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賞与の源泉徴収の計算方法|前月給与の有無による税額表の選択
「ボーナスからいくら所得税を天引きすればいいのか」「前月に給与を払っていない場合はどう計算するのか」と迷っている経理担当者に向けて、賞与の源泉徴収税額の計算手順を完全ガイドします。この記事を読めば、通常パターンも特殊パターンも迷わず計算できます。


「ボーナスからいくら所得税を天引きすればいいのか」「前月に給与を払っていない場合はどう計算するのか」と迷っている経理担当者に向けて、賞与の源泉徴収税額の計算手順を完全ガイドします。この記事を読めば、通常パターンも特殊パターンも迷わず計算できます。
🏆 結論:賞与の源泉徴収は「3パターンの判定」から始まる
賞与の源泉徴収税額の計算は、まず「前月に給与の支払いがあったか」「賞与が前月給与の10倍を超えるか」の2つを確認し、①原則パターン(算出率の表)②前月給与なしパターン(月額表÷6)③10倍超パターン(月額表で差額計算)のいずれかで計算します。大半のケースは①の原則パターンで、前月給与の社保控除後の金額と扶養人数から税率を求め、賞与の社保控除後の金額に掛けるだけで完了します。
賞与(ボーナス・夏期手当・年末手当など)から源泉徴収する所得税の計算方法は、毎月の給与とは異なります。給与は税額表から「金額」を読み取るのに対し、賞与は税額表から「税率」を読み取って計算する点が最大の違いです。
所得税法上、「賞与」とは定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与・ボーナス・夏期手当・年末手当・期末手当・決算賞与などの名目で支給されるものです。名称に関わらず、純益を基準として支給されるものや、あらかじめ支給基準の定めがないものも賞与に該当します。
| 判定ステップ | 確認事項 | Yes | No |
|---|---|---|---|
| ① | 前月中に給与の支払いがあったか? | → ステップ②へ | → パターンB(月額表で計算) |
| ② | 賞与の金額(社保控除後)が前月給与(社保控除後)の10倍を超えるか? | → パターンC(月額表で差額計算) | → パターンA(算出率の表で計算) |
💡 実務のポイント
年間100社以上の賞与計算を支援してきた経験上、95%以上のケースはパターンA(原則)で計算します。パターンBは産休・育休からの復帰直後や中途入社直後の賞与支給で発生し、パターンCは年1回の決算賞与で高額を支給するケースで見かけます。
賞与の源泉徴収税額の計算は、以下の3ステップで行います。大半のケースはこの方法です。
賞与を支給する月の「前月の給与」から、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの社会保険料等を差し引いた金額を求めます。この金額が算出率の表を引くための基準金額です。
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の甲欄(または乙欄)で、ステップ1で求めた金額と扶養親族等の数が交わる行の「賞与の金額に乗ずべき率」を読み取ります。
賞与の支給額から社会保険料等を差し引いた金額に、ステップ2で求めた税率を掛けます。この金額(1円未満切り捨て)が賞与から源泉徴収する所得税です。
計算式にまとめると次のとおりです。
📐 計算式
源泉徴収税額 =(賞与の支給額 − 賞与の社会保険料等)× 算出率
※算出率は「前月給与の社保控除後の金額」と「扶養親族等の数」で決定
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 賞与50万円 | 賞与100万円 | 賞与200万円 |
|---|---|---|---|
| 賞与の支給額 | 500,000円 | 1,000,000円 | 2,000,000円 |
| 社会保険料等(約15%) | 75,000円 | 150,000円 | 300,000円 |
| 社保控除後の金額 | 425,000円 | 850,000円 | 1,700,000円 |
| 算出率 | 4.084% | 4.084% | 4.084% |
| 源泉徴収税額 | 17,357円 | 34,714円 | 69,428円 |
| 手取り概算 | 407,643円 | 815,286円 | 1,630,572円 |
※概算値です。社会保険料率は健保組合・年齢・雇用保険の事業区分により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
💡 実務のポイント
算出率は「前月給与」と「扶養人数」で決まるため、賞与の金額が変わっても同じ税率が適用される点に注目してください。つまり、賞与50万円でも200万円でも、前月給与と扶養人数が同じであれば同じ税率です。これが給与の源泉徴収(金額に応じて税額が変わる)との大きな違いです。
