公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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競馬の払戻金に税金がかかるか不安な方に向けて、一時所得と雑所得の判断基準を最高裁判例をもとに解説します。この記事を読めば、自分の馬券購入が一時所得か雑所得かを判定し、正しく確定申告できるようになります。


競馬の払戻金に税金がかかるか不安な方に向けて、一時所得と雑所得の判断基準を最高裁判例をもとに解説します。この記事を読めば、自分の馬券購入が一時所得か雑所得かを判定し、正しく確定申告できるようになります。
🏆 結論:一般的な競馬愛好家の払戻金は「一時所得」
馬券の払戻金は原則として一時所得に分類されます。雑所得になるのは、自動購入ソフトや独自のノウハウで年間を通じて全レースに網羅的に投資し、回収率100%超を恒常的に達成している極めて例外的なケースだけです。一般的な競馬愛好家は一時所得として申告し、外れ馬券は経費にできません。
競馬の馬券の払戻金は、所得税法上の課税対象です。宝くじは非課税ですが、馬券・競輪・競艇・オートレースの払戻金は課税されます。
所得税法第34条第1項は、一時所得を「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であって、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」と定義しています。馬券の払戻金は、臨時的・偶発的な収入であるため、原則として一時所得に該当します。
所得税基本通達34-1の(2)でも、「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)」を一時所得の例として挙げています。
会社員(給与所得者)の場合、馬券の払戻金を含む一時所得の金額が年間50万円以下であれば、特別控除額の範囲内のため課税所得が発生しません。さらに、その他の所得(副業の雑所得など)との合計が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
💡 実務のポイント:「収入を得るために支出した金額」の範囲
一時所得の場合、経費として控除できるのは「当たり馬券の購入金額」だけです。外れ馬券の購入代金は控除できません。これが雑所得との最大の違いであり、多くの競馬ファンが頭を悩ませるポイントです。たとえば年間100万円分の馬券を買い、150万円の払戻金を得た場合でも、一時所得の計算では当たり馬券分(例:5万円)しか差し引けません。
一時所得の金額は、以下の計算式で算出します。
一時所得の金額 = 総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最大50万円)
さらに、一時所得は2分の1課税が適用されます。つまり、算出した一時所得の金額の半分だけが他の所得と合算されます。
📐 シミュレーション前提条件
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| ①総収入金額(払戻金の合計) | 158万円 |
| ②収入を得るために支出した金額(当たり馬券のみ) | 3万5,000円 |
| ③特別控除額 | 50万円 |
| ④一時所得の金額(①−②−③) | 104万5,000円 |
| ⑤課税対象額(④×1/2) | 52万2,500円 |
年間80万円の外れ馬券は一切考慮されず、実際の収支(158万円−83万5,000円=74万5,000円の利益)よりも大きな104万5,000円が課税所得として計算されます。一時所得についてより詳しくは「一時所得とは?計算方法・2分の1課税・確定申告の要否」をご覧ください。
もし馬券の払戻金が雑所得に該当すれば、外れ馬券の購入代金も含めた全馬券代を必要経費として控除できます。
雑所得の金額 = 総収入金額 − 必要経費(当たり馬券+外れ馬券の全購入代金)
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | パターンA 購入100万円 払戻200万円 |
パターンB 購入500万円 払戻800万円 |
パターンC 購入1,000万円 払戻2,000万円 |
|---|---|---|---|
| 【一時所得の場合】外れ馬券は経費にできない | |||
| 当たり馬券代(仮に購入額の5%) | 5万円 | 25万円 | 50万円 |
| 一時所得の金額 | 145万円 | 725万円 | 1,900万円 |
| 課税所得に加算される額(×1/2) | 72.5万円 | 362.5万円 | 950万円 |
| 追加の税負担(概算) | 約21.8万円 | 約130.4万円 | 約380.0万円 |
| 【雑所得の場合】外れ馬券も経費にできる | |||
| 雑所得の金額(全馬券代を控除) | 100万円 | 300万円 | 1,000万円 |
| 追加の税負担(概算) | 約30万円 | 約99万円 | 約330万円 |
※概算値です。当たり馬券代の比率により大きく変動します。正確な計算は税理士にご相談ください。
⚠️ 注意:パターンAでは一時所得の方が有利
