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給与計算は「総支給額」から「控除額」を引いて「手取り額」を出すシンプルな構造ですが、令和8年は給与所得控除の最低保障額改正(55万円→65万円)・特定親族特別控除の創設・子ども・子育て支援金の追加など変更点が多く、従来通りでは誤計算が発生します。本記事では最新料率で具体的なシミュレーション付きに解説します。


給与計算は「総支給額」から「控除額」を引いて「手取り額」を出すシンプルな構造ですが、令和8年は給与所得控除の最低保障額改正(55万円→65万円)・特定親族特別控除の創設・子ども・子育て支援金の追加など変更点が多く、従来通りでは誤計算が発生します。本記事では最新料率で具体的なシミュレーション付きに解説します。
🏆 結論:給与計算は「総支給-控除=手取り」の3段構造
給与計算は①勤怠集計→②総支給額の確定→③社会保険料の控除→④源泉所得税・住民税の控除→⑤手取り額算出の10ステップ。控除項目は社会保険料(健康・介護・厚生年金・雇用)と税金(所得税・住民税)の6種類。社会保険料は翌月徴収が原則です。
給与計算は毎月同じパターンで実施されるルーティンワークですが、制度改正への追随と正確性の担保が求められます。まず全体の流れを10ステップで整理します。
| ステップ | 作業内容 | 参照資料 |
|---|---|---|
| ①勤怠集計 | 出勤日数・労働時間・残業時間・欠勤・遅刻早退の集計 | タイムカード・勤怠システム |
| ②総支給額の算定 | 基本給+手当(残業代・役職・通勤・家族等)の合算 | 給与規程・雇用契約書 |
| ③課税・非課税の分離 | 通勤手当等の非課税分を分離 | 所得税法施行令第20条の2等 |
| ④健康保険料の控除 | 標準報酬月額×健康保険料率÷2 | 協会けんぽ保険料額表 |
| ⑤厚生年金・介護保険料の控除 | 標準報酬月額×各料率÷2 | 協会けんぽ保険料額表 |
| ⑥雇用保険料の控除 | 総支給額×雇用保険料率(労働者負担分) | 厚労省雇用保険料率表 |
| ⑦源泉所得税の控除 | 総支給額-非課税-社保控除後に税額表適用 | 令和8年分源泉徴収税額表 |
| ⑧住民税の控除 | 市区町村からの通知書の月額を控除 | 特別徴収税額通知書 |
| ⑨その他控除 | 社内預金・財形・労働組合費・寮費等 | 労使協定(24協定) |
| ⑩手取り額の算出と支給 | 総支給-全控除=手取り。給与振込・給与明細発行 | 労基法第24条(賃金支払5原則) |
💡 実務のポイント:賃金支払の5原則(労基法第24条)
給与支払いには労働基準法第24条により5つの原則があります。①通貨払い(外貨・現物不可、振込は本人同意要)②直接払い(家族や代理人への支払い禁止)③全額払い(法定控除以外は労使協定要)④毎月1回以上払い⑤一定期日払い。法定控除とは、社会保険料・源泉所得税・住民税・労働保険料のみ。社内預金や財形等の控除には24協定(賃金控除に関する労使協定)の締結が必須です。
総支給額は「基本給」と「諸手当」の合算です。会社ごとに手当の設計が異なりますが、代表的な手当は以下の通りです。
| 手当の種類 | 内容 | 残業代算定基礎 |
|---|---|---|
| 基本給 | 職務給・年齢給・勤続給等のベース | ○ 算定基礎 |
| 役職手当 | 管理職・主任等に対する手当 | ○ 算定基礎 |
| 通勤手当 | 電車・バス定期代、自家用車ガソリン代 | × 除外可 |
| 家族手当 | 扶養家族数に応じた手当 | × 除外可(扶養数比例なら) |
| 住宅手当 | 家賃・住宅ローン負担の補助 | × 除外可(家賃比例なら) |
| 残業手当 | 法定時間外労働・深夜・休日労働の割増 | —(計算結果) |
| 出張手当 | 出張時の日当・宿泊費定額 | × 通常除外 |
労働基準法第37条により、法定時間外労働(1日8時間または週40時間超)は25%以上の割増、深夜労働(22時〜翌5時)は25%以上の割増、法定休日労働は35%以上の割増を支払う義務があります。重複する場合は加算します。
🧮 残業代の計算式
1時間当たりの基礎賃金 = 月給(残業代算定基礎) ÷ 月所定労働時間
時間外労働の割増賃金 = 1時間当たり基礎賃金 × 時間外労働時間 × 1.25
深夜労働の加算 = 1時間当たり基礎賃金 × 深夜労働時間 × 0.25
法定休日労働 = 1時間当たり基礎賃金 × 休日労働時間 × 1.35
※2023年4月から、中小企業でも月60時間超の時間外労働は50%以上の割増率に改正されました(労基法第37条第1項但書)。
総支給額は税務上「課税対象」と「非課税対象」に分かれます。源泉所得税の計算では非課税分を除外する必要があります。一方、社会保険料の計算では原則として非課税手当も含むため、注意が必要です。
| 項目 | 所得税 | 社会保険料 | 雇用保険料 |
|---|---|---|---|
| 通勤手当(電車・バス:月15万円まで) | 非課税 | 課税(含む) | 課税(含む) |
| 通勤手当(自家用車:距離別上限) | 一部非課税 | 課税(含む) | 課税(含む) |
| 食事補助(月3,500円以内+本人半額負担) | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
