会社設立時の社会保険新規適用届の手続き完全ガイド|5日・10日・50日の期限と添付書類

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
「会社を設立したばかりで、社会保険の手続きを何から始めればいいかわからない」——創業直後の経営者に向けて、年金事務所・労基署・ハローワークの3ヶ所に対する新規加入手続きを、期限別・提出先別に整理します。この記事を読めば、設立5日以内・10日以内・50日以内にやるべきことが具体的にわかり、スムーズに手続きを進められます。
🏆 結論:法人は設立時に必ず3種類の新規加入手続きが必要
株式会社・合同会社などの法人は、代表者1人の一人法人であっても、設立と同時に健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となります。加えて、従業員を雇う場合は労働保険(労災・雇用)の加入も必要です。最重要の期限は「社保の新規適用届=5日以内」「労働保険の保険関係成立届=10日以内」「概算保険料申告書=50日以内」の3つ。期限徒過は罰則対象となる可能性があるため、設立直後の最優先タスクとして取り組むべき手続きです。
会社設立後に必要な社会保険・労働保険手続きの全体像
会社を設立したら、事業主には3つの公的保険の加入義務が発生します。多くの創業者が「社会保険」と一括りで考えがちですが、実際は届出先も期限も異なる別制度の集合体です。ここで全体像を整理しましょう。
3種類の手続きと届出先の違い
法人が加入すべき公的保険は、大きく分けて次の3系統です。狭義の社会保険(健保・厚年)は年金事務所、労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークと、提出先が異なります。
| 制度 |
提出先 |
対象者 |
設立時加入の要否 |
| 健康保険・厚生年金保険 | 年金事務所 | 役員・正社員・要件を満たすパート | 法人は代表1人でも必須 |
| 労災保険 | 労働基準監督署 | 従業員全員(役員除く) | 従業員1人でも必須 |
| 雇用保険 | ハローワーク | 週20h以上・31日以上見込みの従業員 | 加入要件を満たす従業員がいれば必須 |
💡 実務のポイント
代表者1人だけの一人法人の場合、社会保険(健保・厚年)のみ加入が必要で、労災・雇用保険は加入できません。役員は労働者ではないため、労働保険の対象外です。従業員を1人でも雇った時点で、労働保険の手続きが必要になります。
期限別のタスク一覧
創業直後に集中する手続きの中で、最も厳しい期限は「5日以内」の社保新規適用届です。以下、時系列で整理します。
| 期限 |
届出書類 |
提出先 |
起算日 |
| 5日以内 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 年金事務所 | 事実発生日(法人設立日・役員報酬発生日など) |
| 5日以内 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 年金事務所 | 資格取得日(入社日・役員就任日) |
| 10日以内 | 労働保険 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 保険関係成立日(従業員雇用日)の翌日 |
| 10日以内 | 雇用保険適用事業所設置届 | ハローワーク | 適用事業所設置日 |
| 翌月10日まで | 雇用保険被保険者資格取得届 | ハローワーク | 資格取得日の属する月の翌月10日 |
| 50日以内 | 労働保険概算保険料申告書 | 労働基準監督署(または都道府県労働局) | 保険関係成立日の翌日 |
健康保険・厚生年金保険の新規適用届(5日以内)
法人を設立したら、まず最初に取り組むべきなのが健康保険・厚生年金保険の新規適用届です。健康保険法第6条および厚生年金保険法第6条により、法人の事業所は事業主や従業員の人数にかかわらず強制適用事業所となります。
法人は代表者1人でも強制加入
健康保険法第3条第3項および厚生年金保険法第6条第1項第2号により、法人の事業所は従業員がいない一人法人であっても強制適用事業所に該当します。代表取締役1人で設立した合同会社や株式会社でも、役員報酬を支払う時点で加入義務が発生します。
⚠️ 注意:役員報酬ゼロなら加入不要
