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労災保険には8種類の給付があり、それぞれの対象・金額・時効が異なります。本記事では全給付を一覧表で整理し、障害等級別の給付額早見表、2021年改正の過労死認定基準、通勤災害の認定要件まで解説します。被災労働者と事業主の双方が知っておくべき実務情報です。


労災保険には8種類の給付があり、それぞれの対象・金額・時効が異なります。本記事では全給付を一覧表で整理し、障害等級別の給付額早見表、2021年改正の過労死認定基準、通勤災害の認定要件まで解説します。被災労働者と事業主の双方が知っておくべき実務情報です。
🏆 結論:労災給付は8種類・給付基礎日額が全ての基準
労災給付は療養・休業・傷病年金・障害・遺族・葬祭・介護・二次健診の8種類。年金系(休業/傷病/障害/遺族)はすべて給付基礎日額(被災前3ヶ月の平均賃金)をベースに日数計算されます。障害等級1〜7級は年金、8〜14級は一時金。過労死認定は月100時間超または2〜6ヶ月平均80時間超が目安です。
労災保険法第12条の8等により、業務災害・複数業務要因災害・通勤災害に対して8種類の給付が用意されています。まず全体像を一覧表で把握しましょう。
| 給付の種類 | 支給事由 | 主な給付内容 | 時効 |
|---|---|---|---|
| ① 療養(補償)給付 | 業務・通勤災害で治療が必要 | 治療費の現物給付または費用還付 | 2年 |
| ② 休業(補償)給付 | 療養のため労務不能で賃金を受けない | 給付基礎日額の60%+特別支給金20%(4日目〜) | 2年 |
| ③ 傷病(補償)年金 | 療養開始後1年6ヶ月経過・傷病等級該当 | 等級別年金(245〜313日分) | 職権で支給決定 |
| ④ 障害(補償)給付 | 治癒後に後遺障害が残る | 1〜7級は年金・8〜14級は一時金 | 5年 |
| ⑤ 遺族(補償)給付 | 被災労働者が死亡 | 遺族年金または一時金(1,000日分) | 5年 |
| ⑥ 葬祭料・葬祭給付 | 被災労働者の葬祭 | 31.5万円+給付基礎日額30日分(or 60日分の高い方) | 2年 |
| ⑦ 介護(補償)給付 | 障害・傷病年金1〜2級で介護を受けている | 月額最大17.1万円(常時介護) | 2年 |
| ⑧ 二次健康診断等給付 | 定期健診で脳心臓疾患リスク要因に異常 | 年1回の二次健診・特定保健指導 | 3ヶ月以内請求 |
💡 実務のポイント:「補償」の有無は業務災害か通勤災害か
給付の正式名称に「補償」が入るのは業務災害(例:「療養補償給付」)、入らないのは通勤災害(例:「療養給付」)です。これは労働基準法第75〜88条で事業主が負う「災害補償責任」を政府が代行するか(業務災害)、単なる保険給付か(通勤災害)の違いによるもので、給付水準に差はありません。実務では申請様式の使い分けに影響するため、被災時に「業務中か通勤中か」の事実確認が重要です。
療養(補償)給付は、業務災害または通勤災害による負傷・疾病の治療費を全額カバーする給付です。労災保険法第13条により、現物給付と現金給付の2種類に分かれます。
| 区分 | 受診先 | 手続き | 被災者の負担 |
|---|---|---|---|
| 療養の給付(現物) | 労災病院・労災指定医療機関 | 様式第5号(業務)・16号の3(通勤) | 無料で治療 |
| 療養の費用(現金) | 労災指定外の医療機関 | 様式第7号(業務)・16号の5(通勤) | 全額立替後、労災から還付 |
健康保険と異なり、被災者の自己負担は一切ありません。差額ベッド代も、治療上必要と医師が認めれば給付対象です。弊所が関与した製造業の顧問先で、特殊な外国製義足(約280万円)が療養給付で全額カバーされたケースがあります。
休業(補償)給付は、以下の3要件をすべて満たした場合に支給されます(労災保険法第14条)。
計算式は以下の通りです。
🧮 休業給付の計算式
休業(補償)給付 = 給付基礎日額 × 60% × 休業日数(待期3日間除く)
休業特別支給金 = 給付基礎日額 × 20% × 休業日数
合計:給付基礎日額の80%(4日目以降)
※給付基礎日額=被災前3ヶ月の賃金総額 ÷ 暦日数(労働基準法の平均賃金と同概念)
