【税理士監修】不動産所得の収入計上時期|家賃・敷金・礼金・更新料の取扱いを完全解説

【税理士監修】不動産所得の収入計上時期|家賃・敷金・礼金・更新料の取扱いを完全解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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不動産所得の収入計上時期|家賃・敷金・礼金・更新料の取扱いを完全解説

不動産賃貸の確定申告で「この収入はいつ計上すればいいの?」と迷う方は多いです。家賃は支払期日、礼金は引渡し日、敷金は返還不要が確定した日と、収入の種類ごとに計上時期が異なります。この記事では、収入項目ごとの計上ルールと仕訳例を税理士が解説します。

🏆 結論:収入計上時期は「入金日」ではなく「契約上の支払日」が原則

不動産所得の収入は、実際にお金を受け取った日ではなく、契約で定められた支払期日に計上するのが原則です(発生主義)。12月に家賃が未収でも、契約上の支払日が12月であればその年の収入に含めます。また、敷金は原則として預り金ですが、返還しない部分は返還不要が確定した時点で収入に計上する必要があります。

不動産所得の収入計上の基本ルール

不動産所得の収入計上は、所得税法第36条に基づく「権利確定主義」が原則です。これは、実際にお金が入金されたかどうかではなく、収入を受け取る権利が確定した時点で計上するという考え方です。

具体的には、国税庁タックスアンサーNo.1376で以下のように定められています。

家賃・地代・共益費の計上時期

ケース 計上時期 具体例
支払日が契約で定められているその定められた支払日「前月末までに翌月分を支払う」→ 前月末が計上日
支払日が定められていない実際に支払いを受けた日入金があった日に計上
「請求があったときに支払う」と定められている請求の日請求書を発行した日に計上
賃貸借契約の存否に係る係争中判決・和解等のあった日係争期間分の賃料をまとめて計上

💡 実務のポイント

実務で最も多い間違いが「入金されていないから計上しなくてよい」という誤解です。契約で「毎月末日までに翌月分を支払う」と定めている場合、12月分の家賃が実際に入金されていなくても、12月末日時点でその年の収入に計上しなければなりません。未入金分は「未収入金」として資産計上します。

参考: 国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期」

収入項目別の計上時期・仕訳例一覧表

不動産賃貸で発生する収入項目ごとに、計上時期と仕訳例を一覧表で整理します。

収入項目 計上時期 収入計上の有無 仕訳(借方/貸方)
家賃・地代契約上の支払期日○ 収入現金/賃貸料
共益費・管理費契約上の支払期日○ 収入現金/賃貸料
礼金引渡し日 or 契約効力発生日○ 収入現金/礼金収入
権利金引渡し日 or 契約効力発生日○ 収入(※)現金/権利金収入
更新料契約更新日○ 収入現金/更新料収入
名義書換料・承諾料引渡し日 or 契約効力発生日○ 収入現金/雑収入
敷金・保証金(全額返還)× 預り金現金/預り敷金
敷金・保証金(償却分)返還不要が確定した日○ 収入預り敷金/雑収入
看板設置料契約上の支払期日○ 収入現金/賃貸料
遅延損害金入金日○ 雑所得現金/雑収入(※不動産所得ではない)

※権利金は金額が土地の更地価額の1/2超の場合、譲渡所得になる場合があります。

年末年始の家賃計上|12月受取の1月分家賃はどうする?

不動産オーナーが最も悩むのが、年末年始をまたぐ家賃の扱いです。「12月末に入金された翌年1月分の家賃は、今年と来年のどちらの収入?」という問題です。

原則法(支払期日基準)の場合

契約で「毎月末日までに翌月分を支払う」と定めている場合、12月末に受け取った1月分の家賃は、契約上の支払期日である12月末日が属する今年の収入になります。これが原則的な取扱いです。

期間対応法(特例)の場合

一定の要件を満たす場合は、収入を対応する期間に按分して計上する「期間対応法」を選択できます。この方法では、12月末に受け取った1月分の家賃を翌年1月の収入とし、今年は前受金として処理します。

項目 原則法(支払期日基準) 期間対応法(特例)
12月受取の1月分家賃今年の収入翌年の収入(今年は前受金)
適用要件なし(全員が適用)帳簿書類を備えて継続的に記帳+前受・未収が1年以内
事業的規模の場合どちらでも選択可選択可(継続適用が条件)
業務的規模の場合原則これのみ1年以内の前受・未収に限り選択可

📊 公認会計士の視点

期間対応法を選択する場合、一度選択したら毎年継続して適用する必要があります。年によって原則法と期間対応法を使い分けることはできません。どちらを選ぶかは、初年度に慎重に決めてください。なお、事業的規模であれば1年超の前受・未収にも期間対応法を適用できますが、業務的規模の場合は1年以内のものに限られます。

敷金・保証金の収入計上時期(3パターン)

敷金や保証金は原則として「預り金」であり、受け取った時点では収入に計上しません。ただし、返還しない部分(敷金償却分)がある場合は、返還不要が確定した時点で収入に計上します。

