【税理士×行政書士のダブル監修】定款の作り方と記載事項|電子定款のメリットと公証人認証の手順

【税理士×行政書士のダブル監修】定款の作り方と記載事項|電子定款のメリットと公証人認証の手順
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

定款の作り方と記載事項|電子定款のメリットと公証人認証の手順

「定款って何を書けばいいの?」「電子定款にすると安くなるって本当?」と疑問に思っている創業者に向けて、定款の記載事項・作成手順・公証人認証の流れを完全ガイドします。この記事を読めば、定款作成で失敗しない具体的な手順がわかります。

🏆 結論:定款は「会社の憲法」— 絶対的記載事項の漏れは即無効

定款とは、会社の基本ルールを定めた書類です。会社法第26条に基づき、株式会社の設立には定款の作成と公証人の認証が必要です。記載事項は「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類に分かれ、絶対的記載事項(商号・目的・本店所在地・資本金・発起人の情報)が1つでも欠けると定款全体が無効になります。電子定款を選べば印紙代4万円が不要になるため、ほとんどの設立案件で電子定款を採用しています。

定款とは?基本的な位置づけ

「会社の憲法」と呼ばれる理由

定款とは、会社の目的・組織・運営に関する基本的なルールを文書にまとめたものです。国に「憲法」があるように、会社には「定款」があり、会社のあらゆる意思決定の根拠となります。会社法第26条第1項は「株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない」と定めています。

定款が必要な場面

定款は設立時に作成するだけでなく、設立後もさまざまな場面で必要になります。銀行口座の開設、融資の申込、許認可の申請、取引先との契約締結時など、会社の「身分証明書」として提示を求められる場面は多いです。

📝 行政書士の視点

設立後に「定款を変更したい」という相談をよく受けます。事業目的の追加、本店移転、役員構成の変更など、ビジネスが発展すれば定款変更は避けられません。変更には株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上)が必要です。設立時に将来を見据えた定款を作っておくと、後の手間とコストを大幅に減らせます。

定款の記載事項は3種類 — 絶対的・相対的・任意的

絶対的記載事項(記載がなければ定款自体が無効)

会社法第27条に定められた5項目です。1つでも欠けると定款全体が無効になります。

項目 記載内容 決め方のポイント
① 目的会社が行う事業の内容将来やりたい事業も含めて幅広く記載。許認可業種は正確な文言が必要
② 商号会社の正式名称「株式会社」の前後どちらに付けるかを決める。同一住所に同一商号は不可
③ 本店所在地本店の住所最小行政区画(市区町村)まででOK。番地まで入れると移転時に定款変更が必要
④ 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額資本金の額1円から可能だが、信用・融資・許認可を考慮して決める
⑤ 発起人の氏名又は名称及び住所出資する人の情報印鑑証明書と同じ表記にする

⚠️ 注意

「目的」の書き方で多いミスは、許認可業種の文言が不正確なケースです。たとえば建設業許可を取る場合、「建築工事業」「土木工事業」など正式な業種名を記載する必要があります。曖昧な表現だと許認可申請が通らないことがあるため、許認可を予定している場合は、事前に行政書士に相談することをお勧めします。

相対的記載事項(記載しないと効力が発生しない)

定款に記載しなくても定款は有効ですが、記載しなければその事項の効力は認められません。設立時に決めておくべき重要な項目が多いです。

項目 記載する場合の効果
株式の譲渡制限取締役会や株主総会の承認なしに株式を譲渡できなくなる(中小企業ではほぼ必須)
取締役会の設置取締役会を置く場合に記載。取締役3名以上+監査役1名以上が必要
監査役の設置監査役を置く場合に記載
株券の発行株券を発行する場合に記載。現在は不発行が主流
現物出資金銭以外の財産(不動産、車両等)で出資する場合に記載
発起人の報酬設立事務に対する報酬を支払う場合に記載

💡 実務のポイント

中小企業の設立で最も重要な相対的記載事項は「株式の譲渡制限」です。これを定款に記載しないと、株式が自由に譲渡されてしまい、知らないうちに見知らぬ第三者が株主になるリスクがあります。当事務所で支援する設立案件では、ほぼ100%の会社が譲渡制限を設けています。

