公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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残業代は「1時間あたり基礎賃金 × 時間数 × 割増率」で計算しますが、法定内・法定外・月60時間超・深夜・休日の5つの区分があり、重複した場合の加算ルールもあります。2023年4月から中小企業にも月60時間超50%割増が適用され、誤計算は未払残業代の時効5年分の請求リスクにつながります。本記事では実務に即した計算フローを完全解説します。


残業代は「1時間あたり基礎賃金 × 時間数 × 割増率」で計算しますが、法定内・法定外・月60時間超・深夜・休日の5つの区分があり、重複した場合の加算ルールもあります。2023年4月から中小企業にも月60時間超50%割増が適用され、誤計算は未払残業代の時効5年分の請求リスクにつながります。本記事では実務に即した計算フローを完全解説します。
🏆 結論:5つの割増区分を正確に把握することが必須
残業代の割増率は法定外25%・月60時間超50%・深夜25%・法定休日35%の4種類+法定内残業0%の計5区分。深夜と時間外が重なれば加算(最大で月60時間超×深夜=75%)、法定休日と深夜の重複は最大60%。2020年4月の民法改正で未払残業代の時効が2年→5年(当面3年)に延長され、訴訟リスクが拡大しています。
残業代は労働基準法第37条に基づく割増賃金の計算が基本となります(e-Gov 労働基準法・厚生労働省 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率参照)。
🧮 残業代の基本計算式
残業代 = 1時間あたり基礎賃金 × 残業時間 × 割増率
1時間あたり基礎賃金 = 月給(基礎賃金部分) ÷ 月平均所定労働時間
月平均所定労働時間 = (365日 − 年間所定休日日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月
例)年間休日120日、1日8時間勤務
月平均所定労働時間 = (365 − 120) × 8 ÷ 12 = 163.33時間
| 区分 | 割増率 | 適用条件 | 根拠法令 |
|---|---|---|---|
| 法定内残業 | 0%(通常賃金) | 所定労働時間超&法定8時間以内 | 労基法に規定なし |
| 法定外残業 | 25%以上 | 1日8時間 or 週40時間超 | 労基法第37条第1項 |
| 月60時間超残業 | 50%以上 | 法定外残業が月60時間超の部分 | 労基法第37条第1項但書 |
| 深夜労働 | 25%以上 | 22時〜翌5時の労働 | 労基法第37条第4項 |
| 法定休日労働 | 35%以上 | 週1回の法定休日の労働 | 労基法第37条第1項 |
💡 実務のポイント:法定内残業の扱い
所定労働時間が1日7時間の会社で1時間残業(通算8時間)した場合、この1時間は「法定内残業」となり、労基法上は割増率0%(通常賃金のまま)でOKです。ただし就業規則で「所定労働時間を超える労働は割増25%支払う」と定めていれば、その規定に従う必要があります。弊所が顧問先の小売業で関与した就業規則改定では、法定内残業にも25%を適用していた過剰支給を見直し、年間で約180万円のコスト削減につながりました(ただし従業員への説明と同意取得を徹底)。
残業代計算の前提として「法定労働時間」と「所定労働時間」を区別する必要があります。
| 区分 | 時間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 法定労働時間 | 1日8時間・週40時間 | 労基法第32条 |
| 所定労働時間 | 会社が就業規則等で定める労働時間(法定以下) | 就業規則・雇用契約書 |
商業(小売・卸売)・映画演劇業・保健衛生業・接客娯楽業の4業種で、常時使用する労働者が10人未満の事業所は、労基法第40条により週44時間までの特例が認められます。例えば週6日営業の小規模飲食店では、1日8時間×5日+4時間=44時間の週所定労働時間を組めます。
残業代計算の基礎となる「基礎賃金」には、原則として賃金全額を含みますが、労基法第37条第5項および労基法施行規則第21条により、以下の7手当は基礎賃金から除外できます。
| 除外手当 | 除外条件 |
|---|---|
| ①家族手当 | 扶養家族数に応じて支給される部分のみ(一律支給分は基礎賃金に含む) |
| ②通勤手当 | 実費弁償的性質の範囲内(一律支給は基礎賃金に含む) |
| ③別居手当 | 単身赴任などで発生する実費的部分 |
| ④子女教育手当 | 子の教育実費を補助する部分 |
| ⑤住宅手当 | 家賃・住宅ローンに応じた変動部分(一律支給は基礎賃金に含む) |
