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「2025年4月からの雇用保険改正で、何がどう変わったのか全体像を押さえたい」——2024年5月に成立した改正雇用保険法は、2024年10月から2028年10月まで段階的に施行される大規模改正です。自己都合離職の給付制限短縮、教育訓練給付の80%引上げ、出生後休業支援給付・育児時短就業給付の新設など、企業と労働者の双方に大きな影響を与える改正内容を時系列で整理します。


「2025年4月からの雇用保険改正で、何がどう変わったのか全体像を押さえたい」——2024年5月に成立した改正雇用保険法は、2024年10月から2028年10月まで段階的に施行される大規模改正です。自己都合離職の給付制限短縮、教育訓練給付の80%引上げ、出生後休業支援給付・育児時短就業給付の新設など、企業と労働者の双方に大きな影響を与える改正内容を時系列で整理します。
🏆 結論:2025年改正の核心は「リスキリング支援」と「育児との両立支援」の強化
2025年4月に施行された雇用保険法改正の核心は、(1)自己都合離職者の給付制限短縮(原則2ヶ月→1ヶ月、教育訓練受講時は制限なし)によるリスキリング支援、(2)出生後休業支援給付金(13%上乗せ)・育児時短就業給付金(賃金10%上乗せ)による育児との両立支援、の2点です。同時に、高年齢雇用継続給付の縮小(15%→10%)、育児休業給付の保育所入所延長手続きの厳格化も行われました。企業側は、離職増加の可能性・育休取得促進への対応・給与計算への影響を検討する必要があります。
2024年5月10日に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第26号)は、雇用保険制度全体の見直しを行う包括的な改正です。施行は段階的で、2024年10月から2028年10月まで順次行われます。雇用保険法第1条の目的規定に基づき、労働者の雇用の安定と就職の促進を図ることが改正の基本方針とされています。厚生労働省の改正雇用保険法概要ページに詳細が公表されています。
| 施行日 | 主な改正内容 | 影響対象 |
|---|---|---|
| 2024年10月 | 教育訓練給付の給付率引上げ(最大70%→80%) | スキルアップ希望者 |
| 2025年4月 | 自己都合離職の給付制限短縮(2ヶ月→1ヶ月) | 離職者・転職者 |
| 2025年4月 | 出生後休業支援給付金の新設(13%上乗せ) | 育児休業取得者(特に父親) |
| 2025年4月 | 育児時短就業給付金の新設(賃金10%支給) | 時短勤務の育児中労働者 |
| 2025年4月 | 高年齢雇用継続給付の縮小(15%→10%) | 60歳以降の労働者 |
| 2025年4月 | 育児休業給付の保育所入所延長手続き厳格化 | 育休延長希望者 |
| 2025年10月 | 教育訓練休職中の生活を支える給付の創設 | 長期教育訓練受講者 |
| 2028年10月 | 雇用保険適用拡大(週20時間→週10時間) | 短時間労働者・企業全般 |
本記事では、2025年4月施行の改正を中心に、関連する2024年10月・2025年10月の改正も含めて解説します。2028年10月の適用拡大については雇用保険の適用拡大(2028年10月〜)で詳述しています。
2025年4月から、自己都合退職者の給付制限期間が大幅に短縮されました。転職や独立を考える労働者にとって、影響の大きい改正です。雇用保険法第33条に定める給付制限の扱いが、運用通達改正により緩和されています。詳細は厚生労働省の雇用保険制度ページに公表されています。
| 離職形態 | 改正前 | 改正後(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 会社都合離職(倒産・解雇等) | 給付制限なし(待期7日のみ) | 変更なし |
| 自己都合離職(通常) | 給付制限2ヶ月 | 給付制限1ヶ月に短縮 |
| 自己都合離職(5年以内に3回以上) | 給付制限3ヶ月 | 給付制限3ヶ月(変更なし) |
| 重責解雇 | 給付制限3ヶ月 | 変更なし |
2025年4月の改正では、もう1つ重要な変更があります。離職期間中または離職日前1年以内に「教育訓練」を受講した場合、自己都合離職でも給付制限が解除され、7日間の待期期間のみで失業給付を受けられるようになりました。
対象となる教育訓練は以下のとおりです。
💡 実務のポイント:離職タイミングの実質前倒し