代表者の役員報酬が設立当初からゼロの場合は、標準報酬月額が算定できないため、加入義務は発生しません。ただし、後から役員報酬を支給した時点で新規適用届の提出義務が生じます。「しばらく役員報酬ゼロで運営して資金が貯まってから報酬を出す」創業パターンでは、報酬開始日を起算日として5日以内に届出が必要です。
新規適用届の記載事項と添付書類
新規適用届(健康保険・厚生年金保険新規適用届)には、事業所の基本情報を記載し、下記の書類を添付します。
- 法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の原本:発行日から90日以内のもの
- 法人番号指定通知書のコピー:国税庁から送付される13桁の法人番号
- 事業所の所在地証明(登記住所と実際の事業所が異なる場合):賃貸借契約書のコピーなど
新規適用届に記載する主な項目は、次のとおりです。
| 項目 |
記載内容 |
| 事業所名称 | 商号(株式会社○○、○○合同会社など) |
| 事業所所在地 | 登記簿上の所在地(実際の事業所と異なる場合は両方) |
| 事業の種類 | 日本標準産業分類に基づく事業内容 |
| 事業主の氏名・住所 | 代表取締役の氏名と住所 |
| 被保険者数 | 加入対象となる役員・従業員の人数 |
| 事実発生年月日 | 法人設立日または役員報酬発生日 |
| 給与支払予定日 | 月の何日に給与を支払うか |
被保険者資格取得届も同時提出
新規適用届と併せて、加入する被保険者(役員・従業員)全員分の「被保険者資格取得届」を提出します。この届出に記載する報酬月額が標準報酬月額の初期等級となるため、正確な見込額を記入することが重要です。
扶養家族がいる場合は、さらに「健康保険被扶養者(異動)届」を追加で提出します。配偶者が国民年金の第3号被保険者となる場合は、同届で第3号被保険者関係届も兼ねることができます。
💡 実務のポイント
弊所で会社設立支援を行うときは、登記完了から新規適用届提出まで7日程度で一気通貫で進めるのが標準パターンです。登記完了後に法人番号指定通知書が届くのを待つと5日を過ぎるケースが多いため、事実発生日を「初回役員報酬の支払日」に設定して猶予を確保します。この設計により、年間100社超の関与で遅延はほぼゼロで運用しています。
労働保険の保険関係成立届(10日以内)
従業員を1人でも雇用したら、労働保険(労災保険+雇用保険)への加入義務が発生します。その最初の手続きが「労働保険 保険関係成立届」です。
保険関係成立届の基本ルール
労働保険の保険料の徴収等に関する法律第4条の2により、事業主は保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に、所轄の労働基準監督署(一元適用事業)またはハローワーク(二元適用事業)に保険関係成立届を提出する必要があります。
保険関係の成立日とは、一般的に「従業員を雇い入れた日」です。法人の設立時点で従業員がいなければ成立せず、最初の従業員の雇用開始日が成立日となります。
一元適用事業と二元適用事業の違い
労働保険には「一元適用事業」と「二元適用事業」の2区分があり、手続き方法が異なります。ほとんどの企業は一元適用事業に該当しますが、業種により振り分けが決まります。
| 区分 |
該当業種 |
労災・雇用の申告納付 |
提出先 |
| 一元適用事業 | 製造業・卸売業・小売業・サービス業・IT・飲食業など大部分の業種 | 一本化 | 労働基準監督署 |
| 二元適用事業 | 農林水産業・建設業・港湾労働業・都道府県市町村等の事業 | 別個に手続き | 労災は労基署、雇用はハローワーク |
添付書類と記載のポイント
保険関係成立届の添付書類は次のとおりです。
- 法人登記簿謄本:発行90日以内(社保と同じものを使用可)
- 事業所の所在地確認書類:事務所の賃貸借契約書コピーなど(登記住所と異なる場合)
記載事項で特に注意したいのは、「賃金総額の見込額」です。保険関係成立日から当該保険年度末(3月31日)までに労働者に支払う見込みの賃金総額を千円未満切捨てで記入します。この数値は、次の50日以内に提出する概算保険料申告書の算定基礎額と一致します。
📢 建設業は二元適用事業で手続きが分岐
建設業は元請工事ごとに労災保険の成立届が必要で、現場労災と事務所労災の2系統で管理します。加えて、雇用保険は事務所所在地のハローワークに別途届出が必要です。建設業の創業直後は手続きが複雑化するため、社労士への委託を検討する経営者が多い業種です。