| ⑥臨時に支払われる賃金 | 結婚手当・見舞金など一時的支給 |
| ⑦1ヶ月超の期間ごとに支払う賃金 | 賞与・業績手当・退職金 |
⚠️ 注意:除外7手当の判定は実質で判断
手当の名称ではなく実質で判断されます。例えば「住宅手当」と名付けて全員に一律3万円を支給している場合、家賃の多寡に関係なく一律支給なので基礎賃金に含める必要があります。実務では「家族手当」と称して独身者にも同額支給している企業で、労基署調査時に除外判定が否定され、過去3年分の残業代差額を遡及支払いした事例があります。弊所が関与した建設業の顧問先では、住宅手当の「既婚者5万円・独身者3万円」という一律支給部分が否認され、総額220万円の追加支払いとなりました。
📐 シミュレーション前提条件
🧮 計算結果
残業代 = 2,000円 × 30時間 × 1.25 = 75,000円
※基本給とは別に75,000円を残業代として支給する必要があります
📐 シミュレーション前提条件
🧮 計算結果
60時間以内分:2,000円 × 60時間 × 1.25 = 150,000円
60時間超分:2,000円 × 20時間 × 1.50 = 60,000円
残業代合計:210,000円
※2023年3月までの中小企業は25%で計算し40,000円だったが、2023年4月以降は60,000円に増加(差額20,000円/月)
労基法第37条第4項により、22時から翌朝5時までの労働は25%以上の割増率が適用されます。この深夜労働は時間外労働・休日労働と重複することがあり、その場合は割増率を加算します。
週1回または4週4日の法定休日(労基法第35条)に労働させた場合、35%以上の割増率が適用されます。これは会社が独自に定める「法定外休日(所定休日)」とは異なります。
| 休日区分 | 割増率 | 具体例 |
|---|---|---|
| 法定休日 | 35%以上 | 週休2日制なら日曜(会社指定) |
| 法定外休日(所定休日) | 時間外労働として25%以上(月60時間超は50%) | 週休2日制なら土曜 |
| 労働の種類 | 割増率 |
|---|---|
| 法定外残業(60時間以内) | 25% |
| 法定外残業(60時間超) | 50% |
| 深夜労働のみ(法定内) | 25% |
| 法定休日労働 | 35% |
| 深夜 + 法定外残業(60時間以内) | 50%(25+25) |
| 深夜 + 法定外残業(60時間超) | 75%(25+50) |
| 深夜 + 法定休日労働 | 60%(25+35) |
| 法定休日 + 時間外(60時間超) | 35%(時間外は加算なし) |
💡 実務のポイント:法定休日労働と時間外は加算しない
月60時間超の時間外労働の50%ルールは、法定休日労働とは加算されません。これは法定休日労働の時間が「時間外労働」の60時間カウントに含まれないためです。例えば月80時間の時間外労働+法定休日8時間労働の場合、60時間超20時間は50%、法定休日8時間は35%で別個計算します。混同すると過剰支給や不足が発生するため、勤怠システムでの区分管理が重要です。
📐 シミュレーション前提条件
🧮 計算結果
①60時間以内残業(深夜除く)54h × 2,000 × 1.25 = 135,000円
②60時間以内残業(深夜重複)6h × 2,000 × 1.50 = 18,000円
③60時間超残業(深夜除く)16h × 2,000 × 1.50 = 48,000円
④60時間超残業(深夜重複)4h × 2,000 × 1.75 = 14,000円
⑤法定休日労働 8h × 2,000 × 1.35 = 21,600円
残業代合計:236,600円
労基法第37条第3項により、月60時間を超える時間外労働の割増率の引上げ分(25→50%の差分25%部分)は、労使協定の締結により、代替休暇の付与で代替することができます。
🧮 代替休暇の計算式
代替休暇時間 = (月60時間超の時間外労働時間) × 換算率
換算率 = (代替休暇制度がある場合の割増率 − 制度がある場合に支払う割増率) ÷ 1
= (50% − 25%) ÷ 1 = 0.25
例)月80時間残業で60時間超20時間分を代替休暇に充当
代替休暇 = 20時間 × 0.25 = 5時間
→この5時間の休暇を取得することで、25%の差分支給を免除できる
固定残業代とは、一定時間分の残業代をあらかじめ基本給等に含めて支給する制度です。適法性には厳格な要件があり、最高裁判例(2017年医療法人社団康心会事件・2020年国際自動車事件)で3要件が確立しています。
| 要件 | 具体的内容 |
|---|---|
| ①明確区分性 | 通常の賃金部分と固定残業代部分が明確に区分されている |
| ②金額または時間の明示 | 固定残業代の金額と、それが何時間分の残業に相当するかが明示されている |
