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「グループ会社に従業員を出向させたいが、給与の負担関係をどう整理すればいいかわからない」という経理担当者に向けて、出向・転籍の税務処理を完全ガイドします。この記事を読めば、給与負担金・較差補填金の損金算入要件と寄附金認定リスクを正確に理解できます。


「グループ会社に従業員を出向させたいが、給与の負担関係をどう整理すればいいかわからない」という経理担当者に向けて、出向・転籍の税務処理を完全ガイドします。この記事を読めば、給与負担金・較差補填金の損金算入要件と寄附金認定リスクを正確に理解できます。
🏆 結論:出向者の給与は「労務提供先が負担する」のが税務の原則
出向者の給与は、労務の提供を受ける出向先法人が負担するのが税務上の基本原則です(応益負担の原則)。出向元が負担すべき金額を超えて給与を負担すると、超過部分が出向先への「寄附金」として認定されます。ただし、出向先の給与水準が出向元より低い場合の「較差補填金」は、合理的な理由があれば出向元の損金に算入されます(法基通9-2-47)。出向契約書の整備と負担金額の合理的な根拠の明確化が、税務リスクを回避する最大のポイントです。
従業員を他社で働かせる方法には「出向」「転籍」「労働者派遣」の3つがあり、税務処理はそれぞれ大きく異なります。まず定義を整理しましょう。
| 区分 | 出向元との雇用関係 | 出向先との雇用関係 | 給与負担の原則 |
|---|---|---|---|
| 在籍出向 | 継続 | 新たに発生 | 出向先が負担 |
| 転籍(移籍出向) | 終了 | 新たに発生 | 転籍先が全額負担 |
| 労働者派遣 | 継続 | 発生しない | 派遣元が負担(派遣料として回収) |
本記事では、中小企業のグループ間で最も多い「在籍出向」を中心に、「転籍」についても退職金の取扱いを含めて解説します。
在籍出向では出向元との雇用契約が維持されるため、出向元は出向者に対して従前の労働条件を保証する義務があります。一方、転籍では元の会社との雇用関係が完全に終了するため、転籍後の給与は転籍先の給与規程に従います。退職金については、転籍時に精算するか、在職年数を通算するかで税務処理が異なり、後述する3つの支給形態を理解する必要があります。
税務上の基本原則は、「給与は、その従業員の労務の提供を受けた法人が負担すべき」というものです。出向の場合、出向者は出向先で労務を提供するため、出向先が給与を負担するのが原則です。
実務では、出向元が出向者に給与を支払い続け、出向先が出向元に「給与負担金」を支払う間接支給方式が多く採用されています。この場合、出向先が出向元に支払う給与負担金は、出向先において出向者に対する給与として取り扱われます(法基通9-2-45)。
💡 実務のポイント
出向先が出向元に支払う給与負担金は、名目が「経営指導料」であっても、実質が給与相当額であれば給与として取り扱われます。経営指導料の中に給与相当額と純粋な経営指導部分が混在している場合は、必ず内容を区分しておいてください。区分されていないと、全額が給与負担金として扱われるか、あるいは税務調査で指摘を受けるリスクがあります。
出向先が出向元に支払う給与負担金は、実質的に出向者に対する給与の支払いであるため、消費税の課税対象外(不課税取引)です(消基通5-5-10)。「経営指導料」という名目で支払っていても、その実質が給与であれば不課税取引として処理する必要があります。
ただし、給与負担金を超えて支払われる純粋な経営指導部分は、役務の提供に対する対価として消費税の課税取引になります。この区分を誤ると消費税の過大控除につながりますので、出向契約書で金額を明確に区分しておくことが重要です。
出向者の給与と給与負担金の金額関係によって、税務上の取扱いが大きく変わります。以下の4パターンを理解しておきましょう。
| パターン | 状況 | 税務上の取扱い | リスク |
|---|---|---|---|
| ①負担金=給与 | 出向先の負担金と出向元が支払う給与が同額 | 問題なし(応益負担が成立) | なし |
| ②負担金<給与 | 出向先の給与水準が低く、差額を出向元が負担 | 合理的理由あり → 較差補填金として出向元の損金 合理的理由なし → 出向先への寄附金 | 中(理由の合理性が論点) |
| ③負担金>給与 | 出向先が給与以上の金額を出向元に支払う | 超過分に合理的理由なし → 出向先から出向元への寄附金 | 高(寄附金認定リスク大) |
| ④出向元が全額負担 | 出向先が負担金を一切支払わない | 合理的理由なし → 出向元から出向先への寄附金 | 高(寄附金認定リスク大) |
⚠️ 注意
出向元と出向先に完全支配関係がある場合(100%親子会社など)は、グループ法人税制の適用により、寄附金は全額損金不算入、受贈益は全額益金不算入となります。つまり、寄附金認定されると一方的に課税が生じるため、グループ間出向ではより一層の注意が必要です。
