公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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年収の壁を完全整理。令和7年度税制改正で変わった103→123万円の壁、150→160万円の配偶者特別控除ライン、106万・130万円の社保の壁、特定親族特別控除(150/188万円)、住民税の壁など8つの壁を、税制と社会保険の観点から分類して解説します。パート主婦・大学生アルバイト・企業担当者が最適な働き方を判断できます。


年収の壁を完全整理。令和7年度税制改正で変わった103→123万円の壁、150→160万円の配偶者特別控除ライン、106万・130万円の社保の壁、特定親族特別控除(150/188万円)、住民税の壁など8つの壁を、税制と社会保険の観点から分類して解説します。パート主婦・大学生アルバイト・企業担当者が最適な働き方を判断できます。
🏆 結論:年収の壁は「税制の壁」と「社保の壁」の2系統に分類される
令和7年度税制改正により、所得税の「103万円の壁」は「123万円の壁」に引き上げられました。配偶者特別控除の満額ボーダーは「150万円」から「160万円」へ引き上げ。大学生等の「もう1つの103万円の壁」は特定親族特別控除の新設で「150万円」に引き上げられ、段階的に188万円まで控除適用されます。一方、社会保険の106万円の壁(2026年10月撤廃予定)と130万円の壁(継続)は税制の壁と独立して適用されます。
年収の壁と呼ばれるものは、大きく「税制の壁」と「社会保険の壁」の2系統に分類できます。それぞれ法的根拠が異なり、性質が全く違います。
| 項目 | 税制の壁 | 社会保険の壁 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 所得税法・地方税法 | 健康保険法・厚生年金保険法 |
| 判定対象 | 本人の所得税・住民税・扶養控除 | 本人の社保加入・被扶養者認定 |
| 主な判定基準 | 年収金額(基礎・給与所得控除の合計) | 年収金額+労働時間 |
| 判定の単位 | 1月〜12月の暦年 | 将来見込みの年収(労働契約ベース) |
| 変動の方向 | 段階的控除で急激な負担増を回避 | 基準を超えると一気に負担発生 |
| 壁 | 系統 | 内容 |
|---|---|---|
| 100万円 | 税制 | 住民税が発生する目安 |
| 123万円 | 税制 | 所得税が発生する新ライン(改正後) |
| 106万円 | 社保 | 勤務先社保加入ライン(2026年10月撤廃) |
| 130万円 | 社保 | 被扶養者認定ライン(週20時間未満) |
| 150万円(大学生等) | 税制・社保 | 特定親族特別控除ライン・被扶養者認定 |
| 160万円 | 税制 | 配偶者特別控除の満額ボーダー(改正後) |
| 188万円 | 税制 | 特定親族特別控除の上限 |
| 201万円 | 税制 | 配偶者特別控除の完全消滅ライン |
2025年3月4日に衆議院本会議で可決された令和7年度税制改正により、長年定着していた「103万円の壁」が抜本的に見直されました。
そもそも「103万円の壁」とは、給与収入103万円以下で所得税が発生しない境界線のことです。旧制度では基礎控除48万円+給与所得控除最低額55万円=103万円という計算から、103万円以下なら課税所得がゼロになりました。
令和7年度税制改正により、以下の2つの控除額が引き上げられました。
| 控除 | 改正前 | 改正後 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 基礎控除(所得税) | 48万円 | 58万円 | +10万円 |
| 給与所得控除(最低保証) | 55万円 | 65万円 | +10万円 |
| 所得税非課税の上限 | 103万円 | 123万円 | +20万円 |
参考: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
令和7年度・令和8年度の2年間限定で、年収200万円以下または年収201万円超〜850万円以下の低〜中所得者については、基礎控除が最大95万円まで段階的に上乗せされます。これにより、実質的な非課税上限は160万円近くまで引き上げられます。
📢 令和7年度・8年度の時限特別措置
令和9年度(2027年度)以降は基礎控除の本則が62万円(CPI連動)に恒久引き上げられ、58万円には戻りません。2028年以降の詳細は2027年末の税制改正議論で決定されます。
配偶者控除と配偶者特別控除も、令和7年度改正で大幅に見直されました。
配偶者控除を満額38万円で受けるための配偶者の年収要件は、以下のように変更されました。
| 控除 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 配偶者控除の年収上限 | 103万円以下 | 123万円以下 |
| 配偶者特別控除の満額ライン | 150万円以下 | 160万円以下 |
| 配偶者特別控除の上限 | 201万円 | 201万円(変更なし) |
所得税法第83条および第83条の2による配偶者特別控除の段階的仕組みは、以下のとおり整理できます。
| 配偶者の年収 | 配偶者控除/特別控除 | 控除額 |
|---|---|---|
| 123万円以下 | 配偶者控除 | 38万円(満額) |
| 123万〜160万円 | 配偶者特別控除 | 38万円(満額) |
| 160万〜201万円 | 配偶者特別控除 | 段階的に減少 |
| 201万円超 | 控除なし | 0円 |
💡 実務のポイント
配偶者特別控除の満額ラインが150万円→160万円に引き上げられたのは、働き控え解消の政策目標があります。配偶者の年収が160万円以下なら、世帯主(夫など)は満額38万円の控除を受けられます。税負担を気にせず稼げる範囲が広がりました。
令和7年度税制改正では、大学生等の子のアルバイト収入に関する「もう1つの103万円の壁」も見直されました。
従来、大学生等の子(19〜22歳)は年収103万円以下でなければ「特定扶養親族」として親の扶養控除63万円を受けられませんでした。令和7年度改正でこの要件が150万円に引き上げられました。
