【税理士×行政書士のダブル監修】株式会社と合同会社の違い|設立費用・税金・信用度を徹底比較

【税理士×行政書士のダブル監修】株式会社と合同会社の違い|設立費用・税金・信用度を徹底比較
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

株式会社と合同会社の違い|設立費用・税金・信用度を徹底比較

「株式会社と合同会社、どっちにすればいい?」と迷っている創業者に向けて、設立費用・税金・信用度・経営の自由度など12項目を比較表で整理しました。この記事を読めば、自分の事業に合う会社形態を判断できます。

🏆 結論:迷ったらこの基準で選ぶ

株式会社を選ぶべきケース:取引先に大企業がいる、将来の上場や出資受入を視野に入れている、採用で信用力を重視したい。合同会社を選ぶべきケース:初期費用を抑えたい、少人数(1〜3人)で柔軟に経営したい、BtoC事業で社名が前面に出ない。なお、法人税率・消費税・社会保険はどちらも同じです。

株式会社と合同会社の違い【一覧表で比較】

結論から言えば、株式会社と合同会社の最大の違いは「設立コスト」と「経営の仕組み」の2点です。税金・社会保険は同じなので、税務面での差はありません。

比較項目 株式会社 合同会社
設立費用(法定費用)約20〜25万円約6〜10万円
定款認証必要(公証役場で認証)不要
登録免許税最低15万円最低6万円
法人税率同じ同じ
消費税同じ同じ
社会保険同じ(強制加入)同じ(強制加入)
経営者の呼称代表取締役代表社員
出資者と経営者分離できる(株主≠取締役)一致する(出資者=社員=経営者)
利益分配出資比率に応じた配当定款で自由に設定可能
決算公告必要(官報掲載費 約7.5万円/年)不要
役員任期最長10年(登記変更が必要)任期なし(変更登記不要)
社会的信用度高い(「株式会社」ブランド)やや低い(認知度がまだ低い)
株式発行・上場可能不可

💡 実務のポイント

設立相談で最も多い誤解が「合同会社だと法人税が安い」というものです。法人税率・消費税・社会保険はどちらもまったく同じです。違うのは設立コストと経営の仕組みだけ。この点をまず理解しておくと判断がシンプルになります。

設立費用の詳細比較——何にいくらかかるか

設立にかかる法定費用の内訳を項目ごとに比較します。株式会社は約20〜25万円、合同会社は約6〜10万円と、約15万円の差があります。

設立費用の内訳比較表

費用項目 株式会社 合同会社
定款認証手数料1.5万〜5万円0円(認証不要)
定款の収入印紙代4万円(電子定款なら0円)4万円(電子定款なら0円)
定款の謄本手数料約2,000円0円
登録免許税15万円(資本金×0.7%と比較し高い方)6万円(資本金×0.7%と比較し高い方)
法人印鑑作成費5,000〜1万円5,000〜1万円
合計(電子定款の場合)約17〜22万円約7〜8万円

※定款認証手数料は資本金額により異なります。資本金100万円未満は1.5万円、300万円未満は2.3万円、それ以外は5万円(ただし一定要件で1.5万円)。

設立費用を安くする3つの方法

電子定款を利用する:紙の定款に必要な収入印紙代4万円が不要になります。ただし電子署名のソフトとマイナンバーカードが必要です。②特定創業支援等事業のセミナーを受講する:自治体の認定を受けると登録免許税が半額に(株式会社7.5万円、合同会社3万円)。③会社設立代行サービスを利用する:freee会社設立やマネーフォワード会社設立など、電子定款作成を無料で行ってくれるサービスがあります。

年間の維持費(ランニングコスト)を比較

設立費用は一度きりですが、毎年かかる維持費も会社形態の選択で変わります。

年間維持費 株式会社 合同会社
法人住民税均等割(最低)約7万円約7万円
決算公告費(官報掲載)約7.5万円0円(公告不要)
役員変更登記費(任期満了時)1万円/回(10年に1回以上)0円(任期なし)
税理士顧問料(目安)年30〜50万円年30〜50万円
差額(株式会社が多い分)年間 約7.5〜8.5万円

合同会社は決算公告義務がなく、役員の任期もないため、株式会社に比べて年間約7.5〜8.5万円のコスト削減になります。10年間で約75〜85万円の差です。

⚠️ 注意:決算公告は義務だが…

株式会社には決算公告が法律上義務づけられていますが(会社法第440条)、実際には中小企業で官報掲載を毎年行っている会社は少ないのが実態です。違反しても現状では罰則が適用されるケースはまれですが、法律上の義務である点は理解しておきましょう。

