【税理士×社労士が解説】現物給与・経済的利益の源泉徴収|社宅・食事・レクリエーション等の非課税限度額一覧

【税理士×社労士が解説】現物給与・経済的利益の源泉徴収|社宅・食事・レクリエーション等の非課税限度額一覧
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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現物給与・経済的利益の源泉徴収|社宅・食事・レクリエーション等の非課税限度額一覧

従業員への社宅の提供や食事補助など、金銭以外の「現物給与」を支給している経営者・経理担当者に向けて、全12種類の非課税限度額と課税・非課税の判定基準を完全ガイドします。この記事を読めば、どんな福利厚生が課税対象になり、どうすれば非課税で処理できるかがわかります。

🏆 結論:現物給与で押さえるべき3つのポイント

❶ 現物給与(経済的利益)は原則として給与所得として源泉徴収の対象。ただし、種類ごとに非課税限度額が設定されており、要件を満たせば課税されない。❷ 社宅は「使用人なら賃貸料相当額の50%以上を徴収」「役員は賃貸料相当額の全額を徴収」が非課税の基準。❸ 食事補助は「会社負担額が月3,500円以下」かつ「本人が半額以上を負担」の両方を満たす必要がある。どちらか一方でも欠けると全額が課税対象になる。

現物給与(経済的利益)とは?基本的なしくみ

所得税法上の「現物給与」の定義

現物給与とは、金銭以外の物や権利その他の経済的利益をもって支給される給与のことです。所得税法第36条第1項の規定により、各種所得の収入金額には「金銭以外の物又は権利その他の経済的な利益」も含むとされています。

具体的には、所得税基本通達36-15において、次の4つが現物給与の類型として例示されています。

類型 内容 具体例
1物品等の無償・低額譲渡自社製品の値引販売、記念品の支給
2資産の無償・低額貸付社宅の提供、金銭の無利息貸付
3用役の無償・低額提供食事の支給、レクリエーション旅行
4個人的債務の免除・負担従業員の個人的な借入金の肩代わり

なぜ「非課税」の制度があるのか

現物給与は原則として課税ですが、すべてを課税すると福利厚生の実施が困難になります。そこで、「職務の性質上欠くことのできないもの」「換金性に欠けるもの」「評価が困難なもの」「政策上特別の配慮を要するもの」については、法令や通達で非課税の取扱いが定められています。

💡 実務のポイント

現物給与で税務調査において問題になるのは「非課税のつもりで処理していたが、要件を満たしていなかった」というケースです。特に社宅と食事補助は、非課税要件の理解が曖昧なまま運用しているケースが多く見られます。要件を外れると、遡って給与として課税されるだけでなく、不納付加算税の対象にもなります。

現物給与の全12種類と非課税限度額の一覧表

以下は、中小企業の実務で頻出する現物給与の12種類について、非課税要件と限度額を一覧にしたものです。

種類 非課税要件(主なもの) 非課税限度額 根拠
通勤手当(電車・バス)最も経済的かつ合理的な経路月額15万円所法9①五、所令20の2
通勤手当(マイカー)片道の通勤距離に応じた限度額距離別(4,200円〜31,600円)所令20の2
食事の支給本人が半額以上負担+会社負担額が月3,500円以下(税抜)月3,500円(税抜)所基通36-38の2
残業・宿日直の食事通常の勤務時間外+食事の現物支給全額非課税所基通36-24
社宅(使用人)賃貸料相当額の50%以上を徴収徴収額≧賃貸料相当額×50%所基通36-47
社宅(役員)賃貸料相当額の全額を徴収徴収額≧賃貸料相当額所基通36-40〜42
レクリエーション旅行4泊5日以内+参加率50%以上社会通念上少額所基通36-30
創業記念品等処分見込価額1万円以下+5年以上の間隔1万円以下所基通36-22
永年勤続記念品社会通念上相当+10年以上の間隔社会通念上相当所基通36-21
商品等の値引販売70%以上+一律+通常消費量著しく多額でないこと所基通36-23
金銭の無利息貸付利息差額が5,000円以下等5,000円以下所基通36-28
発明報奨金職務発明の「相当の対価」譲渡所得/雑所得扱い所基通23〜35共-1

参考: 国税庁「No.2508 給与所得となるもの」

社宅の賃貸料相当額の計算方法(役員 vs 使用人)

使用人に社宅を貸す場合

使用人に対して社宅を貸与する場合、次の3つの合計額が「賃貸料相当額」となります。使用人からこの賃貸料相当額の50%以上を徴収していれば、差額は給与として課税されません。

📐 賃貸料相当額の計算式(使用人)

