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相続税・贈与税の税制改正まとめ|令和5年〜令和8年度の主要改正
「相続税や贈与税のルールが頻繁に変わって追いつけない」という方に向けて、令和5年度から令和8年度までの主要改正を年度別に整理します。この記事を読めば、自分の相続対策にどの改正が影響するかを判断できます。


「相続税や贈与税のルールが頻繁に変わって追いつけない」という方に向けて、令和5年度から令和8年度までの主要改正を年度別に整理します。この記事を読めば、自分の相続対策にどの改正が影響するかを判断できます。
🏆 結論:令和5年〜8年度は相続・贈与税が大きく変わった4年間
令和5年度改正で「暦年贈与の持ち戻し7年延長」「精算課税に年110万円基礎控除新設」、令和6年1月から「タワマン等マンション評価の見直し」が適用開始。さらに令和8年度改正では「貸付用不動産の評価方法の見直し」「教育資金一括贈与の非課税措置の終了」が決定されました。従来型の相続税対策は大幅な見直しが必要です。
相続税・贈与税に関する税制改正は、毎年12月に公表される「税制改正大綱」がベースとなり、翌年の通常国会で法案化・成立します。ここ4年間は特に改正が集中しており、実務では「いつの相続・贈与から適用されるか」を正確に把握することが重要です。
📢 この記事の情報は2026年4月時点のものです
令和8年度税制改正大綱(2025年12月公表)の内容を含みます。法案は通常国会で審議中であり、最終的な法律の内容が大綱と異なる場合があります。
| 年度 | 主な改正内容 | 適用開始 | 影響度 |
|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 暦年贈与の持ち戻し期間を3年→7年に延長 | 2024年1月1日以後の贈与 | ★★★ |
| 令和5年度 | 相続時精算課税に年110万円基礎控除を新設 | 2024年1月1日以後の贈与 | ★★★ |
| 令和5年度 | マンション(タワマン)の相続税評価見直し(区分所有補正率の創設) | 2024年1月1日以後の相続・贈与 | ★★★ |
| 令和5年度 | 教育資金一括贈与の非課税措置を令和8年3月末まで延長 | 延長後の期限まで | ★★☆ |
| 令和7年度 | 結婚・子育て資金一括贈与の非課税措置を令和9年3月末まで延長 | 延長後の期限まで | ★☆☆ |
| 令和7年度 | 法人版事業承継税制の特例措置は今後延長しない旨を明記 | — | ★★☆ |
| 令和8年度 | 貸付用不動産(取得5年以内)の評価を取得価額×80%に見直し | 2027年1月1日以後の相続・贈与 | ★★★ |
| 令和8年度 | 不動産小口化商品の評価を通常取引価額に変更 | 2027年1月1日以後の相続・贈与 | ★★★ |
| 令和8年度 | 教育資金一括贈与の非課税措置を延長せず終了 | 2026年4月以降は新規適用不可 | ★★☆ |
| 令和8年度 | 事業承継税制の特例承継計画・個人事業承継計画の提出期限を延長 | 特例承継計画は2027年9月末まで | ★★☆ |
※影響度は一般的な相続人にとってのインパクトを★3段階で評価。個別の状況により異なります。
暦年課税(いわゆる通常の贈与)を選択した場合、被相続人が亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算するルールがあります。これを「生前贈与加算」と呼びます。
令和5年度改正により、この加算対象期間が従来の「相続開始前3年以内」から「相続開始前7年以内」に延長されました。相続税法第19条の改正です。
💡 実務のポイント
この改正は2024年1月1日以後の贈与に適用されます。ただし、いきなり7年に変わるわけではなく、2024年〜2030年の7年間は段階的に延長される移行措置があります。実際に持ち戻し期間が7年になるのは2031年1月1日以後の相続からです。現場でよくあるのが「もう節税目的の暦年贈与は意味がないのでは?」という相談ですが、7年超前に行った贈与はこれまでどおり加算対象外です。早期に始めるほど有利な構造は変わりません。
持ち戻し期間が延長された4〜7年前の贈与については、その合計額から100万円を控除した残額が相続財産に加算されます。つまり、延長された期間に限り、合計100万円の緩和措置が設けられています。
| 贈与の時期 | 相続財産への加算 | 控除 |
|---|---|---|
| 相続開始前3年以内 | 贈与額の全額 | なし |
| 相続開始前4〜7年前 | 贈与額の合計 − 100万円 | 合計100万円 |
| 相続開始前7年超前 | 加算なし | — |
相続時精算課税制度とは、60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について選択できる課税方式です。従来は累計2,500万円の特別控除のみでしたが、令和5年度改正により、暦年課税の基礎控除とは別に年間110万円の基礎控除が新設されました。