弊所の顧問先で、2025年前半は自己都合離職者が例年比で約20%増加したケースが複数ありました。給付制限短縮によって離職のハードルが下がり、転職・独立を検討していた労働者が実行に移すタイミングが早まった影響と考えられます。企業側は、キャリア相談制度の充実・在職中のスキルアップ支援などにより、本人が辞める前に課題を解決できる体制を整えることが、離職防止につながります。
給付制限短縮により、自己都合離職者の増加が想定されます。企業側の対応としては、次のポイントが重要です。
2025年4月から、男性の育児休業取得を促進するため、「出生後休業支援給付金」が新設されました。
出生後休業支援給付金は、子の出生後8週間以内に一定期間以上の育児休業を取得した男性(または女性)労働者に対し、従来の育児休業給付に上乗せして支給されます。
| 給付 | 給付率 | 給付期間 |
|---|---|---|
| 既存の出生時育児休業給付金 | 休業前賃金の67% | 最大28日 |
| 新設:出生後休業支援給付金 | 休業前賃金の13%上乗せ | 最大28日 |
| 合計 | 休業前賃金の80% | 最大28日 |
休業前賃金の80%が支給されることで、雇用保険料・社会保険料(育児休業中は免除)が控除されない分を考慮すると、手取りでほぼ10割相当となります。これは、男性の育児休業取得における経済的ハードルを事実上撤廃する画期的な改正です。
🧮 シミュレーション:月額賃金30万円の父親が28日間の育休取得
休業開始時賃金日額:30万円÷30日=10,000円
出生時育児休業給付金:10,000円×67%×28日=187,600円
出生後休業支援給付金:10,000円×13%×28日=36,400円
合計給付額:約224,000円
【手取り比較】
通常勤務時の手取り:月30万円×約80%(税・社保控除後)=約24万円
育休中の給付額:約224,000円(税・社保控除なし)
実質的にほぼ同額の手取りが保障される
出生後休業支援給付金を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
男性育休取得率の上昇が想定されるため、企業は以下の対応が必要です。
2歳未満の子を養育するために時短勤務を選択する労働者への、新たな給付金が新設されました。
育児時短就業給付金は、雇用保険の被保険者が所定労働時間を短縮して就業する場合、短縮後の賃金の10%が支給されます(ただし、所定の上限・下限あり)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 2歳未満の子を養育するために時短勤務を選択した雇用保険被保険者 |
| 給付率 | 時短勤務中に支払われた賃金の10% |
| 要件 | 短縮前の週所定労働時間よりも短縮して勤務すること |
| 給付期間 | 子が2歳に達するまで |
| 上限 | 時短前賃金の一定割合を超えない範囲 |
これまで時短勤務を選択すると収入が減ることがハードルとなっていましたが、新給付金により時短勤務中の賃金の10%が上乗せされるため、育児と就業の両立のハードルが下がります。
💡 実務のポイント:時短給付と社会保険料の関係
育児時短就業給付金は、社会保険料の計算基礎となる賃金には含まれません。そのため、時短勤務で賃金が下がっても、給付金の分は社会保険料負担なく受け取れます。また、3歳未満の子を養育する労働者は「養育期間の従前標準報酬月額みなし措置」により年金額を維持できる制度もあり、詳細は算定基礎届と月額変更届の実務ガイドを参照してください。時短給付と既存の養育期間みなし措置を組み合わせることで、育児期の所得減・年金減を最小限に抑えられます。
2024年10月から段階的に、教育訓練給付の拡充が行われました。2025年10月には、さらに大きな新制度が導入されます。
専門実践教育訓練給付(厚生労働大臣指定の資格取得講座等)の給付率が、最大70%から最大80%に引き上げられました。
| 給付の種類 | 給付率 | 年間上限 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練給付 | 20% | 10万円 |
| 特定一般教育訓練給付 | 40% | 20万円 |
| 専門実践教育訓練給付(基本) | 50% | 年40万円 |
| 専門実践教育訓練給付(資格取得・就職時) | 80%(改正前70%) | 年64万円 |
対象となる講座は、看護師・理学療法士・介護福祉士・保育士等の国家資格、ITSSレベル3以上のIT資格、MBA・専門職大学院の課程など、国が指定する800以上の教育訓練です。
2025年10月1日から、雇用保険の被保険者が教育訓練を受けるために休職した場合、失業時の基本手当に相当する金額の給付が受けられるようになります。