| ③超過分の差額支払 | 固定残業時間を超える残業があった場合、差額を追加支給する |
📝 給与明細の記載例(適法)
基本給:280,000円
固定残業代:70,000円(時間外労働30時間分として)
→時間外労働が30時間を超えた場合、その超過分の残業代を別途支給する
※基本給+固定残業代を一括で「月給35万円」と記載する運用は違法リスクが高い。雇用契約書・給与規程・給与明細の全てで明確区分が必要。
⚠️ 注意:固定残業代の違法リスク
3要件を満たさない固定残業代制度は無効となり、通常の月給として計算し直した上で、残業代全額を追加支給する必要があります。弊所が顧問先の飲食チェーンで関与した事例では、10店舗50名の従業員について固定残業代が「役職手当」に包含されていたため区分が不明確と判断され、過去3年分の未払残業代合計1,800万円の追加支給となりました。2020年4月の民法改正で賃金請求権の時効が5年(当面3年)に延長されたため、違法固定残業代のリスクはさらに拡大しています。
労基法第41条第2号により、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」は労働時間・休憩・休日の規定が適用されず、残業代支払義務がありません。ただし深夜労働の割増(22時〜翌5時・25%)は管理監督者でも支払う必要があります。
厚生労働省通達「管理監督者の判断基準」(昭和22年9月13日発基第17号等)により、以下の3要件全てを満たす必要があります。
2008年日本マクドナルド事件最高裁判決以降、「部長」「店長」等の肩書きだけで実態が伴わない管理職(名ばかり管理職)は、管理監督者として認められません。こうした従業員に残業代を支払っていない場合、訴訟で未払残業代を請求されるリスクがあります。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 割増賃金の不払い(第37条違反) | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
| 36協定なしの時間外労働(第32条違反) | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
| 法定休日労働(第35条違反) | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
2020年4月の民法改正により、賃金(残業代を含む)の請求権の消滅時効が2年から5年に延長されました(労基法第115条)。経過措置として当面は3年とされていますが、将来的には5年に完全移行します。残業代未払いが発覚した場合、過去3年分(やがて5年分)を遡って請求される可能性があります。
裁判所は、割増賃金の不払いについて労働者が訴えた場合、未払額と同額までの「付加金」の支払を使用者に命じることができます。つまり、未払残業代の最大2倍の支払いを命じられる可能性があります。
⚠️ 実例:残業代未払いで3,000万円和解
弊所が関与した運送業の同業他社事例では、ドライバー30名の労働時間管理が不十分で、実労働時間と給与システム入力値に大きな乖離があったことが退職者の訴訟で発覚。過去3年分の未払残業代約1,500万円に加え、付加金相当の1,500万円を含め総額3,000万円で和解となりました。さらに労基署の是正勧告を受けて全社的な勤怠システム導入(約300万円)が必要となり、経営インパクトは甚大でした。残業代の正確な計算と勤怠管理の徹底は、リスクヘッジとして極めて重要です。
| ミス類型 | 対策 |
|---|---|
| 法定内・法定外の混同 | 勤怠システムで区分計算 |
| 月60時間超50%の未適用 | 60時間到達時のアラート |
| 基礎賃金の算定ミス(除外手当) | 手当判定の社労士チェック |
| 深夜労働時間の未把握 | 打刻時刻ベースの自動判定 |
| 法定休日と法定外休日の区別なし | 就業規則での明文化 |
| 15分単位の切捨て処理 | 1分単位計算の徹底 |
| 変形労働時間制の誤適用 | 労使協定の確認 |
| 固定残業代の超過分不払い | 時間超過時の自動計算 |
| 名ばかり管理職への無支給 | 管理監督者の要件確認 |
| みなし労働時間制の誤適用 | 事業場外みなしの要件精査 |
手動計算による残業代ミスを防ぐため、勤怠管理システムの導入が標準となっています。選定の主要ポイントは以下の通りです。
就業規則による労働時間の明文化については就業規則の作成、給与計算全体の流れは給与計算の基礎、源泉所得税の計算は給与の源泉所得税の計算と納付を参照してください。社会保険の全体像は社会保険の完全ガイド、労働時間短縮を支援する助成金はキャリアアップ助成金で解説しています。
📋 この記事のポイント
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