【税理士監修】不動産所得の必要経費一覧|修繕費・減価償却費・管理費の取扱いを完全解説

【税理士監修】不動産所得の必要経費一覧|修繕費・減価償却費・管理費の取扱いを完全解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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不動産所得の必要経費一覧|修繕費・減価償却費・管理費の取扱いを完全解説

「この支出は経費に入れていい?」「修繕費と資本的支出の違いは?」不動産賃貸の確定申告で最も悩むのが必要経費の判断です。この記事では、経費になるもの・ならないものを20項目で整理し、特に迷いやすい修繕費の判定フローチャートを税理士が解説します。

🏆 結論:経費になるかどうかは「不動産賃貸に直接必要な支出か」で判断する

不動産所得の必要経費は、不動産の貸付けに直接必要な支出が対象です。固定資産税・火災保険料・管理費・修繕費・減価償却費・借入金利子などが代表的な経費です。一方、所得税・住民税・国民健康保険料・相続税は経費になりません。特に修繕費と資本的支出の区分は税務調査で最も指摘されやすいポイントで、20万円未満か・3年周期か・60万円未満かの3段階で判定します。

不動産所得の必要経費になるもの一覧(15項目)

不動産所得の計算上、必要経費に算入できる主な項目を一覧表にまとめます。

No. 経費項目 具体例 注意点
1減価償却費建物・設備の償却費土地は償却不可
2固定資産税・都市計画税土地・建物にかかる税金自宅部分は按分
3不動産取得税物件取得時に1回のみ取得した年の経費
4登録免許税・印紙税登記費用・契約書の印紙取得時は取得価額に含めることも可
5火災保険料・地震保険料建物の保険料一括払いは期間按分
6修繕費原状回復・メンテナンス資本的支出との区分が必要
7管理委託料管理会社への手数料(家賃の3〜5%)
8借入金利子ローンの利息部分元本返済は経費にならない。赤字時は土地利子の制限あり
9仲介手数料入居者募集時の手数料物件購入時の仲介手数料は取得価額
10広告宣伝費入居者募集の広告費
11交通費物件管理・確認のための交通費記録を残すこと
12税理士報酬確定申告の依頼費用不動産所得に関する部分のみ
13通信費入居者・管理会社との連絡費用私用との按分が必要
14貸倒損失回収不能な滞納家賃事業的規模のみ(業務的規模は収入取消し)
15個人事業税都道府県への税金事業的規模で課税される場合

💡 実務のポイント

経費計上で見落としがちなのが「不動産取得税」と「登録免許税」です。物件を購入した年の翌年に届く不動産取得税の通知書を「もう去年の話だから」と計上し忘れるケースが実務で多く見られます。不動産取得税は、納税通知書が届いた年の経費として計上します。

必要経費にならないもの一覧(5項目)

経費にならないもの 理由
所得税・復興特別所得税所得に対する税金は経費の対象外
住民税所得に対する税金は経費の対象外
相続税財産の取得に対する税金(ただし相続不動産の売却時は取得費に加算できる特例あり)
国民健康保険料・国民年金社会保険料控除で控除(経費ではなく所得控除)
延滞税・加算税・罰金ペナルティの性質を持つため経費不可

なお、借入金の元本返済部分も経費にはなりません。経費になるのは利息部分のみです。「毎月のローン返済額が経費になる」と誤解している方が多いので注意してください。

減価償却費の計算方法

減価償却費は不動産所得の必要経費の中で最も金額が大きくなることが多い項目です。建物や建物附属設備の取得価額を法定耐用年数にわたって経費化する仕組みです。

主な建物の耐用年数

構造 住宅用 事務所用
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)・鉄筋コンクリート(RC)47年50年
重量鉄骨34年38年
軽量鉄骨(骨格3mm超4mm以下)27年30年
木造22年24年

中古建物の耐用年数(簡便法)

中古で取得した建物は、法定耐用年数ではなく「見積耐用年数」で計算できます。実務では以下の簡便法がよく使われます。

📐 簡便法の計算式

  • 法定耐用年数の全部を経過した場合:法定耐用年数 × 20%
  • 法定耐用年数の一部を経過した場合:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
  • 端数は切り捨て、2年未満は2年とする

