公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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従業員の退職金制度の種類と税務|中退共・確定拠出年金・確定給付年金
「従業員に退職金制度を導入したいが、どの制度を選べばいいかわからない」という中小企業経営者に向けて、6つの退職金制度の特徴・税務上の取扱い・選び方を完全ガイドします。この記事を読めば、自社に最適な退職金制度を選び、掛金の損金算入と従業員への課税関係を正しく理解できるようになります。


従業員の退職金制度の種類と税務|中退共・確定拠出年金・確定給付年金
「従業員に退職金制度を導入したいが、どの制度を選べばいいかわからない」という中小企業経営者に向けて、6つの退職金制度の特徴・税務上の取扱い・選び方を完全ガイドします。この記事を読めば、自社に最適な退職金制度を選び、掛金の損金算入と従業員への課税関係を正しく理解できるようになります。
🏆 結論:中小企業の第一候補は「中退共」か「企業型DC」
従業員10名以下の小規模企業なら、導入コストがほぼゼロで国の助成もある「中退共(中小企業退職金共済)」が最も手軽です。従業員の資産形成意識が高い企業や役員も加入させたい場合は「企業型DC(確定拠出年金)」が有力候補です。いずれの制度も掛金は全額損金算入でき、従業員の掛金拠出時には所得税が課されません。ただし制度ごとに「役員加入の可否」「運用リスクの負担者」「中途退職時の取扱い」が異なるため、自社の状況に合った制度選定が重要です。
中小企業が選択できる退職金制度は、大きく「共済型」「企業年金型」「社内積立型」の3カテゴリ・6種類に分類できます。まずは全体像を比較表で確認しましょう。
| 制度 | 掛金上限/月 | 役員加入 | 運用リスク | 中途退職時 | 導入コスト | 国の助成 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 中退共 | 3万円 | ×不可 | 機構が運用 | 直接受取可 | ほぼゼロ | あり |
| 特定退職金共済(特退共) | 3万円 | ×不可 | 商工会等が運用 | 直接受取可 | ほぼゼロ | なし |
| 企業型DC | 5.5万円 | ○可能 | 従業員が運用 | 60歳まで引出不可 | 中〜高 | なし |
| 確定給付年金(DB) | 制限なし | ○可能 | 会社が負担 | 規約による | 高 | なし |
| iDeCo+(イデコプラス) | 2.3万円 | ×不可 | 従業員が運用 | 60歳まで引出不可 | 低 | なし |
| 社内積立(退職一時金) | 制限なし | ○可能 | 会社が負担 | 退職金規程による | 低 | なし |
※企業型DCの掛金上限は他の企業年金がない場合。DBと併用する場合は月額2.75万円が上限。
退職金制度を選ぶ際に経営者が最も気にするのは「掛金は経費になるのか」「従業員に税金がかかるのか」という2点です。制度ごとに整理しましょう。
| 制度 | 掛金の法人税上の取扱い | 従業員の拠出時課税 | 従業員の受取時課税 |
|---|---|---|---|
| 中退共 | 全額損金算入 | 課税なし | 退職所得(一時金)or 雑所得(年金) |
| 特退共 | 全額損金算入 | 課税なし | 退職所得(一時金)or 雑所得(年金) |
| 企業型DC | 全額損金算入 | 課税なし(社保料も対象外) | 退職所得(一時金)or 雑所得(年金) |
| 確定給付年金(DB) | 全額損金算入 | 課税なし | 退職所得(一時金)or 雑所得(年金) |
| iDeCo+ | 事業主拠出分は損金算入 | 本人拠出分は小規模企業共済等掛金控除 | 退職所得 or 雑所得 |
| 社内積立 | 支給時に損金算入(積立時は不可) | なし | 退職所得 |
💡 実務のポイント
社内積立(退職一時金制度)は、積立時に損金算入できない点が最大のデメリットです。会計上は「退職給付引当金」として費用計上しますが、税務上は引当金が損金不算入のため、実際に退職金を支給するまで損金にはなりません。中退共や企業型DCであれば掛金を拠出した時点で損金になるため、資金準備と節税を同時に実現できます。