  • (1)建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
  • (2)12円 ×(建物の総床面積㎡ ÷ 3.3㎡)
  • (3)敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

賃貸料相当額 =(1)+(2)+(3)

たとえば、建物の課税標準額600万円・総床面積50㎡・敷地の課税標準額1,000万円の場合、賃貸料相当額は34,181円となり、使用人から月額17,091円以上を徴収していれば非課税です。

役員に社宅を貸す場合

役員の場合は、社宅の規模によって計算方法が異なります。

区分 判定基準 賃貸料相当額の計算方法 徴収すべき金額
小規模住宅耐用年数30年以下→132㎡以下 / 30年超→99㎡以下使用人と同じ計算式全額
非小規模(自社所有)小規模に該当しない(建物×12%+敷地×6%)÷12全額
非小規模(借上げ)小規模に該当しない支払家賃50%と自社所有算式の多い方全額
豪華社宅240㎡超 or 設備が豪華市場家賃全額

💡 実務のポイント

「社宅の家賃は50%を取っておけば大丈夫」という話をよく聞きますが、これは使用人の場合に限った話です。役員の場合は賃貸料相当額の全額を徴収する必要があります。ただし、小規模住宅の計算式で求めた賃貸料相当額は市場家賃の10〜20%程度になることが多いため、実際の負担は大きくありません。固定資産税の課税標準額は、貸主に問い合わせれば確認できます。

参考: 国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」 / 国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

食事の支給と非課税の判定基準

通常の食事補助の非課税要件

会社が従業員に食事を支給する場合、次の2つの要件を両方満たせば、給与として課税されません。

要件1:食事の価額の半分以上を従業員が負担していること
要件2:会社負担額(食事の価額 − 従業員の負担額)が月額3,500円以下(税抜)であること

⚠️ 注意

2つの要件のうち、どちらか一方でも満たさない場合は、会社負担額の全額が給与として課税されます。超過部分だけが課税されるのではなく、「全額」が課税対象になる点に注意してください。

食事補助のシミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 社員食堂の1食あたりの食事の価額:500円(税抜)
  • 月の利用回数:20回(=月額10,000円)
パターン 従業員負担 会社負担 50%要件 3,500円要件 判定
A7,000円3,000円非課税
B6,000円4,000円×4,000円が課税
C4,000円6,000円××6,000円が課税

残業時の食事は全額非課税

通常の勤務時間外に残業や宿日直をした従業員に対して、食事そのものを支給する場合は、全額が非課税になります。ただし、食事代を現金で支給する場合は課税対象です。

食事の支給に関する基本ルールについては、「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」でも触れています。

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レクリエーション旅行の非課税要件

会社が従業員のために実施する慰安旅行は、旅行の期間が4泊5日以内(海外は滞在期間が4泊5日以内)かつ参加率が50%以上であれば、従業員が受ける経済的利益は非課税です。

⚠️ 注意

不参加の従業員に旅行費用相当額の金銭を支給すると、参加者・不参加者の双方に対して給与として課税されます。「行かない人には現金を渡す」という運用は避けてください。

使用人の発明に対する報奨金の取扱い

使用人が職務上の発明について特許を受ける権利を使用者に譲渡した場合に受け取る「相当の対価」は、給与所得ではなく譲渡所得または雑所得として取り扱われます(所得税基本通達23〜35共-1)。つまり、発明報奨金は給与の源泉徴収の対象外です。

💡 実務のポイント

IT企業やメーカーなど、従業員の発明に対して報奨金を支給するケースでは、「これは職務発明に対する相当の対価か、それとも成果報酬型のボーナスか」の区分が重要です。職務発明規程を整備し、報奨金の性質を明確にしておくことで、税務調査での指摘リスクを下げられます。

通勤手当の非課税限度額

電車・バス通勤の場合

電車やバスなどの交通機関を利用して通勤する場合の非課税限度額は、最も経済的かつ合理的な経路の運賃等の額で、月額15万円が上限です。新幹線の特急料金は含まれますが、グリーン料金は含まれません。

マイカー通勤の場合

片道の通勤距離 1か月の非課税限度額
2km未満全額課税
2km以上10km未満4,200円
10km以上15km未満7,100円
15km以上25km未満12,900円
25km以上35km未満18,700円
35km以上45km未満24,400円
45km以上55km未満28,000円
55km以上31,600円