| 社宅貸与(賃貸料相当額の50%以上負担) | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
| 出張日当・出張旅費 | 非課税(実費弁償の範囲) | 非課税 | 非課税 |
| 宿直・日直手当(1回4,000円以内) | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
| 役職・家族・住宅・資格手当 | 課税 | 課税 | 課税 |
| 結婚祝金・災害見舞金(社会通念相当額) | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
⚠️ 注意:通勤手当は社保と所得税で扱いが真逆
通勤手当は所得税では月15万円まで非課税ですが、社会保険料・雇用保険料の計算では全額が対象になります。この違いを理解せず、全額非課税として社会保険料を計算するミスが実務でしばしば発生します。弊所が引継ぎで担当したIT企業の顧問先では、前任の事務員が通勤手当を社保計算から除外していたため、算定基礎届で差異が発覚し、過去2年分の保険料追徴60万円が発生した事例があります。
| 保険種別 | 全体料率 | 労働者負担 | 算定基礎 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(東京都協会けんぽ) | 9.98% | 4.99% | 標準報酬月額 |
| 介護保険(40〜64歳のみ) | 1.62% | 0.81% | 標準報酬月額 |
| 厚生年金保険 | 18.3% | 9.15% | 標準報酬月額 |
| 雇用保険(一般事業) | 1.45% | 0.55% | 毎月の賃金総額 |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月〜) | 0.12%(段階引上げ) | 0.06% | 標準報酬月額 |
健康保険料率は都道府県ごとに異なります(東京9.98%、大阪10.42%、福岡10.35%等)。全国健康保険協会 令和8年度保険料額表で都道府県別に確認できます。労働基準法第24条の賃金支払5原則についてはe-Gov 労働基準法で条文を確認できます。
健康保険・厚生年金保険の保険料は「標準報酬月額」を基準に計算します。標準報酬月額は毎年4〜6月の報酬の平均を基に「算定基礎届」で決定される(9月から翌年8月まで適用)固定値で、毎月の給与が変動しても原則として変わりません。等級は健康保険1〜50等級、厚生年金1〜32等級に分かれています。
健康保険法第167条により、社会保険料は翌月徴収が原則です。つまり、4月の給与から3月分の社会保険料を徴収する形になります。当月徴収は法令上禁止されていませんが、退職時のトラブルが多いため避けられる傾向にあります。
| 徴収方式 | 給与支給日の扱い | 退職時のトラブル |
|---|---|---|
| 翌月徴収(推奨) | 4月給与から3月分社保を徴収 | 退職月は2ヶ月分まとめ徴収が必要 |
| 当月徴収 | 4月給与から4月分社保を徴収 | 入社1ヶ月目は社保と給与計算のタイミングずれ |
💡 実務のポイント:月末退職は社保2ヶ月分徴収
翌月徴収のルールでは、月末退職(例:3/31)の場合、3月の給与では2月分の社保を、最終月の3月分も併せて徴収する必要があります。これを被保険者資格喪失日(退職日の翌日=4/1)から計算すると、3月まで被保険者期間があるため、3月分の保険料が発生する仕組みです。実務では月末日の1日前(3/30)退職にすることで1ヶ月分のみの徴収で済む選択肢があり、資格喪失日が3/31となるため3月分保険料が発生しません。ただしこの判断は従業員の年金記録に影響するため、慎重な説明が必要です。
雇用保険料は標準報酬月額ではなく毎月の賃金総額(通勤手当含む)に料率を乗じて計算します。労働者負担分(一般事業の場合0.55%)を給与から控除します。
🧮 端数処理ルール(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第21条)
雇用保険料の端数:50銭以下は切捨て・50銭を超え1円未満は切上げ
健康保険料・厚生年金保険料の端数:50銭以下は切捨て・50銭を超え1円未満は切上げ(通則法による)
※労働者の同意があれば「50銭未満切捨て・50銭以上切上げ」も可能
※ただし事業主負担分と合算で1円未満の端数が出る場合、事業主負担で調整するのが一般的実務
源泉所得税は以下の手順で算出します。
詳細は国税庁 令和8年分源泉徴収税額表を参照してください。税額表は甲欄(扶養控除等申告書提出者)、乙欄(他社主給与)、丙欄(日雇労働者)に分かれています。
| 改正項目 | 改正前 | 改正後(令和8年〜) | ||
|---|---|---|---|---|
| 給与所得控除最低保障額 | 55万円 | 65万円 | ||
| 基礎控除(所得合計金額に応じ) | 一律48万円 | 特定親族特別控除(新設) | なし | 最大63万円(19〜22歳大学生等) |
| 扶養控除等申告書の様式 | 「控除対象扶養親族」欄 | 「源泉控除対象親族」欄に変更 | ||
| 復興特別所得税 | 所得税額の2.1% | 同左(2037年まで継続) |
| 欄 | 対象 | 税率の特徴 |
