名義預金とは?相続税での認定リスクと対策を税理士が解説

名義預金とは?相続税での認定リスクと対策を税理士が解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「子どもや孫のために貯めてきたお金が、相続税の対象になるの?」とお悩みの方に向けて、名義預金の判断基準・認定された場合のペナルティ・具体的な対策を完全ガイドします。この記事を読めば、ご自身の預金が名義預金に該当するかを自己診断でき、必要な対策がわかります。

🏆 結論:名義預金は「名義」ではなく「実態」で判断される

名義預金とは、口座の名義人と実際のお金の持ち主が異なる預金のことです。税務調査で最も指摘が多い項目であり、認定されると本来の相続税に加えて過少申告加算税(10〜15%)や延滞税が課されます。意図的な隠蔽と判断されれば重加算税(35〜40%)が課されるリスクもあります。名義預金を防ぐためには、①贈与契約書の作成、②名義人本人による口座管理、③110万円超の場合の贈与税申告の3点を生前から徹底することが重要です。

名義預金とは?基本的なしくみと相続税との関係

名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人(出捐者)が異なる預金のことです。たとえば、父親が子どもの名義で開設した口座に自分のお金を入金し続けていた場合、その口座は名義上は子どものものですが、実質的には父親の財産とみなされます。

相続税法では、課税対象となる財産は「被相続人に帰属する財産」とされています。口座の名義が誰であるかではなく、そのお金が実質的に誰のものかが判断基準です。

名義預金が問題になる典型的なケース

実務で最も多いのは、以下の3つのパターンです。

パターン 具体例 リスク度
配偶者名義の預金専業主婦の妻名義の口座に、夫の給与から毎月10万円を入金。数十年で数千万円に🔴 高い
子・孫名義の預金祖父が孫に内緒で孫名義の口座を開設し、毎年100万円ずつ入金。通帳・印鑑は祖父が保管🔴 高い
へそくり生活費の余りを妻が自分名義の口座にこっそり貯蓄。夫が稼いだお金が原資🟡 中程度

💡 実務のポイント

相続税の税務調査で申告漏れを指摘される財産のうち、預貯金が占める割合は非常に高い傾向にあります。その多くが名義預金に関する指摘です。実務では、被相続人の口座だけでなく、配偶者・子・孫の口座まで金融機関に照会が入ることがほとんどです。「誰にも言っていないから大丈夫」は通用しません。

名義預金と生前贈与の違い

同じ「家族名義の口座にお金が入っている」状態でも、名義預金と生前贈与はまったく別物です。

比較項目 名義預金 生前贈与
贈与の意思あげる・もらうの合意なし双方の合意あり(贈与契約)
口座の管理者出捐者(親・祖父母)が管理受贈者(子・孫)本人が管理
名義人の認識口座の存在を知らないことももらったことを認識している
相続税との関係被相続人の相続財産として課税受贈者の固有財産(原則非課税)
時効時効なし(20年前でも課税対象)贈与税の時効は原則6年(悪質なら7年)

⚠️ 注意

名義預金には贈与税の時効が適用されません。「もう20年以上前のことだから時効でしょう」と考える方が多いのですが、名義預金はそもそも贈与が成立していないため、時効のカウントが始まりません。口座開設から何十年経っていても、相続発生時に全額が相続税の課税対象となります。

税務署が使う名義預金の判定基準(5要件)

名義預金かどうかの判定基準は、東京地裁平成20年10月17日判決で示された5つの要素が実務上のスタンダードです。税務調査官はこの5要件を念頭に置いて質問してきます。

No. 判定要件 名義預金と認定されやすい状況 名義人の固有財産と認められやすい状況
資金の出捐者被相続人の収入が原資。名義人に独自の収入源がない名義人自身の給与・事業収入・相続財産が原資
管理・運用の状況通帳・印鑑を被相続人が保管。入出金手続きも被相続人が実施名義人本人が通帳・印鑑を管理し、自由に入出金できる
利益の帰属者利息・運用益を被相続人の確定申告に含めていた利息・運用益を名義人が申告している
被相続人と名義人の関係同居の配偶者・未成年の子など、被相続人の管理下にある人物独立した成人。経済的に自立している
名義の経緯名義人が口座の存在を知らない。贈与契約書がない贈与契約書があり、名義人が贈与を認識している

