労災保険の給付の種類|療養・休業・障害・遺族補償を一覧で解説

労災保険の給付の種類|療養・休業・障害・遺族補償を一覧で解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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労災保険には8種類の給付があり、それぞれの対象・金額・時効が異なります。本記事では全給付を一覧表で整理し、障害等級別の給付額早見表、2021年改正の過労死認定基準、通勤災害の認定要件まで解説します。被災労働者と事業主の双方が知っておくべき実務情報です。

🏆 結論:労災給付は8種類・給付基礎日額が全ての基準

労災給付は療養・休業・傷病年金・障害・遺族・葬祭・介護・二次健診の8種類。年金系(休業/傷病/障害/遺族)はすべて給付基礎日額(被災前3ヶ月の平均賃金)をベースに日数計算されます。障害等級1〜7級は年金、8〜14級は一時金。過労死認定は月100時間超または2〜6ヶ月平均80時間超が目安です。

労災保険の給付8種類【完全一覧】

労災保険法第12条の8等により、業務災害・複数業務要因災害・通勤災害に対して8種類の給付が用意されています。まず全体像を一覧表で把握しましょう。

給付の種類 支給事由 主な給付内容 時効
① 療養(補償)給付業務・通勤災害で治療が必要治療費の現物給付または費用還付2年
② 休業(補償)給付療養のため労務不能で賃金を受けない給付基礎日額の60%+特別支給金20%(4日目〜)2年
③ 傷病(補償)年金療養開始後1年6ヶ月経過・傷病等級該当等級別年金(245〜313日分)職権で支給決定
④ 障害(補償)給付治癒後に後遺障害が残る1〜7級は年金・8〜14級は一時金5年
⑤ 遺族(補償)給付被災労働者が死亡遺族年金または一時金(1,000日分)5年
⑥ 葬祭料・葬祭給付被災労働者の葬祭31.5万円+給付基礎日額30日分(or 60日分の高い方)2年
⑦ 介護(補償)給付障害・傷病年金1〜2級で介護を受けている月額最大17.1万円(常時介護)2年
⑧ 二次健康診断等給付定期健診で脳心臓疾患リスク要因に異常年1回の二次健診・特定保健指導3ヶ月以内請求

💡 実務のポイント:「補償」の有無は業務災害か通勤災害か

給付の正式名称に「補償」が入るのは業務災害(例:「療養補償給付」)、入らないのは通勤災害(例:「療養給付」)です。これは労働基準法第75〜88条で事業主が負う「災害補償責任」を政府が代行するか(業務災害)、単なる保険給付か(通勤災害)の違いによるもので、給付水準に差はありません。実務では申請様式の使い分けに影響するため、被災時に「業務中か通勤中か」の事実確認が重要です。

① 療養(補償)給付の詳細

療養(補償)給付は、業務災害または通勤災害による負傷・疾病の治療費を全額カバーする給付です。労災保険法第13条により、現物給付と現金給付の2種類に分かれます。

療養の給付(現物給付)と療養の費用の支給(現金給付)

区分 受診先 手続き 被災者の負担
療養の給付(現物)労災病院・労災指定医療機関様式第5号(業務)・16号の3(通勤)無料で治療
療養の費用(現金)労災指定外の医療機関様式第7号(業務)・16号の5(通勤)全額立替後、労災から還付

給付の対象となる治療範囲

健康保険と異なり、被災者の自己負担は一切ありません。差額ベッド代も、治療上必要と医師が認めれば給付対象です。弊所が関与した製造業の顧問先で、特殊な外国製義足(約280万円)が療養給付で全額カバーされたケースがあります。

② 休業(補償)給付の詳細

支給要件と計算式

休業(補償)給付は、以下の3要件をすべて満たした場合に支給されます(労災保険法第14条)。

  1. 業務上または通勤による傷病のための療養を要すること
  2. 労働することができないこと(全部労務不能または一部労務不能)
  3. 賃金を受けていないこと(有給休暇使用中は対象外)

計算式は以下の通りです。

🧮 休業給付の計算式

休業(補償)給付 = 給付基礎日額 × 60% × 休業日数(待期3日間除く)
休業特別支給金 = 給付基礎日額 × 20% × 休業日数
合計:給付基礎日額の80%(4日目以降)

