社会保険料の計算方法|標準報酬月額の決定・等級表の読み方

社会保険料の計算方法|標準報酬月額の決定・等級表の読み方
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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社会保険料の計算方法を、人事担当者・経理担当者向けに完全ガイドします。標準報酬月額の決定方法、健康保険50等級・厚生年金32等級の等級表の読み方、介護保険料率(2026年4月から1.62%)、労使折半のルール、新設の子ども・子育て支援金まで最新情報で整理します。給与計算の実務で直接使える早見表付き。

🏆 結論:標準報酬月額×保険料率で計算、労使折半が原則

社会保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算します。標準報酬月額は健康保険50等級(1等級58,000円〜50等級139万円)・厚生年金32等級(1等級88,000円〜32等級65万円)に区分されています。保険料は労使折半(労災保険を除く)です。2026年4月分からは子ども・子育て支援金(健康保険料に上乗せ)が新設されます。介護保険料(40歳以上65歳未満)は協会けんぽで1.62%(令和8年度)です。

社会保険料の計算式の基本

社会保険料は、健康保険法第160条・厚生年金保険法第81条により、以下の計算式で算定されます。

参考: 日本年金機構「厚生年金保険料額表」

基本計算式

📐 社会保険料の基本計算式

月額保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率
賞与保険料 = 標準賞与額 × 保険料率
従業員負担額 = 月額保険料 × 1/2(労使折半)

保険料計算に使う5つの要素

標準報酬月額とは|等級表の仕組み

標準報酬月額は、毎月の給与を一定の範囲で区分した等級表の値です。給与額そのものではなく、等級ごとに決められた金額を用いて保険料を計算します。

健康保険の等級区分(50段階)

健康保険の標準報酬月額は、1等級5万8,000円から50等級139万円まで50段階に区分されています。等級ごとの金額は健康保険法施行令別表で定められています。

等級 標準報酬月額 報酬月額の範囲
1等級58,000円〜63,000円
5等級88,000円83,000〜93,000円
17等級200,000円195,000〜210,000円
22等級300,000円290,000〜310,000円
32等級(厚年上限)650,000円635,000〜665,000円
50等級(健保上限)1,390,000円1,355,000円以上

厚生年金の等級区分(32段階)

厚生年金保険の標準報酬月額は、1等級8万8,000円から32等級65万円まで32段階に区分されています。健康保険より等級数が少なく、上限が低めに設定されています。

💡 実務のポイント

月収65万円を超える従業員は、厚生年金の等級が32等級で頭打ちとなり、それ以上給与が上がっても厚生年金保険料は増えません。一方、健康保険は50等級まであるため、月収139万円を超える役員クラスでは健康保険料だけが上がり続けることになります。

標準報酬月額の決定方法|4つのタイミング

標準報酬月額は、以下の4つのタイミングで決定・改定されます。

決定・改定の4タイミング

タイミング 届出 適用期間
資格取得時決定被保険者資格取得届入社後の最初の定時決定まで
定時決定(毎年7月)算定基礎届その年の9月〜翌年8月
随時改定月額変更届固定給2等級変動時
育児休業等終了時改定育児休業等終了時報酬月額変更届育休復帰後の特例

定時決定(算定基礎届)の計算ルール

毎年7月1日時点で在籍する被保険者について、4月・5月・6月の3ヶ月間の報酬月額の平均を算出し、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額を決定します。計算ルールは以下のとおりです。

随時改定(月額変更届)の3要件

固定給が変動した場合、以下の3要件をすべて満たすと随時改定の対象となります(健康保険法第43条)。

令和8年度(2026年4月)の保険料率一覧

2026年4月からの社会保険料率を、東京都の協会けんぽを例に整理します。

協会けんぽ(東京支部)の保険料率

保険の種類 保険料率(労使合計) 労働者負担 事業主負担
健康保険(東京・協会けんぽ)9.91%4.955%4.955%
介護保険(40歳以上65歳未満)1.62%0.81%0.81%
厚生年金保険18.3%9.15%9.15%
雇用保険(一般)1.55%0.60%0.95%
労災保険(業種平均)0.25〜8.8%0%全額
子ども・子育て支援金(新設)健保料率に上乗せ折半折半

※ 保険料率は都道府県・健保組合・業種により異なります。最新値は協会けんぽ公式でご確認ください。

📢 2026年4月新設:子ども・子育て支援金

2026年4月納付分から、健康保険料に「子ども・子育て支援金」が上乗せされて徴収されます。用途は児童手当・育児休業給付などの子育て支援制度の財源です。労使折半のルールは健康保険料と同じです。