労働保険の概算保険料申告書(50日以内)
保険関係成立届を提出した後、または同時に、労働保険の概算保険料申告書を提出する必要があります。提出期限は保険関係成立日の翌日から起算して50日以内です。
概算保険料の計算方法
概算保険料は、保険関係成立日から当該年度末(3月31日)までに支払う見込みの賃金総額に、業種別の労災保険料率と雇用保険料率を合計した率を乗じて算出します。
🧮 計算例:IT企業(従業員3名・月額賃金25万円)
10月設立・10月〜3月の6ヶ月分を概算
賃金総額見込額:25万円 × 3名 × 6ヶ月 = 450万円
労災保険料率:3/1000(その他の各種事業)→ 450万円 × 3/1000 = 13,500円
雇用保険料率:15.5/1000(一般の事業、事業主負担分9.5/1000+労働者負担分6/1000)→ 450万円 × 15.5/1000 = 69,750円
概算保険料合計:83,250円
※労災保険料率・雇用保険料率は業種と年度により変動します。
業種別労災保険料率の例
労災保険料率は業種により大きく異なります。事故率の高い業種ほど料率が高く設定されています(主な業種例)。
| 業種 |
労災保険料率(参考) |
| 金融・保険業 | 2.5/1000 |
| 情報通信業・サービス業 | 3/1000 |
| 小売業・飲食店 | 3/1000 |
| 製造業(機械器具) | 5/1000 |
| 建設業(建築事業) | 9.5/1000 |
| 林業 | 52/1000 |
参考: 厚生労働省「労働保険の成立手続」(最新の料率は毎年度公表)
概算保険料の納付方法
概算保険料は、原則として申告書提出と同時に一括納付します。ただし、概算保険料額が40万円以上(労災・雇用いずれか一方のみ成立している場合は20万円以上)の場合は、3回分割納付が可能です。分割納付の期限は、第1期が7月10日、第2期が10月31日、第3期が翌年1月31日です。
雇用保険適用事業所設置届(10日以内)
労働保険の保険関係成立届を労基署に提出した後、ハローワークに雇用保険関係の2つの届出を提出します。
適用事業所設置届と被保険者資格取得届
雇用保険の手続きは2段階です。
- 雇用保険適用事業所設置届:事業所設置日の翌日から10日以内にハローワークへ
- 雇用保険被保険者資格取得届:資格取得日の属する月の翌月10日までにハローワークへ
適用事業所設置届の添付書類は以下のとおりです。
- 労働保険 保険関係成立届(労基署提出済みの控え)
- 法人登記簿謄本
- 事業所の所在地確認書類
- 労働者名簿
- 賃金台帳(設立直後は給与規程で代替可)
- 出勤簿またはタイムカード
雇用保険の加入要件を満たす従業員とは
雇用保険は全ての従業員が対象ではありません。加入要件は次の2点をいずれも満たす必要があります(雇用保険法第6条)。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
2028年10月以降、「1週間の所定労働時間10時間以上」への要件緩和が予定されており、短時間勤務のパート・アルバイトも雇用保険の対象に含まれる見込みです。創業時から対象範囲を念頭に置いておくと、後の制度改正への対応がスムーズになります。
💡 実務のポイント:役員の雇用保険は原則不要
代表取締役・取締役などの役員は、原則として雇用保険の対象外です。ただし、使用人兼務役員(部長・課長等の肩書を持ち、実際に従業員として労働している役員)は、雇用実態証明書を提出することで雇用保険に加入できる場合があります。判定は厳格なので、迷う場合はハローワークまたは社労士に事前確認することをお勧めします。
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電子申請(e-Gov・GビズID)の活用
新規適用届をはじめとする社会保険・労働保険の手続きは、全て電子申請で完結できます。創業時から電子申請基盤を整備しておくと、後の定期的な手続きも大幅に効率化できます。
GビズIDの取得が出発点
GビズIDは、法人向けの共通認証基盤です。1つのIDで社保・労働保険・補助金申請など複数の行政サービスにログインできます。取得は無料で、下記3種類から選択します。
| 種類 |
機能範囲 |
取得方法 |
| GビズIDエントリー | 限定的な行政サービスのみ | 即時発行(オンライン) |
| GビズIDプライム | 社保・労働保険を含む全サービス | 印鑑証明書郵送・2週間程度 |