💡 実務のポイント

この5要件は「総合判断」です。1つの要件だけで白黒がつくわけではありません。ただし、実務的には預金の種類によって重視される要件が異なります。普通預金の場合は②の管理状況が最重要視され、定期預金の場合は①の資金の出捐者が最重要視される傾向にあります。

名義預金の種類別に見る判定の重点ポイント

預金の種類 最重視される要件 理由
普通預金②管理・運用の状況日常的な入出金があるため、誰が実際に管理しているかが重要
定期預金①資金の出捐者入出金が少なく、原資がどこから出ているかが直接的な判断材料
配偶者名義の預金①出捐者+過去の収入歴配偶者の過去の収入・支出から固有財産の金額を算出して判定
子・孫名義の預金⑤名義の経緯(贈与の有無)贈与契約が成立しているかが分岐点

名義預金チェックリスト|自分の家族は大丈夫?

以下の10項目で、ご家族の預金が名義預金と認定されるリスクを自己診断してみましょう。1つでも当てはまれば注意が必要です。3つ以上該当する場合は早急に対策を検討すべきです。

No. チェック項目 該当する?
1家族名義の口座に自分(親・祖父母)のお金を入金している
2口座の通帳・印鑑・キャッシュカードを自分が保管している
3口座の名義人がその口座の存在を知らない
4贈与契約書を作成していない
5年間110万円を超える入金をしているが贈与税を申告していない
6口座の届出印が自分の口座と同じ印鑑である
7専業主婦(夫)名義の口座に数百万円以上の預金がある
8口座からの入出金手続き(ATM操作・窓口手続き)を自分が行っている
9「いつかあげよう」と思っているが、まだ本人に渡していない
10毎年同じ金額を定期的に入金している(定期贈与と疑われるリスクもあり)

📊 リスク判定の目安

  • 0個:現時点でリスクは低い。ただし今後の対策は引き続き必要
  • 1〜2個:注意が必要。該当項目から優先的に改善を
  • 3〜5個:名義預金と認定されるリスクが高い。早急に税理士に相談を
  • 6個以上:非常に高リスク。相続が発生する前に対策が必須

名義預金を認定された場合のペナルティと追徴税額シミュレーション

名義預金を相続税の申告に含めなかった場合、税務調査で指摘されると、本来の相続税に加えてペナルティが課されます。

ペナルティの種類

ペナルティ 税率 適用される場面
過少申告加算税10%(50万円超部分は15%)申告はしたが税額が少なかった場合
無申告加算税15%(50万円超部分は20%)そもそも申告をしていなかった場合
重加算税35%(無申告なら40%)意図的に財産を隠していたと判断された場合
延滞税年2.4%〜8.7%(年度による)納付が遅れた期間に応じて課税

名義預金の金額別追徴税額シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 法定相続人:配偶者+子2人の3人
  • 当初の申告済み遺産総額:8,000万円(名義預金は含まず)
  • 税務調査により名義預金が発覚し修正申告
  • 過少申告加算税を適用(意図的隠蔽でない前提)
  • 延滞税は申告期限から1年後に修正申告した想定
項目 名義預金500万円 名義預金1,000万円 名義預金3,000万円
追加の相続税額約50万円約100万円約375万円
過少申告加算税約5万円約12.5万円約48.7万円
延滞税(1年分概算)約1.2万円約2.4万円約9万円
合計追徴額約56.2万円約114.9万円約432.7万円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

⚠️ 重加算税が適用された場合

名義預金の存在を知りながら意図的に申告しなかった場合、重加算税(35%)が課されます。上記の名義預金3,000万円のケースでは、過少申告加算税48.7万円が重加算税に置き換わり約131万円となり、合計追徴額は約515万円に跳ね上がります。税務署が「意図的な隠蔽」と判断する基準は厳しく、名義預金の存在を知っていたのに申告書に含めなかっただけで適用されるケースもあります。