任意的記載事項(記載は自由だが、載せると変更に特別決議が必要)

法律に違反しない範囲で自由に記載できる事項です。記載すると定款の一部になるため、変更には株主総会の特別決議が必要になります。

項目 記載の実務上のメリット
事業年度(決算月)決算月を明確にする。税務上の起算点にもなる
定時株主総会の招集時期「毎事業年度末日の翌日から3ヶ月以内」が一般的
取締役・監査役の員数「取締役は1名以上5名以内」のように上限を定める
役員の任期非公開会社は最長10年まで延長可能。登記コスト削減
配当の基準日剰余金の配当を行う基準日を明確にする

事業年度の決め方については「決算月の決め方|最適な事業年度を選ぶための基準と考え方」で詳しく解説しています。

定款の作成手順【5ステップ】

ステップ1:会社の基本事項を決める

定款を書き始める前に、以下の基本事項を決めます。

  1. 商号 — 「株式会社○○」or「○○株式会社」。類似商号の調査も必要
  2. 目的(事業内容) — メイン事業+将来的にやりたい事業+「前各号に附帯する一切の事業」
  3. 本店所在地 — 登記する住所
  4. 資本金の額 — 信用力や許認可要件を考慮して決定
  5. 発起人の出資額と株数 — 議決権比率に直結するため慎重に
  6. 事業年度 — 何月決算にするか
  7. 役員構成 — 取締役の人数、取締役会の有無、監査役の有無

資本金の決め方は「資本金はいくらにすべき?金額の決め方と税金・信用力への影響」をご参照ください。

ステップ2:定款の原案を作成する

基本事項が決まったら、Wordなどの文書作成ソフトで定款の原案を作成します。日本公証人連合会のウェブサイトに記載例が公開されているので、これをベースにカスタマイズするのが効率的です。

ステップ3:公証役場に事前チェックを依頼する

完成した定款案を、管轄の公証役場にメールまたはFAXで送り、公証人に内容をチェックしてもらいます。この事前チェックは無料で、修正が必要な箇所を教えてもらえます。電子定款は一度申請すると内容修正に手間と再費用がかかるため、この事前チェックは必ず行ってください。

ステップ4:定款を確定・署名する

紙定款の場合は、発起人全員が記名押印します。電子定款の場合は、PDFファイルに電子署名を付与します(電子署名の方法は後述)。

ステップ5:公証人の認証を受ける

株式会社の場合、定款は公証人の認証を受けなければ効力を持ちません(会社法第30条)。認証手続きは、本店所在地を管轄する公証役場で行います。

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電子定款と紙定款の違い — 4万円の差が出る理由

費用比較表

費用項目 紙定款 電子定款
収入印紙代40,000円0円
認証手数料(資本金100万円以上300万円未満)40,000円40,000円
認証手数料(資本金300万円以上)50,000円50,000円
謄本交付手数料約2,000円約2,000円
合計(資本金300万円の場合)約92,000円約52,000円

※認証手数料は2022年1月の改正後の金額。資本金100万円未満は30,000円(一定要件で15,000円)。

電子定款の最大のメリット:印紙代4万円が不要

電子定款はPDFファイルとして作成するため、印紙税法上の「文書」に該当しません。そのため収入印紙4万円が不要です。これが電子定款を選ぶ最大の理由です。認証手数料は紙も電子も同額なので、純粋に4万円の差が出ます。

電子定款のデメリット:環境準備に手間がかかる

電子定款を自分で作成するには、マイナンバーカード、ICカードリーダー、Adobe Acrobat(PDF署名対応ソフト)、法務省のオンライン申請システムの環境設定が必要です。初めての人がこれらを揃えるのに1〜2日かかるため、行政書士や電子定款作成サービスに依頼する方が実務的にはスムーズです。依頼費用は5,000円〜2万円程度が相場です。

💡 実務のポイント

当事務所で支援する設立案件の95%以上が電子定款です。自分で環境を準備して電子署名するケースはほとんどなく、行政書士が代理作成して電子署名を行うのが一般的です。代行費用を払っても、印紙代4万円がゼロになるため、トータルでは数万円の節約になります。

