。
金庫株を取得した場合の税務上の取り扱いは?
会社がオーナーから株式を買い取る場合、売却代金のうち「資本金等の額に対応する部分」を超える金額は「みなし配当」として所得税の課税対象になります(最高税率55.945%)。また、株式の譲渡所得としても課税されるため、二重課税の調整が必要です。金庫株の活用は税負担のシミュレーションが不可欠です。
事業承継税制と引き下げ対策は併用できますか?
はい、併用可能であり、むしろ併用が最も効果的です。引き下げ対策で評価額を下げた上で事業承継税制を適用すれば、猶予税額そのものが小さくなり、将来的に猶予が取り消された場合のリスクも軽減されます。引き下げ後に事業承継税制を適用するのが実務上の定石です。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 自社株の引き下げは「類似業種比準方式の3要素」と「純資産価額方式の含み益」のどちらに効くかで手法を選ぶ
- 最もインパクトが大きいのは利益(c)の引き下げ。役員退職金と大型設備投資が代表的
- 一時的対策(退職金・設備投資)と恒久的対策(分社化・持株会社・従業員持株会)を組み合わせるのが定石
- 持株会社・従業員持株会・金庫株の3大スキームは効果もリスクも異なる。自社の状況に合わせて選択
- すべての対策に「事業上の合理性」が必要。不自然な操作は税務調査で否認されるリスクがある
- 事業承継の5年前からの計画的な着手が成功の鍵
自社株の引き下げ対策は、評価方法の知識と実行のタイミングの両方が求められます。まずは現在の自社株の評価額を把握し、どの手法が最も効果的かのシミュレーションから始めましょう。
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