労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続きと年度更新の完全ガイド|令和8年度料率対応

労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続きと年度更新の完全ガイド|令和8年度料率対応
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「労働保険の加入手続きがよくわからない」「年度更新の時期になると毎年迷う」——従業員を雇う経営者・人事担当者に向けて、労働保険の加入から年度更新までを実務ステップで完全解説します。この記事を読めば、令和8年度の最新料率・賃金総額の算定・7ステップの申告フロー・延納・電子申請まで全てがわかります。

🏆 結論:労働保険は年1回の年度更新(6/1〜7/10)が実務の軸

労働保険は、労災保険(事業主全額負担)と雇用保険(労使折半)の2制度を一括管理する制度で、従業員を1人でも雇用すれば加入義務があります。最も重要な実務は、毎年6月1日〜7月10日の「年度更新」で前年度確定保険料の精算と当年度概算保険料の申告・納付を行うこと。令和8年度は労災保険料率は変更なし、雇用保険料率は引き下げ(一般事業 労働者負担0.5%)となっています。期限徒過は追徴金・延滞金の対象となるため、スケジュール管理が重要です。

労働保険とは?労災保険と雇用保険の関係

「労働保険」は単一の保険制度ではなく、労災保険と雇用保険の2つを総称する言葉です。これら2制度は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)により一元管理されています。

労災保険と雇用保険の基本的な違い

項目 労災保険 雇用保険
根拠法労働者災害補償保険法雇用保険法
保険給付の内容業務災害・通勤災害の補償失業給付・教育訓練給付・育児休業給付
対象者全労働者(役員・事業主は対象外)週20時間以上・31日以上雇用見込みの労働者
保険料負担全額事業主負担労使折半(一部事業主多め)
料率業種別(2.5〜88/1000)事業種別(3種類)
加入手続き労働基準監督署ハローワーク

一元適用事業と二元適用事業

労働保険は、業種により「一元適用事業」と「二元適用事業」の2区分に分かれます。大部分の業種は一元適用で、労災と雇用を一本化した手続きが可能ですが、建設業など一部の業種は二元適用で別個の手続きが必要です。

区分 該当業種 手続き
一元適用事業製造業・卸売業・小売業・サービス業・IT・飲食業等(大多数)労基署で一本化申告
二元適用事業農林水産業・建設業・港湾労働業・都道府県市町村等労災は労基署、雇用はハローワークで別個申告

二元適用事業となる建設業では、元請工事ごとに労災保険成立届が必要で、現場労災と事務所労災を別々に管理します。雇用保険は事務所所在地のハローワークに別途届出が必要です。

💡 実務のポイント

労働保険の実務で最も迷うのは「役員+労働者」の混在事業所での取扱いです。役員は労働保険の対象外(特別加入制度除く)のため、年度更新時の賃金総額に役員報酬を含めないよう注意が必要です。弊所で関与する中小企業では、役員と従業員の給与支払い台帳を明確に分けておくことで、年度更新時の集計ミスを防いでいます。

労働保険の新規加入手続き(従業員を初めて雇用した時)

従業員を1人でも雇用した時点で労働保険の加入義務が発生します。労働保険の保険料の徴収等に関する法律第4条の2により、事業主は保険関係が成立した日の翌日から10日以内に保険関係成立届を提出する必要があります。

一元適用事業の加入手続き(4つの届出)

一元適用事業では、以下の4つの届出を順に提出します。詳細な手順は会社設立時の社会保険新規適用届でも解説しています。

順序 届出書類 提出先 期限
1保険関係成立届労働基準監督署成立日翌日から10日以内
2概算保険料申告書労働基準監督署成立日翌日から50日以内
3雇用保険適用事業所設置届ハローワーク設置日から10日以内
4雇用保険被保険者資格取得届ハローワーク資格取得日の翌月10日まで

必要な添付書類

⚠️ 注意:未加入のまま従業員が労災を起こすと重大なリスク

労災保険に未加入の状態で従業員が労災事故に遭うと、事業主は「費用徴収制度」により、給付額の40%(故意)または100%(重大過失)を国から徴収されます。弊所で関与した製造業の事例では、未加入状態での労災事故で約1,200万円の給付額の40%=480万円を追加負担した事例があり、同時に安全配慮義務違反の民事賠償も問われました。加入手続きは絶対に先送りしないようにしてください。

