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「労働保険の加入手続きがよくわからない」「年度更新の時期になると毎年迷う」——従業員を雇う経営者・人事担当者に向けて、労働保険の加入から年度更新までを実務ステップで完全解説します。この記事を読めば、令和8年度の最新料率・賃金総額の算定・7ステップの申告フロー・延納・電子申請まで全てがわかります。


「労働保険の加入手続きがよくわからない」「年度更新の時期になると毎年迷う」——従業員を雇う経営者・人事担当者に向けて、労働保険の加入から年度更新までを実務ステップで完全解説します。この記事を読めば、令和8年度の最新料率・賃金総額の算定・7ステップの申告フロー・延納・電子申請まで全てがわかります。
🏆 結論:労働保険は年1回の年度更新(6/1〜7/10)が実務の軸
労働保険は、労災保険(事業主全額負担)と雇用保険(労使折半)の2制度を一括管理する制度で、従業員を1人でも雇用すれば加入義務があります。最も重要な実務は、毎年6月1日〜7月10日の「年度更新」で前年度確定保険料の精算と当年度概算保険料の申告・納付を行うこと。令和8年度は労災保険料率は変更なし、雇用保険料率は引き下げ(一般事業 労働者負担0.5%)となっています。期限徒過は追徴金・延滞金の対象となるため、スケジュール管理が重要です。
「労働保険」は単一の保険制度ではなく、労災保険と雇用保険の2つを総称する言葉です。これら2制度は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)により一元管理されています。
| 項目 | 労災保険 | 雇用保険 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 労働者災害補償保険法 | 雇用保険法 |
| 保険給付の内容 | 業務災害・通勤災害の補償 | 失業給付・教育訓練給付・育児休業給付 |
| 対象者 | 全労働者(役員・事業主は対象外) | 週20時間以上・31日以上雇用見込みの労働者 |
| 保険料負担 | 全額事業主負担 | 労使折半(一部事業主多め) |
| 料率 | 業種別(2.5〜88/1000) | 事業種別(3種類) |
| 加入手続き | 労働基準監督署 | ハローワーク |
労働保険は、業種により「一元適用事業」と「二元適用事業」の2区分に分かれます。大部分の業種は一元適用で、労災と雇用を一本化した手続きが可能ですが、建設業など一部の業種は二元適用で別個の手続きが必要です。
| 区分 | 該当業種 | 手続き |
|---|---|---|
| 一元適用事業 | 製造業・卸売業・小売業・サービス業・IT・飲食業等(大多数) | 労基署で一本化申告 |
| 二元適用事業 | 農林水産業・建設業・港湾労働業・都道府県市町村等 | 労災は労基署、雇用はハローワークで別個申告 |
二元適用事業となる建設業では、元請工事ごとに労災保険成立届が必要で、現場労災と事務所労災を別々に管理します。雇用保険は事務所所在地のハローワークに別途届出が必要です。
💡 実務のポイント
労働保険の実務で最も迷うのは「役員+労働者」の混在事業所での取扱いです。役員は労働保険の対象外(特別加入制度除く)のため、年度更新時の賃金総額に役員報酬を含めないよう注意が必要です。弊所で関与する中小企業では、役員と従業員の給与支払い台帳を明確に分けておくことで、年度更新時の集計ミスを防いでいます。
従業員を1人でも雇用した時点で労働保険の加入義務が発生します。労働保険の保険料の徴収等に関する法律第4条の2により、事業主は保険関係が成立した日の翌日から10日以内に保険関係成立届を提出する必要があります。
一元適用事業では、以下の4つの届出を順に提出します。詳細な手順は会社設立時の社会保険新規適用届でも解説しています。
| 順序 | 届出書類 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 1 | 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 成立日翌日から10日以内 |