建物の減価償却シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 建物取得価額:2,000万円
  • 定額法で計算(個人の建物は定額法のみ)
  • 残存価額:1円(平成19年4月以降取得)
パターン 耐用年数 償却率 年間償却費
新築RC(47年)47年0.02244万円
築25年の中古木造(簡便法4年)4年0.250500万円
築20年の中古RC(簡便法31年)31年0.03366万円

※概算値です。取得年月や端数処理により実際の金額は異なります。

📊 公認会計士の視点

築25年超の中古木造建物は耐用年数4年で償却できるため、短期間で大きな経費が計上されます。ただし、4年で全額償却すると5年目以降の減価償却費はゼロになり、不動産所得が一気に黒字化して税負担が増えます。中古物件の購入を検討する際は、償却期間終了後のキャッシュフローもシミュレーションしておくことが重要です。

不動産所得の計算方法については「不動産所得とは?計算方法と確定申告の手順」で解説しています。

修繕費と資本的支出の判断基準フローチャート

不動産の修理・改良にかかった費用が「修繕費」(その年の経費)か「資本的支出」(減価償却で複数年で経費化)かは、以下のフローで判定します。

判定ステップ 条件 判定結果
Step 1金額が20万円未満か?→ Yes:修繕費(全額経費)
Step 2おおむね3年以内の周期で行う修理か?→ Yes:修繕費
Step 3明らかに原状回復(壊れたものを直す)か?→ Yes:修繕費
Step 4明らかに資産価値を高める or 耐用年数を延ばすか?→ Yes:資本的支出
Step 5金額が60万円未満 or 前年末取得価額の10%以下か?→ Yes:修繕費
Step 6上記いずれにも該当しない→ 30%を修繕費・70%を資本的支出(継続適用が条件)

参考: 国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」

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工事内容別の修繕費・資本的支出判定早見表

不動産賃貸でよくある工事10項目について、修繕費か資本的支出かの判定目安をまとめます。

工事内容 修繕費 資本的支出 判断のポイント
外壁塗装(同等グレード)定期的なメンテナンスは修繕費
外壁塗装(高性能塗料に変更)グレードアップは資本的支出
壁紙の張替え(同等品)原状回復は修繕費
給湯器の交換(同等品)故障に伴う同等品への交換は修繕費
エアコンの新規設置新たな設備の追加は資本的支出
屋上防水工事(定期)周期的なメンテナンスは修繕費
間取り変更リフォーム用途変更のための改造は資本的支出
避難階段の新設物理的な付加は資本的支出
LED照明への交換照明器具全体の価値増大ではない
キッチン交換(同等品)同等グレードへの入替は修繕費

💡 実務のポイント

税務調査で最も指摘されやすいのが外壁塗装とキッチン・浴室のリフォームです。同等品への交換なら修繕費ですが、グレードアップが含まれると「グレードアップ部分は資本的支出」と指摘されます。工事の見積書で「原状回復部分」と「グレードアップ部分」を分けて記載してもらうことで、税務調査に備えた証拠書類を作れます。

相続で取得した不動産の経費処理

相続により取得した不動産を賃貸している場合、減価償却費の計算方法に注意が必要です。相続の場合は、被相続人(亡くなった方)の取得価額と取得時期を引き継ぎます。

相続不動産の減価償却のポイント

相続で取得した場合、被相続人が使っていた償却方法と未償却残高をそのまま引き継いで計算を続けます。新たに取得した時の価額(相続税評価額や時価)で減価償却を始めるわけではありません。

なお、相続した不動産を売却した場合は、相続税額の一部を取得費に加算できる特例があります(相続税の取得費加算の特例。措法39条)。相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合に適用できます。

⚠️ 注意

相続で取得した不動産を売却する場合、不動産所得ではなく譲渡所得の問題になります。譲渡所得と不動産所得は別の計算となりますので、売却を検討する際は税理士に事前相談することをおすすめします。

固定資産の登録と償却の実務

不動産賃貸で使用する資産は、取得時に「固定資産台帳」に登録し、毎年の減価償却費を計算します。

固定資産台帳に記載すべき情報

固定資産台帳には、資産の名称・取得日・取得価額・耐用年数・償却方法・年間償却額・期末残高を記録します。青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄にも同じ情報を記入するため、固定資産台帳を正確に管理しておくことが確定申告をスムーズに進めるポイントです。