令和8年度(2026年度)の労働保険料率

労災保険料率と雇用保険料率は、毎年3月頃に厚生労働省が改定を発表します。令和8年度の最新料率を整理します。

労災保険料率(令和8年度・令和7年度から変更なし)

労災保険料率は、業種の災害発生率を踏まえ過去3年間の実績を基に厚生労働大臣が決定します。令和8年度は令和7年度と同じ料率が継続されます。厚生労働省の労災保険率表に全業種の最新料率が公表されています。

業種 労災保険料率(1000分率)
金融・保険業2.5
情報通信業(通信業、放送業、新聞業、出版業)2.5
サービス業(その他)3.0
小売業・飲食店・宿泊業3.0
製造業(機械器具製造業)5.0
運輸業(道路貨物運送業)8.5
建設業(建築事業)9.5
林業52

災害率の低い業種(金融・情報通信等)は2.5〜3/1000、災害率の高い業種(林業・建設業)は9.5〜52/1000と、業種により最大21倍の差があります。

雇用保険料率(令和8年度・労働者負担分引下げ)

令和8年度の雇用保険料率は、昨年度から引き下げられました。一般事業の労働者負担は0.5%となっています。

事業区分 労働者負担 事業主負担 合計
一般の事業5/1000(0.5%)9/1000(0.9%)14/1000(1.4%)
農林水産・清酒製造業6/100010/100016/1000
建設業6/100011/100017/1000

雇用保険では事業主負担が労働者負担より多く設定されています。これは雇用安定事業・能力開発事業など、事業主のみが負担する「二事業分」が事業主負担に含まれるためです。

一般拠出金率(全事業共通)

石綿健康被害救済法に基づく「一般拠出金」も労働保険料と併せて納付します。料率は賃金総額の0.02/1000(0.002%)で、全業種共通です。年度更新時に忘れず計算してください。

年度更新の基本と期間

労働保険の「年度更新」は、毎年1回、前年度(4月1日〜翌年3月31日)の保険料を精算し、当年度の概算保険料を申告・納付する手続きです。年度更新は事業主にとって最も重要な労働保険関連の実務です。

令和8年度の年度更新期間

2026年6月1日(月)〜7月10日(金)が令和8年度の年度更新期間です。この期間内に確定保険料の精算と概算保険料の申告・納付を完了します。厚生労働省の労働保険年度更新案内ページにて、詳細な手続き様式や解説資料が公表されています。

年度更新では、以下の2つの保険料を同時に申告・納付します。

  1. 確定保険料:前年度(2025年4月〜2026年3月)に実際に支払った賃金総額に基づく保険料
  2. 概算保険料:当年度(2026年4月〜2027年3月)の見込み賃金総額に基づく保険料

年度更新通知書の送付

毎年5月下旬〜6月上旬に、都道府県労働局から「労働保険料等申告書」(年度更新用紙)が事業所に送付されます。この用紙には、前年度の概算保険料額等が印字されており、事業主はこれに基づき確定保険料と当年度概算保険料を記入します。

💡 実務のポイント:通知書が届かない場合

年度更新通知書が6月上旬を過ぎても届かない場合は、所轄労働基準監督署に連絡すれば再発行を依頼できます。弊所の実務経験では、事業所の移転届を忘れていたことが原因で通知書が旧所在地に送付されたケースが年に数件発生しています。住所変更があった事業所は、事前に「労働保険名称・所在地等変更届」を提出しておく必要があります。

年度更新の7ステップ実務フロー

年度更新の手続きは、以下の7ステップで進めます。

ステップ1:前年度の賃金総額を集計

前年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)に従業員に支払った賃金の総額を集計します。以下が含める対象と除外対象です。

賃金総額に含める 賃金総額に含めない
基本給・時間外手当・深夜手当・休日手当役員報酬
賞与・一時金結婚祝金・弔慰金・災害見舞金
通勤手当(非課税分含む)退職金
住宅手当・家族手当・役職手当出張旅費・業務費の実費精算
有給休暇中の賃金傷病手当金・出産手当金
皆勤手当・精勤手当年金・退職年金
休業手当(労基法第26条)解雇予告手当

📢 通勤手当の取扱いに注意

所得税の非課税通勤手当(月15万円まで)は税務上は非課税でも、労働保険料の賃金総額には含める必要があります。給与計算ソフトから集計する際、課税・非課税の区分ではなく「労働の対価として支払った全ての金銭」として集計することがポイントです。

