年金にかかる税金|公的年金等の課税関係と確定申告の要否

年金にかかる税金|公的年金等の課税関係と確定申告の要否
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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年金に税金がかかるのか不安な方に向けて、年金の種類別の課税関係・公的年金等控除額の計算方法・確定申告の要否を完全ガイドします。この記事を読めば、自分の年金収入に対する税金を計算し、確定申告が必要かどうかを判断できます。

🏆 結論:年金収入400万円以下+他の所得20万円以下なら確定申告不要

老齢年金は「雑所得」として課税対象ですが、障害年金と遺族年金は非課税です。公的年金等の収入が年間400万円以下で、かつ公的年金等以外の所得が20万円以下であれば「確定申告不要制度」が適用され、確定申告は不要です。ただし、医療費控除やふるさと納税の控除を受ける場合は、確定申告をした方が得になるケースがあります。

年金の種類と課税関係【6パターン判定表】

「年金」と一口に言っても、種類によって課税関係が大きく異なります。まずは自分が受け取っている年金がどのカテゴリーに該当するかを確認しましょう。

年金の種類 課税 所得区分 適用される控除
老齢年金(国民年金・厚生年金)課税雑所得公的年金等控除
障害年金非課税
遺族年金非課税
企業年金(確定給付・確定拠出)課税雑所得(公的年金等)公的年金等控除
個人年金保険(生命保険契約等)課税雑所得(公的年金等以外)必要経費(払込保険料)を控除
iDeCo(年金受取)課税雑所得(公的年金等)公的年金等控除

参考: 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」

🔷 社労士の視点:障害年金・遺族年金は非課税

障害年金と遺族年金は所得税法第9条により非課税です。確定申告書に記載する必要もなく、他の所得の計算にも影響しません。ただし、障害年金・遺族年金を受給しながらアルバイトなどで収入がある場合、その給与所得には通常どおり課税されます。

⚠️ 注意:個人年金保険は「公的年金等」ではない

生命保険会社の個人年金保険から受け取る年金は「公的年金等以外の雑所得」に分類されます。公的年金等控除は適用されず、「年金収入 − 払込保険料相当額」が所得になります。確定申告不要制度の「公的年金等以外の所得20万円以下」の判定にも影響するため、注意が必要です。

公的年金等控除額の計算方法【早見表】

公的年金等の雑所得は「公的年金等の収入金額 − 公的年金等控除額」で計算します。控除額は受給者の年齢(65歳未満/65歳以上)と年金収入額によって異なります。

65歳以上の公的年金等控除額

公的年金等の収入金額 公的年金等控除額
(年金以外の所得1,000万円以下)
330万円以下110万円
330万円超〜410万円以下収入金額×25%+27.5万円
410万円超〜770万円以下収入金額×15%+68.5万円
770万円超〜1,000万円以下収入金額×5%+145.5万円
1,000万円超195.5万円(上限)

65歳未満の公的年金等控除額

公的年金等の収入金額 公的年金等控除額
(年金以外の所得1,000万円以下)
130万円以下60万円
130万円超〜410万円以下収入金額×25%+27.5万円
410万円超〜770万円以下収入金額×15%+68.5万円
770万円超〜1,000万円以下収入金額×5%+145.5万円
1,000万円超195.5万円(上限)

65歳以上の方は年金収入330万円以下なら控除額が110万円となり、65歳未満の方(60万円)よりも50万円大きくなります。この差は、高齢者の生活を考慮した制度設計です。

年金収入にかかる税金のシミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 65歳以上の単身者
  • 収入は公的年金のみ(年金以外の所得なし)
  • 基礎控除48万円+社会保険料控除(年金収入の約10%と仮定)のみ考慮
  • 住民税は均等割5,000円+所得割10%で概算
年金収入 雑所得 所得税 住民税 手取り目安
150万円40万円0円約0.5万円約135万円
200万円90万円約1.1万円約2.7万円約176万円
250万円140万円約3.4万円約5.7万円約216万円
300万円190万円約6.2万円約9.0万円約255万円

※概算値です。社会保険料や控除の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

65歳以上で年金収入が158万円以下であれば、公的年金等控除110万円+基礎控除48万円で課税所得がゼロになり、所得税はかかりません。所得控除の全体像は「所得控除とは?15種類の一覧表と適用条件を完全ガイド」をご覧ください。