出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するために出向者に支給した給与は、出向元法人の損金に算入されます(法基通9-2-47)。これは出向元が出向者との雇用契約に基づき労働条件を保証する必要があるためです。
法人税基本通達で較差補填金として認められるケースは以下の3つです。
| ケース | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 給与水準の較差 | 出向先の給与水準が出向元より低い場合の差額 | 法基通9-2-47 |
| 経営不振による賞与 | 出向先が経営不振等で賞与を支給できず、出向元が負担 | 法基通9-2-47 注書き |
| 海外出向の留守宅手当 | 出向先が海外にあり、出向元が留守宅手当を支給 | 法基通9-2-47 注書き |
なお、較差補填金は出向元が出向者に直接支給しても、出向先法人を経由して支給しても、同じ取扱いになります。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 出向元(親会社) | 出向先(子会社) |
|---|---|---|
| 出向者への年間給与支給額 | 700万円 | — |
| 出向先からの給与負担金 | △500万円(収入) | 500万円(損金) |
| 較差補填金 | 200万円(損金) | — |
| 出向元の実質負担額 | 200万円 | — |
| 法人税等の削減効果(200万×34%) | 約68万円 | — |
※概算値です。個別の状況により異なります。
較差補填金200万円は出向元の損金に算入され、約68万円の法人税等の削減効果があります。しかし、この200万円の負担自体は出向元のキャッシュアウトですので、出向の目的(子会社の経営改善、人材育成など)と照らし合わせて判断する必要があります。
親会社の従業員を子会社に出向させ、子会社で役員(取締役など)に就任させるケースはグループ経営では一般的です。この場合、出向先が支払う給与負担金は「役員給与」として法人税法第34条の規制を受けます。
出向先で給与負担金を損金算入するためには、以下の2つの要件を両方満たす必要があります(法基通9-2-46)。
| 要件 | 内容 | 実務上の対応 |
|---|---|---|
| ①株主総会の決議 | 給与負担金の額について、役員給与として出向先の株主総会等の決議がされていること | 株主総会議事録に出向役員の報酬額を記載 |
| ②出向契約での明記 | 出向契約等において出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること | 出向契約書に期間・月額報酬・賞与額を明記 |
出向元が従業員として賞与を支給し、その金額を出向先(子会社)が負担する場合、子会社にとってはこの賞与部分が「定期同額給与」に該当しないため、原則として役員賞与として損金不算入になります。
これを回避するには2つの方法があります。第1に、子会社が事前確定届出給与として税務署に届出をする方法。第2に、賞与部分を出向元(親会社)の負担として、較差補填金として処理する方法です。
💡 実務のポイント
グループ全体の税負担を最適化するなら、出向役員への賞与は親会社の較差補填として親会社が負担し、子会社には毎月の定期同額給与分だけを負担金として請求する設計にすることをおすすめします。この方針を出向契約書に明記しておくことで、税務調査での指摘リスクも最小化できます。役員報酬の基本的なルールについては「役員報酬の基礎知識」もご参照ください。
出向役員の場合、給与負担金は毎月支払う必要があります。たとえば3ヶ月分をまとめて四半期ごとに支払うと、定期同額給与の要件(1ヶ月以下の一定期間ごとの支給)を満たさなくなり、損金不算入となる可能性があります。四半期払いにしたい場合は、事前確定届出給与として届出をする対応が必要です。
間接支給方式(出向元が給与を支払い、出向先が負担金を支払う)の場合、健康保険・厚生年金の被保険者資格は出向元で継続するのが一般的です。保険料は出向元が納付し、その費用を出向先に請求する形になります。
雇用保険は「主たる賃金を支払う事業主」の元で適用します。間接支給方式で出向元が給与を支払っている場合は、出向元で雇用保険を適用します。
労災保険は、出向者が実際に勤務する出向先で適用します。出向先は出向元から出向者の給与額の通知を受け、それに基づいて労災保険料を算定・納付する必要があります。
🔷 社労士の視点
出向者の社会保険で最も注意すべきは、出向元と出向先の両方から給与が支払われるケース(直接支給方式で較差補填金がある場合など)です。この場合、2つの事業所で被保険者資格を取得する「二以上事業所勤務届」の提出が必要になることがあります。届出を怠ると保険料の計算が正しくなくなるため、出向契約の締結時に社労士に相談することをおすすめします。
出向に関わる3者の税務処理を、法人税・源泉所得税・社会保険・消費税の4つの切り口で整理します。
