年収の壁を完全整理|103万→160万・106万・130万・150万→160万の最新ルール

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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年収の壁を完全整理。令和7年度税制改正で変わった103→123万円の壁、150→160万円の配偶者特別控除ライン、106万・130万円の社保の壁、特定親族特別控除(150/188万円)、住民税の壁など8つの壁を、税制と社会保険の観点から分類して解説します。パート主婦・大学生アルバイト・企業担当者が最適な働き方を判断できます。
🏆 結論:年収の壁は「税制の壁」と「社保の壁」の2系統に分類される
令和7年度税制改正により、所得税の「103万円の壁」は「123万円の壁」に引き上げられました。配偶者特別控除の満額ボーダーは「150万円」から「160万円」へ引き上げ。大学生等の「もう1つの103万円の壁」は特定親族特別控除の新設で「150万円」に引き上げられ、段階的に188万円まで控除適用されます。一方、社会保険の106万円の壁(2026年10月撤廃予定)と130万円の壁(継続)は税制の壁と独立して適用されます。
年収の壁は全部で何種類?|税制の壁と社保の壁
年収の壁と呼ばれるものは、大きく「税制の壁」と「社会保険の壁」の2系統に分類できます。それぞれ法的根拠が異なり、性質が全く違います。
税制の壁と社保の壁の違い
| 項目 |
税制の壁 |
社会保険の壁 |
| 根拠法 | 所得税法・地方税法 | 健康保険法・厚生年金保険法 |
| 判定対象 | 本人の所得税・住民税・扶養控除 | 本人の社保加入・被扶養者認定 |
| 主な判定基準 | 年収金額(基礎・給与所得控除の合計) | 年収金額+労働時間 |
| 判定の単位 | 1月〜12月の暦年 | 将来見込みの年収(労働契約ベース) |
| 変動の方向 | 段階的控除で急激な負担増を回避 | 基準を超えると一気に負担発生 |
令和7年度以降の8つの壁一覧
| 壁 |
系統 |
内容 |
| 100万円 | 税制 | 住民税が発生する目安 |
| 123万円 | 税制 | 所得税が発生する新ライン(改正後) |
| 106万円 | 社保 | 勤務先社保加入ライン(2026年10月撤廃) |
| 130万円 | 社保 | 被扶養者認定ライン(週20時間未満) |
| 150万円(大学生等) | 税制・社保 | 特定親族特別控除ライン・被扶養者認定 |
| 160万円 | 税制 | 配偶者特別控除の満額ボーダー(改正後) |
| 188万円 | 税制 | 特定親族特別控除の上限 |
| 201万円 | 税制 | 配偶者特別控除の完全消滅ライン |
令和7年度税制改正で変わった「103→123万円の壁」
2025年3月4日に衆議院本会議で可決された令和7年度税制改正により、長年定着していた「103万円の壁」が抜本的に見直されました。
103万円の壁の構造
そもそも「103万円の壁」とは、給与収入103万円以下で所得税が発生しない境界線のことです。旧制度では基礎控除48万円+給与所得控除最低額55万円=103万円という計算から、103万円以下なら課税所得がゼロになりました。
改正後の123万円への引き上げ
令和7年度税制改正により、以下の2つの控除額が引き上げられました。
| 控除 |
改正前 |
改正後 |
差額 |
| 基礎控除(所得税) | 48万円 | 58万円 | +10万円 |
| 給与所得控除(最低保証) | 55万円 | 65万円 | +10万円 |
| 所得税非課税の上限 | 103万円 | 123万円 | +20万円 |
参考: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
低〜中所得者への特別措置
令和7年度・令和8年度の2年間限定で、年収200万円以下または年収201万円超〜850万円以下の低〜中所得者については、基礎控除が最大95万円まで段階的に上乗せされます。これにより、実質的な非課税上限は160万円近くまで引き上げられます。
📢 令和7年度・8年度の時限特別措置
令和9年度(2027年度)以降は基礎控除の本則が62万円(CPI連動)に恒久引き上げられ、58万円には戻りません。2028年以降の詳細は2027年末の税制改正議論で決定されます。
配偶者控除・配偶者特別控除の改正|123万円・160万円・201万円
配偶者控除と配偶者特別控除も、令和7年度改正で大幅に見直されました。
配偶者控除の年収要件