公証人認証の流れ【株式会社のみ必要】

認証が必要な法人と不要な法人

法人の種類 定款認証
株式会社必要
一般社団法人・一般財団法人必要
合同会社(LLC)不要
合資会社・合名会社不要

合同会社は定款認証が不要なため、認証手数料と印紙代の両方が不要です。株式会社と合同会社の選び方については「株式会社と合同会社の違いを比較|設立費用・信用力・税金で選ぶ最適解」をご覧ください。

認証手続きの流れ(電子定款の場合)

  1. 公証役場に予約 — 電話またはWebで認証日を予約。管轄は本店所在地
  2. 定款案の事前チェック — メール・FAXで定款を送り、公証人の修正指示を受ける
  3. オンライン申請 — 法務省の「登記・供託オンライン申請システム」で電子署名付き定款を送信
  4. 公証役場で認証 — 予約日に公証役場を訪問(テレビ電話でも可)。必要書類を提出し、手数料を支払う
  5. 認証済み定款の受領 — USB等に認証済み電子定款のデータを受け取る

認証当日に持参するもの

必要書類 備考
発起人全員の印鑑証明書発行から3ヶ月以内
USBメモリ等の記録媒体認証済み定款のデータを受け取るため
電子定款のプリントアウト2通公証役場で確認用に使う
実質的支配者の申告書日本公証人連合会サイトからダウンロード
身分証明書(運転免許証等)本人確認用
委任状(代理人が行く場合)発起人全員の実印で押印
認証手数料現金またはクレジットカード

定款作成でよくある失敗5選と対策

失敗①:事業目的が曖昧すぎて許認可が取れない

「コンサルティング業」のような広すぎる目的だけでは、建設業許可や人材派遣業許可の申請時に「目的に該当する事業が記載されていない」と指摘されることがあります。許認可を予定している場合は、監督官庁が求める正式な文言で記載してください。

失敗②:本店所在地を番地まで入れてしまう

定款に「東京都新宿区西新宿一丁目1番1号」と番地まで記載すると、同じ区内での移転でも定款変更(特別決議+登記)が必要になります。定款には「東京都新宿区」までにとどめ、具体的な住所は設立登記の申請書に記載するのが実務的です。

失敗③:役員の任期を2年にしてしまう

非公開会社(株式の譲渡制限あり)の取締役の任期は最長10年まで延長できます(会社法第332条第2項)。任期を2年にすると、2年ごとに重任登記(登録免許税1万円)が必要になります。1人会社や家族経営であれば10年に設定する方がコスト面で有利です。

失敗④:発起人の表記が印鑑証明書と一致しない

定款に記載する発起人の氏名・住所は、印鑑証明書の表記と完全に一致させる必要があります。旧字体・新字体の違い(「渡邉」と「渡辺」など)や、住所の表記揺れ(「丁目」と「-」の違い)があると、公証人から修正を求められます。

失敗⑤:電子定款の提出後に誤りが発覚する

電子定款は一度オンライン申請すると内容の修正ができません。修正が必要な場合は再申請となり、認証手数料が再度かかります。これを防ぐために、必ず事前に公証役場のチェックを受けてください。

定款作成を自分でやる vs 専門家に依頼する

判断基準フローチャート

条件 おすすめの方法
発起人1名・シンプルな事業内容・許認可なし会社設立サービス(freee・マネーフォワード等)で自作可能
許認可が必要な事業・現物出資あり行政書士に依頼するのが安全
発起人が複数・出資比率の調整が必要行政書士+税理士のダブル対応が望ましい
設立後すぐに融資を受けたい税理士に依頼し、事業計画書とセットで準備

📊 公認会計士の視点

定款の「資本金の額」は税務上の多くの判定基準になります。資本金1,000万円未満であれば消費税の免税期間が最大2年、法人住民税の均等割が最低額になるなど、税務上のメリットが大きいです。逆に、資本金が大きすぎると外形標準課税の対象になることもあります。定款作成時に税理士のアドバイスを受けることをお勧めします。

定款変更が必要になるケースと手続き

よくある定款変更の理由

設立後にビジネスが変化すると、定款の変更が必要になることがあります。変更には株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。1人会社であれば実質的に自分で決められますが、株主が複数いる場合は調整が必要です。