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税務調査で名義預金が発覚するパターン

税務署が名義預金を見つける方法は、想像以上に精緻です。実務で多い発覚パターンを整理します。

金融機関への一斉照会

税務署は相続税の調査にあたり、被相続人だけでなく配偶者・子・孫を含む親族全員の預金口座を金融機関に照会する権限を持っています。過去5〜10年分の入出金履歴を確認し、被相続人の口座からの出金と家族名義口座への入金が同日・同額で一致するパターンは、ほぼ確実に把握されます。

KSK(国税総合管理)システムによる分析

税務署は被相続人の過去の所得税申告、給与支払報告書などから生涯収入を推計し、申告された相続財産との乖離を分析します。「これだけ稼いでいたのに、相続財産が少なすぎる」という場合に調査が入りやすくなります。

税務調査で聞かれる質問の具体例

実務では、調査官から以下のような質問が投げかけられます。

質問内容 調査官の狙い
「お子さん名義の口座はいつ誰が開設しましたか?」⑤名義の経緯を確認
「この口座の通帳と印鑑はどこに保管していますか?」②管理状況を確認
「お子さんはこの口座の存在をご存知でしたか?」贈与の合意の有無を確認
「奥様のご収入はどのくらいありましたか?」①配偶者名義預金の出捐者を確認
「贈与契約書はありますか?贈与税の申告はしましたか?」贈与の証拠があるかを確認

💡 実務のポイント

税務調査は通常、相続税の申告期限から1〜2年後に実施されます。調査官は事前に金融機関からの情報を入手済みで、「答えを知った上で質問している」ケースがほとんどです。つじつまの合わない回答をすると、かえって心証が悪くなり、重加算税のリスクが高まります。正直に事実を伝えることが結果的に最善の対応です。

なお、相続税の税務調査については「相続税のしくみと基礎知識」でも全体像を解説しています。

名義預金と認定されないための5つの対策

名義預金のリスクを回避するためには、生前からの対策が不可欠です。以下の5つの対策を優先度順に実行しましょう。

対策①:贈与契約書を毎回作成する

贈与契約書は、贈与が法的に成立していることを証明する最も重要な書類です。民法第549条に基づき、贈与は口頭でも成立しますが、名義預金の指摘を回避するには書面での作成が必須です。

贈与契約書に必ず記載すべき5項目は以下のとおりです。

記載項目 記載例
贈与者(誰が)鮎澤 竜哉(住所・生年月日)
受贈者(誰に)鮎澤一郎(住所・生年月日)
贈与の日付(いつ)令和○年○月○日
贈与財産の内容(何を)金100万円
贈与の方法(どうやって)○○銀行○○支店の受贈者名義の普通預金口座(口座番号○○○○)に振込み

📝 行政書士の視点

贈与契約書に法律上の決まった書式はありませんが、より証拠力を高めるためには公正証書にすることを検討してください。公正証書で作成すると、確定日付が付与されるため「後から作成した」と疑われるリスクがなくなります。受贈者が未成年の場合は、親権者の署名捺印も必要です。

対策②:口座の管理を名義人本人に任せる

贈与した後は、口座の通帳・印鑑・キャッシュカードを受贈者本人に渡し、本人が管理する状態にしましょう。「まだ子どもだから心配」という気持ちはわかりますが、親が管理し続ける限り名義預金と認定されるリスクは消えません。

具体的には、受贈者本人がATMで入出金したり、口座からの引き落としで公共料金を支払ったりという「口座を実際に使っている形跡」があることが望ましいです。

対策③:110万円を超える場合は贈与税を申告する

年間110万円を超える贈与は贈与税の申告が必要です。あえて110万円を少し超える金額(たとえば111万円)を贈与し、贈与税(1,000円)を申告・納付するという方法は、贈与の事実を税務署に記録として残す有効な対策です。

対策④:振込みで記録を残す

現金の手渡しではなく、銀行振込みで贈与を実行しましょう。振込記録は金融機関に長期間保存されるため、贈与の日付・金額・送金元・送金先が客観的な証拠として残ります。

対策⑤:毎年の贈与金額と時期を変える

「毎年12月25日に100万円」のように定額・定時の贈与を続けると、税務署から「最初から総額を贈与する意思があった」(定期贈与)と指摘されるリスクがあります。贈与の金額と時期を毎年変えることで、その年ごとに個別の贈与契約が成立していることを示せます。

