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賞与の社会保険料計算を、人事・経理担当者向けに実務目線でガイドします。年3回以下と年4回以上で扱いが根本的に変わる境界、標準賞与額の上限の二重構造(健保年573万円/厚年月150万円)、2026年4月新設の子ども・子育て支援金、育休中の免除要件、賞与支払届のe-Gov電子申請までカバーします。


賞与の社会保険料計算を、人事・経理担当者向けに実務目線でガイドします。年3回以下と年4回以上で扱いが根本的に変わる境界、標準賞与額の上限の二重構造(健保年573万円/厚年月150万円)、2026年4月新設の子ども・子育て支援金、育休中の免除要件、賞与支払届のe-Gov電子申請までカバーします。
🏆 結論:年3回以下は標準賞与額、年4回以上は報酬扱い
健康保険法第3条第6項および厚生年金保険法第3条第1項第4号により、社会保険上の賞与は「年3回以下の支給」と定義されます。年3回以下の賞与は1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を乗じて計算し、健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1回150万円が上限です。年4回以上の賞与は「賞与に係る報酬」として標準報酬月額に組み込まれ、別の計算方法になります。2026年4月から子ども・子育て支援金も賞与にかかる点に注意が必要です。
賞与の社会保険料を理解するには、まず「社会保険上の賞与」の独自定義を押さえる必要があります。税法や労働基準法の賞与とは範囲が異なります。
健康保険法第3条第6項は、賞与を「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、3月を超える期間ごとに受けるもの」と規定します。実務上は「年3回以下の頻度で支給されるもの」と整理されます。
「賞与」という名称でなくても、以下のような支給は年3回以下であれば社会保険上の賞与に該当します。
💡 実務のポイント
名称が「特別手当」「業績給」でも、年3回以下の支給頻度であれば社会保険上は賞与です。支給規程を作る際は名称よりも支給回数を優先して設計してください。弊所が関与した中堅製造業で、「四半期業績手当」として年4回の支給に変更したところ、社会保険上の扱いが「賞与」から「報酬」に切り替わり、毎月の保険料計算が変わったケースがあります。
年間の支給回数により、社会保険上の扱いが根本的に異なります。人事実務で最も重要な分岐点です。
| 項目 | 年3回以下(賞与扱い) | 年4回以上(報酬扱い) |
|---|---|---|
| 社保上の分類 | 賞与(標準賞与額) | 賞与に係る報酬(標準報酬月額に算入) |
| 届出 | 被保険者賞与支払届(支給の都度) | 算定基礎届に組み込み(賞与支払届不要) |
| 保険料計算 | 標準賞与額×保険料率 | 年合計÷12を月報酬に加算 |
| 上限 | 健保年573万円・厚年月150万円 | 標準報酬月額の上限のみ |
| 産休・育休中の免除 | 1ヶ月超の育休で免除 | 報酬として通常徴収 |
以下のすべてを満たすと「賞与に係る報酬」として標準報酬月額へ算入されます。
夏・冬・期末の年3回の定例賞与に加えて、業績に応じて支給される決算賞与は「性質が他の賞与と異なる」ものとして、年4回以上の判定から除外されます。つまり「夏・冬・期末+決算賞与」で年4回支給されても、すべて賞与扱いとなります。
⚠️ 四半期賞与導入時の落とし穴
「四半期ごとに業績連動賞与を支給」という規程は同じ性質で年4回となり、報酬扱いになります。各賞与支給時の賞与支払届は不要ですが、標準報酬月額が通常より高くなり毎月の保険料が上昇します。規程変更前に試算することを強く推奨します。
年3回以下の賞与について、標準賞与額の計算ルールを解説します。
賞与の税引前支給総額から1,000円未満を切り捨てた金額が「標準賞与額」です。
🧮 標準賞与額の計算例
・賞与支給総額:853,200円
・1,000円未満切り捨て:853,000円
・標準賞与額:853,000円