※給付基礎日額=被災前3ヶ月の賃金総額 ÷ 暦日数(労働基準法の平均賃金と同概念)
※3日間の待期は事業主が平均賃金の60%を直接補償(労働基準法第76条)

具体的なシミュレーション(月給30万円・休業30日)

項目 計算 金額
給付基礎日額90万円 ÷ 90日10,000円
事業主の休業補償(待期3日)10,000円 × 60% × 3日18,000円
休業(補償)給付(4日目〜)10,000円 × 60% × 27日162,000円
休業特別支給金(4日目〜)10,000円 × 20% × 27日54,000円
被災者受取合計234,000円(月給の約78%)

労災保険法第14条の4により、休業給付は給付基礎日額の算定基礎となる最低限度額(令和6年度4,020円)が定められており、若年労働者や短時間勤務者の給付が極端に低くなることを防いでいます。

③ 傷病(補償)年金の詳細

傷病(補償)年金は、療養開始後1年6ヶ月を経過しても治癒せず、かつ傷病等級1〜3級に該当する重度障害が残っている場合に、休業給付から切り替わる形で支給される年金です。労災保険法第18条に規定されています。

傷病等級 該当障害の例 年金額 特別支給金
第1級両目失明・四肢麻痺・常時介護給付基礎日額313日分114万円+算定日額313日分
第2級両目視力0.02以下・胸腹臓器著障給付基礎日額277日分107万円+算定日額277日分
第3級両手指廃用・精神著障・両目0.1以下給付基礎日額245日分100万円+算定日額245日分

傷病年金への切り替えは被災者の請求ではなく労基署長の職権で行われます。切り替え後は休業給付が支給停止されますが、療養給付は継続します。

④ 障害(補償)給付の詳細【障害等級別早見表】

治癒(症状固定)後に後遺障害が残った場合、障害等級1〜14級に応じて給付されます。1〜7級は年金、8〜14級は一時金です。

障害等級別の給付額一覧(令和6年度)

等級 給付形式 年金/一時金 特別支給金 障害特別給付金
1級年金日額313日分342万円算定日額313日分
2級年金日額277日分320万円算定日額277日分
3級年金日額245日分300万円算定日額245日分
4級年金日額213日分264万円算定日額213日分
5級年金日額184日分225万円算定日額184日分
6級年金日額156日分192万円算定日額156日分
7級年金日額131日分159万円算定日額131日分
8級一時金日額503日分65万円算定日額503日分
9級一時金日額391日分50万円算定日額391日分
10級一時金日額302日分39万円算定日額302日分
11級一時金日額223日分29万円算定日額223日分
12級一時金日額156日分20万円算定日額156日分
13級一時金日額101日分14万円算定日額101日分
14級一時金日額56日分8万円算定日額56日分

障害等級別の主な障害例

等級グループ 代表的な障害
1〜3級(最重度)両目失明・四肢麻痺・遷延性意識障害・高度精神障害
4〜7級(重度)一眼失明他眼視力低下・片上下肢切断・高度腰椎骨折後遺症
8〜10級(中等度)一眼失明・一上下肢機能障害・10歯以上歯科補綴
11〜14級(軽度)視力低下・線状痕(醜状)・局部的神経症状・関節機能制限

💡 実務のポイント:等級認定の争い

実務で最も争いになるのが障害等級の認定です。特に12級と14級の境界(局部的神経症状の「頑固」要件)、9級と10級の境界(視力・関節可動域)は医学的評価の幅が大きく、認定結果に大きな金額差が生じます。弊所が顧問先の工場で関与した指切断事故では、当初13級と認定されましたが、精密な可動域検査と専門医の意見書を添えて審査請求し、最終的に11級に是正され、給付額が約180万円増加した事例があります。

障害年金前払一時金

障害等級1〜7級の年金受給者は、給付基礎日額の200〜1,340日分を限度として、年金の前払い一時金を一括受給できます(労災保険法第59条)。当面の生活費・住宅改修・医療機器購入などに充てるケースが多いです。前払いを受けた期間は年金が支給停止されます。

⑤ 遺族(補償)給付の詳細

被災労働者が業務災害・通勤災害により死亡した場合、生計維持していた遺族に年金または一時金が支給されます(労災保険法第16条〜)。

遺族年金の受給順位

遺族(補償)年金を受給できるのは、死亡した労働者により生計を維持していた以下の遺族で、順位上位者のみが受給します。

  1. (配偶者に内縁関係含む)または 60歳以上か一定の障害ある夫
  2. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子(または一定の障害ある子)
  3. 60歳以上または一定の障害ある父母
  4. 18歳未満または一定の障害ある孫
  5. 60歳以上または一定の障害ある祖父母
  6. 18歳未満または60歳以上、一定の障害ある兄弟姉妹