贈与の基本的なしくみについては「贈与税のしくみと基礎知識」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

既存の名義預金を解消する4ステップ

すでに名義預金に該当する可能性がある預金がある場合、相続が発生する前に解消しておくことが重要です。

ステップ1:現状の棚卸し

まず、家族全員の預金口座を確認し、名義預金に該当する可能性がある口座をリストアップします。前述のチェックリストを活用してください。

ステップ2:解消方法の選択

名義預金の解消方法は、状況に応じて以下の3つから選択します。

解消方法 内容 メリット デメリット
A. 本来の所有者に戻す名義人の口座から被相続人の口座に資金を戻す贈与税は発生しない(自分のお金を戻すだけ)相続財産は増えるため節税にはならない
B. 正式に贈与する贈与契約書を作成し、改めて贈与として成立させる将来の相続財産が減る。生前贈与として節税効果あり贈与税が課される場合がある
C. 相続申告に含める名義預金をそのまま残し、相続発生時に相続財産として正しく申告する追徴課税のリスクを回避節税効果は期待できない

ステップ3:選択した方法を実行する

解消方法Bの「正式に贈与する」場合は、前述の5つの対策(贈与契約書の作成・口座管理の移転など)をすべて実行します。なお、暦年贈与(年間110万円の非課税枠)を活用すれば、数年に分けて名義預金を正式な贈与に切り替えることも可能です。

ステップ4:証拠書類を整理して保管する

贈与契約書、振込明細、贈与税の申告書控えなど、贈与の事実を証明する書類は一箇所にまとめて保管しましょう。将来の税務調査に備え、相続人にも書類の保管場所を伝えておくことが重要です。

💡 実務のポイント

名義預金を被相続人の口座に戻す場合(方法A)、贈与税はかかりません。名義預金は「被相続人のお金を別人名義で預けていただけ」なので、元に戻す行為は贈与にはあたりません。ただし、すでに名義人の固有財産と認められるものを戻す場合は逆に贈与に該当する可能性があるため、判断に迷う場合は税理士に確認してください。

名義預金と似て非なる「名義株」「名義保険」の注意点

名義預金と同じ原理で問題になるのが、名義株と名義保険です。いずれも「名義」と「実質的な所有者」のズレが論点となります。

名義株

会社設立時に発起人が7人以上必要だった旧商法(平成2年改正前)の時代に、形式的に株主名簿に名前を載せてもらった「名義貸し」の株式が典型例です。実質的な出資者が被相続人であれば、名義株として相続税の課税対象になります。

判定の考え方は名義預金と同様に、出資の原資は誰か、株主総会に出席していたのは誰か、配当金は誰が受け取っていたかを総合的に判断します。

名義保険

被相続人が保険料を負担していたにもかかわらず、契約者や受取人が家族名義になっている生命保険です。保険料の負担者と契約者が異なる場合、保険金の受取時に想定外の課税が発生することがあります。

生命保険金の非課税枠については「生命保険金の非課税枠の活用」で詳しく解説しています。

配偶者名義の預金が名義預金と判定されるケース

配偶者名義の預金は、子・孫名義の預金とは異なる判定方法が用いられることがあります。

「固有財産算出法」による判定

配偶者名義の預金については、配偶者の過去の収入・支出を洗い出して固有財産を算出し、固有財産を超える部分を名義預金と認定する方法が実務上よく使われます。

たとえば、専業主婦の妻名義の口座に2,000万円の預金がある場合の判定は以下のようになります。

項目 金額
妻名義の預金残高2,000万円
(−)妻の過去の給与収入(結婚前のパート含む)△300万円
(−)妻が親から相続・贈与を受けた財産△200万円
名義預金と認定される可能性がある金額1,500万円

⚠️ 注意

「生活費として渡したお金を妻が貯めただけ」は、名義預金の典型パターンです。生活費はあくまで日常の生活に必要な費用として渡されたものであり、余ったお金を配偶者が貯蓄に回しても、原資は夫の収入です。相続税法上は夫の財産とみなされる可能性が高いことをご認識ください。

