公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の給与計算・年末調整・源泉徴収実務を支援。
「税額表のどこを見ればいい?」「アルバイトの源泉徴収はどう計算する?」とお悩みの経理担当者・経営者に向けて、月額表/日額表の使い方・甲乙丙欄の判定・2か所給与の処理・パート/アルバイトの実務・令和8年改正の月105,000円基準・未払/改訂差額の処理まで完全ガイドします。
🏆 結論:源泉徴収は税額表(月額表/日額表)を甲乙丙欄で使い分け
給与の源泉徴収は、毎月の支給時に「給与所得の源泉徴収税額表」を使って計算します。使用する表は月額表(月給制)・日額表(日給制)、適用する欄は甲欄(扶養控除等申告書あり)・乙欄(2か所目以降)・丙欄(2か月以内の短期雇用)の3区分で判定します。令和8年(2026年)分から扶養申告書を提出した甲欄適用者の源泉徴収開始ラインが月88,000円→105,000円に引き上げられ、影響範囲が拡大しました。乙欄は社会保険料控除後の3.063%で源泉徴収、丙欄は日額9,300円未満なら税額ゼロ。源泉徴収義務者は給与から正確に天引きし、原則翌月10日までに納付、納期特例で半年まとめ納付も可能です。本記事では税額表の使い方、未払給与・改訂差額・特殊給与・レクリエーション旅行費等の実務論点も網羅します。
給与の源泉徴収とは|給与支払者の義務
源泉徴収は、給与支払者(=源泉徴収義務者)が、給与から所得税・復興特別所得税を天引きして国に納付する制度です。所得税法第183条で給与支払者に源泉徴収義務が課されています。これは個人の所得税の年税額を1年かけて分割納付させる仕組みで、最終的に年末調整で精算されます。
年商5,000万円規模の建設会社の給与計算を支援した経験では、アルバイト10名を抱える事業者が「全員が低時給だから源泉徴収不要」と誤解していたケースがありました。月給110,000円のアルバイトでも扶養申告書未提出なら乙欄適用で約3,400円の源泉徴収が必要だったため、約3年分の未徴収税額60万円+不納付加算税6万円の追徴となりました。源泉徴収の判断ミスは事業者責任で追徴を受けるため、正確な実務が必須です。
源泉徴収義務者の範囲
| 区分 | 源泉徴収義務 |
|---|---|
| 法人(会社) | あり(全給与支払者) |
| 個人事業主(従業員雇用) | あり(青色専従者含む) |
| 個人(従業員なし) | なし(報酬支払の源泉徴収も不要) |
税額表の種類と使い方
源泉徴収税額は「給与所得の源泉徴収税額表」(国税庁が毎年公表)を使って算出します。給与の支給形態によって2種類の表を使い分けます。
月額表 vs 日額表
| 税額表 | 使用ケース |
|---|---|
| 月額表 | 月給制(月単位で給与決定)・半月給・10日給・月の整数倍給 |
| 日額表 | 日給制・時給制・週給制・2か月以内の短期雇用(必ず丙欄) |
甲欄・乙欄・丙欄の判定
| 欄 | 適用条件 | 計算方法 |
|---|---|---|
| 甲欄 | 扶養控除等申告書を提出している(主たる勤務先) | 扶養親族数に応じた税額(累進) |
| 乙欄 | 扶養控除等申告書を提出していない(従たる勤務先) | 社保控除後の3.063%以上(高税率) |
| 丙欄 | 2か月以内の短期雇用・日額給与 | 日額9,300円未満なら税額ゼロ |
判定フロー
💡 税額表の使い方判定フロー
- Q1:給与は月単位か日単位か?
→ 月単位:月額表/日単位:日額表へ - Q2(日額表):雇用契約2か月以内か?
→ YES:丙欄(税額ゼロライン日額9,300円)
→ NO:Q3へ - Q3:扶養控除等申告書の提出あり?
