【税理士×公認会計士が解説】相続税の計算方法|税率・速算表・2割加算を具体例で解説

【税理士×公認会計士が解説】相続税の計算方法|税率・速算表・2割加算を具体例で解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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相続税の計算方法|税率・速算表・2割加算を具体例で解説

「相続税は結局いくらかかるの?」「計算方法が複雑でよくわからない」という方に向けて、相続税の計算手順を7ステップに分解し、3つの具体例で全計算過程を公開します。この記事を読めば、ご自身のケースでの概算税額がわかります。

🏆 結論:相続税の計算は7ステップで完結する

相続税の計算手順は次の7ステップです。①各人の課税価格を集計 → ②課税価格の合計額を算出 → ③基礎控除額を差し引き → ④法定相続分で仮按分 → ⑤速算表で各人の仮税額を計算 → ⑥仮税額を合計して相続税の総額を算出 → ⑦実際の取得割合で按分+税額控除。ポイントは「法定相続分で仮計算→実際の取得割合で按分」の二段階方式です。

相続税の計算の全体像|7ステップの流れ

相続税の計算は、全部で7つのステップで進みます。手順は複雑に見えますが、1つずつ順を追って計算すれば理解できます。まずは全体の流れを押さえましょう。

STEP 計算内容 計算式・ポイント
1各相続人の課税価格を集計取得財産+みなし相続財産−非課税枠−債務・葬式費用+生前贈与加算
2課税価格の合計額を算出STEP1で集計した各人の課税価格を合算
3課税遺産総額を計算課税価格の合計額 − 基礎控除額(3,000万+600万×法定相続人数)
4法定相続分で仮按分課税遺産総額 × 各人の法定相続分
5速算表で各人の仮税額を計算仮按分額 × 税率 − 速算控除額
6相続税の総額を算出STEP5で求めた各人の仮税額を合計
7各人の納付税額を確定相続税の総額 × 実際の取得割合 ± 2割加算 − 税額控除

📊 公認会計士の視点

相続税の計算で最も理解しにくいのは「STEP4〜6の二段階方式」です。まず法定相続分で仮に按分して全員の税額の合計(相続税の総額)を求め、その後STEP7で実際の取得割合に応じて按分し直します。この方式により、遺産の分け方に関係なく相続税の総額は一定になります。つまり「配偶者が多くもらっても少なくもらっても、家族全体の税負担は変わらない」のです(配偶者の税額軽減を適用する前の段階で)。

相続税の基本的な仕組みや対象者については「相続税とは?課税の仕組み・対象者・基礎控除をわかりやすく解説」をご覧ください。

相続税の速算表(税率と控除額)

相続税の税率は、相続税法第16条に基づく超過累進税率で、10%〜55%の8段階です。STEP5で使用する速算表は以下のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 速算控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超〜3,000万円以下15%50万円
3,000万円超〜5,000万円以下20%200万円
5,000万円超〜1億円以下30%700万円
1億円超〜2億円以下40%1,700万円
2億円超〜3億円以下45%2,700万円
3億円超〜6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

参考: 国税庁「No.4155 相続税の税率」

【具体例①】配偶者+子2人で遺産1億円のケース

📐 シミュレーション前提条件

  • 被相続人:父(死亡)
  • 相続人:妻、長男、長女の3人
  • 正味の遺産総額:1億円(課税価格の合計額)
  • 遺産分割:法定相続分どおり(妻1/2、長男1/4、長女1/4)

計算ワークシート

STEP 計算内容 金額
STEP2課税価格の合計額1億円
STEP3基礎控除額(3,000万+600万×3人)▲4,800万円
STEP3課税遺産総額5,200万円
STEP4妻の仮按分額(5,200万×1/2)2,600万円
STEP4長男・長女の仮按分額(5,200万×1/4)各1,300万円
STEP5妻の仮税額(2,600万×15%−50万)340万円
STEP5長男・長女の仮税額(1,300万×15%−50万)各145万円
STEP6相続税の総額(340万+145万×2)630万円
STEP7妻の税額(630万×1/2)→ 配偶者の税額軽減適用0円
STEP7長男・長女の税額(630万×1/4)各157.5万円