この改正により、相続時精算課税を選択した場合でも年110万円以下の贈与なら贈与税の申告が不要になり、さらに110万円以下の贈与分は相続財産への持ち戻しも不要になります。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 暦年課税(改正後) | 相続時精算課税(改正後) |
|---|---|---|
| 10年間の贈与合計 | 1,100万円 | 1,100万円 |
| 贈与税の累計 | 0円 | 0円 |
| 相続財産への加算額 | 670万円(7年分−100万円) | 0円(110万円以下は加算不要) |
| 課税対象の相続財産 | 1億670万円 | 1億円 |
| 相続税額 | 約2,501万円 | 約2,300万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
💡 実務のポイント
年110万円の贈与を10年間続けるケースでは、改正後は相続時精算課税の方が有利になるケースが出てきました。ただし、相続時精算課税は一度選択すると暦年課税に戻れない点、110万円を超える贈与分は相続財産に持ち戻される点に注意が必要です。「どちらが有利か」は贈与額・贈与期間・相続財産の規模によって変わるため、個別のシミュレーションが欠かせません。
暦年課税と相続時精算課税のそれぞれのしくみについて詳しくは「贈与税の仕組みと基礎知識」で解説しています。
従来、タワーマンションの高層階は市場価格が数億円であっても、相続税評価額は路線価と固定資産税評価額に基づいて計算されるため、市場価格の2〜3割程度にとどまるケースがありました。令和4年4月19日の最高裁判決で、相続直前にタワマンを購入して評価を圧縮する手法が否認されたことを受け、国税庁は令和5年10月に「居住用の区分所有財産の評価について」の通達を公表しました。
令和6年1月1日以後の相続・贈与から、区分所有マンション(居住用)の評価には「区分所有補正率」を乗じることになりました。この補正率は次の4つの要素から計算されます。
| 要素 | 評価への影響 |
|---|---|
| 築年数 | 築年数が短いほど補正率が高い(評価額が上がる) |
| 総階数 | 総階数が多いほど補正率が高い |
| 所在階 | 高層階ほど補正率が高い |
| 敷地持分狭小度 | 1戸あたりの敷地面積が小さいほど補正率が高い |
補正の結果、マンションの相続税評価額は市場価格の6割程度(戸建てと同水準)に引き上げられます。対象は居住用の区分所有マンションで、2階建て以下・二世帯住宅・事業用テナントは除外されます。
参考: 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」
⚠️ 注意
改正後であっても、相続直前の購入で過度に評価額を圧縮した場合は、財産評価基本通達総則6項に基づき、税務署が実勢価格での評価を求めてくる可能性があります。節税目的が明白なスキームには引き続きリスクがある点を認識しておくべきです。
相続税評価の計算方法について詳しくは「相続税の計算方法」をご覧ください。
直系尊属(父母・祖父母)から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合に1,000万円まで非課税となる措置は、令和9年3月31日まで2年間延長されました。制度内容自体の変更はありません。
令和7年度改正大綱では、法人版事業承継税制の特例措置(100%納税猶予)について「今後とも適用期限を延長しない」と明記されました。特例措置の適用は贈与・相続ともに2027年12月31日が期限です。事業承継税制の詳細は「事業承継税制の仕組みと概要」をご覧ください。
このほか、贈与税の納税猶予の特例制度における役員就任要件の緩和(「3年以上」から「贈与直前に就任」へ)、相続に係る所有権移転登記の登録免許税免税措置の2年延長、農地等に係る納税猶予制度における営農困難時貸付けの適用事由に介護医療院への入所を追加する改正がありました。
相続税対策として、相続直前に多額の借入れで賃貸マンションやアパートを購入し、相続税評価額を大幅に圧縮する手法が広がっていました。貸付用不動産の評価は路線価・固定資産税評価額をベースとするため、市場価格との乖離が大きくなりやすい構造です。
令和8年度改正では、被相続人等が課税時期前5年以内に取得または新築した貸付用不動産について、従来の路線価等による評価ではなく、「通常の取引価額に相当する金額」で評価することになりました。具体的には、取得価額を基に地価変動等を考慮した金額の80%で評価します。
| 取得時期 | 評価方法(令和9年1月以後の相続等) |
|---|---|
| 課税時期前5年以内に購入・新築 | 取得価額 × 地価変動率等 × 80% |
| 5年超前から所有している土地に新築 | 従来の評価方法(路線価等 + 固定資産税評価額) |
| 5年超前に取得した不動産 | 従来の評価方法 |
💡 実務のポイント
5年超前に取得した不動産は従来どおりの評価方法が使えるため、不動産による相続税対策そのものが封じられたわけではありません。今後は「早期に取得して長期保有する」という長期スパンの戦略が必要になります。直前に慌てて購入するのではなく、計画的に5年以上前から対策を進めることが重要です。