| 2 | 概算保険料申告書 | 労働基準監督署 | 成立日翌日から50日以内 |
| 3 | 雇用保険適用事業所設置届 | ハローワーク | 設置日から10日以内 |
| 4 | 雇用保険被保険者資格取得届 | ハローワーク | 資格取得日の翌月10日まで |
⚠️ 注意:未加入のまま従業員が労災を起こすと重大なリスク
労災保険に未加入の状態で従業員が労災事故に遭うと、事業主は「費用徴収制度」により、給付額の40%(故意)または100%(重大過失)を国から徴収されます。弊所で関与した製造業の事例では、未加入状態での労災事故で約1,200万円の給付額の40%=480万円を追加負担した事例があり、同時に安全配慮義務違反の民事賠償も問われました。加入手続きは絶対に先送りしないようにしてください。
労災保険料率と雇用保険料率は、毎年3月頃に厚生労働省が改定を発表します。令和8年度の最新料率を整理します。
労災保険料率は、業種の災害発生率を踏まえ過去3年間の実績を基に厚生労働大臣が決定します。令和8年度は令和7年度と同じ料率が継続されます。厚生労働省の労災保険率表に全業種の最新料率が公表されています。
| 業種 | 労災保険料率(1000分率) |
|---|---|
| 金融・保険業 | 2.5 |
| 情報通信業(通信業、放送業、新聞業、出版業) | 2.5 |
| サービス業(その他) | 3.0 |
| 小売業・飲食店・宿泊業 | 3.0 |
| 製造業(機械器具製造業) | 5.0 |
| 運輸業(道路貨物運送業) | 8.5 |
| 建設業(建築事業) | 9.5 |
| 林業 | 52 |
災害率の低い業種(金融・情報通信等)は2.5〜3/1000、災害率の高い業種(林業・建設業)は9.5〜52/1000と、業種により最大21倍の差があります。
令和8年度の雇用保険料率は、昨年度から引き下げられました。一般事業の労働者負担は0.5%となっています。
| 事業区分 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1000(0.5%) | 9/1000(0.9%) | 14/1000(1.4%) |
| 農林水産・清酒製造業 | 6/1000 | 10/1000 | 16/1000 |
| 建設業 | 6/1000 | 11/1000 | 17/1000 |
雇用保険では事業主負担が労働者負担より多く設定されています。これは雇用安定事業・能力開発事業など、事業主のみが負担する「二事業分」が事業主負担に含まれるためです。
石綿健康被害救済法に基づく「一般拠出金」も労働保険料と併せて納付します。料率は賃金総額の0.02/1000(0.002%)で、全業種共通です。年度更新時に忘れず計算してください。
労働保険の「年度更新」は、毎年1回、前年度(4月1日〜翌年3月31日)の保険料を精算し、当年度の概算保険料を申告・納付する手続きです。年度更新は事業主にとって最も重要な労働保険関連の実務です。
2026年6月1日(月)〜7月10日(金)が令和8年度の年度更新期間です。この期間内に確定保険料の精算と概算保険料の申告・納付を完了します。厚生労働省の労働保険年度更新案内ページにて、詳細な手続き様式や解説資料が公表されています。
年度更新では、以下の2つの保険料を同時に申告・納付します。
毎年5月下旬〜6月上旬に、都道府県労働局から「労働保険料等申告書」(年度更新用紙)が事業所に送付されます。この用紙には、前年度の概算保険料額等が印字されており、事業主はこれに基づき確定保険料と当年度概算保険料を記入します。
💡 実務のポイント:通知書が届かない場合
年度更新通知書が6月上旬を過ぎても届かない場合は、所轄労働基準監督署に連絡すれば再発行を依頼できます。弊所の実務経験では、事業所の移転届を忘れていたことが原因で通知書が旧所在地に送付されたケースが年に数件発生しています。住所変更があった事業所は、事前に「労働保険名称・所在地等変更届」を提出しておく必要があります。
年度更新の手続きは、以下の7ステップで進めます。