遺族数別の年金額

遺族数 遺族(補償)年金 遺族特別年金 遺族特別支給金(一時金)
1人給付基礎日額の153日分(※)算定日額153日分(※)300万円
2人給付基礎日額の201日分算定日額201日分300万円
3人給付基礎日額の223日分算定日額223日分300万円
4人以上給付基礎日額の245日分算定日額245日分300万円

※1人の場合で妻(内縁含む)が55歳以上または一定の障害があるときは175日分。

遺族一時金(年金受給資格者がいないとき)

遺族年金の受給資格者がいない場合、給付基礎日額の1,000日分の遺族(補償)一時金が支給されます。配偶者・子がなく、独身者が単身赴任先で亡くなったケースなどで適用されます。

⑥ 葬祭料・葬祭給付

葬祭を行った者に対し、以下のいずれか高い方が支給されます(労災保険法第17条)。

給付基礎日額が5,250円を超える場合は前者、5,250円以下の場合は後者が適用されます。一般的な給与水準(給付基礎日額10,000円以上)では前者の31.5万円+30日分(例:61.5万円)となるケースが多いです。遺族年金を受け取る遺族以外の親族や第三者(会社・友人)が葬祭を行った場合も請求可能です。

⑦ 介護(補償)給付の詳細

障害(補償)年金または傷病(補償)年金の受給者のうち、障害等級または傷病等級第1級・第2級(精神神経・胸腹部臓器の障害者)に該当し、かつ現に介護を受けている方に、月単位で支給されます(労災保険法第19条の2)。

常時介護と随時介護の支給額

区分 支給上限(実費介護) 最低保障額(親族介護)
常時介護(1級)月171,650円月75,290円
随時介護(2級)月85,780円月37,600円

※金額は令和4年3月改定値。親族介護の場合は実費ゼロでも最低保障額が支給されます。

⑧ 二次健康診断等給付

定期健康診断で脳・心臓疾患のリスク要因(血圧・血中脂質・血糖・腹囲/BMI)のすべての項目で異常所見があった場合、被災前に無料で受けられる給付です(労災保険法第26条)。

一次健診受診から3ヶ月以内に請求する必要があります。予防的な給付のため、ほかの7種類とは性格が異なります。

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通勤災害の認定要件【逸脱・中断の判定】

通勤の定義(労災保険法第7条第2項・第3項)

通勤とは、労働者が就業に関し、以下の移動を合理的な経路・方法で行うことです。

  1. 住居と就業場所との間の往復(最も典型)
  2. 就業場所から他の就業場所への移動(副業先への移動)
  3. 単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動(月1回程度の帰省)

「合理的な経路」は通常利用する経路のほか、工事迂回・事故渋滞を避けた経路も含まれます。「合理的な方法」は電車・バス・自家用車・自転車・徒歩が該当し、業務との関連性がある限り通勤と認められます。

逸脱・中断後の認定ルール

通勤経路から「逸脱」(目的と異なる方向への移動)または「中断」(通勤と関係ない行為)が発生すると、その間および以後の移動は通勤と認められません(原則)。ただし、労災保険法施行規則第8条で定める以下の行為は例外で、合理的経路に復帰した後は再び通勤として扱われます。

行為 通勤該当後 具体例
日用品の購入○ 復帰後は通勤スーパーでの夕食買物
職業訓練・教育訓練○ 復帰後は通勤資格講座受講
選挙権行使○ 復帰後は通勤投票所への立ち寄り
病院・診療所での受診○ 復帰後は通勤通院治療
親族の介護○ 復帰後は通勤要介護状態の実父の介護
友人宅への立ち寄り× 通勤ではない帰宅途中の飲み会
ショッピング・観光× 通勤ではない大型商業施設でのショッピング

過労死・精神障害の労災認定基準

脳・心臓疾患の認定基準(2021年9月改正)

厚生労働省は2021年9月、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」を約20年ぶりに改正しました。厚生労働省の脳・心臓疾患の労災認定基準により、過労死ラインと言われる時間外労働時間数は以下の通りです。

