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「従業員のために使ったお金を経費にしたいが、どこまで認められるのかわからない」という経営者に向けて、福利厚生費として損金算入できる10項目の要件・上限額・否認リスクを完全ガイドします。この記事を読めば、自社で導入すべき福利厚生と節税効果を具体的に判断できます。


「従業員のために使ったお金を経費にしたいが、どこまで認められるのかわからない」という経営者に向けて、福利厚生費として損金算入できる10項目の要件・上限額・否認リスクを完全ガイドします。この記事を読めば、自社で導入すべき福利厚生と節税効果を具体的に判断できます。
🏆 結論:福利厚生費は「全従業員対象」「社会通念上妥当な金額」「現物支給」の3要件を満たせば全額損金になる
福利厚生費とは、給与・賞与以外に法人が従業員のために支出する費用のことで、3つの要件を満たせば法人税法上の損金として全額計上でき、従業員側も所得税が非課税になります。結論から言えば、中小企業が優先的に取り組むべきは「借上社宅」「食事補助」「健康診断の充実」の3つです。この3つだけで従業員10人の会社なら年間100万円以上の法人税削減が見込めるケースもあります。ただし、要件を1つでも欠くと「給与」として課税されるため、福利厚生規程の整備が不可欠です。
福利厚生費とは、法人が従業員やその家族のために支出する給与・賞与以外の費用です。従業員の生活の安定やモチベーション向上を目的とした支出であり、要件を満たせば法人税法上の損金として全額計上できます。
ここで重要なのは、会計上の勘定科目としての「福利厚生費」と、税務上の「損金算入が認められる福利厚生費」は必ずしも一致しないという点です。会計上は福利厚生費として処理していても、税務調査で「給与」や「交際費」に認定されるケースは少なくありません。
💡 実務のポイント
実務では、福利厚生費として経費処理しているものの中で、税務調査で最も指摘を受けやすいのが「一部の従業員だけが利用している」ケースです。社長と役員だけが参加した食事会を福利厚生費で処理しているケースは、ほぼ確実に否認されます。「全従業員に機会が開かれているか」を常に確認する習慣が大切です。
福利厚生には「法定福利」と「法定外福利」の2種類があります。節税対策として議論されるのは主に法定外福利費ですが、まず全体像を把握しましょう。
| 区分 | 内容 | 勘定科目 | 損金算入 |
|---|---|---|---|
| 法定福利費 | 社会保険料・労働保険料の会社負担分(法律で義務) | 法定福利費 | 全額損金 |
| 法定外福利費 | 社宅・食事補助・社員旅行・健康診断など(任意) | 福利厚生費 | 要件を満たせば全額損金 |
法定福利費は法律で義務付けられているため、要件不備で否認されることはありません。一方、法定外福利費は企業の裁量で決められるため、損金算入のための要件を正確に把握する必要があります。本記事では、この「法定外福利費」に焦点を当てて解説します。
福利厚生費として認められるためには、まず全従業員が公平に利用できる機会が提供されていることが必要です。「全従業員」とは、正社員だけでなくパート・アルバイトを含む全ての従業員を指します。
ただし、「全員が実際に利用している」ことまでは求められません。「希望すれば誰でも利用できる状態」であれば要件を満たします。たとえば社員旅行に参加しなかった従業員がいても、参加の機会が全員に与えられていれば問題ありません。
支出する金額が企業規模や業界の平均と比較して妥当な範囲であることが必要です。「社会通念上妥当」とは明確な金額基準がない概念ですが、同規模・同業種の企業と比べて著しく高額でないことが判断基準になります。
福利厚生は原則として現金ではなくサービスや機会として提供する必要があります。現金や商品券など換金性の高いものを支給すると、金額にかかわらず「給与」として課税対象になります。
⚠️ 注意
住宅手当として現金を支給する場合は給与扱いです。同じ住居支援でも、法人名義で物件を借りて「借上社宅」として提供すれば福利厚生費になります。この「現金支給か現物提供か」の違いだけで、社会保険料と所得税の取扱いが大きく変わります。
実務では「この支出は福利厚生費で処理してよいのか?」と迷う場面が頻繁にあります。以下の判定フローで確認しましょう。
| 判定ステップ | 質問 | Yesの場合 | Noの場合 |
|---|---|---|---|
| ステップ1 | 支出の相手は社外(取引先)か? | → 交際費として処理 | → ステップ2へ |
| ステップ2 | 全従業員が平等に利用できるか? | → ステップ3へ | → 給与として処理 |
| ステップ3 | 金額は社会通念上妥当か? | → ステップ4へ | → 超過分を給与として処理 |