前年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)に従業員に支払った賃金の総額を集計します。以下が含める対象と除外対象です。
| 賃金総額に含める | 賃金総額に含めない |
|---|---|
| 基本給・時間外手当・深夜手当・休日手当 | 役員報酬 |
| 賞与・一時金 | 結婚祝金・弔慰金・災害見舞金 |
| 通勤手当(非課税分含む) | 退職金 |
| 住宅手当・家族手当・役職手当 | 出張旅費・業務費の実費精算 |
| 有給休暇中の賃金 | 傷病手当金・出産手当金 |
| 皆勤手当・精勤手当 | 年金・退職年金 |
| 休業手当(労基法第26条) | 解雇予告手当 |
📢 通勤手当の取扱いに注意
所得税の非課税通勤手当(月15万円まで)は税務上は非課税でも、労働保険料の賃金総額には含める必要があります。給与計算ソフトから集計する際、課税・非課税の区分ではなく「労働の対価として支払った全ての金銭」として集計することがポイントです。
前年度の賃金総額に、前年度の料率を乗じて確定保険料を算出します。
計算式
確定労災保険料 = 前年度賃金総額 × 労災保険料率
確定雇用保険料 = 前年度賃金総額 × 雇用保険料率
確定一般拠出金 = 前年度賃金総額 × 0.02/1000
当年度(2026年4月〜2027年3月)の賃金総額の見込み額を算出します。前年度の賃金総額と比較して、次のいずれかの場合に該当するなら見込み額の修正が必要です。
上記に該当しない場合は、前年度の賃金総額を当年度概算にそのまま使用します(継続事業の原則)。
当年度概算保険料 = 当年度概算賃金総額 × 当年度料率(労災+雇用+一般拠出金)
前年度概算保険料(昨年の年度更新時に納付済み)と確定保険料の差額を精算します。
申告書に確定保険料、当年度概算保険料、充当額または還付請求額を記入して、以下のいずれかの方法で提出します。
計算した保険料を金融機関等で納付します。概算保険料額が40万円以上(労災または雇用どちらか一方のみ成立の場合は20万円以上)の事業場は、延納(分割納付)が可能です。
労働保険料は一括納付が原則ですが、概算保険料額が一定以上の場合は最大3回に分割して納付できます。
| 期 | 納付期限 | 納付割合 |
|---|---|---|
| 第1期 | 7月10日 | 概算保険料の1/3 |
| 第2期 | 10月31日 | 概算保険料の1/3 |
| 第3期 | 翌年1月31日 | 概算保険料の1/3 |
🧮 延納シミュレーション(製造業・賃金総額6,000万円)
労災保険料:6,000万円×5/1000=30万円
雇用保険料:6,000万円×14/1000=84万円
一般拠出金:6,000万円×0.02/1000=1,200円
合計概算保険料:約114万円(延納要件40万円超を満たす)
延納時の納付額:
第1期(7月10日):約38万円
第2期(10月31日):約38万円
第3期(翌年1月31日):約38万円
※実際の延納額は一般拠出金を除き端数処理あり
AYUSAWA PARTNERS
労働保険年度更新のワンストップご相談
初回相談無料。社労士・税理士・公認会計士・行政書士が賃金総額の集計から電子申請・納付までワンストップで対応します。
鮎澤パートナーズに相談する年度更新は、従来の紙申告書に加え、e-Govを通じた電子申請が可能です。GビズIDまたは電子証明書があれば、いつでもどこからでも手続きできます。
GビズIDプライム(詳細は会社設立時の新規適用届を参照)を取得すれば、e-Govでの電子申請が可能になります。GビズIDは取得まで2週間程度かかるため、年度更新時期の前月までに準備を整えることをお勧めします。
💡 実務のポイント:電子申請への移行タイミング
弊所の100社超の顧問先のうち、令和7年度時点で約70%が年度更新を電子申請で実施しています。初回は窓口提出で記入内容を確認し、翌年度から電子申請に移行するパターンが現実的です。電子申請を導入することで、賃金台帳データからの自動連携が可能になり、年度更新1件あたりの作業時間が平均4〜6時間から1時間程度に短縮できています。
年度更新では、以下のようなミスが頻発します。事前に対策を知っておくことで、手戻りや追徴金を回避できます。