改正ではさらに、年収150万円を超えても段階的に控除が受けられる「特定親族特別控除」が新設されました。配偶者特別控除と同様、収入の増加に応じて控除が段階的に減少する仕組みです。
| 大学生等の年収 | 控除の種類 | 親の控除額 |
|---|---|---|
| 123万円以下 | 扶養控除(一般) | 38万円 |
| 123万〜150万円 | 特定扶養控除 | 63万円(満額) |
| 150万〜188万円 | 特定親族特別控除 | 段階的に減少 |
| 188万円超 | 控除なし | 0円 |
特定親族特別控除の新設により、大学生が年収188万円まで稼いでも、親が一定の控除を受けられるようになりました。アルバイトに励む学生とその親にとって、大きな制度改善です。
ここからは社会保険の壁について整理します。税制の壁とは根拠法・判定基準が異なる点に注意してください。
現行(2024年10月〜2026年9月)では、従業員51人以上の企業で週20時間以上・月8.8万円以上等の要件を満たすと社会保険加入となります。月8.8万円×12ヶ月≒106万円という計算から「106万円の壁」と呼ばれています。
2025年6月成立の年金制度改正法により、2026年10月に賃金要件(月8.8万円)が撤廃されます。以後は実質的に「週20時間の壁」に移行します。
配偶者の健康保険の被扶養者(第3号被保険者)でいられるのは、原則として年収130万円未満までです。この壁は106万円の壁と異なり、2026年10月以降も存続します。
ただし2026年4月から判定方法が変更され、「労働契約書に記載された年収見込み」を基準とする運用となります。一時的な収入超過は事業主の証明により扶養維持も可能です。詳しくは106万円の壁撤廃と企業規模要件の段階的撤廃で解説しています。
2026年4月から、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の被扶養者認定の年収基準が150万円に引き上げられます。税制の特定扶養親族150万円要件と揃える形です。
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鮎澤パートナーズに相談する住民税にも独自の壁があります。所得税とは非課税基準が異なります。
住民税の非課税限度額は自治体により異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
⚠️ 注意
令和7年度税制改正は所得税(国税)中心で、住民税の基礎控除引き上げは盛り込まれませんでした。そのため、住民税の壁は所得税より低い水準(100万円程度)で残っています。住民税は地方財政の影響を考慮して時期をずらして改正する方向です。
税制・社保とは別に、企業独自の「配偶者手当」や「家族手当」にも年収要件が設けられているケースが多くあります。
多くの企業は就業規則・賃金規程で、配偶者の年収が一定額以下の従業員に配偶者手当(月1〜3万円程度)を支給しています。要件の年収ラインは企業によって異なり、以下のようなパターンがあります。
令和7年度税制改正を受けて、配偶者手当の要件を引き上げる企業も増えています。弊所が関与した年商10億円規模のメーカーでは、配偶者手当の年収要件を「103万円以下」から「160万円以下」に引き上げる就業規則改定を行い、パート従業員50名の配偶者のうち約20名が新たに配偶者手当の対象となった事例があります。
各年収の壁を踏まえて、パート主婦が最適な働き方を選択するためのフローを整理します。
| 年収 | 所得税 | 住民税 | 社会保険 | 手取り |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 0 | 0 | 0 | 約100万円 |
| 120万円(扶養内) | 0 | 約1万円 | 0 | 約119万円 |
| 130万円(扶養外) | 約0.5万円 | 約1.5万円 | 約19万円 | 約109万円 |
| 150万円(扶養外) | 約1万円 | 約3万円 | 約22万円 | 約124万円 |
| 160万円(扶養外) | 約1.5万円 | 約3.5万円 | 約23万円 | 約132万円 |
| 180万円(扶養外) | 約3万円 | 約5万円 | 約26万円 | 約146万円 |
※ 概算値です。実際の手取りは企業の保険料率・居住地の住民税率により異なります。
上表を見ると、年収120万円の手取り(約119万円)よりも、年収130万円の手取り(約109万円)の方が少ないことが分かります。これが「働き損」と呼ばれる現象で、社会保険料の発生が原因です。
🧮 逆転ラインを超える目安
働き損を回避するには、年収130万円超になる場合は年収145〜150万円以上を目指す必要があります。年収120万円の手取り119万円を上回るには、社会保険料増を吸収できるだけ年収を上げる必要があるからです。「越えるならしっかり越える」が実務上のセオリーです。
弊所が相談を受けた実際のケースでは、年収125万円のパート従業員が130万円を超える残業依頼を受けた際、「130万円ギリギリより145万円まで増やすべき」と助言し、年収145万円で社保加入した結果、年間手取りが約5万円向上しました。このような「越え方の設計」が実務では重要です。
年収の壁に関する改正は段階的に進んでおり、今後も継続予定です。
| 時期 | 改正項目 |
|---|---|
| 2025年3月 | 令和7年度税制改正法成立(103→123万円) |
| 2025年6月 | 年金制度改正法成立(106万円の壁撤廃決定) |
| 2026年4月 | 130万円の壁の判定方法変更、大学生等150万円基準 |
| 2026年10月 | 106万円の壁(賃金要件)撤廃 |
| 2027年10月以降 | 社保の企業規模要件の段階的撤廃 |
| 2027年度以降 | 基礎控除本則62万円への恒久化 |
| 2029年10月 | 個人事業所5人以上の全業種適用 |
年収の壁は他の社保・労務論点と密接に関連します。以下もご覧ください。
社会保険制度の全体像は社会保険とは?制度の全体像と加入義務で解説しています。適用拡大の実務は社会保険の適用拡大(従業員51人以上)の実務対応ガイド、106万円の壁撤廃の詳細は106万円の壁撤廃と企業規模要件の段階的撤廃で詳述しました。就業規則の改定は就業規則の作成・変更の実務、助成金活用はキャリアアップ助成金の活用ガイドをご覧ください。
📋 この記事のポイント