源泉徴収票の見方|各項目の意味と確定申告での使い方を税理士が図解

源泉徴収票の見方|各項目の意味と確定申告での使い方を税理士が図解
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

源泉徴収票の見方|各項目の意味と確定申告での使い方

「源泉徴収票をもらったけど、どの数字が何を意味しているのかわからない」「確定申告の書類にどう転記すればいいのか」と悩む給与所得者に向けて、源泉徴収票の4大項目の読み方から確定申告書への転記方法までを完全ガイドします。

🏆 結論:まず押さえるべきは4つの数字だけ

源泉徴収票には多くの項目がありますが、最も重要なのは①支払金額(あなたの年収)②給与所得控除後の金額(年収から経費的な控除を引いた金額)③所得控除の額の合計額(社会保険料や扶養控除などの合計)④源泉徴収税額(1年間に納めた所得税の確定額)の4つです。この4つの数字の流れを理解すれば、所得税の計算プロセスが一目でわかるようになります。

源泉徴収票とは?しくみと3つの種類

源泉徴収票とは、会社が従業員に対して1年間に支払った給与の総額と、源泉徴収した所得税額をまとめた書類です。会社員の場合、年末調整後の12月〜翌年1月に勤務先から交付されます。

源泉徴収票には3つの種類があります。

種類 対象 交付タイミング
給与所得の源泉徴収票会社員・パート・アルバイトなど給与を受け取る全員年末調整後(12月〜翌年1月)または退職後1か月以内
退職所得の源泉徴収票退職金を受け取った人退職後1か月以内
公的年金等の源泉徴収票公的年金を受け取っている人翌年1月頃

本記事では最もよく目にする「給与所得の源泉徴収票」を中心に解説します。

4大項目の意味と計算の流れ【所得税の計算プロセスを可視化】

源泉徴収票は、所得税が計算される過程を1枚の紙にまとめたものです。4つの数字の関係を理解すれば、源泉徴収票の見方は9割わかったことになります。

ステップ 項目名 意味 計算方法
支払金額1年間の給与・賞与の総額(=額面年収)基本給+残業代+賞与+各種手当(通勤手当は除く)
給与所得控除後の金額支払金額から「給与所得控除」を差し引いた金額(=給与所得)① − 給与所得控除額(年収に応じて65万〜195万円)
所得控除の額の合計額基礎控除・社会保険料控除・扶養控除などの合計各種所得控除の積み上げ(16種類の控除の合計)
源泉徴収税額1年間に確定した所得税額(復興特別所得税を含む)(② − ③) × 所得税率 − 税額控除 + 復興特別所得税

💡 実務のポイント

「年収はいくらですか?」と聞かれたときに答えるべきは①支払金額の数字です。転職活動やローン審査で「年収」を記入する場合はこの金額を使います。一方、確定申告やふるさと納税の限度額計算で使うのは②給与所得控除後の金額です。場面によって使う数字が異なる点を覚えておきましょう。

年収別の所得税計算シミュレーション

源泉徴収票の4つの数字がどのように連動しているかを、年収400万円・600万円・800万円の3パターンで具体的に確認しましょう。

📐 シミュレーション前提条件

  • 配偶者なし・扶養親族なし(独身)
  • 社会保険料は年収の約15%と仮定
  • 令和7年度改正後の基礎控除を適用(合計所得金額に応じて58万〜95万円)
  • 住宅ローン控除なし
計算ステップ 年収400万円 年収600万円 年収800万円
①支払金額400万円600万円800万円
給与所得控除額124万円164万円190万円
②給与所得控除後の金額276万円436万円610万円
社会保険料控除約60万円約90万円約120万円
基礎控除68万円63万円58万円
③所得控除の額の合計額約128万円約153万円約178万円
課税所得(② − ③)約148万円約283万円約432万円
適用税率5%10%20%
④源泉徴収税額(復興税込)約7.5万円約18.8万円約43.5万円

※概算値です。令和7年度改正の基礎控除額(暫定措置含む)を適用。復興特別所得税2.1%を含む。実際の数値は個別の状況により異なります。

参考: 国税庁「No.1410 給与所得控除」 / 国税庁「No.2260 所得税の税率」

年末調整の基本的なしくみは、「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」で詳しく解説しています。

源泉徴収票の下段:所得控除の内訳を読む

源泉徴収票の下段には、③「所得控除の額の合計額」の内訳が記載されています。どの控除がいくら適用されたかを確認する際に見るべきポイントを整理します。

源泉徴収票の欄 意味 確認ポイント
社会保険料等の金額給与から天引きされた健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の合計離職期間中に自分で払った国民年金・国保は含まれない場合あり
生命保険料の控除額生命保険料控除として適用された金額(最大12万円)新制度・旧制度の区分は源泉徴収票には表示されない
地震保険料の控除額地震保険料控除として適用された金額(最大5万円)旧長期損害保険料は最大1.5万円
住宅借入金等特別控除の額住宅ローン控除として差し引かれた税額控除の金額これは「所得控除」ではなく「税額控除」。④から直接差し引かれる
配偶者控除・配偶者特別控除の額配偶者に関する控除額(0〜48万円)配偶者の氏名・所得の見積額も記載される
控除対象扶養親族の数扶養控除の対象となった親族の人数特定(19〜22歳)・老人(70歳以上)の区分も記載
摘要欄前職分の情報、住宅ローン控除の詳細、その他の備考中途入社の場合、前職の社名・支払金額・税額が記載される

