公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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「従業員の通勤手当はどこまで非課税?いくらまで経費にできる?」とお悩みの経理担当者に向けて、交通手段別の非課税限度額・法人の損金算入ルール・社会保険料への影響を完全ガイドします。この記事を読めば、通勤手当の正しい経理処理と節税ポイントが明確になります。


「従業員の通勤手当はどこまで非課税?いくらまで経費にできる?」とお悩みの経理担当者に向けて、交通手段別の非課税限度額・法人の損金算入ルール・社会保険料への影響を完全ガイドします。この記事を読めば、通勤手当の正しい経理処理と節税ポイントが明確になります。
🏆 結論:通勤手当は非課税限度額の範囲内なら所得税非課税・法人の全額損金
通勤手当は、電車・バス通勤なら月額15万円まで、マイカー・自転車通勤なら片道距離に応じた限度額まで所得税が非課税になります。法人にとっては支給額の全額が損金算入できるため、給与の一部を通勤手当として適正に支給することは合理的な経費計上策です。ただし、非課税限度額を超えた部分は給与として所得税の課税対象になること、通勤手当は非課税・課税にかかわらず社会保険料の算定対象に含まれることに注意が必要です。
通勤手当とは、従業員が自宅から職場までの通勤にかかる費用を補填するために法人が支給する手当です。労働基準法上の支給義務はなく、支給するかどうか、いくら支給するかは各法人の就業規則や賃金規程で自由に定められます。
ただし、実態としてはほとんどの法人が何らかの形で通勤手当を支給しており、従業員の採用競争力や定着率に影響する重要な福利厚生の一つです。
非課税限度額とは、通勤手当のうち所得税がかからない上限金額のことです。この範囲内であれば従業員の所得税の計算から除外されるため、手取り額を減らさずに通勤費用を補填できます。限度額を超えて支給した部分は給与所得として課税対象になります。
なお、「非課税限度額=会社が支給すべき金額」ではありません。限度額はあくまで税務上の基準であり、会社が実際にいくら支給するかは別の問題です。
電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する従業員に支給する通勤手当は、1ヶ月あたり15万円まで非課税です。この限度額は2025年・2026年の改正でも変更されていません。
| 通勤手段 | 非課税限度額(月額) | 条件 |
|---|---|---|
| 電車・バス等の公共交通機関 | 150,000円 | 最も経済的かつ合理的な経路の運賃等の合計額 |
非課税と認められるのは「経済的かつ合理的な経路」で通勤した場合の運賃・定期代です。新幹線や特急を利用する場合、その方法が最も合理的であれば非課税の対象になります。ただし、グリーン車料金は一般的に個人の嗜好による付加費用とみなされ、課税対象になる可能性が高いです。
💡 実務のポイント
実務では、6ヶ月定期を一括購入して支給するケースが多いですが、非課税限度額の判定は「1ヶ月あたりの金額」で行います。6ヶ月分の定期代を6で割った月額が15万円以下であれば非課税です。定期代の運賃改定があった場合は、改定後の金額で再計算が必要です。
マイカーや自転車で通勤する従業員への通勤手当は、片道の通勤距離に応じた非課税限度額が定められています。2025年11月の改正で11年ぶりに引き上げられ、2025年4月分に遡及適用されました。さらに2026年4月からは、65km以上の新距離区分と駐車場代の非課税枠が追加されています。
📢 令和7年・令和8年度改正
2025年11月:マイカー・自転車通勤の非課税限度額が2025年4月分に遡及して引き上げ。2026年4月:65km以上の4段階新区分を新設、駐車場代月額5,000円の非課税枠を追加。電車・バスの限度額(月額15万円)は据え置き。
| 片道の通勤距離 | 改正前(〜2025年3月) | 改正後(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 2km未満 | 全額課税 | 全額課税 |
| 2km以上10km未満 | 4,200円 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,100円 | 7,500円 |
| 15km以上25km未満 | 12,900円 | 13,500円 |
| 25km以上35km未満 | 18,700円 | 19,800円 |
| 35km以上45km未満 | 24,400円 | 25,800円 |
| 45km以上55km未満 | 28,000円 | 30,100円 |
| 55km以上 | 31,600円 | 38,700円 |
※2026年4月以降、65km以上に新たな距離区分が追加され、最大66,400円/月まで拡充されています。また、マイカー通勤者が自己負担で外部駐車場を利用する場合、月額5,000円を上限に非課税枠が追加されます。
電車とマイカーを併用して通勤する場合、非課税限度額は「電車等の運賃 + マイカーの距離区分の限度額」の合計で判定します。ただし、合計で月額15万円が上限です。
非課税限度額の範囲内で支給された通勤手当は所得税の課税対象外です。限度額を超えた部分のみが給与所得として課税されます。
ここが多くの経理担当者が見落とすポイントです。通勤手当は、所得税が非課税であっても、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の算定対象となる「報酬」に含まれます。つまり、通勤手当の金額が増えれば標準報酬月額が上がり、社会保険料も増加します。
⚠️ 注意
通勤手当が所得税では非課税でも社会保険料では課税扱いになるという点は、2025年に国会やSNSでも大きく議論されたテーマです。従業員にとっては「通勤手当が増えたのに手取りがあまり変わらない」という現象が起こり得ます。支給額を決定する際は、社会保険料への影響も考慮してください。