| GビズIDメンバー | プライム取得後の追加メンバー | プライムから招待 |
会社設立後はGビズIDプライムの取得を早めに進めます。印鑑証明書の郵送が必要なため、設立登記完了後すぐ申請しても発行まで2週間程度かかります。
電子申請のメリット
電子申請の主なメリットは以下のとおりです。
- 来所不要:年金事務所・労基署・ハローワークに行く必要がない
- 24時間受付:土日祝日・夜間でも申請可能(処理は平日)
- 控え管理が楽:電子で控えが発行されPDF保管できる
- ミス修正が容易:オンラインで補正指示に対応できる
🧮 電子申請の工数削減効果
弊所の実測では、紙申請だと窓口1回あたり往復・待ち時間で半日〜1日かかる手続きが、電子申請では10〜15分で完了します。創業時の3種類の届出を電子化することで、合計で1〜2日分の工数を削減でき、その分を本業に集中できます。クラウド給与ソフト(マネーフォワード・freee・SmartHR等)と連携させれば、毎月の算定基礎届・月額変更届も自動連携で一元管理できます。
期限に間に合わなかった場合の対処
期限を過ぎてしまっても、速やかに対応すれば大きな罰則は避けられるケースが多いのが実情です。ただし、未加入のまま放置すると深刻なリスクが発生します。
期限徒過の罰則規定
健康保険法第208条により、正当な理由なく虚偽の届出・未届出を行った場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。厚生年金保険法第102条も同様の罰則規定を持ちます。
実務では、5日を1〜2日過ぎたくらいで即座に処分されることは稀です。ただし、日本年金機構の調査(未適用事業所対策)で発覚すると、遡及適用により数年分の保険料の一括徴収という重い結果を招きます。
遡及適用のリスク
未加入状態で事業を継続した場合、年金事務所の調査で事実が発覚すると、設立日まで遡って保険料を徴収されます。代表者1人の一人法人でも、2年遡及で約80〜100万円、3年遡及で約120〜150万円の追徴となる可能性があります(役員報酬月30万円と仮定)。
⚠️ 実例:飲食業創業3年目で350万円の遡及徴収
弊所が事後に関与した飲食業(代表者+従業員2名)では、創業時に社会保険手続きを失念し、3年目の年金機構調査で遡及適用を受けました。役員1名・従業員2名の3年分保険料(会社負担・本人負担合算)で約350万円の一括徴収となり、資金繰りが急激に悪化しました。労使折半の本人負担分も事業主が立替払いして分割返済する実務対応が必要となり、経営的なダメージは数字以上に大きいものでした。
期限徒過時の具体的対処ステップ
- 速やかに管轄年金事務所・労基署・ハローワークに連絡し、事情を説明する
- 事実発生日を正確に記載した届出書類を提出する(遡及して届出)
- 不足分の保険料を一括または分納で納付する
- 再発防止のため、社労士への委託または社内チェック体制を構築する
健康保険組合と協会けんぽの選択
健康保険の保険者には「協会けんぽ」と「健康保険組合」の2種類があります。会社設立時にどちらを選択するかで、保険料率と給付内容が異なります。
協会けんぽと組合健保の違い
| 項目 |
協会けんぽ |
健康保険組合 |
| 保険者 | 全国健康保険協会 | 企業・業界ごとの健保組合 |
| 保険料率 | 都道府県別(東京:9.91%前後) | 組合独自(7〜9.5%が多い) |
| 付加給付 | なし | 組合独自の上乗せあり |
| 加入の仕組み | 法人設立時に自動加入 | 業種別組合への加入申請が必要 |
| 設立直後の加入 | 誰でも加入可能 | 業種制限・審査あり |
業種別健保組合への加入検討
IT業界なら関東ITソフトウェア健康保険組合、建設業なら建設業健康保険組合など、業種別健保組合への加入は、保険料率と付加給付の両面で経営者・従業員にメリットをもたらします。ただし、加入審査と手続きの手間があるため、創業直後は協会けんぽで開始し、従業員が増えた段階で組合健保への移行を検討するパターンが一般的です。
社会保険の全体像と加入義務や社会保険料の計算方法の基本も、併せて確認することをお勧めします。
社会保険労務士(社労士)への委託
新規適用届の手続きは、社労士に委託することで大幅に負担を軽減できます。創業時は特に、事業に集中するために手続きを外注する経営者が多いのが実態です。
社労士委託のメリットと相場
委託料相場(参考)は以下のとおりです。
| サービス |