不動産小口化商品(不動産特定共同事業契約等に基づくもの)は、1口100万〜1,000万円で投資でき、相続税評価額が市場価格の2〜3割にまで圧縮される商品として富裕層に人気がありました。令和8年度改正では、取得時期にかかわらず「通常の取引価額に相当する金額」で評価することになり、節税効果はほぼなくなります。適用は2027年1月1日以後の相続・贈与からです。
祖父母等から30歳未満の子・孫へ教育資金を一括贈与した場合に最大1,500万円まで非課税となる措置は、令和8年3月31日をもって終了します。格差の固定化への懸念や利用件数の減少、教育費の無償化の進展が理由です。適用期限までに拠出された資金には引き続き非課税が適用されます。
法人版事業承継税制の特例承継計画の提出期限が1年6ヶ月延長(2027年9月末まで)、個人版事業承継税制の個人事業承継計画の提出期限が2年6ヶ月延長されました。ただし、特例措置による贈与・相続の適用期限自体は2027年12月31日のままです。
改正内容が多くて「結局、自分にはどの改正が関係あるのか」と迷う方も多いでしょう。以下のチェックリストで確認してみてください。
| あなたの状況 | 関係する改正 | 必要な対応 |
|---|---|---|
| 毎年110万円以下の暦年贈与を実施中 | 持ち戻し7年延長 / 精算課税の基礎控除新設 | 暦年vs精算課税の再比較 |
| 年110万円超の贈与を検討中 | 持ち戻し7年延長 / 精算課税の基礎控除 | 贈与額と期間のシミュレーション |
| タワマンや分譲マンションを相続する予定 | 区分所有補正率の導入 | 補正後の評価額を再計算 |
| 相続対策で賃貸物件の購入を検討中 | 貸付用不動産の評価見直し | 5年ルールを前提に早期購入を検討 |
| 不動産小口化商品を保有中 | 不動産小口化商品の評価変更 | 2027年前の贈与を検討 |
| 孫への教育資金贈与を検討中 | 教育資金一括贈与の終了 | 2026年3月末までに拠出 |
| 会社の事業承継を計画中 | 事業承継税制の計画期限延長 | 特例承継計画を2027年9月末までに提出 |
暦年課税が引き続き有利になるのは、贈与者の余命が長く見込める場合です。7年の持ち戻し期間を超える長期的な贈与であれば、加算対象外の贈与額が積み上がります。また、法定相続人以外の人(孫や子の配偶者等)への贈与は生前贈与加算の対象外なので、暦年課税の方が有利な場合があります。
相続時精算課税が有利になるのは、年110万円以下の贈与を比較的短期間(10年程度)で行うケースです。110万円以下であれば贈与税の申告不要・相続財産への持ち戻しも不要のため、暦年課税よりシンプルかつ確実に非課税で移転できます。
📊 公認会計士の視点
実務では「暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利か」という二者択一ではなく、贈与する相手ごとに使い分けるケースが増えています。たとえば、子への贈与は相続時精算課税を選択し、孫への贈与は暦年課税で行う、という組み合わせです。資産全体のポートフォリオを見て判断する必要があります。
「いつの相続・贈与から何が変わるか」を正確に把握することが対策の第一歩です。
| 適用開始日 | 改正内容 |
|---|---|
| 2024年1月1日〜 | 暦年贈与の持ち戻し期間延長開始(段階的に7年へ)、相続時精算課税の年110万円基礎控除、マンション評価の区分所有補正率適用開始 |
| 2026年3月末 | 教育資金一括贈与の非課税措置が終了 |
| 2027年1月1日〜 | 貸付用不動産(5年以内取得)の評価見直し適用、不動産小口化商品の評価見直し適用 |
| 2027年9月末 | 事業承継税制の特例承継計画の提出期限 |
| 2027年12月末 | 事業承継税制(法人版特例措置)の適用期限 |
| 2031年1月1日〜 | 暦年贈与の持ち戻しが完全に7年に(移行期間終了) |
令和5年度のマンション評価見直し、令和8年度の貸付用不動産・不動産小口化商品の評価見直しにより、相続直前の駆け込み購入による節税は事実上封じられつつあります。今後は「5年超前に不動産を取得し、長期保有する」という戦略が基本になります。
暦年贈与の持ち戻しが7年に延長されたことで、節税効果を出すには「なるべく早い段階から計画的に贈与を始める」ことがより重要になりました。80代になってから慌てて始めても、7年の持ち戻し期間に吸収されてしまう可能性があります。
生命保険の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)や小規模宅地等の特例(居住用330㎡まで80%減額)は、今回の改正では変更されていません。これらの制度は引き続き相続税対策の柱として活用できます。小規模宅地等の特例について詳しくは「小規模宅地等の特例の概要」をご覧ください。
📝 行政書士の視点
税制改正に合わせて遺言書の見直しも必要です。たとえば、贈与で移転する予定だった財産を遺言で承継する方針に変更する場合、遺言書の内容もアップデートしなければなりません。遺言書の書き方について詳しくは「遺言書の書き方ガイド」をご覧ください。
📋 この記事のポイント
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