東京地裁平成20年10月17日判決の実務への影響

名義預金の帰属認定に関する最も重要な判例が、東京地裁平成20年10月17日判決です。この判決で示された5つの判断要素は、その後の税務調査・審判・裁判の実務において事実上のスタンダードとなっています。

📊 公認会計士の視点

この判決のポイントは、財産の帰属を形式的な名義ではなく実質的な支配関係で判断するという原則を明確にした点です。この考え方は所得税法の実質所得者課税(所得税法第12条)や法人税法の実質課税の原則と共通する税法の基本理念です。したがって、名義を変えただけでは財産の移転は完了しないというのが税法全体を通じた大原則です。

判例から読み取る実務的な教訓

判例の教訓 実務での対応
5要件は「総合判断」であり、1つの要件だけでは決まらない5要件すべてについて証拠を準備しておく
出捐者と管理者が重要度の上位を占める特に「誰のお金か」「誰が管理していたか」の証拠を重点的に
贈与契約書がない場合は名義預金と推認されやすい贈与のたびに契約書を作成する習慣をつける
口頭の贈与でも成立するが、立証が困難書面で残すことで税務調査に耐えうる証拠を確保

参考: 国税不服審判所「預貯金に関する裁決事例」

相続税の計算方法の全体像については「相続税の計算方法」で詳しく解説しています。

名義預金対策のケーススタディ

ここでは、実務でよくある3つのケースについて、具体的な対策を示します。

ケース1:専業主婦の妻が「へそくり」を1,000万円持っている

📐 ケースの前提

  • 夫:年収800万円の会社員
  • 妻:専業主婦(結婚前の貯蓄200万円あり)
  • 妻名義の口座に1,000万円。原資は夫の給与から渡された生活費の余り

対策:妻の固有財産200万円を超える800万円が名義預金と認定されるリスクがあります。今後は、夫から妻への贈与として毎年贈与契約書を作成し、110万円以下の贈与を数年に分けて行いましょう。既存の800万円については、夫の相続発生時に相続財産に含めて申告するのが安全です。

ケース2:祖父が孫名義で毎年100万円ずつ10年間貯めている

📐 ケースの前提

  • 祖父が10年前に孫(当時5歳)の名義で口座を開設
  • 毎年100万円ずつ入金し、現在1,000万円
  • 通帳・印鑑は祖父が保管。孫は口座の存在を知らない
  • 贈与契約書は作成していない

対策:このまま放置すれば、祖父の相続発生時に1,000万円全額が名義預金として相続財産に加算されます。今すぐできる対策として、まず孫(現在15歳)に口座の存在を知らせ、通帳・印鑑を親権者経由で孫に渡します。今後の入金については贈与契約書を毎年作成し、親権者が法定代理人として署名します。過去10年分については、残念ながら遡って贈与を成立させることは困難ですが、今後の贈与を適正に行うことで、少なくとも今後の入金分は名義人の固有財産として認められるようになります。

ケース3:子ども名義の口座で資産運用をしている

📐 ケースの前提

  • 父が子ども名義の証券口座で株式投資をしている
  • 原資500万円は父の退職金。運用益で現在800万円に増加
  • 売買の判断・発注はすべて父が行っている

対策:原資が父であり、管理・運用も父が行っているため、名義預金(名義証券)と認定される可能性が非常に高いケースです。解消するには、500万円を正式に贈与(贈与契約書作成+贈与税申告)した上で、売買の判断・発注を子ども自身が行うように切り替える必要があります。運用益300万円は父の所得として確定申告が必要な場合があるため、税理士に相談してください。

相続税申告で名義預金を正しく申告する方法

相続税の申告にあたって名義預金が判明した場合、最初の申告で正しく含めることが最も重要です。税務調査で指摘される前に自主的に申告すれば、加算税は大幅に軽減されます。

名義預金の申告手順

名義預金は相続税の申告書第11表(相続税がかかる財産の明細書)に記載します。記載にあたっては「名義人の氏名を付記した上で被相続人の相続財産として計上」します。

遺産分割協議書にも名義預金を記載する必要があります。「被相続人○○名義の預金ではないが、実質的に被相続人に帰属する以下の預金」として、口座情報と金額を明記します。