月額給与の社会保険料計算の実例

実際の給与額で、社会保険料を計算してみます。東京都の協会けんぽを前提とします。

月給30万円・40歳未満の場合

🧮 月給30万円のケース

・標準報酬月額:300,000円(22等級)
・健康保険料(労使合計):300,000 × 9.91% = 29,730円
・厚生年金保険料(労使合計):300,000 × 18.3% = 54,900円
・小計(労使合計):84,630円
従業員負担:42,315円(労使折半)
会社負担:42,315円(労使折半)
※ 雇用保険料は労働者0.60%(1,800円)、事業主0.95%(2,850円)別途

月給50万円・45歳の場合(介護保険料対象)

🧮 月給50万円のケース(40歳以上)

・標準報酬月額:500,000円(27等級)
・健康保険料(労使合計):500,000 × 9.91% = 49,550円
・介護保険料(労使合計):500,000 × 1.62% = 8,100円
・厚生年金保険料(労使合計):500,000 × 18.3% = 91,500円
・小計(労使合計):149,150円
従業員負担:74,575円(労使折半)
会社負担:74,575円(労使折半)

介護保険料の計算ルール|40歳以上65歳未満

介護保険料は、介護保険法第150条により、40歳以上65歳未満の被保険者(第2号被保険者)に課される保険料です。

介護保険料の計算式

📐 介護保険料の計算式

介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率(令和8年度1.62%)
従業員負担 = 介護保険料 × 1/2 = 標準報酬月額 × 0.81%

介護保険料率の推移

介護保険料率は、介護給付費の増加に伴い年々上昇傾向にあります。協会けんぽの直近推移は以下のとおりです。

参考: 厚生労働省「介護保険料について」

年度 介護保険料率
令和5年度1.82%
令和6年度1.60%
令和7年度1.59%
令和8年度1.62%

資格取得・喪失のタイミング

介護保険料は、40歳の誕生日の前日を含む月から徴収開始、65歳の誕生日の前日を含む月から徴収終了となります。例えば4月1日生まれの人は、3月31日を含む3月分から介護保険料が発生します。

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賞与の社会保険料計算|標準賞与額のルール

賞与(賞与・ボーナス・一時金)にも社会保険料がかかります。月額給与とは別の「標準賞与額」を用いて計算します。

標準賞与額の計算

賞与支給額から1,000円未満を切り捨てた金額を標準賞与額とします。月額給与のような等級区分はありません。

上限額(健康保険・厚生年金で異なる)

保険 標準賞与額の上限 根拠
健康保険年間累計573万円健康保険法第45条
厚生年金保険1回あたり150万円厚生年金保険法第24条の4

賞与社会保険料の計算実例

賞与100万円の場合(40歳未満・協会けんぽ東京)の計算は以下のとおりです。

🧮 賞与100万円のケース

・標準賞与額:1,000,000円(1,000円未満切捨)
・健康保険料(労使合計):1,000,000 × 9.91% = 99,100円
・厚生年金保険料(労使合計):1,000,000 × 18.3% = 183,000円
・小計(労使合計):282,100円
従業員負担:141,050円(労使折半)
会社負担:141,050円(労使折半)

報酬の対象になるもの・ならないもの

標準報酬月額の計算に含める「報酬」の範囲は、健康保険法第3条第5項に定められています。

報酬に含まれるもの

報酬に含まれないもの

⚠️ 注意:通勤手当の取扱い

通勤手当は、所得税では月額15万円まで非課税ですが、社会保険料の計算では金額にかかわらず全額が報酬に含まれます。年収ベースで見ると通勤手当分だけ標準報酬月額が高くなり、保険料負担も増えることに注意が必要です。

労使折半のルールと納付方法

社会保険料は原則として労使折半(健康保険法第161条、厚生年金保険法第82条)です。ただし、いくつかの例外もあります。

折半のルール

保険 労使の負担比率
健康保険50:50(労使折半)
介護保険50:50(労使折半)
厚生年金保険50:50(労使折半)
雇用保険(一般)労働者0.60% :事業主0.95%
労災保険事業主が100%負担

納付方法と期限

社会保険料(健保・厚年・介護)は、事業主が従業員負担分を給与から天引きし、事業主負担分と合算して翌月末までに年金事務所に納付します。例えば4月分の保険料は5月31日までに納付します。

給与からの控除タイミング

保険料の控除タイミングは、事業所により「当月徴収」か「翌月徴収」のいずれかが選べます。どちらを採用するかは就業規則で定める必要があります。

給与計算の実務フロー

社会保険料計算を含む給与計算の実務フローを整理します。

月次給与計算の5ステップ

弊所のクラウド給与実務

弊所が関与する顧問先の多くは、マネーフォワードクラウド給与またはfreee人事労務を利用しており、保険料率の更新は4月・10月の料率改定時に自動で反映されます。手計算から移行した顧問先では、年間の給与計算工数が約30〜40%削減され、年間20人規模の会社で月5〜6時間の時短効果が出た事例があります。