法人が支払う通勤手当は、消費税の課税仕入れとして仕入税額控除の対象になります。給与は消費税の不課税取引ですが、通勤手当は「通勤に通常必要であると認められる部分の金額」について課税仕入れとされています(消費税法基本通達11-2-2)。
このため、同じ金額を従業員に支給する場合でも、「給与」として支給するより「通勤手当」として支給する方が、消費税の面で法人に有利です。ただし、インボイス制度の下では、定期券購入時のインボイス(3万円以上の場合)の保存が必要です。
リモートワークの普及に伴い、通勤手当に加えて在宅勤務手当を支給する企業が増えています。これら3つの手当は税務・社保の扱いが異なるため、正しく理解しておく必要があります。
| 比較項目 | 通勤手当 | 住宅手当 | 在宅勤務手当 |
|---|---|---|---|
| 所得税 | 限度額内は非課税 | 全額課税 | 実費精算方式なら非課税、定額支給は課税 |
| 社会保険料 | 算定対象に含む | 算定対象に含む | 実費精算方式なら除外、定額支給は算定対象 |
| 法人の損金 | 全額損金 | 全額損金 | 全額損金 |
| 消費税 | 仕入税額控除可能 | 不課税(控除不可) | 実費精算方式は控除可能、定額は不課税 |
この比較から、従業員への金銭的支援としては「通勤手当」が所得税・消費税の両面で最も有利であることがわかります。住宅手当は全額が給与課税されるため、従業員の手取り額が減少します。住居支援を行うなら、借上社宅制度の方が税務メリットが大きいです。詳しくは「役員報酬の基礎知識」もご参照ください。
在宅勤務手当を所得税非課税で支給するには、「実費精算方式」で支給する必要があります。具体的には、在宅勤務で発生した通信費や電気代の実費を、合理的な計算方法で算出して精算する方式です。
一方、在宅勤務の日数にかかわらず一律月額○○円を支給する「定額支給方式」の場合は、全額が給与として課税対象になります。
週2日出社・週3日在宅のハイブリッド勤務の場合、通勤手当の支給方法として以下の2つの選択肢があります。
第1に、定期券代を支給する方法。出社頻度が高い場合(月12日以上が目安)は定期券の方が割安になるケースが多く、定期券代の全額が非課税限度額の範囲内であれば問題ありません。
第2に、出社日ごとの交通費実費を支給する方法。出社頻度が低い場合はこちらが合理的です。往復の交通費×出社日数で計算し、月額15万円以内であれば非課税です。
💡 実務のポイント
ハイブリッド勤務で通勤手当と在宅勤務手当を併給する場合、就業規則に「出社日数に応じた通勤手当の算定方法」「在宅勤務手当の算定方法」「両方を受給できる条件」を明記してください。ルールが曖昧なまま支給すると、税務調査で非課税扱いを否認されるリスクがあります。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 支給額13,500円 (限度額内) |
支給額20,000円 (6,500円超過) |
支給額30,000円 (16,500円超過) |
|---|---|---|---|
| 課税対象額(月額) | 0円 | 6,500円 | 16,500円 |
| 所得税・住民税の増加(月額) | 0円 | 約1,300円 | 約3,300円 |
| 社保料算定への影響(月額) | 含む | 含む | 含む |
| 年間の税負担増加額 | 0円 | 約15,600円 | 約39,600円 |
※概算値です。社会保険料の等級変動による影響は含んでいません。実際の税額は個別の状況により異なります。
非課税限度額を月額16,500円超過すると、年間で約4万円の税負担増になります。従業員の実質的な手取りが減少するため、支給額は限度額を大きく超えない範囲に設定するのが合理的です。
通勤手当の勘定科目は「旅費交通費」または「通勤手当」が一般的です。法人にとっては支給額の全額(非課税・課税にかかわらず)が損金算入できます。
仕訳例(従業員に電車の定期代30,000円を給与と一緒に支給する場合):借方:旅費交通費 30,000 / 貸方:現金預金 30,000
非課税限度額の範囲内の通勤手当は、源泉徴収の対象外です。給与明細では「非課税通勤手当」として区分し、源泉徴収の計算対象から除外します。限度額を超えた部分がある場合は「課税通勤手当」として給与に上乗せし、源泉徴収を行います。
🔷 社労士の視点
通勤手当の変更は社会保険の随時改定(月額変更届)のトリガーになる可能性があります。通勤手当が大幅に変わった場合(例:引越しで通勤経路が変更になった場合)、固定的賃金の変動として3ヶ月間の報酬平均で2等級以上の差が生じれば随時改定の対象です。引越し届や通勤経路変更届を受けた際は、社会保険の随時改定も併せて確認してください。
| ミスの内容 | 影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 非課税限度額を超えているのに非課税処理 | 源泉徴収不足 → 追徴課税 | 距離区分の確認を年1回実施 |
| リモートワーク中に通勤手当を支給し続ける | 実態と乖離 → 全額課税リスク | 出社日数に応じた支給方式に変更 |
| 通勤手当を社保料の算定に含めていない | 社保料の過少納付 → 追徴 | 標準報酬月額に通勤手当を含める |
| 引越し後も旧経路の通勤手当を支給 | 過大支給 → 非課税超過分が課税 | 住所変更届と連動した通勤手当の再計算 |
| 2025年改正後の限度額を適用していない | 従業員の過徴収 → 年末調整で精算 | 改正情報を速やかに給与計算に反映 |
法人決算全体の流れと経費計上の基本は「法人決算の流れ」で確認できます。また、法人成りを検討中の個人事業主は「法人成りのタイミング」もご参照ください。
📋 この記事のポイント
通勤手当の支給額と非課税限度額を定期的に見直し、従業員の手取り最大化と法人の適正な経費計上を両立させましょう。法人設立時の各種届出については「会社設立の流れ」をご確認ください。