配偶者控除を満額38万円で受けるための配偶者の年収要件は、以下のように変更されました。
| 控除 |
改正前 |
改正後 |
| 配偶者控除の年収上限 | 103万円以下 | 123万円以下 |
| 配偶者特別控除の満額ライン | 150万円以下 | 160万円以下 |
| 配偶者特別控除の上限 | 201万円 | 201万円(変更なし) |
年収帯別の控除額
所得税法第83条および第83条の2による配偶者特別控除の段階的仕組みは、以下のとおり整理できます。
| 配偶者の年収 |
配偶者控除/特別控除 |
控除額 |
| 123万円以下 | 配偶者控除 | 38万円(満額) |
| 123万〜160万円 | 配偶者特別控除 | 38万円(満額) |
| 160万〜201万円 | 配偶者特別控除 | 段階的に減少 |
| 201万円超 | 控除なし | 0円 |
💡 実務のポイント
配偶者特別控除の満額ラインが150万円→160万円に引き上げられたのは、働き控え解消の政策目標があります。配偶者の年収が160万円以下なら、世帯主(夫など)は満額38万円の控除を受けられます。税負担を気にせず稼げる範囲が広がりました。
大学生等の「もう1つの103万円の壁」と特定親族特別控除
令和7年度税制改正では、大学生等の子のアルバイト収入に関する「もう1つの103万円の壁」も見直されました。
特定扶養控除の年収要件引き上げ
従来、大学生等の子(19〜22歳)は年収103万円以下でなければ「特定扶養親族」として親の扶養控除63万円を受けられませんでした。令和7年度改正でこの要件が150万円に引き上げられました。
特定親族特別控除の新設
改正ではさらに、年収150万円を超えても段階的に控除が受けられる「特定親族特別控除」が新設されました。配偶者特別控除と同様、収入の増加に応じて控除が段階的に減少する仕組みです。
| 大学生等の年収 |
控除の種類 |
親の控除額 |
| 123万円以下 | 扶養控除(一般) | 38万円 |
| 123万〜150万円 | 特定扶養控除 | 63万円(満額) |
| 150万〜188万円 | 特定親族特別控除 | 段階的に減少 |
| 188万円超 | 控除なし | 0円 |
大学生のアルバイト制限の緩和
特定親族特別控除の新設により、大学生が年収188万円まで稼いでも、親が一定の控除を受けられるようになりました。アルバイトに励む学生とその親にとって、大きな制度改善です。
社会保険の106万円・130万円の壁
ここからは社会保険の壁について整理します。税制の壁とは根拠法・判定基準が異なる点に注意してください。
106万円の壁(勤務先の社保加入ライン)
現行(2024年10月〜2026年9月)では、従業員51人以上の企業で週20時間以上・月8.8万円以上等の要件を満たすと社会保険加入となります。月8.8万円×12ヶ月≒106万円という計算から「106万円の壁」と呼ばれています。
2025年6月成立の年金制度改正法により、2026年10月に賃金要件(月8.8万円)が撤廃されます。以後は実質的に「週20時間の壁」に移行します。
130万円の壁(被扶養者認定ライン)
配偶者の健康保険の被扶養者(第3号被保険者)でいられるのは、原則として年収130万円未満までです。この壁は106万円の壁と異なり、2026年10月以降も存続します。
ただし2026年4月から判定方法が変更され、「労働契約書に記載された年収見込み」を基準とする運用となります。一時的な収入超過は事業主の証明により扶養維持も可能です。詳しくは106万円の壁撤廃と企業規模要件の段階的撤廃で解説しています。
大学生等の150万円の壁(社保)
2026年4月から、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の被扶養者認定の年収基準が150万円に引き上げられます。税制の特定扶養親族150万円要件と揃える形です。
参考: 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
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住民税の壁(100万円・110万円など)
住民税にも独自の壁があります。所得税とは非課税基準が異なります。
住民税非課税の基準
住民税の非課税限度額は自治体により異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
- 給与収入100万円以下:住民税(所得割)が発生しない自治体が多い