少額減価償却資産の特例

取得価額が10万円未満の資産は、取得した年に全額を経費計上できます(少額減価償却資産)。また、10万円以上20万円未満の資産は、3年間で均等に償却する「一括償却資産」として処理することも可能です。

さらに、令和8年3月31日までに取得した40万円未満の資産は、青色申告者で常時使用する従業員数が500人以下の場合、全額をその年の経費にできる「少額減価償却資産の特例」が使えます。

青色申告のメリットについては「青色申告のメリット・デメリットを税理士が解説」をご参照ください。

借入金利子の経費算入ルール

物件取得のための借入金の利息は、不動産所得の必要経費に算入できます。ただし、不動産所得が赤字の場合は、土地取得に充てられた借入金利子に相当する部分は損益通算の対象外となります。

損益通算の制限について詳しくは「不動産所得が赤字のときの損益通算」で解説しています。

確定申告の基本については

確定申告書の書き方や提出方法については「確定申告の基礎知識|初めてでもわかる手順と必要書類」で解説しています。所得控除の全体像は「所得控除の一覧と適用条件」も参考になります。

よくある質問(FAQ)

自宅兼賃貸の場合、経費はどう計算しますか?
自宅の一部を賃貸に出している場合、固定資産税・火災保険料・借入金利子・減価償却費などは賃貸部分の面積割合で按分して経費計上します。たとえば建物全体の面積が100㎡で賃貸部分が40㎡なら、按分率は40%です。
物件購入時の仲介手数料は経費になりますか?
物件の取得に直接かかった仲介手数料は、建物の取得価額に含めて減価償却で経費化します。一方、入居者募集のための仲介手数料はその年の経費として一括計上できます。
管理組合の修繕積立金は経費にできますか?
区分マンションの修繕積立金は、管理組合に支払った時点では経費にならず、実際に修繕工事が行われた時点で経費計上するのが原則です。ただし、実務上は支払時に経費計上している例も多く、継続して同じ処理をしている場合は認められる場合があります。
物件の見学・内覧に行ったときの交通費は経費になりますか?
物件の管理や状況確認のために現地を訪問した場合の交通費は経費に算入できます。ただし、購入を検討している段階の物件見学費用は、取得した場合は取得関連費用、取得しなかった場合は経費にできないため注意が必要です。
ローンの保証料は経費になりますか?
一括で支払った保証料は、ローンの期間にわたって按分して経費計上します。たとえば35年ローンの保証料50万円なら、年間約1.4万円を経費に計上します。
確定申告ソフトの利用料は経費になりますか?
不動産所得の確定申告のために使用するソフトの利用料は、経費に算入できます。ただし、不動産所得以外の申告にも使っている場合は、不動産所得分のみを按分して計上します。
火災保険を5年分一括払いした場合の計上方法は?
5年分の保険料を一括で支払った場合、その年に属する期間分のみを経費計上し、残りは前払費用として翌年以降に按分します。たとえば5年分30万円を1月に支払った場合、その年の経費は6万円(30万円÷5年)です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 不動産所得の必要経費は、不動産賃貸に直接必要な支出が対象(15項目)
  • 所得税・住民税・相続税・国民健康保険料・延滞税は経費にならない
  • 減価償却費は最も金額が大きい経費。中古建物は簡便法で耐用年数を短縮できる
  • 修繕費か資本的支出かは6段階のフローチャートで判定(20万円未満→3年周期→原状回復→価値増大→60万円/10%→7:3按分)
  • 工事の見積書で「原状回復部分」と「グレードアップ部分」を分けて記載してもらうと税務調査に備えられる
  • 借入金は利息部分のみ経費。元本返済は経費にならない
  • 相続不動産の減価償却は被相続人の取得価額・取得時期を引き継ぐ

経費の計上を正しく行うことは、不動産所得の税負担を適正化する最も基本的な方法です。特に修繕費と資本的支出の判断は金額が大きく、誤ると税務調査で修正を求められるリスクがあります。判断に迷う工事がある場合は、工事前に税理士に相談することをおすすめします。

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