| ステップ4 | 現金・商品券ではなく現物提供か? | → 福利厚生費で処理OK | → 給与として処理 |
この判定フローは基本的な考え方を整理したものです。個別の項目には食事補助の月額上限や社員旅行の日数制限など、さらに細かい要件があります。具体的な要件は次のセクションで項目別に解説します。
なお、福利厚生費と交際費の区分については、国税庁タックスアンサーNo.5261で詳しく説明されています。租税特別措置法第61条の4の規定により、専ら従業員の慰安のための運動会・旅行などは交際費から除かれ、福利厚生費として扱われます。
法人が福利厚生費として損金算入できる主要10項目の要件と金額基準を一覧表で整理します。
| 項目 | 損金要件のポイント | 金額基準・上限 | 否認リスク |
|---|---|---|---|
| 借上社宅 | 法人名義で契約、従業員から賃貸料相当額の50%以上を徴収 | 上限なし(差額が福利厚生費) | 中(計算方法の誤りが多い) |
| 食事補助 | 従業員が50%以上自己負担、法人が直接支払い | 会社負担月額3,500円以下(税抜) | 高(要件不備が多い) |
| 社員旅行 | 全従業員対象、50%以上参加、4泊5日以内 | 1人あたり10万円が目安 | 高(日数・参加率に注意) |
| 健康診断 | 全従業員対象、法人名義で直接支払い | 法定健診は全額OK、人間ドックは常識の範囲 | 低 |
| 慶弔見舞金 | 社内規程に基づき、一定基準で全従業員に支給 | 結婚祝1〜3万円、香典1〜5万円が相場 | 低(規程があれば安全) |
| 通勤手当 | 合理的な経路・方法に基づく | 電車・バス:月15万円まで非課税 | 低 |
| 制服・作業着 | 業務に必要で全従業員に支給 | 社会通念上妥当な金額 | 低 |
| 常備薬 | 全従業員が利用可能 | 一般的な医薬品の範囲 | 低 |
| 社内レクリエーション | 全従業員対象、一律の費用負担 | 1人5,000〜1万円程度が目安 | 中(頻度・豪華さに注意) |
| 法人保険 | 全従業員を加入対象 | 解約返戻率50%以下なら全額損金 | 中(役員だけ加入はNG) |
※金額は目安です。個別の状況により判断が異なるため、正確な判定は税理士にご相談ください。
中小企業が最優先で導入すべき福利厚生が「借上社宅」です。法人名義で物件を賃借し、従業員に社宅として貸す制度で、家賃と従業員から受け取る賃料の差額が福利厚生費になります。
借上社宅の節税メリットは3つあります。第1に、差額分が法人税法上の損金になること。第2に、従業員の所得税が非課税になること(住宅手当として現金支給すると課税される)。第3に、標準報酬月額に含まれないため社会保険料の算定にも影響しないことです。
なお、従業員社宅の場合は賃貸料相当額の50%以上を従業員から徴収すれば問題ありません。役員社宅の場合はより複雑な計算式(小規模住宅かどうかで異なる)が必要になりますので、役員社宅については「法人の社宅制度の税務|役員社宅・従業員社宅の家賃設定と損金算入」で詳しく解説しています。
💡 実務のポイント
借上社宅で最も多いミスが「法人名義で契約していない」ケースです。従業員本人が賃貸契約をしている物件に会社が家賃を補填しても、それは「住宅手当」として給与課税されます。社宅として扱うには、必ず法人名義で賃貸借契約を締結してください。
食事補助も費用対効果の高い福利厚生です。国税庁タックスアンサーNo.2594で示されている非課税要件は以下の2つです。
第1に、従業員が食事代の50%以上を負担していること。第2に、会社負担額が月額3,500円(税抜)以下であること。この2つを両方満たす必要があります。
たとえば月額7,000円の食事を提供し、従業員が3,500円を負担、会社が3,500円を負担するケースでは、2つの要件を両方満たすため、会社負担分の3,500円が福利厚生費として損金算入できます。一方、会社負担が4,000円になると要件②を超えるため、差額ではなく全額が給与課税の対象になるので注意してください。
⚠️ 注意
食事代を「現金で支給」すると、たとえ月額3,500円以下であっても全額が給与課税されます(深夜勤務者への夜食代1食あたり650円以下の場合を除く)。必ず会社が直接飲食店や弁当業者に支払う形にしてください。
従業員の健康診断は労働安全衛生法で実施が義務付けられており、法定健診の費用は全額福利厚生費として損金算入できます。これに加えて、人間ドックの費用も全従業員が対象であれば福利厚生費として認められます。
ポイントは「法人が直接医療機関に支払う」ことです。従業員に現金を渡して各自で健康診断を受けさせる方式だと、給与として課税される可能性があります。
📐 シミュレーション前提条件
| 施策 | パターンA 最小限 |