確定申告不要制度の判定フロー

年金受給者の確定申告が必要かどうかは、以下のフローで判定できます。

段階 判定項目 Yes No
1受け取っている年金はすべて源泉徴収の対象か?→ 2へ申告必要
2公的年金等の収入合計は400万円以下か?→ 3へ申告必要
3公的年金等以外の所得は20万円以下か?→ 4へ申告必要
4医療費控除・ふるさと納税等で還付を受けたいか?申告した方が得申告不要

💡 実務のポイント:「申告不要」でも申告した方が得なケース

確定申告不要制度の対象であっても、源泉徴収された税金が実際の税額より多い場合は、確定申告をすることで還付を受けられます。特に、年金から源泉徴収されている方で、扶養親族等申告書を提出していない方は、各種控除が適用されていないため、確定申告で多額の還付が出ることがあります。確定申告の基本的な手続きは「確定申告の基礎知識」をご覧ください。

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確定申告をした方が得になる6つのケース

確定申告不要制度の対象者であっても、以下のケースでは確定申告をすることで税金が還付される可能性があります。

ケース 内容 還付の目安
医療費控除年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合超過分×所得税率(5〜10%程度)
生命保険料控除源泉徴収票に反映されていない保険料がある場合最大12万円の控除
ふるさと納税ワンストップ特例を使わずに寄付した場合寄付金額−2,000円が控除
住宅ローン控除住宅ローンの残債がある場合ローン残高の0.7%が税額控除
扶養親族等申告書の未提出年金の源泉徴収で各種控除が適用されていない場合配偶者控除・扶養控除分の還付
災害・盗難等災害や盗難で損害を受けた場合(雑損控除)損害額に応じた控除

💡 実務のポイント:還付申告は5年以内なら遡れる

過去に確定申告をしていなかった年金受給者の方でも、還付申告(確定申告)は翌年1月1日から5年間提出できます。「医療費が多かった年があったのに申告しなかった」という方は、5年以内であれば遡って還付を受けられます。

年金をもらいながら働く場合の税金

定年後もパート・アルバイトや再雇用で働きながら年金を受け取る方は増えています。この場合、年金の雑所得と給与所得の両方に課税されます。

年金+給与の確定申告要否

給与所得がある場合、「公的年金等以外の所得が20万円以下」の条件に該当するかどうかで確定申告の要否が決まります。給与収入が85万円以下(給与所得控除65万円を引くと所得20万円以下)であれば、確定申告不要制度の対象となります。

ただし、給与から源泉徴収されている税金と、年金から源泉徴収されている税金は別々に計算されているため、確定申告をすることで税金の精算が行われ、還付される場合もあります。年末調整と確定申告の関係について詳しくは「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」をご確認ください。

在職老齢年金による年金減額

65歳以上で厚生年金に加入しながら働いている場合、給与(標準報酬月額)と年金(老齢厚生年金の基本月額)の合計が50万円を超えると、超えた分の半額が年金から減額されます。これは「在職老齢年金制度」によるもので、税金の問題ではなく年金制度の問題です。

個人年金保険の税金と公的年金との違い

生命保険会社の個人年金保険(民間の年金保険)は、公的年金等とは異なる課税ルールが適用されます。

比較項目 公的年金等 個人年金保険
所得区分雑所得(公的年金等)雑所得(公的年金等以外)
控除方法公的年金等控除必要経費(払込保険料)を控除
確定申告不要制度400万円以下+他の所得20万円以下で不要「公的年金等以外の所得」として20万円判定に影響
源泉徴収日本年金機構等が源泉徴収生命保険会社が源泉徴収(年金額−必要経費が25万円以上の場合)

個人年金保険の所得が年間20万円を超えると、公的年金等の収入が400万円以下でも確定申告が必要になります。副業としての所得計算については「副業の確定申告|20万円ルールの正しい理解と申告方法」もご参照ください。

年金の源泉徴収と扶養親族等申告書

老齢年金は支給時に所得税が源泉徴収されます。源泉徴収税額は、年金額から一定の控除額を差し引いた金額に5.105%(復興特別所得税込み)を乗じて算出されます。

扶養親族等申告書の重要性

日本年金機構から毎年送付される「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出すると、配偶者控除・扶養控除・障害者控除などが源泉徴収の段階で適用され、天引きされる税金が少なくなります。

