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不動産所得の必要経費一覧|修繕費・減価償却費・管理費の取扱いを完全解説
「この支出は経費に入れていい?」「修繕費と資本的支出の違いは?」不動産賃貸の確定申告で最も悩むのが必要経費の判断です。この記事では、経費になるもの・ならないものを20項目で整理し、特に迷いやすい修繕費の判定フローチャートを税理士が解説します。


「この支出は経費に入れていい?」「修繕費と資本的支出の違いは?」不動産賃貸の確定申告で最も悩むのが必要経費の判断です。この記事では、経費になるもの・ならないものを20項目で整理し、特に迷いやすい修繕費の判定フローチャートを税理士が解説します。
🏆 結論:経費になるかどうかは「不動産賃貸に直接必要な支出か」で判断する
不動産所得の必要経費は、不動産の貸付けに直接必要な支出が対象です。固定資産税・火災保険料・管理費・修繕費・減価償却費・借入金利子などが代表的な経費です。一方、所得税・住民税・国民健康保険料・相続税は経費になりません。特に修繕費と資本的支出の区分は税務調査で最も指摘されやすいポイントで、20万円未満か・3年周期か・60万円未満かの3段階で判定します。
不動産所得の計算上、必要経費に算入できる主な項目を一覧表にまとめます。
| No. | 経費項目 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 減価償却費 | 建物・設備の償却費 | 土地は償却不可 |
| 2 | 固定資産税・都市計画税 | 土地・建物にかかる税金 | 自宅部分は按分 |
| 3 | 不動産取得税 | 物件取得時に1回のみ | 取得した年の経費 |
| 4 | 登録免許税・印紙税 | 登記費用・契約書の印紙 | 取得時は取得価額に含めることも可 |
| 5 | 火災保険料・地震保険料 | 建物の保険料 | 一括払いは期間按分 |
| 6 | 修繕費 | 原状回復・メンテナンス | 資本的支出との区分が必要 |
| 7 | 管理委託料 | 管理会社への手数料(家賃の3〜5%) | − |
| 8 | 借入金利子 | ローンの利息部分 | 元本返済は経費にならない。赤字時は土地利子の制限あり |
| 9 | 仲介手数料 | 入居者募集時の手数料 | 物件購入時の仲介手数料は取得価額 |
| 10 | 広告宣伝費 | 入居者募集の広告費 | − |
| 11 | 交通費 | 物件管理・確認のための交通費 | 記録を残すこと |
| 12 | 税理士報酬 | 確定申告の依頼費用 | 不動産所得に関する部分のみ |
| 13 | 通信費 | 入居者・管理会社との連絡費用 | 私用との按分が必要 |
| 14 | 貸倒損失 | 回収不能な滞納家賃 | 事業的規模のみ(業務的規模は収入取消し) |
| 15 | 個人事業税 | 都道府県への税金 | 事業的規模で課税される場合 |
💡 実務のポイント
経費計上で見落としがちなのが「不動産取得税」と「登録免許税」です。物件を購入した年の翌年に届く不動産取得税の通知書を「もう去年の話だから」と計上し忘れるケースが実務で多く見られます。不動産取得税は、納税通知書が届いた年の経費として計上します。
| 経費にならないもの | 理由 |
|---|---|
| 所得税・復興特別所得税 | 所得に対する税金は経費の対象外 |
| 住民税 | 所得に対する税金は経費の対象外 |
| 相続税 | 財産の取得に対する税金(ただし相続不動産の売却時は取得費に加算できる特例あり) |
| 国民健康保険料・国民年金 | 社会保険料控除で控除(経費ではなく所得控除) |
| 延滞税・加算税・罰金 | ペナルティの性質を持つため経費不可 |
なお、借入金の元本返済部分も経費にはなりません。経費になるのは利息部分のみです。「毎月のローン返済額が経費になる」と誤解している方が多いので注意してください。
減価償却費は不動産所得の必要経費の中で最も金額が大きくなることが多い項目です。建物や建物附属設備の取得価額を法定耐用年数にわたって経費化する仕組みです。
| 構造 | 住宅用 | 事務所用 |
|---|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)・鉄筋コンクリート(RC) | 47年 | 50年 |
| 重量鉄骨 | 34年 | 38年 |
| 軽量鉄骨(骨格3mm超4mm以下) | 27年 | 30年 |
| 木造 | 22年 | 24年 |
中古で取得した建物は、法定耐用年数ではなく「見積耐用年数」で計算できます。実務では以下の簡便法がよく使われます。
📐 簡便法の計算式
📐 シミュレーション前提条件
| パターン | 耐用年数 | 償却率 | 年間償却費 |
|---|---|---|---|
| 新築RC(47年) | 47年 | 0.022 | 44万円 |
| 築25年の中古木造(簡便法4年) | 4年 | 0.250 | 500万円 |
| 築20年の中古RC(簡便法31年) | 31年 | 0.033 | 66万円 |
※概算値です。取得年月や端数処理により実際の金額は異なります。
📊 公認会計士の視点
築25年超の中古木造建物は耐用年数4年で償却できるため、短期間で大きな経費が計上されます。ただし、4年で全額償却すると5年目以降の減価償却費はゼロになり、不動産所得が一気に黒字化して税負担が増えます。中古物件の購入を検討する際は、償却期間終了後のキャッシュフローもシミュレーションしておくことが重要です。
不動産所得の計算方法については「不動産所得とは?計算方法と確定申告の手順」で解説しています。