📊 公認会計士の視点

源泉徴収票で見落としやすいのが「住宅借入金等特別控除の額」の位置づけです。住宅ローン控除は「税額控除」であり、「所得控除の額の合計額」には含まれません。③の所得控除とは別に、所得税額から直接差し引かれる仕組みです。そのため、住宅ローン控除が適用されると④の源泉徴収税額が大幅に減りますが、③の数字には影響しない点を理解しておきましょう。

配偶者控除の詳しい適用方法は、「年末調整での配偶者控除・配偶者特別控除の適用方法」で解説しています。

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「年末調整済み」と「年調未済」の見分け方

源泉徴収票には、年末調整が行われたもの(年末調整済み)と、行われていないもの(年調未済)の2種類があります。確定申告が必要かどうかを判断するために、この見分け方を知っておくことが重要です。

判定ポイント 年末調整済み 年調未済
②給与所得控除後の金額金額が記載されている空欄
③所得控除の額の合計額金額が記載されている空欄
④源泉徴収税額年末調整後の確定税額毎月の概算の合計額
確定申告の必要性原則不要(追加控除がある場合は必要)確定申告が必要

💡 実務のポイント

年の途中で退職して年内に再就職しなかった場合の源泉徴収票は「年調未済」になります。②と③が空欄であれば年末調整が済んでいない証拠です。この場合、毎月の源泉徴収で税金を多く払いすぎていることがほとんどですので、確定申告で還付を受けましょう。還付申告は翌年1月1日から5年以内に提出できます。

確定申告書への転記方法【源泉徴収票→確定申告書の対応表】

確定申告が必要な場合、源泉徴収票の数値を確定申告書に転記します。どの項目をどこに書くかを対応表で確認しましょう。

源泉徴収票の項目 確定申告書の記入先 注意点
①支払金額第一表「収入金額等」の「給与」欄複数の勤務先がある場合は合算して記入
②給与所得控除後の金額第一表「所得金額等」の「給与」欄年調未済の場合は自分で給与所得控除額を計算して記入
社会保険料等の金額第一表「所得から差し引かれる金額」の「社会保険料控除」欄自分で払った国民年金等がある場合は上乗せして記入
生命保険料の控除額第一表「所得から差し引かれる金額」の「生命保険料控除」欄源泉徴収票の金額をそのまま転記
④源泉徴収税額第一表「税金の計算」の「源泉徴収税額」欄確定申告で計算した年税額との差が還付/追徴になる
住宅借入金等特別控除の額第一表「税金の計算」の「住宅借入金等特別控除」欄初年度は確定申告で申告(2年目以降は年末調整)

💡 実務のポイント

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、源泉徴収票の内容を画面の案内に沿って入力するだけで、確定申告書が自動作成されます。手書きで転記するよりも計算ミスが少なく、e-Taxでそのまま電子提出も可能です。転記作業に不安がある方はぜひ活用してください。

確定申告の基本的な手続きは、「確定申告とは?対象者・必要書類・手続きの流れを完全ガイド」で詳しく解説しています。

源泉徴収票でセルフチェックすべき6つのポイント

源泉徴収票を受け取ったら、以下の6項目をチェックしましょう。誤りがあった場合は会社に修正を依頼できます。

# チェック項目 確認方法
1支払金額が自分の認識する年収と一致しているか12か月分の給与明細の課税支給額合計+賞与と照合
2扶養親族の人数が正しいか年末調整で申告した扶養控除等申告書の内容と照合
3配偶者控除・配偶者特別控除の額が正しいか配偶者の所得金額と本人の所得金額から早見表で照合
4生命保険料控除が申告した金額で適用されているか保険会社の控除証明書の金額と源泉徴収票の控除額を照合
5住宅ローン控除が反映されているか(2年目以降)「住宅借入金等特別控除の額」に金額が入っているか
6中途入社の場合、前職分が正しく合算されているか摘要欄に前職の社名・支払金額・税額が記載されているか

⚠️ 注意:通勤手当は支払金額に含まれない

源泉徴収票の「支払金額」には、月15万円までの非課税通勤手当は含まれません。そのため、毎月の給与明細の「総支給額」と源泉徴収票の「支払金額」が一致しない場合があります。差額が通勤手当分であれば問題ありません。