税金は同じ——よくある誤解を整理する

株式会社と合同会社は、税務上はまったく同じ扱いを受けます。よくある誤解を整理します。

「税金が違う」は誤解——同じ項目一覧

税目 株式会社 合同会社
法人税率(中小法人)15%/23.2%15%/23.2%
法人住民税同じ同じ
法人事業税同じ同じ
消費税同じ同じ
役員報酬の損金算入同じ(定期同額給与等)同じ(定期同額給与等)
青色申告の欠損金繰越最長10年最長10年
社会保険加入義務ありあり

法人税法上、株式会社も合同会社も「普通法人」として同じ税率が適用されます。損金算入のルール、各種税額控除の適用要件、確定申告の方法もすべて同一です。「合同会社だから節税できる」ということはありません。

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信用度の違い——取引先・銀行・採用への影響

税金は同じでも、「社会的信用度」には差があります。業種や取引先によっては、この差が大きな意味を持ちます。

場面別の信用度比較

場面 株式会社 合同会社
法人口座の開設問題なし問題なし(差はほぼない)
銀行融資やや有利審査基準は事業計画次第で大差なし
大企業との取引有利(「株式会社」の看板が効く)「合同会社?」と聞かれることも
人材採用有利(求職者の安心感)合同会社を知らない求職者もいる
消費者向けサービス差はほぼない差はほぼない(社名が前面に出ない)

💡 実務のポイント

BtoB取引で名刺交換する業種では、「○○合同会社 代表社員」の肩書きに違和感を持つ相手もいます。一方、Webサービスや飲食店などBtoC事業で社名が前面に出ないビジネスでは、会社形態は顧客にほぼ見えません。Amazon Japan合同会社やApple Japan合同会社のような大手も合同会社を選んでいる実績があります。

経営の仕組みの違い——意思決定・利益分配・役員任期

意思決定のスピード

株式会社は株主総会→取締役会(設置している場合)→代表取締役という意思決定フローがあります。一方、合同会社は社員(出資者=経営者)の合意で意思決定が完了します。2〜3人で始めるスタートアップには合同会社のフラットな構造が向いています。

利益分配の自由度

株式会社の配当は出資比率に応じて分配するのが原則です(会社法第454条)。一方、合同会社は定款で自由に利益分配の割合を定められます。例えば、資金を多く出した社員と、技術やノウハウで貢献した社員で異なる分配割合を設定できます。

役員任期

株式会社の取締役は任期が最長10年で、満了時に重任登記が必要(登録免許税1万円)です。合同会社の社員には任期がないため、変更がない限り登記費用は発生しません。

どちらを選ぶべき?判断基準フローチャート

以下のYes/Noフローで、あなたに合った会社形態を判定しましょう。

ステップ 質問 Yesの場合 Noの場合
1将来VCや投資家からの出資を受ける予定がある?→ 株式会社→ ステップ2へ
2大企業との法人取引がメイン?→ 株式会社→ ステップ3へ
3従業員を5人以上雇用する予定がある?→ 株式会社がやや有利→ ステップ4へ
4初期費用をできるだけ抑えたい?→ 合同会社→ ステップ5へ
5消費者向け(BtoC)のビジネス?→ 合同会社で十分→ 株式会社が無難

📝 行政書士の視点

迷ったときに知っておいてほしいのは、合同会社から株式会社への変更(組織変更)は可能だという点です。費用は6〜10万円程度かかりますが、「まずは合同会社で始めて、事業が軌道に乗ったら株式会社に変更する」というステップアップ戦略も実務上はよく見かけます。逆(株式会社→合同会社)も法律上は可能ですが、実務ではほとんどありません。

業種別おすすめ——あなたの事業にはどちら?

業種・ビジネスモデル おすすめ 理由
ITスタートアップ(VC出資予定)株式会社株式発行・ストックオプション発行が可能
建設業・不動産業株式会社許認可申請時の信用力、下請け取引の看板
コンサルティング・士業株式会社対法人取引で信用力が重要
Webサービス・アプリ運営合同会社BtoC中心で社名が見えにくい。コスト削減優先
飲食店・小売店合同会社店舗名で認知されるため会社形態は顧客に見えない
フリーランスの法人化合同会社1人経営で低コスト運営。取引先が限定的
不動産投資・資産管理会社合同会社対外的な信用力が不要。利益分配の自由度が高い