パターン①:契約時に即時償却が確定している場合

「退去時に敷金の20%を償却する」と契約で定めている場合、20%分は契約締結時(入居時)に返還不要が確定しています。この場合、入居時に敷金の20%を収入計上します。

🧮 仕訳例(敷金30万円・償却率20%の場合)

入居時:
(借方)現金 300,000 /(貸方)預り敷金 240,000 + 雑収入 60,000

退去時(原状回復費用5万円を差引いて返還):
(借方)預り敷金 240,000 /(貸方)現金 190,000 + 修繕費 50,000

パターン②:貸付期間の経過に応じて償却する場合

「1年以内の解約は全額返還、2年以内は70%返還、3年超は50%返還」のような段階的な償却契約の場合、各段階の条件が確定するたびに収入計上します。

🧮 計上例(敷金30万円・段階的償却の場合)

・1年経過時:30万×30%=9万円を収入計上(返還は最高70%に確定)
・2年経過時:30万×(50%−30%)=6万円を収入計上(返還は最高50%に確定)
・退去時:残りの償却分があれば退去日に計上

パターン③:退去時まで償却額が確定しない場合

原状回復費用を敷金から差し引く契約で、退去時に初めて原状回復費用が確定する場合は、退去日に差し引いた金額を収入計上します。実際には原状回復費用と相殺されるため、収入と経費(修繕費)が同額発生するケースが多いです。

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礼金・権利金・更新料の計上時期

礼金の計上時期

礼金は入居時に受け取り、返還しない一時金です。計上時期は、貸付ける資産の引渡しがある場合はその引渡しの日、引渡しを必要としない場合は契約の効力発生日です。実務上はどちらで計上しても認められています。

権利金の計上時期と所得区分の注意点

権利金も礼金と同様に、引渡し日または契約の効力発生日に収入計上します。ただし、土地を貸し付けて権利金を受け取った場合、その金額が土地の更地としての価額の1/2を超えるときは、不動産所得ではなく譲渡所得として扱われる場合があります(所得税法施行令第79条)。

⚠️ 注意:権利金が譲渡所得になるケース

借地権の設定に際して受け取った権利金の額が、その土地の更地価額の1/2を超える場合は、借地権の譲渡があったものとみなされ、不動産所得ではなく譲渡所得として課税されます。この判定を誤ると、所得区分・税率・損益通算の可否がすべて変わるため、高額な権利金を受け取る場合は必ず税理士に確認してください。

更新料の計上時期

賃貸借契約の更新に伴って受け取る更新料は、契約の効力発生日(契約更新日)に収入計上します。更新料を受け取った日ではない点に注意が必要です。たとえば、更新日が1月1日で更新料を12月に前払いで受け取った場合、収入計上は翌年の1月1日です。

未収家賃・滞納家賃の処理方法

家賃が契約上の支払期日に入金されなかった場合でも、支払期日に収入を計上しなければなりません。この場合、「未収入金」として資産計上します。

未収家賃の仕訳

🧮 仕訳例(12月分家賃10万円が未入金の場合)

12月末(計上時):
(借方)未収入金 100,000 /(貸方)賃貸料 100,000

翌年1月に入金された場合:
(借方)現金 100,000 /(貸方)未収入金 100,000

滞納が長期化して回収不能になった場合

滞納家賃が回収不能になった場合の処理は、事業的規模と業務的規模で異なります。

項目 事業的規模 業務的規模
処理方法貸倒損失として必要経費に計上その年の収入がなかったものとして処理
計上時期回収不能が確定した年回収不能が確定した年(過年度分は更正の請求が必要)
仕訳貸倒損失/未収入金賃貸料(取消)/未収入金

💡 実務のポイント

家賃滞納が3ヶ月程度続くケースは珍しくありませんが、この段階では「回収不能が確定した」とは言えません。法的に回収不能と認められるのは、相手が破産した場合、連絡が完全に取れなくなった場合、夜逃げした場合など、客観的に回収の見込みがないと判断できる場合です。滞納が発生したら早めに内容証明郵便で督促し、回収不能の判断に必要な記録を残しておくことが大切です。

事業的規模と業務的規模の違いについては「不動産貸付けの事業的規模(5棟10室基準)と税務上の違い」で詳しく解説しています。

土地を貸し付けて権利金をもらった場合の特殊な取扱い

土地を貸し付けて権利金を受け取った場合、通常は不動産所得の収入として計上しますが、一定の条件に該当すると所得区分が変わります。

不動産所得になるケース

権利金の金額が土地の更地価額の1/2以下の場合は、通常どおり不動産所得として計上します。建物の所有を目的としない土地の賃貸借(駐車場や資材置き場など)の権利金も、不動産所得です。

譲渡所得になるケース

建物の所有を目的とする土地の賃貸借において、権利金の金額が土地の更地価額の1/2を超える場合は、借地権の譲渡があったものとみなされ、譲渡所得として課税されます。この場合の取得費は、土地の取得価額のうち借地権割合に相当する部分です。