※3日間の待期は事業主が平均賃金の60%を直接補償(労働基準法第76条)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 給付基礎日額 | 90万円 ÷ 90日 | 10,000円 |
| 事業主の休業補償(待期3日) | 10,000円 × 60% × 3日 | 18,000円 |
| 休業(補償)給付(4日目〜) | 10,000円 × 60% × 27日 | 162,000円 |
| 休業特別支給金(4日目〜) | 10,000円 × 20% × 27日 | 54,000円 |
| 被災者受取合計 | — | 234,000円(月給の約78%) |
労災保険法第14条の4により、休業給付は給付基礎日額の算定基礎となる最低限度額(令和6年度4,020円)が定められており、若年労働者や短時間勤務者の給付が極端に低くなることを防いでいます。
傷病(補償)年金は、療養開始後1年6ヶ月を経過しても治癒せず、かつ傷病等級1〜3級に該当する重度障害が残っている場合に、休業給付から切り替わる形で支給される年金です。労災保険法第18条に規定されています。
| 傷病等級 | 該当障害の例 | 年金額 | 特別支給金 |
|---|---|---|---|
| 第1級 | 両目失明・四肢麻痺・常時介護 | 給付基礎日額313日分 | 114万円+算定日額313日分 |
| 第2級 | 両目視力0.02以下・胸腹臓器著障 | 給付基礎日額277日分 | 107万円+算定日額277日分 |
| 第3級 | 両手指廃用・精神著障・両目0.1以下 | 給付基礎日額245日分 | 100万円+算定日額245日分 |
傷病年金への切り替えは被災者の請求ではなく労基署長の職権で行われます。切り替え後は休業給付が支給停止されますが、療養給付は継続します。
治癒(症状固定)後に後遺障害が残った場合、障害等級1〜14級に応じて給付されます。1〜7級は年金、8〜14級は一時金です。
| 等級 | 給付形式 | 年金/一時金 | 特別支給金 | 障害特別給付金 |
|---|---|---|---|---|
| 1級 | 年金 | 日額313日分 | 342万円 | 算定日額313日分 |
| 2級 | 年金 | 日額277日分 | 320万円 | 算定日額277日分 |
| 3級 | 年金 | 日額245日分 | 300万円 | 算定日額245日分 |
| 4級 | 年金 | 日額213日分 | 264万円 | 算定日額213日分 |
| 5級 | 年金 | 日額184日分 | 225万円 | 算定日額184日分 |
| 6級 | 年金 | 日額156日分 | 192万円 | 算定日額156日分 |
| 7級 | 年金 | 日額131日分 | 159万円 | 算定日額131日分 |
| 8級 | 一時金 | 日額503日分 | 65万円 | 算定日額503日分 |
| 9級 | 一時金 | 日額391日分 | 50万円 | 算定日額391日分 |
| 10級 | 一時金 | 日額302日分 | 39万円 | 算定日額302日分 |
| 11級 | 一時金 | 日額223日分 | 29万円 | 算定日額223日分 |
| 12級 | 一時金 | 日額156日分 | 20万円 | 算定日額156日分 |
| 13級 | 一時金 | 日額101日分 | 14万円 | 算定日額101日分 |
| 14級 | 一時金 | 日額56日分 | 8万円 | 算定日額56日分 |
| 等級グループ | 代表的な障害 |
|---|---|
| 1〜3級(最重度) | 両目失明・四肢麻痺・遷延性意識障害・高度精神障害 |
| 4〜7級(重度) | 一眼失明他眼視力低下・片上下肢切断・高度腰椎骨折後遺症 |
| 8〜10級(中等度) | 一眼失明・一上下肢機能障害・10歯以上歯科補綴 |
| 11〜14級(軽度) | 視力低下・線状痕(醜状)・局部的神経症状・関節機能制限 |
💡 実務のポイント:等級認定の争い
実務で最も争いになるのが障害等級の認定です。特に12級と14級の境界(局部的神経症状の「頑固」要件)、9級と10級の境界(視力・関節可動域)は医学的評価の幅が大きく、認定結果に大きな金額差が生じます。弊所が顧問先の工場で関与した指切断事故では、当初13級と認定されましたが、精密な可動域検査と専門医の意見書を添えて審査請求し、最終的に11級に是正され、給付額が約180万円増加した事例があります。
