公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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「法人化した方が税金は安くなるの?」と気になっている個人事業主に向けて、年収500万〜2,000万円の5パターンで税金・社会保険料の総額を比較します。この記事を読めば、自分の所得水準で法人化すべきかどうかを判断できます。


「法人化した方が税金は安くなるの?」と気になっている個人事業主に向けて、年収500万〜2,000万円の5パターンで税金・社会保険料の総額を比較します。この記事を読めば、自分の所得水準で法人化すべきかどうかを判断できます。
🏆 結論:年間所得800万円がひとつの分岐点
個人事業主と法人では、課される税金の種類・税率・社会保険料のしくみが根本的に異なります。事業所得が年間800万円を超えてくると、法人化による税負担の軽減効果が明確に現れ始めます。ただし、社会保険料の会社負担分や顧問税理士の費用を含めた「総コスト」で比較することが重要です。以下で年収帯別にシミュレーションしますので、あなたの所得に近い数字をチェックしてください。
個人事業主と法人では、そもそも納める税金の名前からして異なります。個人事業主は「所得税」が中心で、法人は「法人税」が中心です。それぞれに住民税・事業税が加わりますが、計算方法も税率構造もまったく別物です。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 主な税金 | 所得税・復興特別所得税 | 法人税・地方法人税 |
| 住民税 | 個人住民税(所得割+均等割) | 法人住民税(法人税割+均等割) |
| 事業税 | 個人事業税(5%・一部非課税業種あり) | 法人事業税+特別法人事業税 |
| 税率構造 | 累進課税(5〜45%、住民税10%別途) | ほぼ一定(中小法人15%/23.2%) |
| 消費税 | 課税売上1,000万円超で課税 | 課税売上1,000万円超で課税 |
| 赤字時 | 所得税・住民税所得割はゼロ | 法人住民税均等割は赤字でも約7万円 |
| 赤字繰越 | 青色申告で3年 | 青色申告で10年 |
最も大きな違いは税率のしくみです。個人の所得税は所得税法第89条に基づく累進課税制度で、所得が増えるほど税率が上がります。最高税率は所得税45%+住民税10%=合計55%です。一方、法人税は法人税法第66条に基づき、中小法人の場合、年800万円以下の部分は15%(租税特別措置法第42条の3の2)、800万円超の部分は23.2%です。
| 課税所得 | 所得税率 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 〜195万円 | 5% | 10% | 15% |
| 195〜330万円 | 10% | 10% | 20% |
| 330〜695万円 | 20% | 10% | 30% |
| 695〜900万円 | 23% | 10% | 33% |
| 900〜1,800万円 | 33% | 10% | 43% |
| 1,800〜4,000万円 | 40% | 10% | 50% |
| 4,000万円超 | 45% | 10% | 55% |
💡 実務のポイント
法人化の相談を受ける際、「法人税率は23.2%だから所得税より安い」と単純比較する方がいますが、これは誤りです。法人で利益を出した後、社長が役員報酬を受け取れば、その報酬に対して所得税と住民税がかかります。つまり「法人税+社長個人の税金」の合計で比較しなければ意味がありません。
個人事業主は国民健康保険(国保)と国民年金に加入します。国保は所得に応じて保険料が上がりますが、上限額があります(年間約106万円・2025年度東京23区の場合)。国民年金は定額で月額16,980円(令和7年度)です。
法人を設立すると、社長1人でも社会保険(健康保険+厚生年金)に強制加入です。保険料は報酬額に応じて計算され、会社と個人が半分ずつ負担します。見落としがちなのが、この「会社負担分」です。会社が支払う社会保険料は損金(経費)になりますが、キャッシュアウトは間違いなく発生します。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人(社長1人) |
|---|---|---|
| 医療保険 | 国民健康保険 | 健康保険(協会けんぽ等) |
| 年金 | 国民年金(定額) | 厚生年金(報酬比例) |
| 保険料負担 | 全額自己負担 | 会社50%+個人50% |
| 扶養制度 | なし(家族も個別に加入) | あり(一定収入以下の配偶者・子を扶養可) |
| 将来の年金額 | 老齢基礎年金のみ(月約6.8万円) | 基礎年金+厚生年金(報酬に応じて加算) |
📊 公認会計士の視点
法人化の損益分岐点を計算する際、社会保険料を「税金」に含めるかどうかで結論が大きく変わります。社会保険料は税金ではありませんが、事業の手取りを減らすキャッシュアウトであることに変わりありません。当事務所では「税金+社会保険料+顧問税理士費用」の総コストで比較することをお勧めしています。
📐 シミュレーション前提条件
| 年間事業所得 | 個人の総負担額 | 法人の総負担額 | 差額(+は個人が多い) |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 約113万円 | 約126万円 | ▲13万円 |
| 700万円 | 約186万円 | 約180万円 | +6万円 |