提出しない場合、これらの控除が適用されずに多めに源泉徴収されてしまいます。この場合でも確定申告をすれば還付を受けられますが、手間がかかるため、申告書は必ず提出しましょう。

🔷 社労士の視点:年金からの社会保険料天引き

年金からは所得税だけでなく、国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)と介護保険料も特別徴収(天引き)されます。天引きされた社会保険料は、源泉徴収の際に社会保険料控除として自動的に適用されます。青色申告の方は「青色申告のメリットと申請方法」もご確認ください。

年金受給者がよく間違える税務上のポイント

間違い 正しい取扱い 影響
障害年金・遺族年金にも税金がかかると思っている障害年金と遺族年金は所得税法上非課税。確定申告書への記載も不要不必要な申告をしてしまう
確定申告不要=住民税も不要と思っている所得税の確定申告不要制度は住民税には適用されない。住民税は別途申告が必要な場合あり住民税の申告漏れ
個人年金保険の年金を公的年金等に含めている個人年金保険は「公的年金等以外の雑所得」。20万円超なら確定申告必要確定申告漏れの可能性
扶養親族等申告書を出さなくても同じと思っている未提出だと各種控除が源泉徴収に反映されず、多めに天引きされる不必要な税金の前払い
医療費が多くても確定申告しない医療費控除は確定申告でしか受けられない。年金受給者は還付の可能性大還付金の取り逃し

よくある質問(FAQ)

年金はいくらから税金がかかりますか?
65歳以上の場合、年金収入が158万円以下であれば、公的年金等控除110万円+基礎控除48万円で課税所得がゼロになり、所得税はかかりません。65歳未満の場合は108万円以下が目安です。ただし、住民税は基準が異なるため、所得税がゼロでも住民税がかかる場合があります。
年金400万円以下なら確定申告は絶対不要ですか?
「確定申告不要制度」が適用されるには、公的年金等の収入が400万円以下であることに加えて、公的年金等以外の所得が20万円以下であることも必要です。パート収入や個人年金保険の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。また、確定申告不要の対象であっても、医療費控除等を受けるために任意で申告することは可能です。
遺族年金をもらっていますが確定申告は必要ですか?
遺族年金は非課税のため、確定申告は不要です。所得としても計算されないため、他の所得がなければ所得税はゼロです。ただし、遺族年金以外にパート収入や老齢年金がある場合は、それらについて確定申告の要否を判断する必要があります。
年金をもらいながらパートで働いています。確定申告は必要ですか?
年金収入が400万円以下で、パートの給与所得が20万円以下(給与収入で85万円以下)であれば確定申告は不要です。給与所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。ただし、パート先で年末調整を受けている場合でも、年金の源泉徴収との精算のために確定申告をした方が有利になるケースがあります。
企業年金(確定給付年金やiDeCo)は公的年金等に含まれますか?
はい、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金(DC)、iDeCo(個人型確定拠出年金)の年金受取はすべて「公的年金等」に含まれます。国民年金・厚生年金と合算して、公的年金等控除や確定申告不要制度の判定を行います。
個人年金保険の年金と公的年金は同じ扱いですか?
違います。生命保険会社の個人年金保険は「公的年金等以外の雑所得」に分類されます。公的年金等控除は適用されず、「年金収入 − 払込保険料」で所得を計算します。また、確定申告不要制度の「公的年金等以外の所得20万円以下」の判定に含まれるため、この所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
年金受給者でもふるさと納税はできますか?
できます。ただし、ふるさと納税の控除上限額は課税所得に基づいて決まるため、年金受給者は給与所得者より控除上限額が低くなる傾向があります。また、確定申告不要制度を利用している方がふるさと納税の控除を受けるには、確定申告が必要です(ワンストップ特例は年末調整をしない年金受給者には使えない場合があります)。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 老齢年金は雑所得として課税。障害年金と遺族年金は非課税
  • 公的年金等控除は65歳以上で最低110万円、65歳未満で最低60万円
  • 年金収入400万円以下+他の所得20万円以下なら確定申告不要制度の対象
  • 個人年金保険は「公的年金等以外の雑所得」で、20万円超なら確定申告必要
  • 確定申告不要でも、医療費控除やふるさと納税で申告すると還付される場合あり
  • 扶養親族等申告書は必ず提出。未提出だと多めに源泉徴収される
  • 住民税の申告は所得税の確定申告不要制度とは別。注意が必要

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