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外国税額控除の計算方法|二重課税を避けるための確定申告
海外の配当や不動産所得で外国の税金を払った投資家・海外勤務者に向けて、外国税額控除の計算方法を5ステップで完全ガイドします。この記事を読めば、控除限度額の計算から確定申告書の記載方法まで自分で対応できるようになります。


海外の配当や不動産所得で外国の税金を払った投資家・海外勤務者に向けて、外国税額控除の計算方法を5ステップで完全ガイドします。この記事を読めば、控除限度額の計算から確定申告書の記載方法まで自分で対応できるようになります。
🏆 結論:外国で払った所得税は確定申告で取り戻せる
日本の居住者が外国で所得税を納付した場合、確定申告で「外国税額控除」を適用することで二重課税を解消できます。控除額は「その年の所得税額×(国外所得金額÷所得総額)」で計算した控除限度額が上限です。控除しきれない額は復興特別所得税・住民税からも控除でき、さらに3年間の繰越控除も可能です。確定申告しなければ二重課税のまま損をするため、海外所得がある方は必ず申告してください。
日本の居住者は全世界所得(国内・国外を問わず全ての所得)に対して日本で課税されます。一方、海外で得た所得に対しては、その国でも課税されることがあります。たとえば、米国株の配当は米国で10%の源泉徴収がされたうえで、日本でも所得税の課税対象になります。同じ所得に日本と外国の両方で課税される、これが「二重課税」です。
この二重課税を解消する制度が外国税額控除です(所得税法第95条)。外国で納付した所得税を、一定の限度額の範囲内で日本の所得税から差し引くことができます。
居住者・非居住者の区分の基本については「居住者と非居住者の区分|判定基準と課税範囲の違い」で詳しく解説しています。
| 税金の種類 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 外国の所得税(連邦・州) | ○ | 個人の所得を課税標準とする税 |
| 外国株式の配当に対する源泉徴収税 | ○ | 米国株の10%源泉徴収など |
| 海外不動産所得への課税 | ○ | 不動産所在国の所得税 |
| 付加価値税(VAT)・消費税相当 | × | 所得税ではないため対象外 |
| 外国の固定資産税 | × | 所得を課税標準としていないため |
| 外国の延滞税・加算税 | × | 罰則的な税は対象外 |
| NISA口座の外国配当に対する外国源泉税 | × | 日本で非課税のため外国税額控除は適用不可 |
| 租税条約で免税とされる所得に対する外国税 | × | 条約で控除対象外とされるもの |
⚠️ 注意:NISA口座の外国税は取り戻せない
NISA口座で受け取った外国株の配当には日本の所得税が非課税のため、外国税額控除を適用できません。たとえば米国株の配当は米国で10%源泉徴収されますが、NISA口座の場合はこの10%が取り戻せません。NISA口座と特定口座のどちらで保有するかは、配当の規模と税負担を比較して判断してください。
まず、国内所得と国外所得を合算した全世界所得に対する日本の所得税額を算出します。配当控除や住宅ローン控除などの税額控除を適用した後の金額が計算の基礎となります。
国外源泉所得に係る所得の金額を算定します。これは外国で得た所得の金額であり、純損失や雑損失の繰越控除を適用しない金額(調整国外所得金額)を使用します。なお、調整国外所得金額がその年の所得総額を超える場合は、所得総額が上限となります。
以下の算式で控除限度額を求めます。
所得税の控除限度額 = その年の所得税額 × (調整国外所得金額 ÷ 所得総額)
この算式の意味は、「日本の所得税のうち、海外で稼いだ割合に相当する部分だけを上限として外国税を控除できる」ということです。
外国所得税が所得税の控除限度額を超える場合、超える部分を復興特別所得税からも控除できます。
復興特別所得税の控除限度額 = その年の復興特別所得税額 × (調整国外所得金額 ÷ 所得総額)
| ケース | 外国税額控除額 |
|---|---|
| 外国所得税 ≦ 所得税の控除限度額 | 外国所得税の全額を所得税から控除 |
| 外国所得税 > 所得税の控除限度額 | 所得税の控除限度額 + 超過分のうち復興特別所得税の控除限度額以内の金額 |
| さらに超過する場合 | 残りは住民税の控除限度額(所得税の控除限度額×30%)から控除 |
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 所得総額(600万+50万) | 650万円 |
| 課税所得(650万−48万) | 602万円 |
| 所得税額(602万×20%−42.75万) | 約77.6万円 |
| 国外所得金額 | 50万円 |
| 所得税の控除限度額(77.6万×50万÷650万) | 約5.97万円 |
| 外国所得税額(米国源泉徴収) | 5万円 |
| 外国税額控除額 | 5万円(全額控除) |
※外国所得税5万円 < 控除限度額5.97万円なので、全額控除可能。概算値です。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 所得総額 | 900万円 |
| 課税所得(900万−48万) | 852万円 |
| 所得税額(852万×23%−63.6万) | 約132.4万円 |
| 国外所得金額 | 200万円 |
| 所得税の控除限度額(132.4万×200万÷900万) | 約29.4万円 |
| 外国所得税額(米国課税) | 60万円 |
| 所得税から控除 | 29.4万円 |
| 超過額(60万−29.4万) | 30.6万円 |
| 復興特別所得税の控除限度額 | 約0.6万円 |
| 住民税の控除限度額(29.4万×30%) | 約8.8万円 |
| 合計控除額 | 約38.8万円 |
| 控除限度超過額(翌年以降繰越可能) | 約21.2万円 |
※外国の税率が日本より高い場合、控除しきれない超過額が発生します。超過額は3年間繰越控除が可能です。概算値です。正確な計算は税理士にご相談ください。