中退共は、中小企業の従業員のための国の退職金制度です。厚生労働省所管の独立行政法人が運営しており、導入企業は約37万社、加入者は約360万人と、中小企業の退職金制度としては最も普及しています。
中退共に加入できるのは「中小企業」に限られます。業種によって基準が異なるため、自社が該当するか確認しましょう。
| 業種 | 資本金(出資金) | 常用従業員数 |
|---|---|---|
| 一般業種(製造・建設等) | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
※資本金・従業員数のいずれかを満たせば加入可能です。
中退共の最大のメリットは導入・運営コストがほぼゼロという点です。掛金は月額5,000円〜30,000円の16段階から選択でき、新規加入時は最初の1年間、掛金の2分の1(上限5,000円)の国の助成が受けられます。
一方、注意すべき点もあります。役員(使用人兼務役員を除く)は加入できないこと、掛金の減額には従業員の同意または厚生労働大臣の認定が必要なこと、そして短期間(2年未満)で退職した場合は掛金総額を下回る退職金しか支給されないことです。
⚠️ 注意:退職金は中退共から従業員に直接支給される
中退共の退職金は、会社を経由せず中退共から従業員に直接支払われます。つまり、懲戒解雇の場合でも会社が退職金を不支給にすることは原則としてできません(厚生労働大臣の認定を受ければ減額は可能)。この点は社内積立型の退職金制度との大きな違いです。退職金規程で「懲戒解雇の場合は不支給」と定めている会社は、中退共だけでは対応できないため、社内積立との併用を検討する必要があります。
企業型DCは、会社が掛金を拠出し、従業員自身が運用商品を選択する制度です。運用成果によって将来の受取額が変動するため、「確定拠出(掛金が確定)」と呼ばれます。
企業型DCの掛金は、社会保険料の算定基礎となる「報酬月額」から除外されます。つまり、給与の一部を企業型DCの掛金として拠出する「選択制DC」を導入すれば、従業員・会社双方の社会保険料を削減できる可能性があります。
📊 公認会計士の視点
企業型DCの会計処理はシンプルです。掛金を拠出した時点で「確定拠出年金費用」として費用計上し、それ以降は追加的な費用負担が発生しません。確定給付年金(DB)のように退職給付債務の計算や数理計算上の差異の処理が不要なため、中小企業にとっては会計面でも管理しやすい制度です。
企業型DCでは、従業員が自ら運用商品を選択するため、投資教育の実施が事業主の努力義務として定められています。また、原則として60歳まで資金を引き出せないため、中途退職した従業員はiDeCoに移換して運用を継続する必要があります。若い従業員が多い企業では「60歳まで引き出せない」というデメリットが退職金制度としての魅力を下げる可能性がある点に留意が必要です。
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鮎澤パートナーズに相談する確定給付企業年金(DB)は、将来の給付額をあらかじめ約束し、その給付に必要な掛金を会社が拠出・運用する制度です。従業員にとっては将来の受取額が確定している安心感がありますが、運用リスクは会社が負います。
DBは掛金上限がないため、高額な退職金を準備したい企業に適しています。また、運用を会社側でコントロールできるため、従業員に投資教育を行う負担がありません。ただし、運用成績が悪化した場合は追加の掛金拠出(掛金の引上げ)が必要になるリスクがあり、中小企業にとっては資金繰りへの影響が懸念されます。
実務では、近年「はぐくみ企業年金」のようなDB型の制度が中小企業向けにパッケージ化されており、以前よりも導入のハードルが下がっています。
「結局、うちの会社にはどの制度が合うのか?」を判断するために、従業員数と予算に応じた判断フローを整理しました。
| 企業の状況 | おすすめ制度 | 理由 |
|---|---|---|
| 従業員5名以下・導入コスト最小 | 中退共 | 手続き簡単・助成金あり・運営コストゼロ |
| 役員も加入させたい | 企業型DC | 役員も加入可能・社保料削減効果あり |