時間外労働 業務との関連性 労災認定可能性
発症前1ヶ月におおむね100時間超極めて強い高い
発症前2〜6ヶ月平均で80時間超極めて強い高い
月45時間〜80時間未満徐々に強まる他の負荷要因と総合判断
月45時間以下弱い低い

2021年改正のポイント:労働時間以外の負荷要因

改正により、過労死ラインに達していなくても、以下の労働時間以外の負荷要因が認められる場合、労災認定される可能性が広がりました。

精神障害の認定基準

うつ病・適応障害・急性ストレス反応などの精神障害は、以下の3要件をすべて満たすと労災認定されます(厚生労働省精神障害の労災認定)。

  1. 認定対象となる精神障害を発病していること(ICD-10のF2〜F4分類等)
  2. 発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷・個体側要因により発病したと認められないこと

心理的負荷評価表の主な項目

負荷タイプ 「強」の判定例
長時間労働発病直前1ヶ月で160時間超の残業・3週連続休日なし
仕事の失敗・責任重大事故の責任者・多大な損失発生
パワーハラスメント身体的攻撃・人格否定の継続
セクシュアルハラスメント胸・腰への身体接触・性的関係強要
対人関係のトラブル孤立・仲間外れの継続
カスタマーハラスメント顧客からの暴力・執拗な苦情・対応長期化(2023年追加)

2023年9月の改正で、カスタマーハラスメントや感染症等の病気への対処が心理的負荷評価表に明記され、認定範囲が拡大しました。

⚠️ 注意:精神障害の労災認定は増加傾向

厚生労働省「過労死等防止対策白書」によると、精神障害の労災認定件数は年々増加しています。経営者が「労災認定されるはずがない」と油断していた結果、認定後に民事損害賠償請求(数千万円規模)が続発するケースが多発しています。実務では長時間労働の是正・ハラスメント防止研修・ストレスチェックの徹底が「認定リスク」と「賠償リスク」を同時に下げる最善策です。弊所がIT企業の顧問先で導入した「月45時間超の残業者には産業医面談を義務化」の運用以降、3年間で精神障害労災はゼロで推移しています。

特別支給金の全体像

労災給付(本体)に加えて、「特別支給金」として別途上乗せ給付が行われます。これは労災保険特別支給金支給規則に基づく制度で、本体給付と合わせて給付水準を底上げします。

特別支給金の種類 支給額 対応する本体給付
休業特別支給金給付基礎日額の20%休業給付
傷病特別支給金(一時金)100〜114万円(等級別)傷病年金
傷病特別年金算定基礎日額の245〜313日分傷病年金
障害特別支給金(一時金)8〜342万円(等級別)障害給付
障害特別年金算定基礎日額の131〜313日分障害給付(1〜7級)
障害特別一時金算定基礎日額の56〜503日分障害給付(8〜14級)
遺族特別支給金(一時金)300万円(一律)遺族給付
遺族特別年金算定基礎日額の153〜245日分遺族給付

「算定基礎日額」とは、被災前1年間の特別給与(ボーナス)の総額 ÷ 365で算出します。特別支給金はボーナスも反映されるため、賞与水準の高い労働者は本体給付より特別給付が厚くなる傾向があります。

労災給付請求の時効一覧

労災給付には請求時効があり、期限を過ぎると請求できなくなります(e-Gov 労働者災害補償保険法第42条)。

給付 時効 起算日
療養(補償)給付2年療養を受けた翌日
休業(補償)給付2年休業した翌日
葬祭料・葬祭給付2年労働者が死亡した翌日
介護(補償)給付2年介護を受けた月の翌月1日
障害(補償)給付5年傷病が治った日の翌日
遺族(補償)給付5年労働者が死亡した翌日
二次健康診断等給付3ヶ月一次健診受診日

労災事故対応の全体フロー・死傷病報告の電子申請義務化については労災事故が発生したときの対応フローを、労災保険の加入義務と適用範囲は労災保険の加入義務と適用範囲を、一人親方等の特別加入は労災保険の特別加入制度を参照してください。社会保険全体の位置づけは社会保険の完全ガイド、労働保険の手続きは労働保険の加入手続きと年度更新で解説しています。