|---|---|---|
| 甲欄 | 扶養控除等(異動)申告書を提出している従業員(主給与) | 低い(標準) |
| 乙欄 | 扶養控除等申告書未提出(副業・掛け持ち) | 高い(最低20.42%) |
| 丙欄 | 日雇労働者(2ヶ月以内の短期雇用) | 日額9,300円未満は0円 |
住民税(道府県民税+市町村民税)は前年の所得に基づく賦課課税です。従業員の給与から控除する住民税は、5月頃に市区町村から「特別徴収税額決定通知書」が送付され、6月分から翌年5月分までの12回(6月のみ端数調整で金額が異なる)で徴収します。
給与計算の実務では住民税を計算する必要はなく、通知書の月額をそのまま控除するだけです。ただし、中途入社・退社・転勤時には「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を市区町村に提出する必要があります。
📢 住民税の切り替えタイミング
6月に新しい年度の通知書が届き、6月分から徴収金額が変わります。5月まで旧金額で徴収していたのに6月からの切り替えを忘れると、従業員から「住民税が変わっていない」とクレームを受けるケースがあります。給与計算ソフトを使っていても、通知書データの手動入力漏れは意外と多発するため、毎年5月末〜6月頭は要注意期間です。
月給30万円(基本給27万円+通勤手当3万円)、30歳独身、東京都協会けんぽ、一般事業のケースで完全計算してみます。
📐 シミュレーション前提条件
| 控除項目 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 30万円 × 9.98% ÷ 2 | 14,970円 |
| 介護保険料 | 30歳のため対象外 | 0円 |
| 厚生年金保険料 | 30万円 × 18.3% ÷ 2 | 27,450円 |
| 雇用保険料 | 30万円 × 0.55% | 1,650円 |
| 社会保険料合計 | — | 44,070円 |
| 源泉所得税(社会保険料控除後の給与額は30万円-3万円(通勤)-44,070円=225,930円) | 税額表月額表 甲欄 扶養0人 | 約5,150円 |
| 住民税(通知書による) | 前年課税所得による | 約11,500円 |
| 控除合計 | — | 約60,720円 |
🧮 手取り額の算出
総支給額:300,000円
控除合計:▲60,720円
手取り額:239,280円(総支給の約80%)
※住民税は入社2年目以降に発生(入社年は前年所得がないため原則ゼロ)
※2026年4月から子ども・子育て支援金が段階的に追加され、手取りは数百円〜千円ほど減少します
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鮎澤パートナーズに相談する| ミス類型 | 発生原因 | 予防策 |
|---|---|---|
| 通勤手当の社保算定漏れ | 所得税と社保の扱いを混同 | 算定基礎届で通勤手当欄を必ず記入 |
| 40歳到達月の介護保険料徴収漏れ | 40歳の誕生日前日が属する月から徴収開始の認識不足 | 給与ソフトで誕生日アラート設定 |
| 60時間超残業の50%割増忘れ | 2023年4月改正の中小企業適用拡大を失念 | 60時間カウントアラート |
| 住民税の新年度切替漏れ | 通知書データの手動入力忘れ | 5月末の切替チェックリスト運用 |
| 乙欄適用忘れ(扶養控除等申告書未提出者) | 副業・掛け持ちの認識不足 | 入社時の申告書提出チェック |
💡 実務のポイント:40歳介護保険料の開始タイミング
介護保険料は「40歳の誕生日の前日」が属する月から徴収が始まります。実務で最も紛らわしいのは「月初1日生まれの人」のケースで、4/1生まれの人は3/31に40歳に到達するため、3月分(4月徴収)から介護保険料がかかります。弊所が引継ぎで入った飲食業の顧問先では、この逆算ルールが周知されておらず、月初生まれの3名について合計4ヶ月分の介護保険料徴収漏れが発覚しました。
給与計算を手作業で行うとミスが増えるため、従業員10名以上の事業所ではクラウド給与ソフトの導入が一般的です。主な選定基準を整理します。
| 評価軸 | 選定のポイント |
|---|---|
| 料金体系 | 従業員数課金か固定課金か。月額500円/人〜2,000円/人が相場 |
| 勤怠連携 | 既存の勤怠システムとAPI連携可能か |
| 法改正対応 | 自動アップデートの速度・対応範囲 |
| 年末調整連携 | 年末調整処理がオプションか標準機能か |
| Web給与明細 | スマホで明細確認可能か・電子交付対応 |
| Web給与明細 | 算定基礎届・賞与支払届・離職票等の電子申請連携 |
| 社労士連携 | 社労士との共同編集アカウントの有無 |
給与計算を社内で行うか、社労士・税理士に委託するかの判断については、社会保険の完全ガイドの委託判断基準も参照してください。源泉所得税の詳細な計算方法は給与の源泉所得税の計算と納付、住民税の切替実務は住民税の徴収切替と経理処理で解説します。就業規則との整合性は就業規則の作成、給与計算を効率化する助成金はキャリアアップ助成金で解説しています。
📋 この記事のポイント
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