パターンB バランス型 |
パターンC フル活用 |
|---|---|---|---|
| 食事補助(月3,500円×10人×12月) | 42万円 | 42万円 | 42万円 |
| 借上社宅(会社負担月5万円×人数×12月) | — | 300万円(5人分) | 600万円(10人分) |
| 人間ドック(年1回5万円×10人) | — | 50万円 | 50万円 |
| 社員旅行(年1回5万円×10人) | — | — | 50万円 |
| 福利厚生費の年間合計 | 42万円 | 392万円 | 742万円 |
| 法人税等の削減額(×34%) | 約14万円 | 約133万円 | 約252万円 |
| 社保料削減効果(社宅分×15%) | — | 約45万円 | 約90万円 |
※概算値です。社宅の社保料削減効果は、住宅手当として現金支給した場合との比較。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
パターンBのバランス型でも、法人税削減と社保料削減を合わせると年間約178万円の効果が期待できます。一方で、福利厚生費は「節税のための支出」ではなく「従業員への投資」であることを忘れないでください。支出が増えれば手元資金は減りますので、業績の波も考慮して無理のない範囲で導入することが大切です。
社員旅行の費用を福利厚生費として計上するには、国税庁タックスアンサーNo.2603で示されている以下の要件を全て満たす必要があります。
第1に、旅行の期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は外国での滞在日数が4泊5日以内)。第2に、全従業員の50%以上が参加していること。この2つが基本要件です。
金額については法令で明確な上限は定められていませんが、実務上は1人あたり10万円程度が妥当な範囲とされています。これを大幅に超える豪華な旅行は、給与として課税される可能性が高くなります。
💡 実務のポイント
社員旅行で最も注意すべきなのが「不参加者への現金支給」です。旅行に参加しなかった従業員に旅行費用相当額の現金を支給すると、参加した従業員も含めて全員が給与課税の対象になります。不参加者には何も支給しないのが鉄則です。
社内イベントの費用も要件を満たせば福利厚生費で処理できます。全従業員に参加の機会があること、会社の費用負担が一律であること、金額が社会通念上高額でないことが条件です。
実務的な金額の目安は1人あたり5,000円〜1万円程度です。豪華すぎる会場での開催や開催頻度が多すぎる場合は、交際費や給与と認定されるリスクがあります。
税務調査で否認されやすいパターンを具体例とともに整理します。
| NGパターン | 具体例 | 否認後の処理 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 特定の人だけが利用 | 社長と役員だけの食事会を福利厚生費で処理 | 交際費 or 給与 | 全従業員に参加機会を設ける |
| 現金・商品券の支給 | 創立記念日に全従業員に商品券1万円を支給 | 給与 | 記念品(換金性の低いもの)で支給 |
| 金額が過大 | 社員旅行で1人あたり30万円の海外旅行 | 給与 | 1人あたり10万円以内に抑える |
| 規程がない | 慶弔見舞金を都度社長の判断で金額を決定 | 給与 or 交際費 | 福利厚生規程を作成・周知 |
| 従業員がいない | 一人社長法人で自分の健康診断を福利厚生費で処理 | 役員報酬(定期同額給与以外は損金不算入) | 従業員を雇用してから制度化する |
特に「一人社長法人の福利厚生費」は要注意です。従業員がいない法人では、社長個人のための支出は原則として役員報酬と認定されます。この場合、定期同額給与の要件を満たさなければ損金算入もできないため、二重に不利になります。
福利厚生費を安全に損金算入するためには、社内規程の整備が不可欠です。以下のチェックリストを参考に、自社の福利厚生規程を確認してください。
📝 福利厚生規程の必須記載事項チェックリスト
□ 対象者の範囲(全従業員が対象であることを明記)
□ 各制度の内容と利用条件(社宅・食事補助・健康診断など)
□ 金額の基準と上限(慶弔見舞金の金額表、食事補助の月額上限など)
□ 支給方法(現物支給であること、法人名義で支払うこと)
□ 利用申請の手続き(申請書の様式、承認フロー)
□ 社員旅行の参加率基準(50%以上、4泊5日以内)
□ 規程の周知方法(全従業員への配布・説明の記録)
□ 規程の施行日と改定履歴
🔷 社労士の視点
福利厚生規程は、就業規則の「別規程」として作成するのが一般的です。常時10人以上の従業員を雇用する事業所では就業規則の作成・届出が義務付けられており、福利厚生規程もその一部として労働基準監督署に届出が必要な場合があります。規程の作成と届出手続きは社労士にご相談ください。