ステップ2:確定保険料の計算

前年度の賃金総額に、前年度の料率を乗じて確定保険料を算出します。

計算式

確定労災保険料 = 前年度賃金総額 × 労災保険料率
確定雇用保険料 = 前年度賃金総額 × 雇用保険料率
確定一般拠出金 = 前年度賃金総額 × 0.02/1000

ステップ3:当年度概算賃金総額の見込み

当年度(2026年4月〜2027年3月)の賃金総額の見込み額を算出します。前年度の賃金総額と比較して、次のいずれかの場合に該当するなら見込み額の修正が必要です。

上記に該当しない場合は、前年度の賃金総額を当年度概算にそのまま使用します(継続事業の原則)。

ステップ4:当年度概算保険料の計算

当年度概算保険料 = 当年度概算賃金総額 × 当年度料率(労災+雇用+一般拠出金)

ステップ5:差額の精算

前年度概算保険料(昨年の年度更新時に納付済み)と確定保険料の差額を精算します。

ステップ6:申告書の作成と提出

申告書に確定保険料、当年度概算保険料、充当額または還付請求額を記入して、以下のいずれかの方法で提出します。

ステップ7:保険料の納付

計算した保険料を金融機関等で納付します。概算保険料額が40万円以上(労災または雇用どちらか一方のみ成立の場合は20万円以上)の事業場は、延納(分割納付)が可能です。

延納(分割納付)の仕組み

労働保険料は一括納付が原則ですが、概算保険料額が一定以上の場合は最大3回に分割して納付できます。

延納の要件と納付期限

納付期限 納付割合
第1期7月10日概算保険料の1/3
第2期10月31日概算保険料の1/3
第3期翌年1月31日概算保険料の1/3

延納の要件

🧮 延納シミュレーション(製造業・賃金総額6,000万円)

労災保険料:6,000万円×5/1000=30万円
雇用保険料:6,000万円×14/1000=84万円
一般拠出金:6,000万円×0.02/1000=1,200円
合計概算保険料:約114万円(延納要件40万円超を満たす)

延納時の納付額:
第1期(7月10日):約38万円
第2期(10月31日):約38万円
第3期(翌年1月31日):約38万円
※実際の延納額は一般拠出金を除き端数処理あり

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労働保険年度更新のワンストップご相談

初回相談無料。社労士・税理士・公認会計士・行政書士が賃金総額の集計から電子申請・納付までワンストップで対応します。

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電子申請(e-Gov)による年度更新

年度更新は、従来の紙申告書に加え、e-Govを通じた電子申請が可能です。GビズIDまたは電子証明書があれば、いつでもどこからでも手続きできます。

電子申請のメリット

  1. 提出手段の選択肢:労基署・労働局窓口・金融機関窓口に行かずに完結
  2. 24時間受付:深夜・休日でも申請可能(処理は平日)
  3. ファイル添付の簡便性:賃金台帳の集計表をPDFで添付できる
  4. 誤り時の訂正が容易:オンラインで補正指示に対応できる
  5. 納付もペイジー対応:同時に電子納付可能

電子申請の準備

GビズIDプライム(詳細は会社設立時の新規適用届を参照)を取得すれば、e-Govでの電子申請が可能になります。GビズIDは取得まで2週間程度かかるため、年度更新時期の前月までに準備を整えることをお勧めします。

💡 実務のポイント:電子申請への移行タイミング

弊所の100社超の顧問先のうち、令和7年度時点で約70%が年度更新を電子申請で実施しています。初回は窓口提出で記入内容を確認し、翌年度から電子申請に移行するパターンが現実的です。電子申請を導入することで、賃金台帳データからの自動連携が可能になり、年度更新1件あたりの作業時間が平均4〜6時間から1時間程度に短縮できています。

よくある申告ミスとその対策

年度更新では、以下のようなミスが頻発します。事前に対策を知っておくことで、手戻りや追徴金を回避できます。

ミス類型1:役員報酬の賃金総額への算入

役員は労働保険の対象外のため、役員報酬を賃金総額に含めてはいけません。使用人兼務役員の「使用人部分の賃金」のみ含める必要があります。給与ソフトの集計表で「役員部分」と「使用人部分」を分けて表示する設定にしておくことが重要です。

ミス類型2:パート・アルバイトの賃金集計漏れ

雇用保険の加入要件を満たさないパート・アルバイト(週20時間未満等)でも、労災保険の賃金総額には含める必要があります。労災保険は全労働者対象のため、雇用形態にかかわらず全賃金を集計します。

