外国税額控除の計算方法|二重課税を避けるための確定申告【税理士が解説】

外国税額控除の計算方法|二重課税を避けるための確定申告【税理士が解説】
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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外国税額控除の計算方法|二重課税を避けるための確定申告

海外の配当や不動産所得で外国の税金を払った投資家・海外勤務者に向けて、外国税額控除の計算方法を5ステップで完全ガイドします。この記事を読めば、控除限度額の計算から確定申告書の記載方法まで自分で対応できるようになります。

🏆 結論:外国で払った所得税は確定申告で取り戻せる

日本の居住者が外国で所得税を納付した場合、確定申告で「外国税額控除」を適用することで二重課税を解消できます。控除額は「その年の所得税額×(国外所得金額÷所得総額)」で計算した控除限度額が上限です。控除しきれない額は復興特別所得税・住民税からも控除でき、さらに3年間の繰越控除も可能です。確定申告しなければ二重課税のまま損をするため、海外所得がある方は必ず申告してください。

外国税額控除とは?二重課税を防ぐしくみ

なぜ二重課税が発生するのか

日本の居住者は全世界所得(国内・国外を問わず全ての所得)に対して日本で課税されます。一方、海外で得た所得に対しては、その国でも課税されることがあります。たとえば、米国株の配当は米国で10%の源泉徴収がされたうえで、日本でも所得税の課税対象になります。同じ所得に日本と外国の両方で課税される、これが「二重課税」です。

この二重課税を解消する制度が外国税額控除です(所得税法第95条)。外国で納付した所得税を、一定の限度額の範囲内で日本の所得税から差し引くことができます。

居住者・非居住者の区分の基本については「居住者と非居住者の区分|判定基準と課税範囲の違い」で詳しく解説しています。

外国税額控除の対象になる税金・ならない税金

税金の種類 対象 備考
外国の所得税(連邦・州)個人の所得を課税標準とする税
外国株式の配当に対する源泉徴収税米国株の10%源泉徴収など
海外不動産所得への課税不動産所在国の所得税
付加価値税(VAT)・消費税相当×所得税ではないため対象外
外国の固定資産税×所得を課税標準としていないため
外国の延滞税・加算税×罰則的な税は対象外
NISA口座の外国配当に対する外国源泉税×日本で非課税のため外国税額控除は適用不可
租税条約で免税とされる所得に対する外国税×条約で控除対象外とされるもの

参考: 国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」

⚠️ 注意:NISA口座の外国税は取り戻せない

NISA口座で受け取った外国株の配当には日本の所得税が非課税のため、外国税額控除を適用できません。たとえば米国株の配当は米国で10%源泉徴収されますが、NISA口座の場合はこの10%が取り戻せません。NISA口座と特定口座のどちらで保有するかは、配当の規模と税負担を比較して判断してください。

外国税額控除の計算方法【5ステップ】

ステップ1:その年の所得税額を算出する

まず、国内所得と国外所得を合算した全世界所得に対する日本の所得税額を算出します。配当控除や住宅ローン控除などの税額控除を適用した後の金額が計算の基礎となります。

ステップ2:国外所得金額(調整国外所得金額)を算定する

国外源泉所得に係る所得の金額を算定します。これは外国で得た所得の金額であり、純損失や雑損失の繰越控除を適用しない金額(調整国外所得金額)を使用します。なお、調整国外所得金額がその年の所得総額を超える場合は、所得総額が上限となります。

ステップ3:所得税の控除限度額を計算する

以下の算式で控除限度額を求めます。

所得税の控除限度額 = その年の所得税額 × (調整国外所得金額 ÷ 所得総額)

この算式の意味は、「日本の所得税のうち、海外で稼いだ割合に相当する部分だけを上限として外国税を控除できる」ということです。

ステップ4:復興特別所得税の控除限度額を計算する

外国所得税が所得税の控除限度額を超える場合、超える部分を復興特別所得税からも控除できます。

復興特別所得税の控除限度額 = その年の復興特別所得税額 × (調整国外所得金額 ÷ 所得総額)

ステップ5:外国税額控除額を確定する

ケース 外国税額控除額
外国所得税 ≦ 所得税の控除限度額外国所得税の全額を所得税から控除
外国所得税 > 所得税の控除限度額所得税の控除限度額 + 超過分のうち復興特別所得税の控除限度額以内の金額
さらに超過する場合残りは住民税の控除限度額(所得税の控除限度額×30%)から控除

所得パターン別シミュレーション

パターン1:米国株の配当所得のみのケース

📐 シミュレーション前提条件

  • 給与所得(国内):600万円(給与所得控除後)
  • 米国株の配当所得:50万円(米国で10%=5万円が源泉徴収済み)
  • 所得控除は基礎控除48万円のみで簡略化
項目 金額
所得総額(600万+50万)650万円
課税所得(650万−48万)602万円
所得税額(602万×20%−42.75万)約77.6万円
国外所得金額50万円
所得税の控除限度額(77.6万×50万÷650万)約5.97万円
外国所得税額(米国源泉徴収)5万円
外国税額控除額5万円(全額控除)