※妻は法定相続分(1/2 = 5,000万円)を取得し、1億6,000万円以内のため配偶者の税額軽減により税額ゼロ。家族全体の実質負担額は315万円。

【具体例②】配偶者のみで遺産8,000万円のケース

📐 シミュレーション前提条件

  • 被相続人:夫(死亡)、子どもなし、父母も既に死亡
  • 相続人:妻のみ(1人)
  • 正味の遺産総額:8,000万円
STEP 計算内容 金額
STEP3基礎控除額(3,000万+600万×1人)▲3,600万円
STEP3課税遺産総額4,400万円
STEP4〜5妻の仮按分額=4,400万(全額)→ 4,400万×20%−200万680万円
STEP6相続税の総額680万円
STEP7配偶者の税額軽減適用(8,000万 ≦ 1億6,000万)0円

配偶者のみが相続人のケースでは、1億6,000万円まで配偶者の税額軽減で非課税になります。ただし、申告書の提出は必要です。

【具体例③】子3人のみで遺産1億5,000万円のケース

📐 シミュレーション前提条件

  • 被相続人:母(死亡)、配偶者は既に死亡(二次相続)
  • 相続人:長男、次男、長女の3人
  • 正味の遺産総額:1億5,000万円
  • 遺産分割:均等(各1/3)
STEP 計算内容 金額
STEP3基礎控除額(3,000万+600万×3人)▲4,800万円
STEP3課税遺産総額1億200万円
STEP4各人の仮按分額(1億200万×1/3)各3,400万円
STEP5各人の仮税額(3,400万×20%−200万)各480万円
STEP6相続税の総額(480万×3人)1,440万円
STEP7各人の納付税額(1,440万×1/3)各480万円

⚠️ 注意:二次相続は税負担が重くなる

配偶者がいない二次相続では、配偶者の税額軽減が使えません。同じ遺産1億5,000万円でも、一次相続(配偶者あり)なら家族の実質負担は大幅に軽減されますが、二次相続では1,440万円が全額負担となります。一次相続で配偶者が多く取得すると二次相続の税負担が増えるため、一次・二次を通したシミュレーションが不可欠です。

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遺産総額別×家族構成別の相続税早見表

ご自身のケースの概算税額を知りたい方は、以下の早見表をご活用ください。配偶者の税額軽減適用後の家族全体の実質負担額を示しています。

遺産総額 配偶者+子1人 配偶者+子2人 配偶者+子3人 子2人のみ
5,000万円40万円10万円0円80万円
8,000万円235万円175万円138万円470万円
1億円385万円315万円263万円770万円
1.5億円920万円748万円665万円1,840万円
2億円1,670万円1,350万円1,218万円3,340万円
3億円3,460万円2,860万円2,540万円6,920万円
5億円7,605万円6,555万円5,963万円1億5,210万円

※配偶者ありの場合は法定相続分どおりの分割を想定。配偶者の税額軽減適用後の金額。概算値のため、実際の税額とは異なる場合があります。

相続税額の2割加算とは?対象者と計算方法

被相続人の一親等の血族(子・父母)および配偶者以外の方が財産を取得した場合、算出された相続税額に20%が加算されます(相続税法第18条)。

2割加算の対象者判定表

財産を取得した人 2割加算 理由
配偶者× 対象外配偶者は常に対象外
子(実子・養子)× 対象外一親等の血族
孫(代襲相続人)× 対象外代襲相続人は一親等の血族とみなす
孫(養子=孫養子)○ 対象代襲相続人でない養子の場合は加算対象
父母× 対象外一親等の血族
兄弟姉妹○ 対象二親等の血族
甥・姪(代襲相続人)○ 対象三親等の血族
法定相続人以外の受遺者○ 対象血族でない第三者

参考: 国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」

💡 実務のポイント

実務で注意が必要なのは「孫養子」のケースです。祖父が孫を養子にして法定相続人に含めると基礎控除は600万円増えますが、孫養子が取得した財産には2割加算が適用されます。遺産総額や相続人の構成によっては、2割加算の負担増が基礎控除増のメリットを上回ることがあります。必ず事前にシミュレーションを行ってください。

配偶者の税額軽減の仕組みと注意点

配偶者の税額軽減は相続税の中で最も強力な制度です。配偶者が取得した遺産が、法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額以内であれば、配偶者の相続税は全額免除されます。

配偶者の税額軽減の要件

要件 内容
対象者法律上の配偶者(婚姻期間の長短は問わない)
非課税限度額法定相続分 or 1億6,000万円のいずれか大きい方
申告要件申告書の提出が必須(税額ゼロでも提出必要)
仮装・隠ぺい仮装・隠ぺいされた財産には適用不可