これは、働きながら教育訓練を受けることが難しい場合に、一旦休職して教育訓練に専念できる仕組みで、リスキリング支援の中核施策です。
労働者にとって、教育訓練給付のメリットは以下のとおりです。
60歳以降の賃金低下を補う高年齢雇用継続給付の給付率が、2025年4月から縮小されました。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 給付率の上限 | 15% | 10% |
| 対象 | 60歳以降で賃金が75%未満に低下 | 変更なし |
| 受給期間 | 60歳から65歳まで | 変更なし |
この給付の縮小は、65歳までの雇用義務化(高年齢者雇用安定法)により、60歳以降も賃金を下げずに雇用を継続する企業が増えてきたため、給付の役割が薄れたことが背景です。将来的には、段階的に廃止される方向性で議論が進んでいます。
企業は、60歳以降の賃金設計の見直しを迫られます。従来の「60歳で賃金を大幅に下げ、高年齢雇用継続給付で補う」モデルは、給付縮小により見直しが必要です。賃金水準を維持する方向で再雇用制度を設計する企業が増えています。
⚠️ 注意:60歳以降の賃金設計の再検討が必要
従来の60歳以降の再雇用制度では、「賃金60%+高年齢雇用継続給付15%=75%水準」を目安とする設計が一般的でした。2025年4月以降は給付上限が10%となり、同じ賃金水準では実質的な手取りが5%減少します。弊所の顧問先事例では、製造業で60歳再雇用者20名の合計年収が、制度改正で約600万円減少する試算となり、賃金水準を5%上乗せする再雇用規程の改定を実施しました。企業と労働者の双方にとって、高齢期の賃金設計見直しが避けられない改正です。
育児休業給付金は、子が1歳になるまで(最大2歳まで延長可)支給されますが、1歳以降の延長には保育所等に入所できなかったことの証明が必要です。2025年4月から、この延長手続きがより厳格化されました。
保育所入所の延長申請を行う際、以下が厳格化されました。
これまでの延長手続きでは、「保育所に入所できなかった」という証明の取り方が緩く、実質的には延長希望者が書類を取得すれば認められるケースが多くありました。2025年4月の改正は、本当に保育所入所が必要な家庭の延長を適切に認め、制度の適正運用を図るためのものです。
2025年改正の企業への影響は多岐にわたります。
| 領域 | 影響 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| 離職管理 | 自己都合離職者の増加 | 定着施策・キャリア相談強化 |
| 育児支援 | 男性育休取得率の上昇 | 代替要員確保・業務引継ぎルール整備 |
| 時短勤務支援 | 時短勤務選択者の増加 | 就業規則見直し・業務分担の再設計 |
| 60歳以降の雇用 | 再雇用者の実質手取り減 | 再雇用制度の賃金設計見直し |
| 教育訓練 | 従業員の学習意欲の高まり | 社内研修・資格取得支援の拡充 |
| 就業規則 | 改正対応の必要性 | 育児介護休業規定の最新化 |
就業規則(詳細は就業規則作成の手順を参照)では、以下の項目の更新が必要です。
労働者にとっては、多くの改正でメリットが拡大しています。
| ライフステージ | 2025年改正のメリット |
|---|---|
| 20〜30代(転職検討) | 給付制限短縮(2→1ヶ月)・教育訓練受講で制限解除 |
| 30代(育児期) | 出生後休業支援給付(男性育休手取り10割)・時短勤務給付 |
| 30〜40代(スキルアップ) | 教育訓練給付80%・2025年10月の休職支援給付 |
| 50代(キャリア後半) | リスキリング推進により転職・独立の選択肢拡大 |
| 60代(再雇用) | 高年齢雇用継続給付は縮小もあり(マイナス影響) |
雇用保険法改正は2025年で完結ではなく、2028年までに段階的に続きます。
| 施行予定日 | 改正内容 |
|---|---|
| 2025年10月 | 教育訓練休職中の生活支援給付創設 |
| 2026年4月以降 | 社会保険適用拡大(段階的・企業規模要件撤廃) |
| 2028年10月 | 雇用保険の適用拡大(週10時間以上) |
2028年10月の雇用保険適用拡大については雇用保険の適用拡大、社会保険の適用拡大は社会保険の適用拡大で詳しく解説しています。企業の人事労務は、これら全ての改正を見据えた中長期的な計画が必要です。
改正に伴う企業負担を軽減するため、各種助成金の活用が推奨されます。
これらの助成金の詳細はキャリアアップ助成金で解説しています。改正対応と助成金活用をセットで検討することが、財務負担の最小化につながります。
📋 この記事のポイント