海外勤務中に不動産所得がある場合

海外転勤中に日本国内の不動産を賃貸している場合、「非居住者」としての課税ルールが適用されます。

非居住者の不動産所得の取扱い

国内にある不動産の貸付けによる所得は、非居住者であっても日本で課税されます(国内源泉所得)。入居者(賃借人)は家賃を支払う際に原則として20.42%の源泉徴収を行う義務があります。ただし、個人の居住者が自己の居住用として借りている場合は源泉徴収義務はありません。

非居住者は確定申告が必要ですが、日本に住所がないため「納税管理人」を選任して届け出る必要があります。

💡 実務のポイント

海外赴任が決まった時点で、早めに納税管理人の届出書を税務署に提出しましょう。納税管理人は税理士でなくても、親族や信頼できる友人でも構いません。届出を怠ると確定申告ができず、無申告加算税のペナルティを受ける可能性があります。

現金主義の特例(小規模事業者向け)

青色申告者で、前々年分の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下の場合、「現金主義」による収入・経費の計上が認められています。現金主義では、実際に入金があった日に収入を計上し、支払った日に経費を計上します。

この特例を適用するには、その年の3月15日までに「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を税務署に提出する必要があります。

ただし、現金主義を選択すると青色申告特別控除は10万円が上限となり、65万円控除は使えなくなります。事業的規模のオーナーにはデメリットが大きいため、実務では現金主義を選択するケースは少ないです。

確定申告の基本については「確定申告の基礎知識|初めてでもわかる手順と必要書類」をご覧ください。

収入計上のよくある間違い5選

No. 間違いパターン 正しい処理
1未入金の家賃を計上しなかった支払期日に「未収入金」として収入計上が必要
2敷金を受け取った時に全額収入計上した返還義務のある部分は預り金。償却分のみ収入
3更新料を受け取った日に計上した契約更新日(効力発生日)に計上が正しい
4共益費を収入に含めなかった共益費も不動産所得の総収入金額に含める
5滞納家賃の遅延損害金を不動産所得に含めた遅延損害金は不動産所得ではなく雑所得

不動産所得の計算方法の全体像については「不動産所得とは?計算方法と確定申告の手順」で解説しています。青色申告のメリットについては「青色申告のメリット・デメリットを税理士が解説」もご参照ください。

よくある質問(FAQ)

12月分の家賃が1月に入金された場合、どちらの年の収入ですか?
契約で「毎月末日までに当月分を支払う」と定めていれば、12月末日が支払期日なので12月の属する年の収入です。実際に入金されていなくても、「未収入金」として収入計上します。
敷金は全額預り金として処理すればいいですか?
全額返還する契約であれば預り金のみで問題ありません。ただし、「退去時に○%償却する」「修繕費を差し引く」等の条件がある場合、返還不要が確定した部分は収入に計上する必要があります。契約書の償却条項を確認してください。
フリーレント期間中の収入はどう処理しますか?
フリーレント期間中は家賃が発生しないため、収入の計上は不要です。フリーレント終了後から契約上の支払期日に従って収入を計上します。
管理会社に委託している場合、家賃の計上時期は入金日ですか?
管理会社を通じて家賃を受け取る場合でも、収入計上時期は契約上の支払期日です。管理会社からの送金日ではありません。ただし、管理手数料を差し引いた金額が送金される場合、総収入金額は管理手数料を差し引く前の家賃全額で、管理手数料は必要経費として別途計上します。
家賃を値下げした場合、差額分は経費になりますか?
家賃の値下げは、単に収入金額が減少するだけで、差額が経費になるわけではありません。値下げ後の家賃で契約を変更し、変更後の金額で収入計上します。
借家人に立退料を支払った場合、不動産所得の経費になりますか?
建物の取壊しや大規模修繕のために借家人に支払った立退料は、その目的に応じて処理が異なります。建物の建替えのための立退料は建物の取得価額に含めるか、または必要経費に算入します。土地の売却のための立退料は譲渡費用になります。
海外赴任中の不動産所得はどう申告しますか?
海外赴任中は「非居住者」となり、国内の不動産所得は日本で確定申告が必要です。赴任前に「納税管理人の届出書」を所轄税務署に提出してください。賃借人が法人の場合は家賃の20.42%を源泉徴収されるため、確定申告で精算します。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 家賃の収入計上時期は「入金日」ではなく「契約上の支払期日」が原則
  • 未入金の家賃も支払期日に「未収入金」として収入計上が必要
  • 敷金は預り金が原則。返還不要が確定した部分のみ収入計上
  • 礼金・権利金は引渡し日または契約効力発生日に計上
  • 更新料は受取日ではなく契約更新日に計上
  • 権利金が更地価額の1/2超の場合は譲渡所得に区分が変わる
  • 遅延損害金は不動産所得ではなく雑所得として計上する

収入の計上時期を間違えると、翌年に修正申告や更正の請求が必要になり手間が増えます。特に年末年始をまたぐ家賃や敷金の償却タイミングは間違いやすいポイントです。判断に迷う場合は、早めに税理士にご相談ください。

所得控除の全体像については「所得控除の一覧と適用条件」も参考になります。

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