法人成りのタイミングについては、「個人事業主の法人成りベストタイミング|売上・利益の判断基準と手続き」で詳しく解説しています。

合同会社から株式会社への変更(組織変更)の手続きと費用

合同会社で設立した後、事業拡大に伴い株式会社に変更することも可能です。手続きと費用の概要を整理します。

組織変更の費用と期間

項目 内容
登録免許税6万円(合同会社の解散登記3万円 + 株式会社の設立登記3万円)
官報公告費約3〜4万円(債権者保護手続き)
司法書士報酬(依頼する場合)5〜10万円程度
必要期間約2ヶ月(債権者保護期間1ヶ月含む)

実務上、合同会社から株式会社への変更は2ヶ月程度で完了します。法人番号は変わらないため、取引先への影響は社名変更の通知のみです。

選択を間違えた場合のリスク

株式会社を選んで後悔するケース

年間のランニングコスト(決算公告費・役員変更登記費)が重荷になる。特に売上が小さい間は、合同会社を選んでいれば削減できた年間約8万円が積み重なります。

合同会社を選んで後悔するケース

事業が成長して大手企業との取引が増えたとき、「合同会社とは取引実績がないので…」と言われるケースがあります。また、投資家からの出資を受ける段階になると、株式会社への変更が必要になり、追加の費用と手間がかかります。

💡 実務のポイント

「将来株式会社に変更するかもしれないから最初から株式会社にしておく」という考え方と、「まずはコストを抑えて合同会社で始め、必要になったら変更する」という考え方、どちらも正解です。判断の軸は「3年以内に大企業取引または出資受入の予定があるか」です。予定があるなら株式会社、なければ合同会社で十分です。

会社設立の全体の流れと必要書類については、「会社設立の流れと費用を完全ガイド|株式会社・合同会社の手続き・届出を徹底解説」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

合同会社だと法人税は安くなりますか?
いいえ。法人税率・消費税・社会保険はどちらもまったく同じです。株式会社と合同会社で税金に差はありません。違いがあるのは設立費用・決算公告義務・経営の仕組みです。
合同会社でも銀行融資は受けられますか?
はい。日本政策金融公庫や民間の銀行融資は、会社形態よりも事業計画・財務内容・経営者の経歴で審査されます。合同会社だから融資が不利になることは基本的にありません。
合同会社から株式会社に変更するのは大変ですか?
手続き自体は約2ヶ月で完了します。費用は登録免許税6万円+官報公告費3〜4万円+司法書士報酬5〜10万円で、合計15〜20万円程度です。法人番号は変わらないため、銀行口座や取引先への影響は比較的小さいです。
一人社長の場合、どちらがおすすめですか?
BtoB取引がメインで大企業と取引する予定があるなら株式会社。BtoC中心で初期コストを抑えたいなら合同会社がおすすめです。一人社長の場合、経営の意思決定に差は出ないので、信用度とコストの2軸で判断しましょう。
「代表社員」と「代表取締役」の名刺での見え方は?
株式会社の「代表取締役」は広く知られていますが、合同会社の「代表社員」はまだ認知度が低く、「社員なのに代表?」と混乱する方もいます。BtoB取引が多い場合はこの点も考慮しましょう。
合同会社でも従業員を雇えますか?
はい。合同会社でも従業員の雇用は可能で、労働基準法・社会保険の適用も株式会社と同じです。「社員」は合同会社では出資者(経営メンバー)を指す用語で、従業員とは別の概念です。
資本金1円でも会社は設立できますか?
法律上は株式会社・合同会社ともに資本金1円で設立可能です。ただし、資本金が少ないと銀行口座の開設審査で不利になったり、取引先からの信用が低くなる可能性があります。実務では50〜300万円を目安に設定するケースが多いです。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 法人税・消費税・社会保険は株式会社も合同会社もまったく同じ
  • 設立費用は株式会社が約20〜25万円、合同会社が約6〜10万円(約15万円の差)
  • 年間の維持費も合同会社が約7.5〜8.5万円安い(決算公告不要・役員任期なし)
  • 信用度は株式会社が有利——大企業取引・採用で差が出る
  • BtoC事業やフリーランスの法人化は合同会社で十分
  • 合同会社から株式会社への変更は約15〜20万円・2ヶ月で可能
  • 3年以内に出資受入や大企業取引の予定があるなら株式会社を選ぶ

会社形態の選択は一度決めたら変更できないものではありません。迷ったら「今の事業フェーズに合うほう」を選びましょう。どちらが自分に合うか判断がつかない場合は、税理士に相談するのが確実です。

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