社会保険料の損金算入と税務処理

事業主負担分の社会保険料は、法人税・所得税で損金(必要経費)算入できます。

法人税での処理

事業主負担分は、法人税法第22条第3項の規定により、損金の額に算入されます。勘定科目は「法定福利費」を使います。

所得税での処理

従業員負担分として給与から天引きした社会保険料は、年末調整で「社会保険料控除」として所得控除の対象となります(所得税法第74条)。会社は給与支払報告書に社会保険料控除額を記載します。

💡 実務のポイント

弊所が顧問する小売業の決算で、法定福利費(事業主負担分)が年間1,800万円、これに対応する従業員負担分の社会保険料控除(年末調整)を合わせると、給与関係の損金算入額は年間5,400万円規模になるケースがありました。給与総額1億2,000万円の会社で、社保関連は全社経費の約15%を占めます。

関連する社会保険・労務テーマ

社会保険料計算は他の論点と連動します。以下も併せてご覧ください。

社会保険制度の全体像は社会保険とは?制度の全体像と加入義務で、適用拡大の実務は社会保険の適用拡大(従業員51人以上)の実務対応ガイド、106万円の壁撤廃は106万円の壁撤廃と企業規模要件の段階的撤廃、年収の壁全体像は年収の壁を完全整理で解説しています。算定基礎届・月額変更届の詳細は算定基礎届と月額変更届の実務ガイドで詳述予定です。

よくある質問

標準報酬月額はどのように確認できますか?
年1回、6月下旬頃に日本年金機構から「標準報酬月額決定通知書」が事業所に送付されます。これが9月以降の標準報酬月額です。また、算定基礎届の控えや、月額変更届の控えでも確認できます。従業員は「ねんきんネット」で自分の標準報酬月額を確認することも可能です。
保険料率はどこで確認できますか?
健康保険・介護保険は協会けんぽ公式サイトの保険料額表で、厚生年金保険は日本年金機構公式サイトで確認できます。毎年3月頃に翌年度の料率が発表されます。協会けんぽは都道府県支部ごとに料率が異なるため、事業所所在地の支部の料率を参照してください。
40歳になった月から介護保険料が発生するのですか?
正確には「40歳の誕生日の前日を含む月」から介護保険料の徴収が始まります。例えば4月1日生まれの人は3月分から、4月2日生まれの人は4月分から発生します。65歳到達で徴収終了となるのも同じロジックです。
賞与の社会保険料計算で上限を超えた場合はどうなりますか?
健康保険は年間累計573万円を超えた部分、厚生年金は1回150万円を超えた部分は標準賞与額に含めません。例えば年2回の賞与で各200万円ずつ支給する場合、厚生年金は各150万円で頭打ちとなり、健康保険は累計400万円なので全額が対象となります。
通勤手当も社会保険料の計算対象に含まれますか?
はい、含まれます。所得税では月額15万円まで非課税ですが、社会保険では金額にかかわらず全額が報酬に含まれます。遠距離通勤者は通勤手当分だけ標準報酬月額が高くなります。
子ども・子育て支援金は新たな負担増ですか?
2026年4月から健康保険料に上乗せされて徴収される新設の保険料です。料率は未確定ですが、労使折半のルールは健康保険料と同じです。負担増となりますが、児童手当・育児休業給付の財源として使われます。
当月徴収と翌月徴収はどちらが正しいのですか?
法律上はどちらも可能で、就業規則で定めれば問題ありません。ただし、入社月と退職月の処理が異なります。翌月徴収を採用する事業所が多く、給与計算ソフトの初期設定も翌月徴収が一般的です。当月徴収から翌月徴収への変更時は二重徴収に注意が必要です。
役員も標準報酬月額の対象ですか?
はい、役員報酬も社会保険の対象です。代表取締役も原則として社会保険に加入します。ただし非常勤役員や月報酬が著しく低い役員は、実態として使用関係がないと判断されれば加入対象外となる場合があります。標準報酬月額の上限(健保139万円)があるため、月給300万円の役員でも標準報酬月額は139万円で頭打ちとなります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 社会保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 × 1/2(労使折半)
  • 健康保険は50等級(58,000円〜139万円)、厚生年金は32等級(88,000円〜65万円)
  • 標準報酬月額は資格取得時・定時決定・随時改定・育休後の4タイミングで決定
  • 定時決定は4〜6月の平均報酬で9月〜翌年8月分を決定
  • 随時改定は固定給2等級以上変動の場合に適用
  • 介護保険料(令和8年度)は1.62%で40歳〜65歳未満が対象
  • 賞与は標準賞与額×保険料率(健保年573万円・厚年1回150万円上限)
  • 2026年4月から子ども・子育て支援金が新設
  • 通勤手当は社保の報酬に含まれる(税務は非課税でも社保は対象)
  • 事業主負担分は損金算入、従業員負担分は年末調整で社会保険料控除