ミス類型3:中途入社・退社者の賃金計上漏れ

年度途中での入社・退社者の賃金は見落とされやすい項目です。退職者の最終給与、入社者の日割給与を含め、賃金台帳の1年分を漏れなく確認する必要があります。

ミス類型4:通勤手当の算入漏れ

税法上の非課税通勤手当(月15万円まで)でも、労働保険料の賃金総額には算入します。給与計算ソフトで「課税対象給与のみ集計」としてしまうと漏れの原因になります。

ミス類型5:一般拠出金の算出漏れ

石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金(賃金総額×0.02/1000)は、労災保険料とは別欄の記載が必要です。料率が小さく見落とされやすいため、計算欄を必ず確認してください。

⚠️ 実例:建設業で420万円の追徴納付

弊所が事後に関与した建設業(年間売上10億円)では、前任担当者の年度更新時に外注費(一人親方への支払い)の一部を賃金として誤計上、かつ通勤手当の全額算入を失念していたため、5年分の労働保険料に計420万円の差額が生じました。労働保険料の時効は2年ですが、不正等がある場合は延長されるため、確定した時効範囲で追加納付と延滞金を負担することとなりました。賃金台帳の精緻な管理が、後日のリスク回避につながります。

期限徒過した場合の対応

年度更新の期限(7月10日)を過ぎた場合、以下のリスクが発生します。

延滞金と追徴金の発生

労働保険徴収法第27条および第28条により、納付遅延または申告遅延があると以下のペナルティが発生します。

ペナルティ 発生条件 計算式
延滞金期限を過ぎた納付未納額×年9.0%〜14.6%(期間により異なる)
追徴金政府による保険料の決定後、不足額を指摘決定保険料額×10%

期限徒過時の対処ステップ

  1. 速やかに管轄の都道府県労働局・労働基準監督署に連絡
  2. 遅延理由書とともに速やかに申告書を提出
  3. 保険料を速やかに納付(延滞金は追って請求される)
  4. 再発防止策(スケジュール管理・チェック体制)を整備

労働保険事務組合への委託

労働保険事務組合とは、事業主に代わって労働保険の事務手続きを行う組合で、中小事業主や一人親方の労災特別加入の窓口にもなります。

委託のメリット

委託手数料の相場

委託手数料は組合により異なりますが、月額3,000〜10,000円程度が相場です。中小事業主特別加入(詳細は労災保険の特別加入を参照)を利用する場合は、事務組合への委託が必須です。

社会保険料の会社負担を正しく理解する

労働保険料は法人税計算上、全額損金算入されます。確定した金額で経費処理するのが原則です。

会計処理の勘定科目

項目 勘定科目 税務上の扱い
労災保険料(全額)法定福利費法人税法第22条第3項により損金算入
雇用保険料(事業主負担分)法定福利費損金算入
雇用保険料(従業員負担分)預り金→清算給与から天引き・納付時清算
一般拠出金法定福利費損金算入

さらに、社会保険料全体の負担構造は社会保険料の計算方法でも詳述しています。全体像の把握には社会保険の全体像も参考にしてください。

年度更新のスケジュール管理

年度更新は毎年同じ時期に発生する定型業務ですが、6月は社会保険の算定基礎届(7月10日期限)と重なるため、特に人事労務の繁忙期となります。

年間スケジュール(推奨)

時期 準備・作業内容
4月給与計算ソフトの令和8年度料率反映確認
5月中旬前年度賃金台帳の集計準備
5月下旬年度更新通知書の到着確認
6月上旬申告書の記入・賃金総額最終確認
6月中旬〜下旬提出・納付(算定基礎届と並行)
7月10日年度更新期限(社保算定基礎届期限と同日)
10月31日延納第2期
翌年1月31日延納第3期