少額購入で大きな当たりを出したケースでは、一時所得の方が税負担が軽くなることがあります。一時所得には50万円の特別控除と2分の1課税があるためです。雑所得が有利になるのは「大量の外れ馬券がある」ケースに限られます。そもそも雑所得に該当するかどうかは後述の判定基準で決まるため、有利不利で選べるものではありません。
馬券の払戻金が一時所得か雑所得かは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に該当するかどうかで判断されます。最高裁は2つの判決でこの基準を示しました。
最高裁平成27年3月10日判決(大阪事件)は、以下の要素を「総合考慮」して判断するとしています。
| 判定要素 | 雑所得と認められた事例 | 一時所得と判断された事例 |
|---|---|---|
| ①行為の期間 | 5〜6年間にわたり継続 | 数年程度、断続的 |
| ②回数・頻度 | ほぼ全レースで購入(年間数千回) | 選んだレースのみ購入 |
| ③購入の態様 | ソフトや独自ノウハウで網羅的に購入。個々のレースの的中に着目しない | レースごとに予想して購入(一般的な予想スタイル) |
| ④利益の規模 | 年間数千万〜数億円規模の馬券購入、多額の利益を恒常的に上げる | 一般的な趣味の範囲の金額 |
| ⑤回収率 | 期間総体として100%を超えることが客観的に明らか | 年によって黒字・赤字がまちまち |
| 段階 | 判定項目 | Yes | No |
|---|---|---|---|
| 1 | 自動購入ソフトまたは独自の定量的ノウハウを使用しているか? | → 2へ | 一時所得 |
| 2 | 年間を通じてほぼ全レースで馬券を網羅的に購入しているか? | → 3へ | 一時所得 |
| 3 | 数年以上にわたり継続的に購入しているか? | → 4へ | 一時所得 |
| 4 | 回収率が期間総体として100%を超えていることが客観的に明らかか? | → 5へ | 一時所得 |
| 5 | 一連の馬券購入が「一体の経済活動」と客観的に認められるか? | 雑所得 | 一時所得 |
💡 実務のポイント:雑所得と認められるのは極めて例外的
実務でこの相談を受けるケースでは、ほぼ全員が一時所得に該当します。最高裁が雑所得と認めた事例は、年間数億円〜数十億円規模の馬券を購入し、自動購入ソフトや独自の定量分析で全レースに投資するという、一般の競馬ファンとはまったく次元の異なるケースです。「自分なりに研究して毎週買っている」程度では雑所得にはなりません。
馬券の払戻金の所得区分をめぐって、3つの重要な最高裁判決・決定があります。判断が分かれた理由を理解することが、自分のケースを判定する鍵です。
| 比較項目 | 大阪事件(H27.3.10) | 札幌事件(H29.12.15) | 東京事件(H29.12.20) |
|---|---|---|---|
| 購入方法 | 自動購入ソフト使用。独自の条件設定と計算式に基づく | 独自のノウハウで着順予想。ソフト不使用だが定量的分析 | 馬主として独自予想。ソフト不使用 |
| 購入規模 | 3年間で約28億7,000万円 | 6年間で約72億7,000万円 | 3年間で約1億2,800万円 |
| 利益規模 | 3年間で約1億5,000万円の利益 | 6年間で約5億7,000万円の利益 | 年単位の収支は赤字の年あり |
| 購入態様 | 個々の的中に着目しない網羅的購入 | レースごとに予想だが、ほぼ全レースで購入 | 選んだレースのみ購入 |
| 判決結果 | 雑所得 | 雑所得 | 一時所得 |
| 外れ馬券の経費性 | 認められた | 認められた | 認められず |
📊 公認会計士の視点:東京事件で一時所得とされた理由
東京事件の納税者は多額の給与所得があり、年単位の収支が赤字の年もありました。裁判所は「生活資金の大部分を給与所得で賄っており、馬券購入は所得の処分行為にすぎない」と判断しました。つまり、購入金額が大きいだけでは雑所得にはならず、「恒常的に利益を上げている」ことが不可欠です。
外れ馬券を経費にできるかどうかは、所得区分によって決まります。
| 所得区分 | 控除できる馬券代 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一時所得 | 当たり馬券の購入金額のみ | 所得税法第34条第2項「収入を得るために支出した金額」 |
| 雑所得 | 当たり馬券+外れ馬券の全購入金額 | 所得税法第37条第1項「必要経費」 |
一時所得の「収入を得るために支出した金額」は、その収入に直接対応する支出に限定されます。外れ馬券は収入(払戻金)を生み出していないため、この「直接対応」の要件を満たさず、経費にできません。
一方、雑所得の「必要経費」は、収入を得るために必要な経費全般を含みます。最高裁は「一連の馬券購入が一体の経済活動」であるケースでは、外れ馬券も当たり馬券を得るために不可欠な支出として必要経費に含まれると判断しました。
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鮎澤パートナーズに相談する競馬以外のギャンブルや宝くじの税金はどうなるのでしょうか。一覧表で整理します。
| 種類 | 所得区分 | 課税 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 競馬(馬券) | 一時所得(例外的に雑所得) | ○ | 本記事で解説 |