・健康保険料(労使合計9.91%):853,000 × 9.91% = 84,532円
・厚生年金保険料(労使合計18.3%):853,000 × 18.3% = 156,099円
・合計(労使合計):240,631円
・従業員負担:120,315円(労使折半)
標準賞与額には健康保険と厚生年金で異なる上限が設けられています。この二重上限の構造は、社会保険料削減目的の過大賞与支給を抑制するために設定されたものです。
| 保険 | 上限 | 根拠 | 判定単位 |
|---|---|---|---|
| 健康保険・介護保険 | 年度累計573万円 | 健康保険法第45条 | 4月1日〜翌年3月31日 |
| 厚生年金保険 | 1回あたり150万円 | 厚生年金保険法第24条の4 | 支給1回ごと(同月は合算) |
健康保険の上限は年度累計で判定される一方、厚生年金は1回ごとに判定されます。これは、月例給与を極端に低く抑え多額の賞与を複数回支給することで厚年保険料を圧縮する「社会保険料削減スキーム」への対策として設計されたためです。健康保険側は2007年に年度累計制に移行しました。
賞与が上限を超えた場合の処理ロジックを、ケース別に整理します。
🧮 賞与200万円を1回支給したケース
・賞与支給総額:2,000,000円
・健康保険の標準賞与額:2,000,000円(年度累計573万円以内なら全額対象)
・厚生年金の標準賞与額:1,500,000円(上限適用、50万円はカット)
・健康保険料:2,000,000 × 9.91% = 198,200円
・厚生年金保険料:1,500,000 × 18.3% = 274,500円
・合計(労使合計):472,700円
健康保険の年度累計は毎年4月1日にリセットされます。年度の中で累計573万円を超えた時点から、超過分には健康保険料がかかりません。
🧮 役員賞与の年度累計ケース
・7月支給:300万円 → 標準賞与額300万円(累計300万円)
・12月支給:300万円 → 標準賞与額273万円(上限573万円 − 累計300万円)
・12月の300万円のうち27万円は健康保険料かからず
・ただし厚生年金は各回150万円上限のため、300万円は150万円で頭打ち
年度累計573万円を超えた場合、事業主は管轄の保険者に「基準賞与額累計申出書」を提出する必要があります。これにより、超過分が適切に処理されます。
厚生年金の「1回150万円」の判定は、同月に複数回支給した場合は合算で行います。
🧮 同月2回支給の例
・6月5日支給:80万円
・6月25日支給:80万円
・6月合計:160万円(150万円超過)
・厚生年金の標準賞与額:150万円(6月全体で頭打ち)
・健康保険は合算後の全額160万円が対象(年度累計573万円以内なら)
2026年4月分から、健康保険料に上乗せされる形で「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。賞与からも徴収される点が実務上の新しい論点です。
📢 子ども・子育て支援金の計算例
標準賞与額80万円の場合(支援金料率0.115%の例):
・子ども・子育て支援金:800,000 × 0.115% = 920円(労使合計)
・労働者負担:460円、事業主負担:460円
※ 支援金料率は2026年度〜2027年度で段階的に引き上げられる予定
育児休業・産前産後休業期間中に支給された賞与は、条件を満たせば社会保険料が全額免除されます。月額給与とは別の基準で判定される点に注意が必要です。
改正前は「賞与支給月の末日時点で育休中」であれば免除されていましたが、改正後は賞与支給月の末日を含む連続した育休が「1ヶ月超」でなければ免除されません。月額給与の免除要件(同月14日以上)とは異なる別基準です。根拠は健康保険法第159条の3・厚生年金保険法第81条の2の2です。
参考: 厚生労働省「育児休業等期間中の保険料免除要件の見直しQ&A」
💡 「1ヶ月超」の数え方
暦日ベースで「暦月数+1日以上」となります。11月(30日)であれば12月1日以上、12月(31日)であれば翌年1月1日以上の日付まで連続する必要があります。「1ヶ月ちょうど」では免除されない点が要注意です。