費用相場 |
| 新規適用届一式(社保+労保+雇保) | 5〜10万円(スポット) |
| 給与計算+月次手続き(従業員5名) | 月額3〜5万円 |
| 顧問契約(月次相談含む) | 月額2〜5万円 |
| 就業規則作成 | 10〜30万円(スポット) |
自力対応の場合に必要な準備
自力対応する場合は、下記の準備をお勧めします。
- 日本年金機構・厚生労働省サイトから最新様式をダウンロード
- 記載例を参照しながら下書きを作成
- 不明点は管轄年金事務所・労基署に事前電話相談
- 初回のみ窓口提出で記載内容をチェック・補正
- 2回目以降は電子申請に移行
💡 実務のポイント:創業時の資金調達と社労士委託
日本政策金融公庫の創業融資や自治体の制度融資を受ける際、社会保険料の滞納がないことが融資条件になっているケースが多く見られます。創業融資で1,000万円を調達し、その一部を社労士顧問料に充てて手続きを適正化することで、融資実行と制度遵守を両立できます。創業時の資金調達と社保手続きはセットで設計するのが実務の定石です。
手続き完了後の定期業務
新規適用届の提出が完了したら、以降は定期的な手続きが発生します。主なものを時系列で整理します。
毎月・毎年の定期手続き一覧
| 時期 |
手続き |
対応 |
| 毎月 | 社会保険料の納付 | 翌月末までに口座振替または納付書 |
| 都度 | 入退社時の資格取得・喪失届 | 5日以内(社保)・翌月10日(雇保) |
| 7月 | 算定基礎届(定時決定) | 7月10日まで |
| 7月 | 労働保険の年度更新 | 6月1日〜7月10日 |
| 随時 | 月額変更届(随時改定) | 2等級差発生時 |
| 賞与支給時 | 賞与支払届 | 支給日から5日以内 |
創業時に電子申請基盤(GビズIDプライム+クラウド給与ソフト)を整備しておけば、これらの定期業務の大半を自動化できます。算定基礎届と月額変更届の実務ガイドや賞与の社会保険料計算と届出も定期的に参照してください。
キャリアアップ助成金と創業期の活用
社会保険の適用拡大に伴うコスト負担を軽減するための助成金が、厚生労働省から提供されています。創業期から活用を検討する価値があります。
社会保険適用時処遇改善コース
短時間労働者を新たに社会保険に加入させ、賃金を引き上げた場合、1人あたり最大50万円(中小企業・生産性要件あり)の助成金が支給されます。詳細はキャリアアップ助成金の記事で解説しています。
創業期の助成金活用シミュレーション
創業2年目で、週20時間勤務のパート3名を新たに社保加入させるケースでは、3名 × 50万円 = 150万円の助成を受けられる可能性があります。一方、社保加入による会社負担増は年間約100万円程度(月額賃金9万円×保険料率14%×12ヶ月×3名)となるため、助成金で実質的にコストを相殺できる設計です。
就業規則の整備も並行して進める
常時10人以上の従業員を雇用する事業場は、労働基準法第89条により就業規則の作成と労基署への届出が義務付けられています。創業時は該当しないことが多いものの、将来の成長を見据えて早期に整備する価値があります。
10人未満でも作成が推奨される理由
就業規則は、労使トラブル予防の最強のツールです。休日・休暇・懲戒・退職金・育児介護休業などを明文化することで、後の紛争リスクを大幅に低減できます。詳細は就業規則作成の手順をご参照ください。
よくある質問
社会保険の新規適用届を提出しないとどうなりますか?
健康保険法第208条・厚生年金保険法第102条により、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。実務では即座に処分されるケースは稀ですが、日本年金機構の未適用事業所対策調査で発覚すると、設立日まで遡って保険料を一括徴収される遡及適用のリスクがあります。代表1人でも2年で約80〜100万円、3年で約120〜150万円の追徴となるため、必ず期限内に提出してください。
代表者の役員報酬がゼロでも新規適用届は必要ですか?
役員報酬が設立当初からゼロの場合、標準報酬月額が算定できないため加入義務は発生しません。この場合、新規適用届の提出も不要です。ただし、後日役員報酬を開始した時点で加入義務が発生するため、報酬開始日を事実発生日として5日以内に届出が必要になります。「しばらく無報酬で運営する」創業パターンでも、将来の手続きを忘れないよう注意してください。
一人法人でも労災保険に加入できますか?