よくある質問

労災給付は税金がかかりますか?
原則として非課税です。所得税法第9条第1項第18号により、労災保険からの給付(療養・休業・傷病・障害・遺族・葬祭・介護・二次健診すべて)は所得税および住民税が非課税となります。ただし、民事損害賠償金のうち慰謝料以外の部分(休業損害・逸失利益分)は、労災給付と調整される関係で課税されるケースがあります。会社から支給される見舞金・弔慰金も一定額までは非課税です。
障害等級の認定に不服がある場合、争えますか?
はい、3段階で争えます。第1段階は労働者災害補償保険審査官への「審査請求」(決定通知から3ヶ月以内)、第2段階は労働保険審査会への「再審査請求」(審査官決定から2ヶ月以内)、第3段階は行政訴訟(再審査決定から6ヶ月以内または直接訴訟)です。実務では医師の意見書・追加検査結果を添えて審査請求するケースが多く、等級が1〜2級繰り上がる例も少なくありません。労災に精通した社労士または弁護士への相談を推奨します。
傷病(補償)年金と障害(補償)年金の違いは?
傷病年金は療養開始後1年6ヶ月時点で「まだ治癒していない」重度障害者に対する年金、障害年金は「治癒(症状固定)後」に残った後遺障害に対する年金です。傷病年金受給中は療養給付が継続し、治癒が認められると障害年金に切り替わります。傷病年金は1〜3級のみですが、障害年金は1〜7級に適用されます。金額はほぼ同等ですが、特別支給金の一時金額が異なります。
遺族年金と遺族厚生年金は同時にもらえますか?
同時受給は可能ですが、労災の遺族年金は調整され減額されます。労災保険法別表第2により、労災遺族年金に0.80〜0.90の率が乗じられます(例:遺族基礎年金+遺族厚生年金を併給している場合、労災遺族年金は80%に減額)。これは同一の死亡事由による重複給付を避けるための調整です。ただし、遺族特別支給金(300万円)や遺族特別年金は調整対象外で全額支給されます。
うつ病で休職していた場合、労災認定されれば既に受けた傷病手当金はどうなりますか?
労災認定されると、それまで受給していた健康保険の傷病手当金は遡って取り消され、健保組合に返還する必要があります。代わりに労災の休業給付(給付基礎日額の60%+特別支給金20%=80%)が遡及適用されます。通常、傷病手当金は標準報酬日額の67%なので、労災に切り替わると受給額が増えるケースが多いです。返還・遡及申請は複雑なため、社労士への委託が実務的です。
通勤災害で家族が怪我をして介護のため早退した日に事故に遭いました。通勤と認められますか?
労災保険法施行規則第8条第5号により、「要介護状態にある配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・配偶者の父母の介護」は、逸脱・中断後も合理的経路に復帰すれば通勤と認められます。ただし、継続的に要介護状態であることの証明(介護保険の要介護認定書等)が必要です。一時的な病気見舞いや様子見程度では認められません。
経営者・役員は労災保険の給付を受けられますか?
原則として役員は労災保険の対象外ですが、中小事業主の特別加入または一人親方の特別加入に加入すれば給付対象となります。特別加入の対象規模は業種別に異なり、建設業は300人以下、金融業・保険業は50人以下などです。給付基礎日額は3,500〜25,000円の16段階から自分で選択して保険料を支払います。詳細は労災保険の特別加入制度で解説しています。
労災給付の受給権は差し押さえの対象になりますか?
いいえ、労災保険法第12条の5により、労災給付を受ける権利は譲渡・担保差入れ・差押えが禁止されています。被災労働者やその家族の生活保障という労災保険の趣旨を守るための規定です。ただし、国税・地方税等の公的債権については、国税徴収法第76条等により一部差押えが可能です。民事債権(借金等)では絶対に差し押さえできません。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 労災給付は8種類(療養・休業・傷病・障害・遺族・葬祭・介護・二次健診)
  • 年金系給付はすべて「給付基礎日額」をベースに日数計算
  • 障害等級1〜7級は年金、8〜14級は一時金
  • 遺族年金の受給は配偶者を筆頭とする順位制。1位のみが受給
  • 特別支給金(ボーナス反映の上乗せ給付)が本体給付と別途支給
  • 通勤災害の逸脱・中断は日用品買物・介護等の例外あり
  • 2021年改正で過労死認定基準に「労働時間以外の負荷要因」が明文化
  • 請求時効は給付ごとに異なる(短いものは2年)
  • 労災給付は所得税・住民税が非課税

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