一次相続vs二次相続の税額比較

📐 前提条件

  • 夫の遺産:2億円。相続人:妻+子2人
  • 妻固有の財産:なし
  • パターンA:一次相続で妻が1億円(1/2)取得
  • パターンB:一次相続で妻が1億6,000万円(4/5)取得
項目 パターンA(妻1/2取得) パターンB(妻4/5取得)
一次相続の税額(家族合計)1,350万円540万円
二次相続の遺産(妻取得分)1億円1億6,000万円
二次相続の税額(子2人合計)770万円2,140万円
一次+二次の合計税額2,120万円2,680万円
差額パターンBはAより560万円多い

※概算値です。妻固有の財産なし・特例適用なしの前提。実際の金額は個別の状況により異なります。

💡 実務のポイント

「配偶者に多く渡せば税金が安くなる」と思いがちですが、一次・二次の合計では逆転するケースが多いです。二次相続では基礎控除の法定相続人が1人減り(配偶者がいなくなるため)、配偶者の税額軽減も使えません。遺産分割協議の際は、必ず二次相続までの合計税額をシミュレーションしてから割合を決めることをお勧めしています。

相続税で使える税額控除制度の一覧

STEP7で適用できる主な税額控除は以下のとおりです。

控除名 控除額・内容 申告要件
配偶者の税額軽減法定相続分 or 1億6,000万円まで非課税申告必須
未成年者控除(18歳−相続時の年齢)×10万円申告必要
障害者控除(85歳−相続時の年齢)×10万円(特別障害者は20万円)申告必要
相次相続控除10年以内に2回相続が発生した場合の軽減申告必要
外国税額控除海外の財産に外国で課税された場合の二重課税防止申告必要
贈与税額控除生前贈与加算された財産に係る贈与税額を控除申告必要

法定相続人の範囲や法定相続分については「法定相続人の範囲と相続分|順位・割合を図解で完全解説」で詳しく解説しています。

計算を間違えやすいポイントと対策

よくある計算ミス5選

間違いやすいポイント 正しい理解
遺産総額にそのまま税率をかけてしまう基礎控除を引いた後の「課税遺産総額」に対して、法定相続分で仮按分してから税率をかける
基礎控除と配偶者の税額軽減を混同する基礎控除はSTEP3で全員に適用。配偶者の税額軽減はSTEP7で配偶者個人に適用。適用タイミングが異なる
生前贈与の加算を忘れる相続開始前7年以内の暦年贈与と相続時精算課税の贈与は課税価格に加算する必要がある
みなし相続財産の非課税枠を忘れる生命保険金・死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある
2割加算の対象者を見落とす兄弟姉妹・甥姪・孫養子・受遺者は2割加算の対象。代襲相続の孫は対象外

💡 実務のポイント

相続税の申告で最もよくあるのは「生前贈与の持ち戻し忘れ」です。特に令和6年以降の相続では、暦年課税の持ち戻し期間が段階的に3年から7年に延長されているため、持ち戻し対象かどうかの判定が複雑になっています。被相続人の過去の贈与税申告書を必ず確認してください。

課税される財産とされない財産の区分については「相続税がかかる財産・かからない財産|課税財産と非課税財産の一覧」をご覧ください。

相続税の計算を税理士に依頼すべきケース

自分で計算できるケースと税理士に依頼すべきケースの判断基準

判断基準 自分でも可能 税理士に依頼推奨
財産の種類預貯金・上場株式のみ不動産・非上場株式・海外資産あり
遺産総額基礎控除ギリギリ(超過額が少額)基礎控除を大幅に超える
特例の適用特例なしで計算可能小規模宅地等の特例・農地等の納税猶予あり
相続人の関係配偶者+子のシンプルな構成養子・代襲相続・遺言による配分がある

💡 実務のポイント

税理士への報酬は遺産総額の0.5〜1%が相場ですが、土地の評価で減額補正(不整形地補正・広大地評価等)を適切に行うだけで数百万円の税額差が出ることがあります。特に土地を複数お持ちの場合は、税理士報酬を支払っても節税効果の方が大きいケースがほとんどです。

よくある質問(FAQ)