💡 実務のポイント
海外不動産投資をしている方は、外国の税率が高い場合に控除しきれない超過額が発生しがちです。この超過額は3年間繰り越せるため、翌年以降に国外所得の割合が変わった場合に活用できます。年間100社以上の申告を担当してきた経験上、繰越控除の適用を忘れている方が非常に多いので、過去3年分の確定申告書を確認することをお勧めします。
外国所得税と控除限度額に差額が生じた場合、3年間の繰越控除が可能です。2つのパターンがあります。
| パターン | 発生する場合 | 翌年以降の使い方 |
|---|---|---|
| 控除限度超過額 | 外国所得税 > 控除限度額(外国の税率が高い場合) | 翌年以降3年間、控除余裕額が生じた年に使える |
| 控除余裕額 | 外国所得税 < 控除限度額(日本の税率の方が高い場合) | 翌年以降3年間、控除限度超過額が生じた年に使える |
📐 前提:海外不動産の所得変動により控除限度超過額が発生・消化されるケース
| 項目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|---|
| 外国所得税額 | 60万円 | 20万円 | 30万円 |
| 控除限度額 | 40万円 | 35万円 | 35万円 |
| 当年の控除額 | 40万円 | 20万円 | 30万円 |
| 超過額の発生 | +20万円 | — | — |
| 余裕額の発生 | — | 15万円 | 5万円 |
| 繰越超過額からの充当 | — | 15万円 | 5万円 |
| 繰越超過額の残高 | 20万円 | 5万円 | 0円 |
このように、1年目に控除しきれなかった20万円が、2年目と3年目に発生した控除余裕額を使って全額消化されています。繰越控除を受けるには、毎年連続して確定申告書を提出する必要があります。国外所得がなかった年も含めて、途切れずに申告してください。
外国税額控除の適用を受けるには、確定申告書に以下の書類を添付する必要があります。
| No. | 書類 | 入手先・備考 |
|---|---|---|
| 1 | 外国税額控除に関する明細書 | 国税庁HPからダウンロード or 確定申告書等作成コーナーで作成 |
| 2 | 外国所得税が課されたことを証明する書類 | 外国の納税証明書・源泉徴収票・証券会社の年間取引報告書 |
| 3 | 国外所得総額の計算に関する明細書 | 国外所得の計算過程・為替換算レートを記載 |
| 4 | 確定申告書 | 外国税額控除額を記載(第一表の㊵欄) |
外国語の書類には原則として日本語訳の添付が必要です。証券会社が発行する年間取引報告書であれば、日本語で外国源泉徴収税額が記載されているため、そのまま使用できます。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、外国税額控除の計算を自動で行ってくれます。主な入力手順は以下のとおりです。
①「税額控除・その他」の画面で「外国税額控除等」を選択→②国名・所得の種類・外国所得税額・為替レートを入力→③国外所得の金額を入力→④控除限度額が自動計算される→⑤繰越控除がある場合は前年以前の控除限度超過額・控除余裕額を入力
確定申告の基本的な手続きについては「確定申告の基礎知識」を参照してください。
💡 実務のポイント:為替換算のタイミング
外国所得税の円換算は、原則として「外国所得税を納付することとなる日」のレート(TTB:対顧客電信買相場)を使用します。ただし、継続適用を条件として「実際に納付した日」のレートを使用することも認められています。為替レートが大きく変動した年は、どちらのレートを使うかで控除額に差が出ることがあります。
| No. | 間違いパターン | 正しい取扱い |
|---|---|---|
| 1 | VATや固定資産税を控除対象に含めた | 所得を課税標準とする税のみが対象。VATや固定資産税は対象外 |
| 2 | NISA口座の外国源泉税を控除申告した | NISA口座は日本で非課税のため外国税額控除は適用不可 |
| 3 | 外国所得税の全額が所得税から戻ると思い込んだ | 控除限度額が上限。外国の税率が高い場合は全額控除できない |
| 4 | 繰越控除の年を途中で確定申告しなかった | 繰越控除は連続して確定申告書を提出していることが要件 |
| 5 | 外国税額の減額があったのに修正しなかった | 減額分は雑所得として総収入金額に算入する必要がある |
⚠️ 注意:確定申告を忘れたら5年以内に更正の請求を
外国税額控除の確定申告を忘れた場合でも、5年以内であれば「更正の請求」によって控除を受けることができます。ただし、更正の請求は通常の確定申告よりも書類作成が複雑になるため、期限内に確定申告を済ませるのが最善です。
外国所得税は、外国税額控除を適用する代わりに、その年の所得の計算上必要経費に算入することも認められています(所得税法第46条)。ただし、外国税額控除と必要経費算入の選択はその年ごとに行うことができ、有利な方を選択できます。
| 項目 | 外国税額控除 | 必要経費算入 |
|---|---|---|
| 控除の仕方 | 税額から直接控除 | 所得から控除 |
| メリット | 二重課税をほぼ完全に解消 | 手続きが簡単 |
| 有利なケース | ほとんどの場合こちらが有利 | 外国税額が少額で控除限度額計算の手間を避けたい場合 |
ほとんどの場合、外国税額控除の方が有利です。必要経費算入は所得を減らすだけなので、税率分しか恩恵がありません。外国税額控除は税額そのものを減らすため、節税効果が大きくなります。
📊 公認会計士の視点
法人の場合も同様に外国税額控除制度があり、計算の基本的な考え方は個人と同じです。ただし、法人税の場合は国外所得金額の上限が全世界所得の90%とされている点、地方法人税には繰越控除が認められていない点など、個人と異なるルールがあります。法人で海外取引がある場合は、個人の外国税額控除とは別途の検討が必要です。
📋 この記事のポイント
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