→ YES:甲欄(扶養人数別税額)
→ NO:乙欄(社保控除後3.063%以上)
令和8年改正:月105,000円基準(2026年〜)
令和8年(2026年)分の源泉徴収税額表が改正され、扶養申告書を提出した甲欄適用者の源泉徴収開始ラインが従来の月88,000円から105,000円に引き上げられました。これは103万円の壁見直しに連動した重要な改正です。
改正前後の影響
| 項目 | 改正前(令和7年まで) | 改正後(令和8年〜) |
|---|---|---|
| 甲欄の源泉徴収開始ライン | 月88,000円以上 | 月105,000円以上 |
| 年収換算(目安) | 年105.6万円 | 年126万円 |
| パート・アルバイトの源泉徴収負担 | − | 月17,000円相当の負担減 |
📢 令和8年改正のポイント
2026年1月以降の給与計算では、月給105,000円未満の従業員(扶養申告書提出済)は源泉徴収が不要になります。年収換算で約126万円までが源泉徴収対象外となり、パート・アルバイトの手取り増につながります。
事業者の対応:給与計算ソフトの令和8年版税額表への更新を確認してください。古い税額表で計算すると過徴収となり、年末調整で還付処理が必要になります。
パート・アルバイトの源泉徴収
パート・アルバイトも所得税法上は「給与所得者」のため、源泉徴収は必須です。給与の支給形態によって税額表の選択が異なります。
パート・アルバイトの3パターン
| 雇用形態 | 適用税額表 | 特徴 |
|---|---|---|
| ①月給制パート | 月額表・甲欄or乙欄 | 月105,000円未満は甲欄なら税額ゼロ(令和8年〜) |
| ②日給/時給のパート(長期) | 日額表・甲欄or乙欄 | 2か月超の雇用契約 |
| ③日給/時給の短期アルバイト | 日額表・丙欄 | 2か月以内の短期雇用・日額9,300円未満は税額ゼロ |
丙欄の具体例
🧮 シミュレーション:2か月以内の短期アルバイト
条件:夏休みの短期アルバイト・日給10,000円・40日勤務
適用:日額表・丙欄
日額9,300円未満→税額ゼロ
日額10,000円→日額表の丙欄で約60円徴収
日給1万円程度なら源泉徴収はごく少額。1日5時間アルバイト(時給1,800円・日額9,000円)なら税額ゼロ。
2か所給与の源泉徴収
2か所以上から給与を受け取っている人は、主たる給与(扶養申告書提出先)で甲欄適用、それ以外の従たる給与で乙欄適用となります。本人は最終的に年末調整ではなく確定申告で精算します。
乙欄の計算方法
💡 乙欄の税額計算
乙欄は社会保険料控除後の給与額の累進税率(最低3.063%)で計算します。
例:乙欄で月給150,000円(社会保険料控除後)
税額表の乙欄(月額表)で約4,600円が源泉徴収額。
甲欄の同額(扶養なし)なら約2,000円程度のため、乙欄の方が約2倍以上の税負担となります。これは年末に確定申告で精算する前提のため。
特殊な給与の取扱い
通常の月給以外にも、特殊な形態で支払われる給与があります。これらは個別の取扱いが定められています。
特殊給与の代表例
| 給与の種類 | 源泉徴収の取扱い |
|---|---|
| 賞与 | 賞与に対する源泉徴収税額表(別表)を使用 |
| 前月の給与の10倍超の賞与 | 月額表で計算する例外あり |
| 退職金 | 退職所得の受給に関する申告書+退職所得控除 |
| 在外手当 | 非居住者・居住者の区分で異なる |
| 食事代の負担 | 月3,500円以下+本人負担50%以上で非課税 |
| 通勤手当 | 月15万円以下の合理的範囲は非課税 |
AYUSAWA PARTNERS
給与計算・年末調整のご相談は鮎澤パートナーズへ
初回相談無料。税理士・公認会計士・社労士・行政書士がワンストップで対応します。給与計算・源泉徴収・年末調整・社保手続きまで一貫支援します。
鮎澤パートナーズに相談する従業員レクリエーション旅行・研修旅行の取扱い
会社が福利厚生として実施する従業員旅行や研修旅行は、要件を満たせば給与課税されず、源泉徴収不要です。
福利厚生として認められる要件
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| レクリエーション旅行 | ①4泊5日以内 ②全従業員の50%以上参加 ③1人当たり費用が10万円程度まで(目安) |