扶養控除等申告書を提出していない従業員(乙欄)の場合、賞与の源泉徴収税率は甲欄と比べて大幅に高くなります。
📐 前提条件
| 項目 | 甲欄(扶養1人) | 乙欄 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 算出率 | 4.084% | 10.210% | +6.126pt |
| 源泉徴収税額 | 34,714円 | 86,785円 | +52,071円 |
| 手取り概算 | 815,286円 | 763,215円 | ▲52,071円 |
⚠️ 乙欄で約5万円の差
同じ賞与100万円でも、乙欄の場合は甲欄と比べて約5万2千円も多く天引きされます。乙欄の従業員は年末調整の対象外のため、確定申告をしないと過大に徴収されたままになります。副業先で乙欄適用の従業員には、確定申告の必要性を必ず案内しましょう。給与の源泉徴収における甲欄・乙欄の判定方法については「給与の源泉徴収の仕組み」で詳しく解説しています。
前月中に給与の支払いがない場合(または前月の給与が社会保険料以下の場合)は、算出率の表ではなく「月額表」を使って計算します。産休・育休明けの従業員や中途入社直後の賞与支給で発生するケースです。
| ステップ | 計算内容 | 計算例 |
|---|---|---|
| ① | 賞与の支給額から社会保険料等を差し引く | 600,000円 − 90,000円 = 510,000円 |
| ② | ①の金額を6で割る(計算期間が6か月超なら12で割る) | 510,000円 ÷ 6 = 85,000円 |
| ③ | ②の金額を「月額表」に当てはめて税額を求める(甲欄・扶養人数1人の場合) | 0円(88,000円未満のため) |
| ④ | ③の税額を6倍する(②で12で割った場合は12倍) | 0円 × 6 = 0円 |
※この例では月額表で88,000円未満(甲欄・扶養1人)に該当するため税額0円となりますが、扶養0人の場合は税額が発生する可能性があります。
💡 実務のポイント
パターンBで間違いやすいのは「前月の給与がない」の判定です。前月に給与の「支給日」がなければ該当します。例えば、4月入社の従業員に6月の賞与を支給する場合、5月に給与が支払われていればパターンA(原則)で計算します。5月分の給与が6月に繰り越し支給される場合は「5月中に支払いなし」となりパターンBです。
決算賞与や業績連動型のボーナスで高額を支給する場合に発生するパターンです。賞与の金額(社保控除後)が前月給与の金額(社保控除後)の10倍を超えるときは、算出率の表ではなく「月額表」を使った差額計算を行います。
📐 計算例の前提
| ステップ | 計算内容 | 計算例 |
|---|---|---|
| ① | 賞与(社保控除後)÷ 6 | 2,550,000円 ÷ 6 = 425,000円 |
| ② | ① + 前月給与(社保控除後) | 425,000円 + 200,000円 = 625,000円 |
| ③ | ②の金額を「月額表」甲欄・扶養1人で税額を求める | 32,670円 |
| ④ | ③の税額 − 前月の給与に対する源泉徴収税額 | 32,670円 − 4,770円 = 27,900円 |
| ⑤ | ④の税額 × 6(計算期間が6か月超なら×12) | 27,900円 × 6 = 167,400円 |
※月額表の税額は概算値です。実際の計算では該当年分の税額表を正確に参照してください。
⚠️ 10倍超の判定は「社保控除後」の金額で行う
10倍を超えるかどうかの判定は、賞与・前月給与ともに「社会保険料等を差し引いた後」の金額で行います。総支給額ベースで判定すると間違いになりますので注意してください。
| 比較項目 | パターンA(原則) | パターンB(前月給与なし) | パターンC(10倍超) |
|---|---|---|---|
| 使う税額表 | 算出率の表 | 月額表 | 月額表 |
| 求めるもの | 税率(%) | 税額(円) | 税額の差額(円) |
| 前月給与の役割 | 税率を決める基準 | 使用しない | 合算と差額計算に使用 |
| 6(or 12)で割る | 不要 | あり(÷6 → ×6) | あり(÷6 → ×6) |
| 発生頻度 | 約95% | 約3% | 約2% |
賞与からの源泉徴収税額を計算する前に、まず社会保険料等を差し引く必要があります。賞与の社会保険料は毎月の給与とは異なるルールで計算されるため、注意が必要です。
| 保険の種類 | 標準賞与額の上限 | 超えた場合 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 年度累計573万円 | 超過分は保険料の対象外 |
| 厚生年金保険 | 1回あたり150万円 | 超過分は保険料の対象外 |