商品等の値引販売・創業記念品等の非課税要件

商品等の値引販売

自社の商品を従業員に値引きして販売する場合、販売価格が通常価格のおおむね70%以上であり、仕入価格以上で、値引率が一律で、通常消費量の範囲内であれば非課税です。

創業記念品等と永年勤続記念品

創業記念品は、処分見込価額が1万円以下で、おおむね5年以上の間隔であれば非課税です。永年勤続記念品は、社会通念上相当な範囲で、10年以上の勤続者が対象であれば非課税です。いずれも現金支給は全額課税になります。

確定申告の基礎知識については、「確定申告の基礎知識」で詳しく解説しています。

「課税?非課税?」8パターンの判定表

主要な現物給与8種類について、非課税要件を満たす場合と満たさない場合を整理しました。

種類 要件を満たす場合 要件を外す場合
社宅(使用人)50%以上徴収 → 非課税50%未満 → 差額が課税
食事補助半額負担+3,500円以下 → 非課税いずれか未充足 → 全額課税
通勤手当限度額以内 → 非課税超過分のみ課税
旅行4泊5日以内+50%参加 → 非課税要件外れ → 全額課税
創業記念品1万円以下+5年間隔 → 非課税要件外れ → 全額課税
値引販売70%以上+一律+通常量 → 非課税要件外れ → 値引額が課税
無利息貸付利息差額5,000円以下 → 非課税5,000円超 → 全額課税
発明報奨金職務発明の対価 → 譲渡所得/雑所得成果ボーナス → 給与課税

現物給与の社会保険料への影響

現物給与は所得税だけでなく、社会保険料の算定基礎にも影響します。厚生労働大臣が定める「現物給与の価額」に基づいて金銭に換算し、標準報酬月額に加算する必要があります。

注意すべきは、所得税法上の非課税と社会保険料の算定は別の基準で判定される点です。通勤手当は所得税では月額15万円まで非課税ですが、社会保険料の算定では全額が報酬に含まれます。

🔷 社労士の視点

社会保険の現物給与の価額は都道府県ごとに定められ、毎年4月に改定されます。社宅を提供している場合は、所得税の計算とは別に社会保険用の現物給与の価額を確認して標準報酬月額に反映する必要があります。所得税と社会保険のダブルチェックが必要な領域です。

所得控除の全体像については、「所得控除の一覧と適用条件」も参考になります。

よくある質問(FAQ)

食事代を現金で支給していますが、非課税にできますか?
残業・宿日直時の食事代を現金で支給する場合は、全額が給与として課税されます。非課税にするには、食事そのもの(弁当など)を現物で支給する必要があります。
社宅の固定資産税の課税標準額がわからない場合はどうすればよいですか?
借上げ社宅の場合、貸主(大家・管理会社)に問い合わせてください。貸主が教えてくれない場合は、市区町村の固定資産課税台帳を閲覧する方法もあります(賃借人には閲覧権があります)。
家族旅行の費用を会社が負担した場合、非課税になりますか?
レクリエーション旅行の非課税要件は「全従業員を対象」とした行事であることが前提です。特定の従業員の家族旅行を会社が負担した場合は、その従業員に対する給与として課税されます。
通勤手当を6か月分まとめて支給していますが、非課税限度額はどう計算しますか?
6か月定期券の1か月あたりの金額が15万円を超えなければ全額非課税です。超える場合は超過分が課税対象です。
社内の自動販売機で飲み物を無料で提供していますが、課税されますか?
福利厚生の一環として社会通念上少額であれば課税されないのが一般的です。ただし、特定の役員のみに高額な飲食物を提供する場合は課税される可能性があります。
テレワーク中の従業員の通信費を会社が負担する場合、課税されますか?
業務使用部分に合理的に按分した金額を会社が負担する場合は非課税として処理できます。一律の在宅勤務手当として現金支給する場合は全額が課税対象です。
現物給与の源泉徴収は、金銭給与と一緒のタイミングで行いますか?
はい。現物給与が課税対象となる場合、その経済的利益の額を金銭給与に加算して源泉徴収を行います。社宅は毎月の給与計算で、旅行は実施月の給与で、それぞれ課税額を加算して処理します。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 現物給与は原則として給与所得として源泉徴収の対象
  • 種類ごとに非課税要件と限度額が定められており、要件を満たせば課税されない
  • 社宅:使用人は賃貸料相当額の50%以上徴収で非課税、役員は全額徴収が必要
  • 食事補助:半額負担+月3,500円以下の両方が必要。片方でも欠けると全額課税
  • 通勤手当:電車は月15万円、マイカーは距離別の限度額まで非課税
  • レクリエーション旅行:4泊5日以内+参加率50%以上。不参加者への現金支給は禁止
  • 所得税の非課税と社会保険の算定は別基準。通勤手当は所得税非課税でも社保では報酬に含まれる

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