源泉徴収票が必要になる6つの場面

源泉徴収票は確定申告以外にもさまざまな場面で必要になります。紛失しないよう大切に保管しましょう。

場面 提出先 ポイント
転職先での年末調整転職先の経理担当者前職分を合算して年末調整するために必須
確定申告税務署e-Taxなら添付省略可。ただし5年間保管義務あり
住宅ローン審査金融機関直近2〜3年分を求められることが多い
賃貸契約不動産会社・管理会社収入証明として提出を求められることがある
保育料の算定市区町村所得に応じて保育料が決まるため
ふるさと納税の限度額計算—(自己計算用)②給与所得控除後の金額と④源泉徴収税額を使用

源泉徴収票の再発行と不交付への対処

源泉徴収票を紛失した場合や、会社が発行してくれない場合の対処法を整理します。

紛失した場合:前職に再発行を依頼する

源泉徴収票の発行は所得税法第226条で定められた会社の義務です。退職後であっても、前職の会社に連絡すれば再発行してもらえます。発行手数料を請求されることはありません。

会社が発行を拒否する場合:税務署に届出を提出する

会社が源泉徴収票の発行を拒否する場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。届出を受けた税務署が会社に対して発行を指導し、場合によっては行政指導の対象となります。

前職が倒産した場合:破産管財人に依頼する

前職が倒産している場合は、破産管財人に源泉徴収票の発行を依頼します。破産管財人が不明な場合は税務署に相談し、給与明細など手元の資料をもとに確定申告で税額を精算する方法もあります。

中途入社・退職時の源泉徴収票の取扱いについては、「中途入社・中途退職の年末調整と確定申告|対応フローを解説」で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

源泉徴収票の「支払金額」と毎月の給与明細の合計が合いません。なぜですか?
最も多い原因は「非課税通勤手当」です。月15万円までの通勤手当は所得税が非課税のため、源泉徴収票の支払金額には含まれません。給与明細の「総支給額」と源泉徴収票の「支払金額」の差が通勤手当の年間合計と一致するか確認してください。それでも合わない場合は、給与計算上のミスの可能性があるため経理担当者に確認しましょう。
「給与所得控除後の金額」が空欄です。これは異常ですか?
空欄の場合は「年調未済」、つまり年末調整が行われていない源泉徴収票です。年の途中で退職した場合や、前職の源泉徴収票が間に合わなかった場合によく見られます。この場合は本人が確定申告を行い、正しい税額に精算する必要があります。
源泉徴収票は何年間保管すべきですか?
最低5年間は保管をおすすめします。確定申告で還付を受ける場合の時効が5年、税務署からの問い合わせに対応するための期間も5年です。また住宅ローン審査では直近2〜3年分を求められることがあるため、すぐに処分せず保管しておきましょう。
パート・アルバイトでも源泉徴収票はもらえますか?
雇用形態に関係なく、給与を支払ったすべての従業員に源泉徴収票を交付する義務が会社にあります。パートやアルバイトでも必ずもらえます。年収103万円以下(令和7年分からは123万円以下)で所得税がかかっていない場合でも、源泉徴収票は交付されます。
副業がある場合、源泉徴収票はどう使いますか?
本業と副業の両方から源泉徴収票を受け取っている場合は、確定申告で2枚の源泉徴収票の金額を合算して申告します。本業(甲欄)の源泉徴収票だけでは1年間の正しい税額が計算できないため、副業(乙欄)分も含めた確定申告が必要です。
源泉徴収票に記載されない控除にはどんなものがありますか?
医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税を含む)、雑損控除の3つは年末調整では適用できず、源泉徴収票には反映されません。これらの控除を受けるには確定申告が必要です。また、住宅ローン控除も初年度は確定申告が必要で、2年目以降から年末調整で適用されます。
源泉徴収票はデータ(PDF等)で受け取っても有効ですか?
有効です。会社が従業員の承諾を得たうえで電子交付(PDF等)することは認められています。ただし、確定申告や住宅ローン審査で紙の提出を求められる場合もあるため、必要に応じて印刷できるようにしておきましょう。e-Taxでの電子申告では源泉徴収票の添付が省略できますが、5年間の保管義務があります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 源泉徴収票で最も重要なのは①支払金額(年収)②給与所得控除後の金額(給与所得)③所得控除の額の合計額④源泉徴収税額の4つ
  • ①から順に控除が引かれて④の税額が決まる計算プロセスを理解すれば、源泉徴収票は読める
  • ②と③が空欄なら「年調未済」。確定申告で税額を精算する必要がある
  • 住宅ローン控除は「税額控除」で、③の所得控除には含まれない点に注意
  • 確定申告書への転記は対応表に沿って行う。国税庁の作成コーナーを使えば自動計算も可能
  • 源泉徴収票は転職・確定申告・住宅ローン・賃貸契約など多くの場面で必要。最低5年間は保管する

源泉徴収票は、あなたの1年間の収入と税金が凝縮された「お金のカルテ」です。見方がわかれば、自分の税金がどう計算されているかが理解でき、節税のヒントも見えてきます。不明な点があれば、税理士にお気軽にご相談ください。

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