役員は労働保険の対象外のため、役員報酬を賃金総額に含めてはいけません。使用人兼務役員の「使用人部分の賃金」のみ含める必要があります。給与ソフトの集計表で「役員部分」と「使用人部分」を分けて表示する設定にしておくことが重要です。
雇用保険の加入要件を満たさないパート・アルバイト(週20時間未満等)でも、労災保険の賃金総額には含める必要があります。労災保険は全労働者対象のため、雇用形態にかかわらず全賃金を集計します。
年度途中での入社・退社者の賃金は見落とされやすい項目です。退職者の最終給与、入社者の日割給与を含め、賃金台帳の1年分を漏れなく確認する必要があります。
税法上の非課税通勤手当(月15万円まで)でも、労働保険料の賃金総額には算入します。給与計算ソフトで「課税対象給与のみ集計」としてしまうと漏れの原因になります。
石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金(賃金総額×0.02/1000)は、労災保険料とは別欄の記載が必要です。料率が小さく見落とされやすいため、計算欄を必ず確認してください。
⚠️ 実例:建設業で420万円の追徴納付
弊所が事後に関与した建設業(年間売上10億円)では、前任担当者の年度更新時に外注費(一人親方への支払い)の一部を賃金として誤計上、かつ通勤手当の全額算入を失念していたため、5年分の労働保険料に計420万円の差額が生じました。労働保険料の時効は2年ですが、不正等がある場合は延長されるため、確定した時効範囲で追加納付と延滞金を負担することとなりました。賃金台帳の精緻な管理が、後日のリスク回避につながります。
年度更新の期限(7月10日)を過ぎた場合、以下のリスクが発生します。
労働保険徴収法第27条および第28条により、納付遅延または申告遅延があると以下のペナルティが発生します。
| ペナルティ | 発生条件 | 計算式 |
|---|---|---|
| 延滞金 | 期限を過ぎた納付 | 未納額×年9.0%〜14.6%(期間により異なる) |
| 追徴金 | 政府による保険料の決定後、不足額を指摘 | 決定保険料額×10% |
労働保険事務組合とは、事業主に代わって労働保険の事務手続きを行う組合で、中小事業主や一人親方の労災特別加入の窓口にもなります。
委託手数料は組合により異なりますが、月額3,000〜10,000円程度が相場です。中小事業主特別加入(詳細は労災保険の特別加入を参照)を利用する場合は、事務組合への委託が必須です。
労働保険料は法人税計算上、全額損金算入されます。確定した金額で経費処理するのが原則です。
| 項目 | 勘定科目 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 労災保険料(全額) | 法定福利費 | 法人税法第22条第3項により損金算入 |
| 雇用保険料(事業主負担分) | 法定福利費 | 損金算入 |
| 雇用保険料(従業員負担分) | 預り金→清算 | 給与から天引き・納付時清算 |
| 一般拠出金 | 法定福利費 | 損金算入 |
さらに、社会保険料全体の負担構造は社会保険料の計算方法でも詳述しています。全体像の把握には社会保険の全体像も参考にしてください。
年度更新は毎年同じ時期に発生する定型業務ですが、6月は社会保険の算定基礎届(7月10日期限)と重なるため、特に人事労務の繁忙期となります。
| 時期 | 準備・作業内容 |
|---|---|
| 4月 | 給与計算ソフトの令和8年度料率反映確認 |
| 5月中旬 | 前年度賃金台帳の集計準備 |
| 5月下旬 | 年度更新通知書の到着確認 |
| 6月上旬 | 申告書の記入・賃金総額最終確認 |
| 6月中旬〜下旬 | 提出・納付(算定基礎届と並行) |
| 7月10日 | 年度更新期限(社保算定基礎届期限と同日) |
| 10月31日 | 延納第2期 |
| 翌年1月31日 | 延納第3期 |
算定基礎届の詳細は算定基礎届と月額変更届の実務ガイドを参照してください。
📋 この記事のポイント
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