障害等級1〜7級の年金受給者は、給付基礎日額の200〜1,340日分を限度として、年金の前払い一時金を一括受給できます(労災保険法第59条)。当面の生活費・住宅改修・医療機器購入などに充てるケースが多いです。前払いを受けた期間は年金が支給停止されます。
被災労働者が業務災害・通勤災害により死亡した場合、生計維持していた遺族に年金または一時金が支給されます(労災保険法第16条〜)。
遺族(補償)年金を受給できるのは、死亡した労働者により生計を維持していた以下の遺族で、順位上位者のみが受給します。
| 遺族数 | 遺族(補償)年金 | 遺族特別年金 | 遺族特別支給金(一時金) |
|---|---|---|---|
| 1人 | 給付基礎日額の153日分(※) | 算定日額153日分(※) | 300万円 |
| 2人 | 給付基礎日額の201日分 | 算定日額201日分 | 300万円 |
| 3人 | 給付基礎日額の223日分 | 算定日額223日分 | 300万円 |
| 4人以上 | 給付基礎日額の245日分 | 算定日額245日分 | 300万円 |
※1人の場合で妻(内縁含む)が55歳以上または一定の障害があるときは175日分。
遺族年金の受給資格者がいない場合、給付基礎日額の1,000日分の遺族(補償)一時金が支給されます。配偶者・子がなく、独身者が単身赴任先で亡くなったケースなどで適用されます。
葬祭を行った者に対し、以下のいずれか高い方が支給されます(労災保険法第17条)。
給付基礎日額が5,250円を超える場合は前者、5,250円以下の場合は後者が適用されます。一般的な給与水準(給付基礎日額10,000円以上)では前者の31.5万円+30日分(例:61.5万円)となるケースが多いです。遺族年金を受け取る遺族以外の親族や第三者(会社・友人)が葬祭を行った場合も請求可能です。
障害(補償)年金または傷病(補償)年金の受給者のうち、障害等級または傷病等級第1級・第2級(精神神経・胸腹部臓器の障害者)に該当し、かつ現に介護を受けている方に、月単位で支給されます(労災保険法第19条の2)。
| 区分 | 支給上限(実費介護) | 最低保障額(親族介護) |
|---|---|---|
| 常時介護(1級) | 月171,650円 | 月75,290円 |
| 随時介護(2級) | 月85,780円 | 月37,600円 |
※金額は令和4年3月改定値。親族介護の場合は実費ゼロでも最低保障額が支給されます。
定期健康診断で脳・心臓疾患のリスク要因(血圧・血中脂質・血糖・腹囲/BMI)のすべての項目で異常所見があった場合、被災前に無料で受けられる給付です(労災保険法第26条)。
一次健診受診から3ヶ月以内に請求する必要があります。予防的な給付のため、ほかの7種類とは性格が異なります。
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鮎澤パートナーズに相談する通勤とは、労働者が就業に関し、以下の移動を合理的な経路・方法で行うことです。
「合理的な経路」は通常利用する経路のほか、工事迂回・事故渋滞を避けた経路も含まれます。「合理的な方法」は電車・バス・自家用車・自転車・徒歩が該当し、業務との関連性がある限り通勤と認められます。
通勤経路から「逸脱」(目的と異なる方向への移動)または「中断」(通勤と関係ない行為)が発生すると、その間および以後の移動は通勤と認められません(原則)。ただし、労災保険法施行規則第8条で定める以下の行為は例外で、合理的経路に復帰した後は再び通勤として扱われます。
| 行為 | 通勤該当後 | 具体例 |
|---|---|---|
| 日用品の購入 | ○ 復帰後は通勤 | スーパーでの夕食買物 |
| 職業訓練・教育訓練 | ○ 復帰後は通勤 | 資格講座受講 |
| 選挙権行使 | ○ 復帰後は通勤 | 投票所への立ち寄り |
| 病院・診療所での受診 | ○ 復帰後は通勤 | 通院治療 |
| 親族の介護 | ○ 復帰後は通勤 | 要介護状態の実父の介護 |
| 友人宅への立ち寄り | × 通勤ではない | 帰宅途中の飲み会 |
| ショッピング・観光 | × 通勤ではない | 大型商業施設でのショッピング |
厚生労働省は2021年9月、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」を約20年ぶりに改正しました。厚生労働省の脳・心臓疾患の労災認定基準により、過労死ラインと言われる時間外労働時間数は以下の通りです。