代表者1人の一人法人では、原則として労災保険には加入できません。労災保険は労働者を対象とした制度で、役員は労働者に該当しないためです。ただし、労災保険の特別加入制度(中小事業主特別加入)を利用すれば、事業主も労災補償の対象となれます。特別加入には社会保険労務士・労働保険事務組合経由での申込が必要で、給付基礎日額3,500円〜25,000円の範囲で自由に選択できます。
設立時に法人番号指定通知書がまだ届いていない場合はどうすれば?
法人番号指定通知書は、登記完了から1〜2週間で届きますが、5日以内の新規適用届提出期限に間に合わないケースがあります。この場合、国税庁の法人番号公表サイトで自社の法人番号を検索し、その画面の印刷物を添付すれば代替できます。また、事実発生日を「初回役員報酬支給日」に設定することで、5日期限の起算日を実質的に後ろ倒しにする実務運用も一般的です。
雇用保険の加入手続きを忘れたまま従業員が離職した場合、遡及加入は可能ですか?
可能です。ハローワークで遡及加入の手続きが受けられ、最大2年間遡って加入できます。ただし、従業員の失業給付受給に必要な被保険者期間が不足していた場合、事業主の届出懈怠により従業員に損害が生じる可能性があります。この場合、事業主には民事上の損害賠償責任が生じる可能性もあるため、雇用開始時点で速やかに手続きすることが重要です。遡及加入時は、賃金台帳・出勤簿などの客観的証拠書類を提出します。
協会けんぽと健康保険組合はどちらを選ぶべきですか?
創業直後は協会けんぽを選択するのが一般的です。法人設立時に自動的に協会けんぽへ加入する仕組みで、業種や規模による加入制限もありません。一方、業種別健保組合(IT業界の関東ITソフトウェア健保など)は、保険料率が協会けんぽより低く(7〜9.5%程度)、付加給付もあるため、要件を満たせば有利です。ただし、審査があり、従業員数5名以上が目安のケースが多いため、成長段階で移行を検討するパターンが現実的です。
社会保険の会社負担は年間でどのくらいになりますか?
役員報酬月30万円の代表1人の場合、会社負担(健康保険・介護保険・厚生年金の事業主負担分)は月約4万7千円、年間約56万円です。従業員3名(平均月給25万円)を追加した場合、年間会社負担合計は約200〜220万円になります。労使折半の原則により、本人負担も同額発生するため、総社会保険料は会社負担の約2倍となります。創業時の資金計画に必ず織り込んでください。
労働保険の年度更新とは何ですか?
労働保険は前年度の確定保険料の精算と、当年度の概算保険料の納付を毎年6月1日から7月10日の期間に一括で行う手続きで、これを「年度更新」と呼びます。前年度に支払った賃金総額に基づき、実際の保険料を確定し、概算納付との差額を精算します。同時に当年度の概算保険料を申告・納付する仕組みです。新規適用した年度の翌年度から毎年実施します。期限徒過すると延滞金が発生するため、スケジュール管理が重要です。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 法人は代表者1人でも社会保険(健保・厚年)の強制加入事業所となり、設立後5日以内に新規適用届を年金事務所に提出する必要がある
- 従業員を雇用したら労働保険(労災・雇用)の加入義務が発生し、保険関係成立届は10日以内、概算保険料申告書は50日以内に労基署へ提出する
- 雇用保険は適用事業所設置届を10日以内にハローワーク、被保険者資格取得届を翌月10日までに提出する2段階の手続き
- 一元適用事業(ほとんどの業種)と二元適用事業(建設業等)で労働保険の提出先が異なり、業種判定が最初の分岐点
- GビズIDプライムを取得して電子申請基盤を整備することで、創業時の3種類の届出と以降の定期業務を大幅に効率化できる
- 期限徒過しても速やかに対応すれば即座の罰則は避けられるが、未加入放置は遡及適用(2〜3年分一括徴収)のリスクがあり経営的ダメージが大きい
- 創業時の社労士委託費は5〜10万円程度だが、日本政策金融公庫の創業融資と組み合わせると実効負担を大きく抑えられる
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