| 1,000万円 | 約305万円 | 約263万円 | +42万円 |
| 1,500万円 | 約506万円 | 約397万円 | +109万円 |
| 2,000万円 | 約744万円 | 約535万円 | +209万円 |
※個人の総負担額=所得税+住民税+個人事業税+国保+国民年金。法人の総負担額=法人税等+均等割+社長個人の所得税・住民税+社会保険料(会社負担+個人負担合計)。概算値です。個別の状況により異なります。
💡 実務のポイント
上記の法人側シミュレーションでは利益を全額役員報酬として支給する前提にしていますが、実際には法人に利益を残して内部留保にする方が有利なケースもあります。役員報酬の設定額を変えるだけで、法人税と所得税のバランスが変わります。この最適化は次のセクションで解説します。
シミュレーションの結果を見ると、事業所得700万円あたりが分岐点です。ここを境に法人化のメリットが出始め、所得が上がるほど差は広がります。ただし、700万円前後では差額がわずか(年間6万円程度)なので、法人設立費用(約25万円)や税理士顧問料(年間30〜50万円)を考えると、すぐに法人化しても手取りが増えるとは限りません。
税金・社会保険料だけでなく、法人化に伴う追加コストも含めた損益分岐点を計算します。
| 法人化の追加コスト | 年間費用目安 |
|---|---|
| 税理士顧問料 | 30万〜50万円 |
| 法人住民税均等割(赤字でも発生) | 約7万円 |
| 社会保険の事務手続き(外注する場合) | 3万〜10万円 |
| 決算申告費用(顧問料に含む場合あり) | 10万〜20万円 |
| 追加コスト合計 | 約50万〜87万円 |
したがって、税金差額が年間50万円以上になる「事業所得800万〜900万円」あたりが、追加コストを含めても法人化が有利になる実質的な分岐点です。
⚠️ 注意
ネット上で「所得500万円で法人化がお得」という記事を見かけることがありますが、多くの場合、税理士顧問料や社会保険料の会社負担分を含めていません。実務で法人化の相談を受けた際、追加コストを含めると「今はまだ早い」という結論になるケースは珍しくありません。
法人化の最大の節税メカニズムは、事業の利益を「法人の所得」と「社長の役員報酬(給与所得)」に分けられることです。役員報酬を増やせば法人税は下がりますが、社長個人の所得税が上がります。この「シーソー関係」の最適点を見つけることが重要です。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 報酬500万円 | 報酬700万円 | 報酬900万円 |
|---|---|---|---|
| 法人の課税所得 | 約430万円 | 約225万円 | 約20万円 |
| 法人税等 | 約104万円 | 約56万円 | 約12万円 |
| 社長の所得税・住民税 | 約48万円 | 約84万円 | 約133万円 |
| 社会保険料(会社+個人) | 約150万円 | 約210万円 | 約268万円 |
| 総負担額 | 約309万円 | 約357万円 | 約420万円 |
| 法人+個人の手取り合計 | 約691万円 | 約643万円 | 約580万円 |
※法人の課税所得=事業利益−役員報酬−社会保険料(会社負担分)。概算値です。
一見すると「役員報酬を低く設定して法人に利益を残す」方が総負担は少なくなりますが、法人に貯まった利益を社長が個人で使うには、将来的に配当や退職金として受け取る必要があります。役員報酬の設定は「今の手取り」と「将来の受け取り方」のバランスで決めるものです。
役員報酬の基本ルールについては「役員報酬の基本ルール|定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の違い」で詳しく解説しています。
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鮎澤パートナーズに相談する法人化の最大のメリットは、事業利益を「会社」と「社長個人」に分散できることです。配偶者を役員にして報酬を支給すれば、世帯全体の所得税を下げられます(ただし実際に業務に従事している必要があります)。
法人は出張旅費規程を定めることで、社長への日当を損金算入できます。受け取った日当は社長個人の非課税所得になるため、「法人の経費」かつ「個人の非課税収入」という二重のメリットがあります。個人事業主にはこの制度がありません。
法人名義で社宅を借り、社長から賃料相当額の一部を徴収する方法です。会社が負担した差額は損金になり、社長個人の給与課税もされません。実務で見ていると、年間50万〜100万円の節税効果が出ているケースが多いです。
法人契約の生命保険は、保険種類・最高解約返戻率に応じて一定割合が損金算入できます。個人事業主の場合、生命保険料控除は最大12万円が上限ですので、その差は大きいです。ただし、令和元年の通達改正で損金算入ルールが厳格化されたため、保険商品選びは慎重に行う必要があります。
法人は青色申告で最長10年間、欠損金を繰り越せます(法人税法第57条)。個人事業主の青色申告は3年が上限です。創業初期に赤字が出ても、将来の黒字と相殺できる期間が長いのは大きなメリットです。
法人の青色申告のメリットと申請方法は「法人の青色申告承認申請|メリット・申請期限・書き方を完全ガイド」をご覧ください。
株式会社の設立には登録免許税15万円+定款認証5万2,000円+実費で、最低でも約25万円が必要です。合同会社であれば登録免許税6万円+実費で約10万円に抑えられます。
株式会社と合同会社の違いについては「株式会社と合同会社の違いを比較|設立費用・信用力・税金で選ぶ最適解」で詳しく比較しています。