| 項目 | 出向元 | 出向先 | 出向者(個人) |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 給与支給額を損金算入。負担金受取額を収入計上。較差補填金は損金。 | 給与負担金を損金算入(出向者への給与として扱う) | — |
| 源泉所得税 | 出向者への給与支給時に源泉徴収 | 負担金支払時の源泉徴収は不要 | 出向元で年末調整 |
| 社会保険 | 被保険者資格を継続(間接支給の場合) | 労災保険のみ適用 | 出向元の保険を継続 |
| 消費税 | 負担金の受取は不課税 | 負担金の支払は不課税(仕入税額控除不可) | — |
※間接支給方式(出向元が給与を支払い、出向先が負担金を支払う)を前提としています。
転籍では出向元との雇用関係が終了するため、退職金の取扱いが重要になります。法人税基本通達9-2-52で、転籍者の退職金については以下の3つの支給形態が認められています。
| 形態 | 内容 | 転籍者への影響 |
|---|---|---|
| ①転籍時に直接支給 | 転籍前の法人が転籍時に本人に退職金を直接支給 | 転籍時に退職所得として課税。勤続年数は転籍前のみ |
| ②転籍先に負担金として支出 | 転籍前の法人が転籍先に退職給与負担金を支出 | 実際の退職時まで課税繰延べ。在職年数通算の場合あり |
| ③実際の退職時に支給 | 転籍者が転籍先を退職する時に支給(直接 or 転籍先経由) | 在職年数通算で退職所得控除額が大きくなる |
実務では、在職年数を通算して退職時に支給する方法(②③)が転籍者にとって有利になることが多く、グループ間の転籍ではこの方式が一般的です。退職金制度の設計については「法人決算の流れ」も参考にしてください。
⚠️ 注意
転籍前の法人と転籍後の法人がそれぞれ退職金を支給した場合、在職期間に照らして明らかに一方が他方の負担すべき退職金を肩代わりしていると認められるときは、その部分が相手方法人への「贈与」(寄附金)として課税されます。退職金の負担配分は客観的な根拠に基づいて決定し、書面で合意しておくことが不可欠です。
出向先法人が、出向者の出向期間に対応する退職金相当額を定期的に出向元法人に支出している場合、その金額は出向先法人の損金に算入されます(法基通9-2-48)。これは出向者が出向先で役員になっている場合でも認められます。
出向者が出向元を退職した場合に、出向先が出向期間に対応する退職金相当額を出向元に支出したときは、出向者が出向先で引き続き勤務していても、その支出した事業年度の損金に算入されます(法基通9-2-49)。
税務リスクを回避するために、出向契約書には以下の項目を必ず記載してください。
📝 出向契約書の必須記載事項チェックリスト
□ 出向期間(開始日・終了日・更新条件)
□ 出向先での職位・業務内容
□ 給与負担金の月額と算定根拠
□ 較差補填金がある場合はその金額と負担方法
□ 賞与の負担方法(出向先負担 or 出向元の較差補填)
□ 社会保険・労働保険の適用関係
□ 退職金の負担区分と計算方法
□ 出向者が出向先で役員に就任する場合の株主総会決議の予定
□ 消費税の取扱い(給与負担金は不課税である旨)
□ 出向解除・復帰の条件
会社設立後にグループ間出向を行う際の全体的な手続きについては「会社設立の流れ」をご参照ください。
| 指摘ポイント | 具体例 | 対策 |
|---|---|---|
| 負担金額の合理性 | 出向先の同等職位の給与水準を大幅に超える負担金 | 出向先の給与規程に基づく金額を根拠として書面で明示 |
| 経営指導料との区分 | 給与負担金を経営指導料に含めて支払い、消費税の仕入税額控除を適用 | 出向契約書で給与負担金と経営指導料を明確に区分 |
| 出向役員の定期同額 | 出向役員への負担金を四半期まとめ払い | 毎月払いにするか、事前確定届出給与の届出を行う |
| 較差補填の根拠 | 較差補填金の金額を合理的に説明できない | 出向元と出向先の給与テーブルの差を書面で保存 |
| 親会社の全額負担 | 子会社が負担金を一切払わず親会社が全額負担 | 子会社は最低限自社の給与水準相当額を負担金として支払う |
💡 実務のポイント
出向に関する税務調査で最も重要な防御資料は「出向契約書」と「給与負担金の算定根拠を示す書面」です。出向元と出向先の給与テーブル、出向者の職位・等級、負担金の計算過程を1つのファイルにまとめ、いつでも提示できるようにしておくことが実務上のベストプラクティスです。
📋 この記事のポイント
出向・転籍の税務処理は、出向契約の設計段階から専門家に相談することで多くのリスクを回避できます。特にグループ間出向では寄附金認定のリスクが高いため、出向契約書の作成と負担金の算定根拠の整備を早い段階で進めてください。
AYUSAWA PARTNERS
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