💡 実務のポイント

税務調査が入る前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は原則として課されません。名義預金の存在に気づいた場合は、税務署から連絡が来る前に速やかに修正申告することをおすすめします。相続税の申告について不安がある場合は、名義預金の取扱いに精通した税理士に相談することが最善策です。

小規模宅地等の特例をはじめとする相続税の節税対策については「小規模宅地等の特例の概要」もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

名義預金とは何ですか?
名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人が異なる預金のことです。たとえば、父親が子ども名義の口座に自分のお金を入金していた場合、その預金は実質的に父親の財産とみなされ、相続税の課税対象になります。名義だけを変えても財産の移転にはならないという税法の原則に基づいています。
名義預金は何年経っても時効にならないのですか?
はい、名義預金には時効がありません。贈与税の時効は原則6年(悪質な場合7年)ですが、名義預金はそもそも贈与が成立していないため、時効のカウントが始まりません。口座開設から20年・30年経っていても、相続発生時に全額が相続税の課税対象となります。
名義預金を本来の所有者の口座に戻したら贈与税はかかりますか?
名義預金を元の所有者(被相続人)の口座に戻す場合、贈与税は原則としてかかりません。名義預金は「自分のお金を別人名義で預けていただけ」なので、戻す行為は贈与にあたらないためです。ただし、すでに名義人の固有財産と認められるものを戻す場合は逆に贈与に該当する可能性があるため、判断に迷う場合は税理士に相談してください。
贈与契約書は毎年作成する必要がありますか?
はい、贈与のたびに贈与契約書を作成することを強くおすすめします。贈与契約書は贈与が法的に成立していることを証明する最も重要な書類です。毎年の贈与ごとに、贈与者・受贈者・日付・金額・方法の5項目を明記した契約書を作成し、双方が署名捺印してください。
子ども名義の口座に毎年110万円以下を入金していれば大丈夫ですか?
金額が110万円以下であっても、贈与の要件を満たしていなければ名義預金と認定されます。重要なのは金額ではなく、①贈与契約書の作成、②子ども本人(または親権者)が贈与を認識していること、③子ども本人が口座を管理していること、の3点です。これらが揃っていなければ、毎年100万円の入金でも20年分がまとめて相続財産に加算されるリスクがあります。
専業主婦の「へそくり」は全額が名義預金になりますか?
全額が名義預金になるとは限りません。結婚前の貯蓄、親からの相続・贈与、パート収入など、配偶者自身の固有財産が認められる部分は名義預金から除外されます。税務調査では配偶者の過去の収入履歴を確認し、固有財産を超える部分が名義預金として認定される傾向にあります。
名義預金が見つかった場合、遺産分割協議はやり直しになりますか?
名義預金が遺産分割協議後に発覚した場合、名義預金部分について追加の遺産分割協議が必要になることがあります。名義預金は被相続人の相続財産であるため、法定相続人全員で分割方法を決める必要があります。口座名義人がそのまま取得するとは限らず、遺産分割協議の結果次第です。相続手続きの全体像については「相続人の範囲と相続分」も参考にしてください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 名義預金とは、口座の名義人と実際のお金の持ち主が異なる預金のこと
  • 税務署は東京地裁H20.10.17判決の5要件(出捐者・管理状況・利益の帰属・関係・経緯)で総合判断する
  • 名義預金には時効がなく、口座開設から何十年経っても相続財産として課税される
  • 認定された場合は追加の相続税に加え、過少申告加算税(10〜15%)や重加算税(35〜40%)のリスクがある
  • 対策の基本は「贈与契約書の作成」「名義人本人による口座管理」「贈与税の申告」の3点
  • 既存の名義預金は、元に戻す・正式に贈与する・相続申告に含める、の3つの解消方法がある
  • 税務調査で指摘される前に自主的に修正申告すれば加算税は軽減される

名義預金のリスクは、正しい知識と早めの対策で回避できます。「もしかしたら名義預金かも」と思い当たる節がある方は、相続が発生する前に対策を始めましょう。

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