相続税の計算で速算表の「控除額」とは何ですか?
速算表の控除額は、超過累進税率を簡便に計算するための便宜的な数値です。相続税は本来、金額の区分ごとに異なる税率を段階的に適用しますが、速算表を使えば「取得金額×税率−控除額」の1回の計算で正しい税額が求められます。控除額そのものに特別な意味はなく、税額を減らすための「控除」とは異なります。
遺産の分け方によって相続税の総額は変わりますか?
相続税の総額は変わりません。STEP4〜6で法定相続分に基づいて算出するため、実際の遺産分割がどうなっても相続税の総額は一定です。ただし、STEP7の配偶者の税額軽減や2割加算により、各相続人の実際の納付税額は遺産の分け方によって変動します。
配偶者が全財産を相続すれば相続税はゼロですか?
一次相続では配偶者の税額軽減により税額がゼロまたは大幅に軽減されます。しかし、配偶者が取得した財産は二次相続(配偶者が亡くなったとき)で子どもの課税対象となります。二次相続では配偶者の税額軽減が使えないため、一次・二次の合計では税負担が増えるケースが多いです。
相続税の2割加算は孫養子の全員が対象ですか?
いいえ。被相続人の子が先に死亡し、代襲相続人として相続する孫養子は2割加算の対象外です。一方、被相続人の子が健在であるにもかかわらず孫を養子にしたケースでは、その孫養子は2割加算の対象になります。
生前贈与を受けていた場合、相続税の計算にどう影響しますか?
相続開始前7年以内の暦年課税による贈与は、STEP1の課税価格に加算されます。また、相続時精算課税を選択していた場合は、その贈与財産の全額(基礎控除相当額を除く)が加算されます。既に納めた贈与税は相続税から控除されるため二重課税にはなりませんが、贈与税より相続税の方が高い場合は差額を納付することになります。
年金受給権は相続税の課税対象になりますか?
はい。被相続人の死亡により遺族が受け取る年金受給権(企業年金・個人年金など)は、相続税の課税対象となる「みなし相続財産」です。年金の種類により評価方法が異なりますが、一般的には年金の支給残額を一定の割引率で現在価値に割り戻して評価します。ただし、遺族年金(国民年金・厚生年金の遺族給付)は非課税です。
小規模宅地等の特例を使うと相続税はどのくらい減りますか?
自宅の土地(特定居住用宅地)であれば最大330㎡まで評価額が80%減額されます。たとえば路線価評価で5,000万円の土地が1,000万円で評価されるため、大幅な税額軽減になります。ただし、適用には相続人の居住要件や保有要件があり、申告書の提出が必須です。
相続税の申告はe-Taxで行えますか?
はい。相続税の申告もe-Tax(電子申告)で行うことができます。令和5年度のe-Tax利用率は37.1%で年々上昇しています。e-Taxを利用すると、書類の郵送が不要で、マイナポータルから申告状況を確認できるメリットがあります。なお、初めての方は税理士に依頼して電子申告を行ってもらうことも可能です。
相続税を多く納めすぎた場合はどうなりますか?
相続税を納めすぎた場合は「更正の請求」を行うことで還付を受けられます。更正の請求の期限は、法定申告期限から5年以内です。よくあるケースとして、遺産分割が申告後にまとまり配偶者の税額軽減を適用できるようになった場合や、土地の評価額が過大であったことが判明した場合があります。
自分で概算額を出したいのですが、最低限何が必要ですか?
概算額を出すために最低限必要な情報は、①正味の遺産総額(プラスの財産−マイナスの財産)、②法定相続人の数と構成、③配偶者の有無の3つです。これらがわかれば、この記事の早見表でおおよその税額を確認できます。正確な計算には財産評価(特に不動産)が必要ですので、概算額と実際の税額には差が出ることがあります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 相続税の計算は7ステップ:課税価格→基礎控除→法定相続分で仮按分→速算表→税額合計→実際の取得割合で按分→税額控除
  • 税率は10〜55%の8段階超過累進税率。速算表の「控除額」は計算の便宜上の数値
  • 2割加算の対象:兄弟姉妹・甥姪・孫養子・受遺者。配偶者・子・代襲孫・父母は対象外
  • 配偶者の税額軽減は法定相続分 or 1億6,000万円まで非課税。ただし二次相続との合計で判断が必要
  • 一次相続で配偶者が多く取得すると二次相続の税負担が増えるため、通算シミュレーションが不可欠
  • 不動産や非上場株式がある場合は税理士への依頼を推奨。土地の減額補正で数百万円の差が出ることも

相続税の計算は手順どおりに進めれば概算額を把握できますが、正確な計算には財産評価や特例適用の専門知識が必要です。概算で「自分のケースでは相続税がかかりそうだ」と判断できたら、早めに税理士へご相談ください。

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