| 従業員の資産形成意識が高い | 企業型DC | 運用の選択肢が豊富・マッチング拠出可能 |
| 高額な退職金を確約したい | DB(確定給付年金) | 掛金上限なし・給付額が確定 |
| 従業員300名以下・企業年金なし | iDeCo+ | 従業員のiDeCoに上乗せ・導入コスト最小 |
| 懲戒解雇時に不支給としたい | 社内積立+中退共の併用 | 社内積立部分で不支給条件を設定可能 |
💡 実務のポイント
年間100社以上の法人設立を支援してきた経験上、従業員10名以下の創業間もない会社には中退共を勧めることが多いです。理由は、導入が最も簡単で(申込書を記入するだけ)、国の助成もあり、運営の手間がほぼかからないからです。会社が成長して従業員が増えたり、役員も制度に加入させたくなった段階で、企業型DCへの移行や併用を検討するのが現実的なステップです。
事業拡大や制度見直しの際に、既存の制度から別の制度へ資産を移すことが可能です。主な移換パターンを整理しました。
| 移換元 | 移換先 | 可否 | 条件・注意点 |
|---|---|---|---|
| 中退共 | 企業型DC | ○ | 合併等に伴う場合に限る |
| 中退共 | DB | ○ | 合併等に伴う場合に限る |
| 企業型DC | iDeCo | ○ | 退職時に移換 |
| DB | 企業型DC | ○ | 規約で定めた場合 |
| 中退共+企業型DC | —(併用) | ○ | 併用可能(それぞれの掛金上限は別枠) |
会社設立時の制度選定については「会社設立の流れと手続きの完全ガイド」を、法人決算における退職金の会計処理は「法人決算の流れと手続きの完全ガイド」もあわせて参照してください。
従業員が退職金を一時金で受け取る場合は「退職所得」として課税されます。退職所得には退職所得控除という大きな控除枠があり、通常の給与所得に比べて税負担が大幅に軽減されます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
たとえば勤続30年の従業員であれば、退職所得控除額は800万円+70万円×10年=1,500万円です。退職金が1,500万円以下であれば所得税・住民税はゼロとなります。
🔷 社労士の視点
退職金制度の導入・変更には就業規則(賃金規程・退職金規程)の整備が不可欠です。特に中退共を導入する場合は、退職金規程に「退職金は中退共から支給されるものとする」旨を明記し、社内積立分との関係も明確にしておく必要があります。退職金規程が不備な状態で制度を運用すると、退職時にトラブルが発生するリスクがあります。役員報酬の退職金設計については「役員報酬の基礎知識と決め方の完全ガイド」もご覧ください。
📐 シミュレーション前提条件
📢 令和8年度改正:防衛特別法人税の創設
令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から、法人税額に対して4%の防衛特別法人税が課されます。ただし課税標準の計算上、基準法人税額から年500万円が控除されるため、法人税額がおおむね500万円以下の中小企業には実質的な負担は生じません。控除を超える法人では、本記事に記載の実効税率が約1%上昇します。
| 項目 | 中退共 | 企業型DC | 社内積立 |
|---|---|---|---|
| 掛金総額(10年間) | 120万円 | 120万円 | 120万円 |
| 損金算入のタイミング | 毎月 | 毎月 | 退職時のみ |
| 10年間の法人税削減効果 | 約39.6万円 | 約39.6万円 | 0円(退職時に一括) |
| 退職金の受取額(概算) | 約127万円 | 運用次第 | 規程に準拠 |
| 国の助成(新規加入時) | 最大6万円 | なし | なし |
※中退共の退職金額は予定運用利回り1%で概算。企業型DCは運用成績により変動。
📋 この記事のポイント
退職金制度の選定は、法人税の損金算入効果だけでなく、人材確保・従業員満足度・資金繰りへの影響まで含めた総合的な判断が必要です。法人設立の初期段階から検討し、会社の成長に合わせて最適な制度を選びましょう。
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