- 給与収入110万円以下:住民税(均等割)も発生しない場合がある
- 詳細は各自治体のルールに依存:非課税限度額は自治体条例で規定
⚠️ 注意
令和7年度税制改正は所得税(国税)中心で、住民税の基礎控除引き上げは盛り込まれませんでした。そのため、住民税の壁は所得税より低い水準(100万円程度)で残っています。住民税は地方財政の影響を考慮して時期をずらして改正する方向です。
企業の配偶者手当・家族手当との関係
税制・社保とは別に、企業独自の「配偶者手当」や「家族手当」にも年収要件が設けられているケースが多くあります。
配偶者手当の年収要件
多くの企業は就業規則・賃金規程で、配偶者の年収が一定額以下の従業員に配偶者手当(月1〜3万円程度)を支給しています。要件の年収ラインは企業によって異なり、以下のようなパターンがあります。
- 年収103万円以下(旧所得税の壁に合わせた設定)
- 年収130万円以下(社会保険の壁に合わせた設定)
- 年収150万円以下(配偶者特別控除の旧満額ラインに合わせた設定)
企業側の対応(就業規則見直しの推奨)
令和7年度税制改正を受けて、配偶者手当の要件を引き上げる企業も増えています。弊所が関与した年商10億円規模のメーカーでは、配偶者手当の年収要件を「103万円以下」から「160万円以下」に引き上げる就業規則改定を行い、パート従業員50名の配偶者のうち約20名が新たに配偶者手当の対象となった事例があります。
パート主婦の働き方意思決定フロー
各年収の壁を踏まえて、パート主婦が最適な働き方を選択するためのフローを整理します。
年収別の手取り試算(給与のみ・東京都在住)
| 年収 |
所得税 |
住民税 |
社会保険 |
手取り |
| 100万円 | 0 | 0 | 0 | 約100万円 |
| 120万円(扶養内) | 0 | 約1万円 | 0 | 約119万円 |
| 130万円(扶養外) | 約0.5万円 | 約1.5万円 | 約19万円 | 約109万円 |
| 150万円(扶養外) | 約1万円 | 約3万円 | 約22万円 | 約124万円 |
| 160万円(扶養外) | 約1.5万円 | 約3.5万円 | 約23万円 | 約132万円 |
| 180万円(扶養外) | 約3万円 | 約5万円 | 約26万円 | 約146万円 |
※ 概算値です。実際の手取りは企業の保険料率・居住地の住民税率により異なります。
120万円と130万円の「逆転現象」
上表を見ると、年収120万円の手取り(約119万円)よりも、年収130万円の手取り(約109万円)の方が少ないことが分かります。これが「働き損」と呼ばれる現象で、社会保険料の発生が原因です。
🧮 逆転ラインを超える目安
働き損を回避するには、年収130万円超になる場合は年収145〜150万円以上を目指す必要があります。年収120万円の手取り119万円を上回るには、社会保険料増を吸収できるだけ年収を上げる必要があるからです。「越えるならしっかり越える」が実務上のセオリーです。
弊所が相談を受けた実際のケースでは、年収125万円のパート従業員が130万円を超える残業依頼を受けた際、「130万円ギリギリより145万円まで増やすべき」と助言し、年収145万円で社保加入した結果、年間手取りが約5万円向上しました。このような「越え方の設計」が実務では重要です。
税制改正のタイムライン
年収の壁に関する改正は段階的に進んでおり、今後も継続予定です。
過去・現在・将来の主要改正
| 時期 |
改正項目 |
| 2025年3月 | 令和7年度税制改正法成立(103→123万円) |
| 2025年6月 | 年金制度改正法成立(106万円の壁撤廃決定) |
| 2026年4月 | 130万円の壁の判定方法変更、大学生等150万円基準 |
| 2026年10月 | 106万円の壁(賃金要件)撤廃 |
| 2027年10月以降 | 社保の企業規模要件の段階的撤廃 |
| 2027年度以降 | 基礎控除本則62万円への恒久化 |
| 2029年10月 | 個人事業所5人以上の全業種適用 |
関連する社会保険・労務の他記事
年収の壁は他の社保・労務論点と密接に関連します。以下もご覧ください。
社会保険制度の全体像は社会保険とは?制度の全体像と加入義務で解説しています。適用拡大の実務は社会保険の適用拡大(従業員51人以上)の実務対応ガイド、106万円の壁撤廃の詳細は106万円の壁撤廃と企業規模要件の段階的撤廃で詳述しました。就業規則の改定は就業規則の作成・変更の実務、助成金活用はキャリアアップ助成金の活用ガイドをご覧ください。
よくある質問
103万円の壁は本当になくなったのですか?