個人事業主は赤字であれば所得税・住民税の所得割はゼロですが、法人は赤字でも法人住民税の均等割(東京23区で資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合、年7万円)が発生します。
法人は社長1人でも社会保険に加入する義務があります。将来の年金額が増えるメリットはありますが、毎月のキャッシュアウトは確実に増えます。この点がシミュレーションの結果を大きく左右するポイントです。
法人決算、法人税申告、社会保険の届出、役員変更の登記など、個人事業主にはない事務手続きが発生します。多くの場合、税理士・社労士への業務委託が必要になります。
法人決算の全体像は「法人決算の流れを完全ガイド|初めての決算でも迷わない手順と必要書類一覧」で解説しています。
🔷 社労士の視点
法人化して社会保険に加入すると、傷病手当金・出産手当金など国民健康保険にはない給付を受けられます。特に出産手当金は標準報酬日額の3分の2が最長98日間支給されるため、経営者本人や配偶者が出産を予定している場合、社会保険加入のメリットは大きいです。
以下のYes/Noの質問に順番に答えてください。あなたの状況に合った判断の方向性が分かります。
| ステップ | 質問 | Yesの場合 | Noの場合 |
|---|---|---|---|
| ① | 年間事業所得が800万円以上ある? | → ②へ | → 法人化は時期尚早の可能性大 |
| ② | 今後2〜3年も同水準の利益が見込める? | → ③へ | → 利益が安定してから検討 |
| ③ | 従業員を雇う予定がある or 法人取引が多い? | → ④へ(信用面でもメリット大) | → ④へ |
| ④ | 税理士への顧問料(年30〜50万円)を許容できる? | → 法人化を具体的に検討 | → 自社で決算する覚悟があるなら検討 |
💡 実務のポイント
「所得は700万円だけど、来年から大口の法人取引が始まる」というケースでは、信用力アップのために所得水準に関係なく法人化を勧めることがあります。税金のメリットだけでなく、取引条件や融資の審査での有利さも含めて判断することが大切です。
経費率が低い(外注費・通信費程度)ため、売上がそのまま所得に近くなります。所得が高くなりやすいため、年間売上が800万〜1,000万円を超えたら法人化の検討をお勧めします。社宅制度や出張旅費日当との相性も良い業種です。
仕入原価や人件費で経費率が高い業種です。売上が大きくても所得が低いケースが多いため、売上ではなく「所得(=利益)」で判断してください。消費税の課税事業者になるタイミングとのセットで検討するのが実務的です。
許認可の関係で法人が求められるケースがあります。建設業許可を取得する場合、個人事業から法人に切り替えると許可の引継ぎができないため、最初から法人で設立する方が合理的です。
📝 行政書士の視点
建設業許可は個人名義と法人名義で別扱いです。個人で取得した許可は法人に引き継げないため、法人化の際は新たに許可を取り直す必要があります。この手続きだけで1〜2ヶ月かかるうえ、許可が下りるまで該当業種の工事を請けられなくなるリスクがあります。建設業で将来的に法人化を考えている方は、最初から法人設立を検討してください。
事業用の車両や設備をリースで調達している場合、個人事業主と法人で税務処理が異なります。
リース取引は大きく「オペレーティングリース」(賃借処理)と「ファイナンスリース」(売買処理)に分かれます。法人の場合、所有権移転外ファイナンスリース取引は原則としてリース期間定額法で償却します。個人事業主でも同様の処理が必要ですが、法人の方がリース料を損金算入するタイミングの柔軟性があります。
リースした車両や設備の減価償却については「法人の減価償却の仕組みと実務|定額法・定率法・耐用年数表の使い方」も参考にしてください。
税金面で最も有利なタイミングは、以下の条件が揃った時です。
法人化の具体的なタイミング判断については「個人事業主の法人成りベストタイミング|売上・利益の判断基準と手続き」で詳しく解説しています。会社設立の全手順は「会社設立の流れと費用を完全ガイド|株式会社・合同会社の手続き・届出を徹底解説」をご覧ください。
2025年度税制改正で「防衛特別法人税」が創設されました。2026年4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額から500万円を控除した金額に4%の税率が課されます。
中小法人への影響を整理します。
| 基準法人税額 | 防衛特別法人税額 | 実質的な影響 |
|---|---|---|
| 500万円以下 | 0円 | 影響なし |
| 700万円 | 8万円 | 軽微 |
| 1,000万円 | 20万円 | 中程度 |
| 3,000万円 | 100万円 | 要注意 |
📢 令和7年度改正:防衛特別法人税の創設
基準法人税額500万円以下の法人(≒課税所得約3,300万円以下の中小法人)には影響ありません。多くの中小企業は控除額の範囲内に収まるため、法人化の損益分岐点に大きな変化はないでしょう。ただし、将来の事業拡大を見据えて把握しておく必要はあります。
📋 この記事のポイント
まずは「自分の所得水準で法人化すると、いくら手取りが変わるのか」を具体的な数字で確認することが第一歩です。シミュレーションは税理士に依頼すれば、あなた固有の条件(配偶者・扶養、個別の経費構造等)を反映した精度の高い試算を出してもらえます。
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