※外国所得税5万円 < 控除限度額5.97万円なので、全額控除可能。概算値です。

パターン2:給与所得+海外不動産所得のケース

📐 シミュレーション前提条件

  • 給与所得(国内):700万円
  • 海外不動産所得(米国):200万円(米国で30%=60万円が課税済み)
  • 所得控除は基礎控除48万円のみで簡略化
項目 金額
所得総額900万円
課税所得(900万−48万)852万円
所得税額(852万×23%−63.6万)約132.4万円
国外所得金額200万円
所得税の控除限度額(132.4万×200万÷900万)約29.4万円
外国所得税額(米国課税)60万円
所得税から控除29.4万円
超過額(60万−29.4万)30.6万円
復興特別所得税の控除限度額約0.6万円
住民税の控除限度額(29.4万×30%)約8.8万円
合計控除額約38.8万円
控除限度超過額(翌年以降繰越可能)約21.2万円

※外国の税率が日本より高い場合、控除しきれない超過額が発生します。超過額は3年間繰越控除が可能です。概算値です。正確な計算は税理士にご相談ください。

💡 実務のポイント

海外不動産投資をしている方は、外国の税率が高い場合に控除しきれない超過額が発生しがちです。この超過額は3年間繰り越せるため、翌年以降に国外所得の割合が変わった場合に活用できます。年間100社以上の申告を担当してきた経験上、繰越控除の適用を忘れている方が非常に多いので、過去3年分の確定申告書を確認することをお勧めします。

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控除限度超過額と控除余裕額の繰越控除

繰越控除のしくみ

外国所得税と控除限度額に差額が生じた場合、3年間の繰越控除が可能です。2つのパターンがあります。

パターン 発生する場合 翌年以降の使い方
控除限度超過額外国所得税 > 控除限度額(外国の税率が高い場合)翌年以降3年間、控除余裕額が生じた年に使える
控除余裕額外国所得税 < 控除限度額(日本の税率の方が高い場合)翌年以降3年間、控除限度超過額が生じた年に使える

繰越控除の3年間推移シミュレーション

📐 前提:海外不動産の所得変動により控除限度超過額が発生・消化されるケース

項目 1年目 2年目 3年目
外国所得税額60万円20万円30万円
控除限度額40万円35万円35万円
当年の控除額40万円20万円30万円
超過額の発生+20万円
余裕額の発生15万円5万円
繰越超過額からの充当15万円5万円
繰越超過額の残高20万円5万円0円

このように、1年目に控除しきれなかった20万円が、2年目と3年目に発生した控除余裕額を使って全額消化されています。繰越控除を受けるには、毎年連続して確定申告書を提出する必要があります。国外所得がなかった年も含めて、途切れずに申告してください。

確定申告の手続きと必要書類

必要書類一覧

外国税額控除の適用を受けるには、確定申告書に以下の書類を添付する必要があります。

No. 書類 入手先・備考
1外国税額控除に関する明細書国税庁HPからダウンロード or 確定申告書等作成コーナーで作成
2外国所得税が課されたことを証明する書類外国の納税証明書・源泉徴収票・証券会社の年間取引報告書
3国外所得総額の計算に関する明細書国外所得の計算過程・為替換算レートを記載
4確定申告書外国税額控除額を記載(第一表の㊵欄)

外国語の書類には原則として日本語訳の添付が必要です。証券会社が発行する年間取引報告書であれば、日本語で外国源泉徴収税額が記載されているため、そのまま使用できます。

確定申告書等作成コーナーでの入力手順

国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、外国税額控除の計算を自動で行ってくれます。主な入力手順は以下のとおりです。

①「税額控除・その他」の画面で「外国税額控除等」を選択→②国名・所得の種類・外国所得税額・為替レートを入力→③国外所得の金額を入力→④控除限度額が自動計算される→⑤繰越控除がある場合は前年以前の控除限度超過額・控除余裕額を入力

確定申告の基本的な手続きについては「確定申告の基礎知識」を参照してください。

💡 実務のポイント:為替換算のタイミング

外国所得税の円換算は、原則として「外国所得税を納付することとなる日」のレート(TTB:対顧客電信買相場)を使用します。ただし、継続適用を条件として「実際に納付した日」のレートを使用することも認められています。為替レートが大きく変動した年は、どちらのレートを使うかで控除額に差が出ることがあります。

外国税額控除でよくある間違い

No. 間違いパターン 正しい取扱い
1VATや固定資産税を控除対象に含めた所得を課税標準とする税のみが対象。VATや固定資産税は対象外
2NISA口座の外国源泉税を控除申告したNISA口座は日本で非課税のため外国税額控除は適用不可
3外国所得税の全額が所得税から戻ると思い込んだ控除限度額が上限。外国の税率が高い場合は全額控除できない
4繰越控除の年を途中で確定申告しなかった繰越控除は連続して確定申告書を提出していることが要件
5外国税額の減額があったのに修正しなかった減額分は雑所得として総収入金額に算入する必要がある