福利厚生費は法人税の損金算入だけでなく、消費税の節税にも関わります。給与は消費税の仕入税額控除の対象外ですが、福利厚生費として処理した支出は原則として仕入税額控除の対象になります。
つまり、同じ金額を従業員に還元する場合でも、「給与」として支払うより「福利厚生費」として支出する方が、消費税の面でも有利になるのです。インボイス制度の導入により、仕入税額控除の要件としてインボイスの保存が必要になっていますので、福利厚生関連の取引先がインボイス発行事業者であることを確認しておきましょう。
ただし、全ての福利厚生費に消費税がかかるわけではありません。社宅の家賃(住居用物件の賃料は非課税)や、健康保険・雇用保険等の法定福利費は消費税の非課税取引です。消費税の仕入税額控除を受けられるのは、食事代・社員旅行の交通費・制服の購入費など、課税取引に該当する支出に限られます。
個人事業主本人のための福利厚生費は経費として認められません。福利厚生費は「従業員のための支出」であり、個人事業主自身は従業員に該当しないためです。個人事業主の家族のための支出も同様に対象外です。
ただし、家族以外の従業員を雇用している場合は、その従業員のために支出した費用を福利厚生費として計上できます。
法人化している場合でも、従業員がいない一人社長法人では福利厚生費の計上は非常に限定的です。社長は法人の「役員」であり「従業員」ではないため、社長個人のための支出は原則として役員報酬として扱われます。
実務では、社宅については一人社長法人でも認められる可能性がありますが、社員旅行や社内レクリエーションは「全従業員が対象」という要件を満たしようがないため、ほぼ認められません。法人設立の際に福利厚生費の節税効果を期待するなら、少なくとも1人以上の従業員を雇用することが前提になります。会社設立の全体像は「会社設立の流れ」をご覧ください。
法定福利費(社会保険料の会社負担分)は勘定科目「法定福利費」で処理します。給与天引き分は「預り金」で処理し、年金事務所への支払い時に「法定福利費」と「預り金」の両方を取り崩します。
法定外福利費は勘定科目「福利厚生費」で処理します。代表的な仕訳パターンは以下のとおりです。
食事補助:弁当業者に月額35,000円(10人分)を支払い、従業員から35,000円を天引き → 借方:福利厚生費35,000 / 貸方:現金預金70,000、借方:給与預り金35,000
社員旅行:旅行会社に500,000円を支払い → 借方:福利厚生費500,000 / 貸方:現金預金500,000
健康診断:医療機関に200,000円を支払い → 借方:福利厚生費200,000 / 貸方:現金預金200,000
決算書類の作成方法については「法人決算の流れ」を参考にしてください。
中小企業が福利厚生費で節税する場合、以下の優先順位で取り組むことをおすすめします。
| 優先度 | 施策 | 節税効果 | 導入の手軽さ | おすすめ企業 |
|---|---|---|---|---|
| ★★★ | 借上社宅 | 大(法人税+社保料+所得税) | やや手間(契約切替必要) | 従業員3人以上 |
| ★★★ | 食事補助 | 中(毎月の積み重ね) | 手軽(弁当宅配サービス等) | 全企業 |
| ★★☆ | 健康診断の充実 | 中 | 手軽(医療機関と契約) | 全企業 |
| ★★☆ | 慶弔見舞金制度 | 小 | 手軽(規程作成のみ) | 全企業 |
| ★☆☆ | 社員旅行 | 中(年1回) | 手間あり(参加率管理必要) | 従業員5人以上 |
| ★☆☆ | 法人保険 | 大(ただし長期拘束) | やや複雑(保険設計必要) | 業績安定企業 |
優先順位の判断基準は「節税効果の大きさ」×「導入の手軽さ」×「否認リスクの低さ」です。借上社宅は手続きにやや手間がかかりますが、節税効果が圧倒的に大きいため最優先としました。役員報酬の最適化と組み合わせるとさらに効果が高まります。詳しくは「役員報酬の基礎知識」もご参照ください。
📊 公認会計士の視点
福利厚生費による節税は「支出を伴う節税」です。税金が100万円減っても、福利厚生費として200万円を支出していれば、キャッシュフローは100万円のマイナスです。節税効果だけに目を奪われず、「その投資が従業員の定着率向上や採用力強化にどれだけ寄与するか」という経営判断として捉えることが重要です。
📋 この記事のポイント
まずは自社の福利厚生規程を見直し、上記3つの施策の導入を検討することから始めてみてください。福利厚生費は正しく運用すれば、法人税の節税と従業員満足度の向上を同時に実現できる数少ない施策です。
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