変更理由 必要な手続き 登録免許税
事業目的の追加・変更特別決議+目的変更登記30,000円
本店移転(管轄内)特別決議(定款に番地記載の場合)+本店移転登記30,000円
本店移転(管轄外)特別決議+旧管轄・新管轄への登記60,000円
商号変更特別決議+商号変更登記30,000円
資本金の増額(増資)株主総会決議+資本金変更登記増資額の0.7%(最低30,000円)

なお、設立後に定款を変更した場合、公証人の認証は不要です。認証が必要なのは設立時の原始定款のみです。

会社設立の全手順は「会社設立の流れと費用を完全ガイド|株式会社・合同会社の手続き・届出を徹底解説」で解説しています。法人成りのタイミングは「個人事業主の法人成りベストタイミング|売上・利益の判断基準と手続き」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

定款の絶対的記載事項とは何ですか?
会社法第27条に定められた5項目(商号、目的、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名・住所)です。1つでも記載が漏れると定款全体が無効になり、会社を設立できません。
電子定款にすると何が安くなりますか?
収入印紙代4万円が不要になります。電子定款はPDFファイルのため印紙税法上の「文書」に該当せず、印紙を貼る必要がありません。認証手数料(3万〜5万円)は紙定款と同額です。
合同会社でも定款は必要ですか?
はい、定款の作成は必要です。ただし、合同会社は公証人の認証が不要です。そのため、認証手数料と印紙代の両方がかからず、株式会社よりも設立費用を大幅に抑えられます。
定款の事業目的は何個まで書けますか?
法律上の上限はありません。ただし、あまりに多すぎると「何の会社かわからない」と金融機関や取引先に不信感を与えることがあります。実務的にはメイン事業3〜5項目+将来検討中の事業2〜3項目+「前各号に附帯する一切の事業」で10項目前後が一般的です。
定款認証の手数料はいくらですか?
2022年1月の改正後、資本金の額に応じて3段階に分かれます。資本金100万円未満は30,000円(一定要件で15,000円)、100万円以上300万円未満は40,000円、300万円以上は50,000円です。このほか、謄本交付手数料として約2,000円がかかります。
テレビ電話で定款認証を受けられますか?
はい、電子定款であればテレビ電話(Web会議)による認証が可能です。公証役場に出向く必要がなく、予約した日時にテレビ電話で本人確認を行います。認証済みの電子定款はオンラインでダウンロードできます。
定款を変更するにはどうすればいいですか?
株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。1人会社であれば株主総会議事録を作成するだけで手続きできます。変更内容によっては法務局への登記申請(登録免許税3万円〜)も必要です。なお、変更後の定款に公証人の認証は不要です。
定款はどこに保管すればいいですか?
会社法第31条により、定款は本店に備え置かなければなりません。株主や債権者から閲覧・謄写の請求があった場合に対応できるよう、原本(認証済み定款)を本店で保管してください。コピーを顧問税理士に預けておくのも実務的なバックアップになります。
設立後に定款を紛失した場合はどうすればいいですか?
公証役場で認証済み定款の謄本(原本の写し)を再交付してもらえます。認証を受けた公証役場に連絡し、謄本交付を請求してください。手数料は1通あたり数百円〜2,000円程度です。電子定款の場合は、法務省のオンラインシステムからダウンロードすることも可能です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 定款の記載事項は「絶対的」「相対的」「任意的」の3種類。絶対的記載事項の漏れは定款無効
  • 電子定款なら収入印紙代4万円が不要。ほとんどの設立案件で電子定款を採用
  • 株式会社は公証人認証が必須。合同会社は認証不要
  • 認証手数料は資本金に応じて15,000円〜50,000円
  • 事前の公証役場チェック(無料)は必ず利用すべき
  • 将来の定款変更コストを減らすため、本店所在地は最小行政区画まで、役員任期は最長10年がおすすめ

定款は会社の「出発点」であり、その後の経営に大きく影響します。特に事業目的の書き方、株式の譲渡制限、役員の任期といった項目は、設立後に変更するとコストがかかるため、最初の段階でしっかり設計しておくことが重要です。

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