⚠️ 注意:確定申告を忘れたら5年以内に更正の請求を

外国税額控除の確定申告を忘れた場合でも、5年以内であれば「更正の請求」によって控除を受けることができます。ただし、更正の請求は通常の確定申告よりも書類作成が複雑になるため、期限内に確定申告を済ませるのが最善です。

外国税額控除と他の制度の比較

外国税額控除 vs 必要経費算入

外国所得税は、外国税額控除を適用する代わりに、その年の所得の計算上必要経費に算入することも認められています(所得税法第46条)。ただし、外国税額控除と必要経費算入の選択はその年ごとに行うことができ、有利な方を選択できます。

項目 外国税額控除 必要経費算入
控除の仕方税額から直接控除所得から控除
メリット二重課税をほぼ完全に解消手続きが簡単
有利なケースほとんどの場合こちらが有利外国税額が少額で控除限度額計算の手間を避けたい場合

ほとんどの場合、外国税額控除の方が有利です。必要経費算入は所得を減らすだけなので、税率分しか恩恵がありません。外国税額控除は税額そのものを減らすため、節税効果が大きくなります。

📊 公認会計士の視点

法人の場合も同様に外国税額控除制度があり、計算の基本的な考え方は個人と同じです。ただし、法人税の場合は国外所得金額の上限が全世界所得の90%とされている点、地方法人税には繰越控除が認められていない点など、個人と異なるルールがあります。法人で海外取引がある場合は、個人の外国税額控除とは別途の検討が必要です。

よくある質問(FAQ)

外国税額控除は年末調整で適用できますか?
いいえ、年末調整では適用できません。外国税額控除は確定申告によってのみ適用を受けることができます。外国株の配当で源泉徴収されている方でも、年末調整では処理できないため、別途確定申告が必要です。
確定申告で外国税額控除をすると外国所得税が全額戻りますか?
必ずしも全額は戻りません。控除限度額(日本の所得税額×国外所得割合)が上限です。外国の税率が日本より高い場合は、控除しきれない超過額が発生します。ただし、超過額は3年間繰り越せるため、将来の確定申告で追加控除を受けられる可能性があります。
複数の国から所得がある場合、国ごとに控除限度額を計算しますか?
いいえ。日本の外国税額控除は「一括限度額方式」を採用しています。全ての国の外国所得税を合計し、全ての国の国外所得金額を合計して、一つの控除限度額を計算します。国ごとに別々に計算するわけではありません。
外国税額控除と租税条約の関係はどうなっていますか?
租税条約がある国の場合、条約により源泉税率が軽減されることがあります。たとえば日米租税条約では配当の源泉税率が10%に軽減されています。租税条約で軽減された税率に基づく外国所得税が外国税額控除の対象になります。なお、租税条約で「考慮しない」とされる外国所得税は控除対象外です。
外国税額控除の申告を忘れた場合はどうすればいいですか?
法定申告期限から5年以内であれば、「更正の請求」により外国税額控除を受けることができます。期限後申告として確定申告書を提出することも可能です。ただし、繰越控除を受けるには連続して確定申告書を提出している必要があるため、申告を忘れた年があると繰越控除が途切れる点に注意してください。
米国株の配当で確定申告する場合、特定口座の源泉徴収はどうなりますか?
特定口座(源泉徴収あり)の場合、国内の所得税・住民税は源泉徴収で精算済みです。外国税額控除を受けるために確定申告すると、配当所得が合計所得金額に算入されます。これにより配偶者控除の判定や国民健康保険料に影響が出る場合があるため、控除を受けるメリットと合計所得金額が増えるデメリットを比較して判断してください。所得控除の全体像は「所得控除一覧」で解説しています。
外国で減額された税金はどう処理しますか?
外国税額控除を適用した後に外国所得税が減額された場合、減額された金額のうち外国税額控除の調整に充てられない部分は、減額された年分の雑所得として総収入金額に算入します(所得税法第95条第9項)。減額があった場合は、その年の確定申告で正しく処理してください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 外国税額控除は、海外で納付した所得税を日本の所得税から差し引いて二重課税を解消する制度
  • 控除限度額の計算式は「所得税額×(国外所得金額÷所得総額)」
  • 控除しきれない超過額は復興特別所得税→住民税の順に控除し、さらに3年間繰越可能
  • NISA口座の外国源泉税や、VAT・固定資産税は控除対象外
  • 確定申告でのみ適用可能(年末調整では不可)
  • 繰越控除を受けるには毎年連続して確定申告書を提出する必要がある
  • 為替換算のレート選択や合計所得金額への影響など、実務上の注意点が多いため、複雑なケースは税理士に相談

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