不動産の修理・改良にかかった費用が「修繕費」(その年の経費)か「資本的支出」(減価償却で複数年で経費化)かは、以下のフローで判定します。
| 判定ステップ | 条件 | 判定結果 |
|---|---|---|
| Step 1 | 金額が20万円未満か? | → Yes:修繕費(全額経費) |
| Step 2 | おおむね3年以内の周期で行う修理か? | → Yes:修繕費 |
| Step 3 | 明らかに原状回復(壊れたものを直す)か? | → Yes:修繕費 |
| Step 4 | 明らかに資産価値を高める or 耐用年数を延ばすか? | → Yes:資本的支出 |
| Step 5 | 金額が60万円未満 or 前年末取得価額の10%以下か? | → Yes:修繕費 |
| Step 6 | 上記いずれにも該当しない | → 30%を修繕費・70%を資本的支出(継続適用が条件) |
参考: 国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」
AYUSAWA PARTNERS
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鮎澤パートナーズに相談する不動産賃貸でよくある工事10項目について、修繕費か資本的支出かの判定目安をまとめます。
| 工事内容 | 修繕費 | 資本的支出 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 外壁塗装(同等グレード) | ○ | − | 定期的なメンテナンスは修繕費 |
| 外壁塗装(高性能塗料に変更) | − | ○ | グレードアップは資本的支出 |
| 壁紙の張替え(同等品) | ○ | − | 原状回復は修繕費 |
| 給湯器の交換(同等品) | ○ | − | 故障に伴う同等品への交換は修繕費 |
| エアコンの新規設置 | − | ○ | 新たな設備の追加は資本的支出 |
| 屋上防水工事(定期) | ○ | − | 周期的なメンテナンスは修繕費 |
| 間取り変更リフォーム | − | ○ | 用途変更のための改造は資本的支出 |
| 避難階段の新設 | − | ○ | 物理的な付加は資本的支出 |
| LED照明への交換 | ○ | − | 照明器具全体の価値増大ではない |
| キッチン交換(同等品) | ○ | − | 同等グレードへの入替は修繕費 |
💡 実務のポイント
税務調査で最も指摘されやすいのが外壁塗装とキッチン・浴室のリフォームです。同等品への交換なら修繕費ですが、グレードアップが含まれると「グレードアップ部分は資本的支出」と指摘されます。工事の見積書で「原状回復部分」と「グレードアップ部分」を分けて記載してもらうことで、税務調査に備えた証拠書類を作れます。
相続により取得した不動産を賃貸している場合、減価償却費の計算方法に注意が必要です。相続の場合は、被相続人(亡くなった方)の取得価額と取得時期を引き継ぎます。
相続で取得した場合、被相続人が使っていた償却方法と未償却残高をそのまま引き継いで計算を続けます。新たに取得した時の価額(相続税評価額や時価)で減価償却を始めるわけではありません。
なお、相続した不動産を売却した場合は、相続税額の一部を取得費に加算できる特例があります(相続税の取得費加算の特例。措法39条)。相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合に適用できます。
⚠️ 注意
相続で取得した不動産を売却する場合、不動産所得ではなく譲渡所得の問題になります。譲渡所得と不動産所得は別の計算となりますので、売却を検討する際は税理士に事前相談することをおすすめします。
不動産賃貸で使用する資産は、取得時に「固定資産台帳」に登録し、毎年の減価償却費を計算します。
固定資産台帳には、資産の名称・取得日・取得価額・耐用年数・償却方法・年間償却額・期末残高を記録します。青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄にも同じ情報を記入するため、固定資産台帳を正確に管理しておくことが確定申告をスムーズに進めるポイントです。
取得価額が10万円未満の資産は、取得した年に全額を経費計上できます(少額減価償却資産)。また、10万円以上20万円未満の資産は、3年間で均等に償却する「一括償却資産」として処理することも可能です。
さらに、令和8年3月31日までに取得した40万円未満の資産は、青色申告者で常時使用する従業員数が500人以下の場合、全額をその年の経費にできる「少額減価償却資産の特例」が使えます。
青色申告のメリットについては「青色申告のメリット・デメリットを税理士が解説」をご参照ください。
物件取得のための借入金の利息は、不動産所得の必要経費に算入できます。ただし、不動産所得が赤字の場合は、土地取得に充てられた借入金利子に相当する部分は損益通算の対象外となります。
損益通算の制限について詳しくは「不動産所得が赤字のときの損益通算」で解説しています。
確定申告書の書き方や提出方法については「確定申告の基礎知識|初めてでもわかる手順と必要書類」で解説しています。所得控除の全体像は「所得控除の一覧と適用条件」も参考になります。
📋 この記事のポイント
経費の計上を正しく行うことは、不動産所得の税負担を適正化する最も基本的な方法です。特に修繕費と資本的支出の判断は金額が大きく、誤ると税務調査で修正を求められるリスクがあります。判断に迷う工事がある場合は、工事前に税理士に相談することをおすすめします。
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