令和7年度税制改正により、所得税が発生する年収ラインは103万円から123万円に引き上げられました。ただし、住民税の非課税基準は概ね100万円のままであるため、「税金がかかり始める壁」は完全にはなくなっていません。また社会保険の106万円・130万円の壁は別の制度で継続します。
配偶者特別控除の満額ラインが160万円に上がったのはいつからですか?
令和7年度税制改正により、2025年分(令和7年分)の所得税から適用されます。年末調整や確定申告の際に、配偶者の年収160万円以下であれば満額38万円の控除を受けられます。
大学生の子のアルバイト収入はいくらまで税制上問題ないですか?
令和7年度改正により、大学生等(19〜22歳)は年収150万円まで特定扶養控除63万円が満額適用されます。150万円を超えても188万円までは特定親族特別控除で段階的に控除が適用されるため、188万円までは親の控除が受けられます。
106万円の壁が2026年10月に撤廃されると、扶養内で働けなくなるのですか?
撤廃されるのは「月額賃金8.8万円以上」の賃金要件のみです。「週20時間以上」の労働時間要件は維持されるため、週20時間未満で働けば社会保険非加入を維持でき、年収130万円未満なら配偶者の扶養内にとどまれます。
住民税の壁は2025年改正で変わりましたか?
変わっていません。令和7年度税制改正は所得税(国税)の基礎控除引き上げが中心で、住民税の基礎控除は据え置かれました。そのため、所得税の123万円の壁と住民税の100万円前後の壁にはギャップがあります。住民税は地方財政への配慮から、別途時期をずらして改正される見込みです。
企業の配偶者手当の年収要件も変わりますか?
企業の配偶者手当は就業規則に基づく独自の基準であり、法改正で自動的には変わりません。人事部での就業規則改定が必要です。多くの企業が令和7年度改正を機に、配偶者手当の年収要件を103万円以下から123万円以下や160万円以下に引き上げる方向で見直しています。
パート主婦は結局いくらまで働くのがベストですか?
ライフスタイルにより異なります。税制面のみで考えれば、配偶者特別控除が満額受けられる160万円までが世帯で税負担が最小化される目安です。ただし社会保険加入(年収130万円以上でほぼ確実)による手取り減を考慮すると、「扶養内で働くなら120万円、扶養を外れるなら150万円以上」という二段構えが実務的です。
2026年以降、さらに年収の壁は動きますか?
動く見込みです。2026年10月の106万円の壁撤廃、2027年以降の基礎控除の恒久引き上げ(62万円)、2029年の個人事業所への社保拡大など、継続的に改正が予定されています。最新情報は国税庁・厚生労働省の公式発表でご確認ください。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 年収の壁は税制の壁と社保の壁の2系統に分類
- 所得税の壁は令和7年度税制改正で103万円→123万円に
- 配偶者特別控除の満額ボーダーは150万円→160万円に
- 大学生等の特定扶養親族は150万円まで・特定親族特別控除で188万円まで
- 社保の106万円の壁は2026年10月に撤廃、130万円の壁は継続
- 住民税の壁(100万円程度)は税制改正では動いていない
- 120万円と130万円で逆転現象(働き損)が発生
- 扶養を外れるなら年収145〜150万円以上を目指すべき
- 企業の配偶者手当は就業規則の改定で対応
- 2026〜2029年にかけて改正が段階的に進む