| 時間外労働 | 業務との関連性 | 労災認定可能性 |
|---|---|---|
| 発症前1ヶ月におおむね100時間超 | 極めて強い | 高い |
| 発症前2〜6ヶ月平均で80時間超 | 極めて強い | 高い |
| 月45時間〜80時間未満 | 徐々に強まる | 他の負荷要因と総合判断 |
| 月45時間以下 | 弱い | 低い |
改正により、過労死ラインに達していなくても、以下の労働時間以外の負荷要因が認められる場合、労災認定される可能性が広がりました。
うつ病・適応障害・急性ストレス反応などの精神障害は、以下の3要件をすべて満たすと労災認定されます(厚生労働省精神障害の労災認定)。
| 負荷タイプ | 「強」の判定例 |
|---|---|
| 長時間労働 | 発病直前1ヶ月で160時間超の残業・3週連続休日なし |
| 仕事の失敗・責任 | 重大事故の責任者・多大な損失発生 |
| パワーハラスメント | 身体的攻撃・人格否定の継続 |
| セクシュアルハラスメント | 胸・腰への身体接触・性的関係強要 |
| 対人関係のトラブル | 孤立・仲間外れの継続 |
| カスタマーハラスメント | 顧客からの暴力・執拗な苦情・対応長期化(2023年追加) |
2023年9月の改正で、カスタマーハラスメントや感染症等の病気への対処が心理的負荷評価表に明記され、認定範囲が拡大しました。
⚠️ 注意:精神障害の労災認定は増加傾向
厚生労働省「過労死等防止対策白書」によると、精神障害の労災認定件数は年々増加しています。経営者が「労災認定されるはずがない」と油断していた結果、認定後に民事損害賠償請求(数千万円規模)が続発するケースが多発しています。実務では長時間労働の是正・ハラスメント防止研修・ストレスチェックの徹底が「認定リスク」と「賠償リスク」を同時に下げる最善策です。弊所がIT企業の顧問先で導入した「月45時間超の残業者には産業医面談を義務化」の運用以降、3年間で精神障害労災はゼロで推移しています。
労災給付(本体)に加えて、「特別支給金」として別途上乗せ給付が行われます。これは労災保険特別支給金支給規則に基づく制度で、本体給付と合わせて給付水準を底上げします。
| 特別支給金の種類 | 支給額 | 対応する本体給付 |
|---|---|---|
| 休業特別支給金 | 給付基礎日額の20% | 休業給付 |
| 傷病特別支給金(一時金) | 100〜114万円(等級別) | 傷病年金 |
| 傷病特別年金 | 算定基礎日額の245〜313日分 | 傷病年金 |
| 障害特別支給金(一時金) | 8〜342万円(等級別) | 障害給付 |
| 障害特別年金 | 算定基礎日額の131〜313日分 | 障害給付(1〜7級) |
| 障害特別一時金 | 算定基礎日額の56〜503日分 | 障害給付(8〜14級) |
| 遺族特別支給金(一時金) | 300万円(一律) | 遺族給付 |
| 遺族特別年金 | 算定基礎日額の153〜245日分 | 遺族給付 |
「算定基礎日額」とは、被災前1年間の特別給与(ボーナス)の総額 ÷ 365で算出します。特別支給金はボーナスも反映されるため、賞与水準の高い労働者は本体給付より特別給付が厚くなる傾向があります。
労災給付には請求時効があり、期限を過ぎると請求できなくなります(e-Gov 労働者災害補償保険法第42条)。
| 給付 | 時効 | 起算日 |
|---|---|---|
| 療養(補償)給付 | 2年 | 療養を受けた翌日 |
| 休業(補償)給付 | 2年 | 休業した翌日 |
| 葬祭料・葬祭給付 | 2年 | 労働者が死亡した翌日 |
| 介護(補償)給付 | 2年 | 介護を受けた月の翌月1日 |
| 障害(補償)給付 | 5年 | 傷病が治った日の翌日 |
| 遺族(補償)給付 | 5年 | 労働者が死亡した翌日 |
| 二次健康診断等給付 | 3ヶ月 | 一次健診受診日 |
労災事故対応の全体フロー・死傷病報告の電子申請義務化については労災事故が発生したときの対応フローを、労災保険の加入義務と適用範囲は労災保険の加入義務と適用範囲を、一人親方等の特別加入は労災保険の特別加入制度を参照してください。社会保険全体の位置づけは社会保険の完全ガイド、労働保険の手続きは労働保険の加入手続きと年度更新で解説しています。
📋 この記事のポイント
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