| 研修旅行(業務必要) | 業務上必要な技能習得が目的・参加義務あり・実態が研修であること |
⚠️ 海外社員旅行の高額案件は給与認定リスク
1人当たり費用が20〜30万円を超える海外旅行や、観光要素が強い研修旅行は、税務調査で給与認定されるリスクがあります。給与認定されると、参加者全員に対する給与課税+源泉徴収義務+不納付加算税が発生。事前に税理士に相談して、社員旅行の要件適合性を確認すべきです。
職務に必要な技術習得費用の取扱い
会社が従業員の業務に必要な技術・知識習得のために負担した費用(資格取得費・研修費・受講料等)は、要件を満たせば給与課税対象外です。
非課税の要件
- 業務遂行上直接必要な技術・知識
- その従業員の職務に直接関連する資格取得
- 会社が費用を負担(立替後給与天引きは課税)
- 研修終了後一定期間勤務継続(借入金免除型は条件確認)
たとえば経理担当者の簿記検定受験料・建設業の技能講習費・営業職の業界資格費用は典型的に非課税です。本人の趣味的な資格(語学・運転免許等)は給与課税対象です。
未払給与・改訂差額の源泉徴収
給与が一部未払で支給された場合や、給与改訂で差額が後払いされる場合の源泉徴収の処理は実務でよく問題になります。
未払給与のパターン別取扱い
| 状況 | 源泉徴収の取扱い |
|---|---|
| 月給の一部支給(残額後払い) | 本来の月給額で源泉徴収計算→残額支払時は税徴収済み |
| 資金繰り悪化で全額未払い | 支給日に税額計上必要(売上計上の論理) |
| 給与改訂で過去分を一括支給 | 支給年月の給与として計算(各月再計算ではない) |
改訂差額の源泉徴収
💡 給与改訂差額の処理(国税庁通達183-9)
給与改訂により過去にさかのぼって差額を一括支給した場合の源泉徴収:
例:4月から月3万円のベースアップ決定が9月に確定→4〜9月分の差額18万円を10月に一括支給
処理:この18万円は10月の給与として扱い、10月の本来の給与額に上乗せして税額表で計算。過去6か月分を各月の給与に按分するわけではありません。
納期の特例(半年まとめ納付)
給与の源泉徴収税額は、原則として徴収した翌月10日までに納付しますが、給与の支給人員が常時10人未満の事業者は「源泉所得税の納期の特例」を利用すれば、半年に1回まとめて納付できます。
納期特例の概要
| 期間 | 対象期間 | 納付期限 |
|---|---|---|
| 上半期 | 1〜6月支給分 | 7月10日 |
| 下半期 | 7〜12月支給分 | 翌年1月20日 |
特例の対象は給与・退職金・士業報酬の源泉徴収税のみです。原稿料・講演料等の報酬の源泉徴収は対象外(翌月10日納付)のため、注意が必要です。
年末調整との連携
源泉徴収は毎月の概算徴収のため、年末調整で精算する必要があります。年末調整できないケースには注意が必要です。
年末調整できないケース
- 年収2,000万円超の人
- 2か所以上から給与を受けている人(乙欄適用先)
- 年の中途で退職した人(再就職前12月31日まで)
- 1年を超える短期雇用の外国人(非居住者)
- 災害により本年中に給与から所得税の徴収猶予を受けた人
これらの人は確定申告で精算します。詳細は年末調整のピラー記事を参照してください。
よくある質問
まとめ
📋 この記事のポイント
- 給与源泉徴収は給与所得の源泉徴収税額表で計算(月額表/日額表)
- 甲欄(扶養申告書あり)・乙欄(2か所目以降)・丙欄(2か月以内短期)の3区分
- 令和8年改正で甲欄の源泉徴収開始ラインが月88,000円→105,000円に
- 2か所給与は主たる勤務先=甲欄、従たる勤務先=乙欄
- レクリエーション旅行は4泊5日以内+50%以上参加で非課税
- 業務必要な技術習得費は非課税(本人の趣味は給与課税)
- 納期特例(常時10人未満)で半年まとめ納付可能
- 賞与・退職金・特殊給与は個別の取扱い
- 年末調整できないケース(2か所給与・年収2,000万円超等)は確定申告で精算
📝 次のアクション
- 令和8年版税額表に給与計算ソフトを更新
- 従業員から最新の扶養控除等申告書を回収
- パート・アルバイトの雇用契約期間(2か月超/以下)を確認
- 2か所給与の従業員には乙欄適用を確認
- 常時10人未満なら納期特例の届出を検討
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