| 雇用保険 | 上限なし | 賞与の全額が対象 |
🔷 社労士の視点
厚生年金の上限は「1回あたり150万円」、健康保険は「年度累計(4月〜翌3月)573万円」と、基準が異なる点に注意してください。年3回の賞与を支給する会社で各回200万円の場合、厚生年金は毎回150万円が上限ですが、健康保険は年度累計573万円までは全額対象です。この違いにより、所得税計算の基準となる「社会保険料等」の金額も回ごとに変わることがあります。
賞与の算出率は「前月の給与(社保控除後)」で決まるため、前月に残業が多く給与が高かった場合は税率が上がり、賞与の源泉徴収額も高くなります。逆に前月が少なければ税率が下がります。これは制度上のしくみであり、年末調整で精算されるため、最終的な年間の税額は変わりません。
健康保険料率は毎年3月頃に改定されることが多く、厚生年金保険料率は現在18.3%で固定されています。雇用保険料率は年度ごとに変わる可能性があります。賞与支給月の時点での最新の保険料率を使ってください。
賞与支給時の扶養親族等の数が前月給与の計算時と異なる場合は、賞与支給時点の最新の扶養人数で算出率を求めます。子の出生や配偶者の就職・退職で扶養人数が変わるケースが典型的です。
年4回以上の賞与は、税法上は「賞与」ではなく「給与」として扱われます。この場合は「賞与に対する算出率の表」ではなく、通常の「月額表」で計算します。決算賞与を含めて年間の賞与支給回数を確認しましょう。
退職者に在職期間に対応する賞与を支給する場合も、原則どおりの方法で源泉徴収を行います。ただし、退職日時点で扶養控除等申告書の効力がなくなっている場合は乙欄が適用される可能性があるため、退職日と賞与の支給日の前後関係に注意してください。
💡 実務のポイント
毎年夏の賞与計算で特に注意が必要なのが、入社直後の従業員への賞与支給です。4月入社の新入社員に6月の賞与を日割り支給するケースでは、5月の給与は支払い済みなのでパターンA(原則)で計算しますが、5月入社で5月分給与が6月支給(=5月中に支給実績なし)の場合はパターンB(前月給与なし)になります。「前月中に支払日があったかどうか」を基準に判定してください。
源泉徴収税額を過大に納付していた場合や、年末調整で還付が発生した場合の処理について解説します。
源泉徴収税額を誤って多く納付した場合は、「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求」を税務署に提出することで還付を受けられます。ただし、納付した日から5年を経過すると時効により請求権が消滅します。
賞与を含む1年間の源泉徴収税額の合計と、年末調整で計算した正しい年税額との差額は、12月の給与で精算します。源泉徴収税額が正しい年税額を上回っていれば差額を従業員に還付し、不足していれば追加徴収します。年末調整の基本的な仕組みについては「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」で詳しく解説しています。
📊 公認会計士の視点
決算賞与を計上する法人は、損金算入の要件にも注意が必要です。法人税法上、未払計上した賞与を損金に算入するためには、①支給額を各人ごとに通知済みであること、②通知した事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支給すること、③その事業年度の損益に計上していること——の3要件をすべて満たす必要があります。源泉徴収の問題だけでなく、法人税への影響も考慮しましょう。
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| □ 扶養控除等申告書の提出状況 | 甲欄か乙欄かを確認。年途中の変更がないか |
| □ 前月の給与の有無 | 前月中に支給日があったかどうか |
| □ 10倍超の判定 | 賞与(社保控除後)÷ 前月給与(社保控除後)が10倍以下か |
| □ 社会保険料率の最新版 | 健保・厚年・雇用保険の料率が支給月時点のものか |
| □ 厚生年金の標準賞与額の上限 | 1回あたり150万円を超えていないか |
| □ 扶養親族等の数の変動 | 賞与支給時点の最新の扶養人数で算出率を求めているか |
| □ 該当年分の税額表を使用 | 前年の税額表を使っていないか(令和8年分は改訂あり) |
| □ 納付期限の確認 | 賞与支給月の翌月10日まで(納期の特例の場合は年2回) |
📋 この記事のポイント
賞与の源泉徴収は、一度パターンを理解してしまえば毎回同じ手順で計算できます。ただし、前月給与がないケースや10倍超のケースは計算方法がまったく異なるため、最初に3パターンのどれに該当するかを判定する習慣をつけてください。不安がある場合は、税理士に相談して正確な処理を確認することをおすすめします。
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