| 競輪(車券) | 一時所得(例外的に雑所得) | ○ | 馬券と同じ取扱い |
| 競艇(舟券) | 一時所得(例外的に雑所得) | ○ | 馬券と同じ取扱い |
| オートレース | 一時所得(例外的に雑所得) | ○ | 馬券と同じ取扱い |
| 宝くじ | — | ×(非課税) | 当せん金付証票法第13条により非課税 |
| toto(スポーツ振興くじ) | — | ×(非課税) | スポーツ振興投票の実施等に関する法律第16条 |
| パチンコ・パチスロ | 一時所得 | ○ | 記録が残りにくく申告率は低い(違法ではない) |
確定申告書第一表の「収入金額等」の「一時」欄に払戻金の合計額を記入し、第二表の「所得の内訳」に「競馬払戻金」と記載します。具体的には以下の情報が必要です。
必要な記録は、開催日、開催場(中央/地方)、レース名、当たり馬券の購入金額、払戻金額です。国税庁のWebサイトで「公営競技の払戻金に係る所得の計算書」(Excel)が公開されていますので、そちらを利用すると便利です。
確定申告書第一表の「収入金額等」の「雑」欄に払戻金の合計額を、必要経費欄に全馬券の購入金額を記入します。雑所得として申告するには、前述の判定基準を満たしていることが大前提です。
雑所得で申告する場合、税務署から所得区分の根拠を問われる可能性が高いため、購入履歴(インターネット投票の履歴、購入ソフトのログなど)を証拠として保存しておくことが不可欠です。
💡 実務のポイント:WIN5やネット投票は記録が残る
近年のインターネット投票の普及により、JRAなどの主催者側に全購入履歴が残るようになりました。高額払戻金は支払調書が税務署に提出されるため、「バレないから申告しない」という考えは通用しません。特にWIN5で1,000万円超の高額当選があった場合は、確実に税務署に把握されます。確定申告の基本的な知識は「確定申告の基礎知識」をご覧ください。
| よくある間違い | 正しい取扱い | リスク |
|---|---|---|
| 毎週買っているから雑所得で申告できる | 頻繁に買っているだけでは雑所得にならない。網羅的購入+恒常的利益+一体の経済活動が必要 | 一時所得と否認され追徴課税+加算税 |
| 外れ馬券は全部経費にできる | 一時所得の場合、外れ馬券は経費にならない。当たり馬券の購入金額のみ控除可 | 過少申告加算税・延滞税 |
| 50万円以下の当たりは非課税だから記録不要 | 年間の一時所得の合計が50万円以下なら課税所得0だが、他の一時所得と合算される | 保険の満期金等との合算で超過する可能性 |
| 現金で買った窓口馬券はバレない | 高額払戻時に本人確認が行われるケースがある。申告義務は金額で決まり、支払方法は無関係 | 無申告加算税(最大20%)+延滞税 |
| 競馬で損をした年は給与と相殺できる | 一時所得の損失は他の所得と損益通算できない(所得税法第69条) | 誤った申告による過少申告加算税 |
馬券の払戻金と同様に、「一時所得か雑所得か」が論点になるケースとして、ストックオプションの行使益があります。両者を比較すると、所得区分の判定に共通する考え方が見えてきます。
| 比較項目 | 馬券の払戻金 | ストックオプション行使益 |
|---|---|---|
| 原則の所得区分 | 一時所得 | 給与所得(税制非適格SO)/ 譲渡所得(税制適格SO) |
| 雑所得になるケース | 営利を目的とする継続的行為に該当する場合 | 雇用関係に基づかないSOで、継続的な役務提供の対価の場合 |
| 共通する判定の視点 | 所得の発生が「臨時的・偶発的」か「継続的・恒常的」かが分水嶺。行為の態様を総合的に判断 | |
いずれのケースも、所得区分の判定は「一律のルール」ではなく「個別の事実関係に基づく総合判断」です。判断に迷う場合は税理士に相談することをおすすめします。副業の確定申告全般については「副業の確定申告|20万円ルールの正しい理解と申告方法」をご覧ください。
競馬を楽しみながら、確定申告で困らないために、以下のポイントを日頃から意識しましょう。
まず、当たり馬券の記録を残すことです。開催日、レース名、購入金額、払戻金額の4項目を記録しておきましょう。インターネット投票なら購入履歴が自動で残りますが、窓口購入の場合は自分で管理する必要があります。
次に、年間の払戻金の合計を定期的に確認することです。特別控除50万円を超えそうかどうかを把握しておくと、確定申告の要否を早めに判断できます。
そして、他の一時所得との合算を忘れないことです。生命保険の満期返戻金やふるさと納税の返礼品など、他の一時所得がある場合は合算して50万円を超えるかどうかを確認します。一時所得に該当するものの全体像は「一時所得とは?計算方法・2分の1課税・確定申告の要否」で確認できます。
所得控除を活用して税負担を軽減することも大切です。iDeCoやふるさと納税など、使える控除は最大限活用しましょう。所得控除の一覧は「所得控除とは?15種類の一覧表と適用条件を完全ガイド」をご覧ください。なお、事業として競馬を行っていると認められるケースでは青色申告も選択肢になります。青色申告の詳細は「青色申告のメリットと申請方法」をご参照ください。
📋 この記事のポイント
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