| 育休期間 | 賞与支給日 | 免除判定 |
|---|---|---|
| 6月1日〜7月15日(45日) | 6月25日 | ✅ 免除(6月末含む1ヶ月超) |
| 6月15日〜7月14日(30日) | 6月25日 | ❌ 免除されない(1ヶ月ちょうどで超えない) |
| 6月15日〜7月16日(32日) | 6月25日 | ✅ 免除(1ヶ月超、6月末含む) |
| 6月1日〜7月15日(45日) | 7月10日 | ❌ 免除されない(7月末を含まない) |
産前産後休業中(産前6週間・産後8週間)に支給された賞与は、支給日が産休期間に含まれていれば、育休のような「1ヶ月超」の要件なしで保険料が全額免除されます。「産前産後休業取得者申出書」の提出が必要です。
AYUSAWA PARTNERS
賞与計算・社会保険手続きのご相談は鮎澤パートナーズへ
初回相談無料。社労士・税理士・公認会計士・行政書士がワンストップで対応。賞与支払届の電子申請代行も承ります。
鮎澤パートナーズに相談する年3回以下の賞与を支給した場合、事業主は「被保険者賞与支払届」を提出する義務があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 健康保険法第158条・厚生年金保険法第100条 |
| 提出期限 | 賞与支給日から5日以内 |
| 提出先 | 管轄の年金事務所(協会けんぽ)/ 健保組合 |
| 提出方法 | 電子申請(e-Gov・GビズID)/ 紙 / CSV / 窓口 |
| 記載事項 | 被保険者氏名・基礎年金番号・支給年月日・支給額 |
賞与を支給する事業所は、事前に「事業所関係変更(訂正)届」で賞与支払予定月を登録しておく必要があります。予定月に賞与を支給しなかった場合は「賞与不支給報告書」の提出が必要です。
賞与支払届は電子申請が主流です。特定法人(資本金1億円超等)は2020年4月から電子申請が義務化されていますが、中小企業でも推奨されます。
年度中に転職があった場合、健康保険の573万円累計ルールに特殊な取扱いがあります。
健康保険の年度累計573万円は「保険者単位」で判定されます。具体的には以下のように区分されます。
💡 実務のポイント
弊所が対応した金融機関の従業員で、年間賞与が計800万円(夏400万・冬400万)となる方が秋に同業他社に転職したケースで、両社とも協会けんぽだったため累計573万円の上限適用となり、転職先の冬賞与で超過分173万円について健康保険料がかからない処理となりました。転職前後の給与明細と賞与支給証明書を現職の人事に提示してもらう運用が必要です。
事業主負担分の賞与保険料の会計処理を整理します。
標準賞与額100万円・40歳未満のケースで、以下の仕訳となります。
事業主負担分の社会保険料は、法人税法第22条第3項により損金算入できます。役員賞与について損金算入する場合は、法人税法第34条の要件(事前確定届出給与)を満たす必要があります。
賞与保険料の実務で頻発するミスと、弊所が運用しているチェック体制を整理します。
弊所が顧問する企業では、賞与支給の前月から以下の3段階チェックを実施しています。第1段階:支給予定者の育休・産休状況確認、第2段階:年度累計の健康保険料対象額集計、第3段階:賞与支払届の電子申請データ事前生成。この体制により、過去3年間で賞与保険料の計算ミスゼロを実現しています。年商10億円規模のIT企業で、以前は年数件発生していた徴収漏れが完全になくなりました。
賞与保険料は他の社会保険実務と連動します。併せてご覧ください。
社会保険制度の全体像は社会保険とは?制度の全体像と加入義務、社会保険料計算の基礎は社会保険料の計算方法|標準報酬月額の決定・等級表の読み方で詳述しました。算定基礎届・月額変更届は算定基礎届(定時決定)と月額変更届(随時改定)の実務ガイド、適用拡大は社会保険の適用拡大(従業員51人以上)の実務対応ガイド、106万円の壁撤廃は106万円の壁撤廃と企業規模要件の段階的撤廃で解説しています。
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