算定基礎届の詳細は算定基礎届と月額変更届の実務ガイドを参照してください。

よくある質問

従業員が1人だけでも労働保険に加入しなければなりませんか?
はい、従業員を1人でも雇用していれば労働保険(労災保険+雇用保険)の加入義務があります。労働者災害補償保険法第3条および雇用保険法第5条により、事業規模にかかわらず加入が必要です。ただし、雇用保険は週20時間以上・31日以上雇用見込みの労働者に限り加入対象となり、労災保険は全労働者が対象です。代表者1人の法人で従業員がいない場合は、労働保険の加入は不要(特別加入制度を除く)です。
アルバイトやパートも労働保険の対象ですか?
労災保険は全てのアルバイト・パートが対象です。1日だけの短期アルバイトでも、労災保険の対象となり、賃金総額に含めて保険料を計算します。一方、雇用保険は週20時間以上・31日以上雇用見込みの労働者のみ対象となります。労働時間の短いパートや1日限りのアルバイトは、雇用保険の対象外ですが労災保険の対象になる点に注意してください。
年度更新の期限(7月10日)が土日祝日の場合はどうなりますか?
7月10日が土日祝日の場合は、翌営業日が期限となります。例えば7月10日が日曜日の年は、7月11日(月曜日)が期限です。ただし、e-Govでの電子申請は24時間受付のため、7月10日24時までに送信すれば期限内として扱われます。紙申告・窓口納付を予定する場合は、余裕を持って6月下旬までに準備を完了することをお勧めします。
概算保険料が前年より大幅に増減する場合、見込み賃金総額はどう算出すべきですか?
賃金総額が前年度の2倍超または50%未満になる見込みの場合、新たな見込み賃金総額で概算保険料を算出します。算出根拠として、事業計画・新規採用計画・閉店計画などの資料を準備しておくと、労働基準監督署からの問い合わせに対応しやすくなります。事業規模の大幅な変動がない場合は、前年度と同額を見込み賃金総額とする「継続事業の原則」を適用します。
延納(分割納付)を選択すべきケースと一括納付すべきケースは?
概算保険料額が40万円以上で延納要件を満たし、かつキャッシュフローに余裕がない事業場は延納を選択するのが一般的です。延納は利息や手数料が発生しないため、無料で3回分割できる制度です。一方、資金に余裕がある事業場は一括納付でも問題ありません。延納を選択したからといって不利益はないため、キャッシュフロー管理の観点で判断すればよいでしょう。
雇用保険に加入していない短時間労働者の賃金は年度更新で除外できますか?
雇用保険の算定においては除外できますが、労災保険の算定においては除外できません。週20時間未満のパート・アルバイトは、雇用保険の対象外ですが労災保険の対象です。そのため、年度更新では労災保険料計算用の賃金総額と、雇用保険料計算用の賃金総額の2系統を管理する必要があります。給与ソフトによっては自動で区分集計できる機能があります。
一人親方や一人社長は労働保険に加入できますか?
通常の労働保険には加入できませんが、「特別加入制度」を利用することで労災保険に加入できます。中小事業主特別加入(第1種)、一人親方特別加入(第2種)、海外派遣者特別加入(第3種)の3類型があり、労働保険事務組合経由での申請が必要です。給付基礎日額3,500円〜25,000円の範囲で選択でき、年間保険料と災害時の補償内容のバランスで決定します。詳細は労災保険の特別加入をご参照ください。
労働保険料率は毎年変わるのですか?
労災保険料率は3年に1度改定されることが多く、直近では令和6年度に改定されました(令和8年度は令和7年度と同じ料率)。雇用保険料率は毎年度見直され、年度により変動します。令和8年度の雇用保険料率は一般事業の労働者負担0.5%へ引き下げられました。給与計算ソフトの料率設定は、毎年4月の料率切替を必ず行うこと。未更新だと控除額を誤り、後日従業員に対して精算が発生します。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 労働保険は労災保険(事業主全額負担)と雇用保険(労使折半)の総称で、従業員を1人でも雇用すれば加入義務が発生する
  • 令和8年度の労災保険料率は令和7年度から変更なし、雇用保険料率は引き下げ(一般事業労働者負担0.5%・事業主負担0.9%)
  • 年度更新は毎年6月1日〜7月10日の期間に、前年度確定保険料の精算と当年度概算保険料の申告・納付を行う最重要業務
  • 7ステップ実務フロー(賃金総額集計→確定保険料算出→概算賃金総額見込み→概算保険料算出→差額精算→申告書作成→納付)が年度更新の基本手順
  • 概算保険料40万円以上(両保険成立時)で延納(3期分割)が可能、労働保険事務組合委託なら金額にかかわらず延納可能
  • 一般拠出金(賃金総額×0.02/1000)も年度更新時に併せて申告・納付する必要がある
  • 電子申請(e-Gov・GビズIDプライム)を導入すれば、年度更新の作業時間を大幅に短縮でき、提出期限ギリギリでも対応可能
  • 期限徒過すると延滞金(年9〜14.6%)や追徴金(決定保険料×10%)が発生するため、4〜5月からのスケジュール管理が重要

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