【税理士×公認会計士が解説】サラリーマン大家の確定申告|不動産所得の計算方法と節税ポイント

【税理士×公認会計士が解説】サラリーマン大家の確定申告|不動産所得の計算方法と節税ポイント
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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サラリーマン大家の確定申告|不動産所得の計算方法と節税ポイント

会社員をしながら不動産投資を始めたけれど、確定申告のやり方がわからない——そんなサラリーマン大家に向けて、不動産所得の計算方法・損益通算シミュレーション・会社バレ対策まで税理士×公認会計士が完全ガイドします。

🏆 結論:サラリーマン大家は「赤字でも確定申告」が鉄則

不動産所得が年間20万円を超えれば確定申告は義務です。しかし、赤字の場合でも確定申告することで給与所得と損益通算でき、源泉徴収された所得税の還付を受けられます。年収700万円のサラリーマンが不動産所得▲100万円を損益通算すれば、約30万円の還付が期待できます。初年度は開業届+青色申告承認申請書の提出を忘れずに。

サラリーマン大家に確定申告が必要な理由

会社員の給与は年末調整で税額が確定しますが、不動産所得は年末調整の対象外です。そのため、家賃収入があるサラリーマンは自分で確定申告をして、給与所得と不動産所得を合算した正しい税額を計算・納付する必要があります。

確定申告が必要になる基準

不動産所得の状況 確定申告 理由
不動産所得 20万円超必須法律上の義務。確定申告しないとペナルティ
不動産所得 20万円以下任意所得税は不要だが住民税の申告は別途必要
不動産所得が赤字推奨損益通算で給与の源泉徴収税が還付される

💡 実務のポイント

不動産投資を始めた初年度は、仲介手数料・登記費用・不動産取得税などの初期費用がかさむため、赤字になるケースがほとんどです。この赤字を確定申告で損益通算すれば、給与から天引きされていた所得税が還付されます。「赤字だから確定申告しなくていい」と思っている方は、大きな損をしています。

不動産所得の基本的な定義や計算のしくみについては「不動産所得とは?計算方法・経費・確定申告のやり方を完全ガイド」で詳しく解説しています。

サラリーマン大家の不動産所得の計算方法

不動産所得の計算式は「総収入金額 − 必要経費」です。サラリーマン大家の場合、この不動産所得と給与所得を合算して確定申告を行います。

給与所得と不動産所得の合算のしくみ

所得税は「総合課税」のしくみで計算されます。給与所得と不動産所得を足した金額(合計所得)に対して累進税率が適用されるため、不動産所得が増えると税率も上がります。逆に、不動産所得が赤字なら合計所得が下がり、税額も減ります。

課税所得 =(給与所得 + 不動産所得)− 所得控除

所得税の累進税率表

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下5%0円
195万円超〜330万円以下10%97,500円
330万円超〜695万円以下20%427,500円
695万円超〜900万円以下23%636,000円
900万円超〜1,800万円以下33%1,536,000円

サラリーマン大家の多くは、給与所得と不動産所得の合算で課税所得330万〜900万円のレンジに入ります。この場合、不動産所得に適用される実質的な税率は所得税20〜23%+住民税10%=30〜33%です。

損益通算のシミュレーション【年収別×不動産所得別】

サラリーマン大家にとって最大の節税メリットは「損益通算」です。不動産所得が赤字のとき、その赤字分を給与所得から差し引いて税額を減らし、源泉徴収済みの所得税が還付されるしくみです。

📐 シミュレーション前提条件

  • 所得控除は基礎控除48万円+社会保険料控除(年収の14%概算)で計算
  • 不動産所得は青色申告特別控除10万円を適用後の金額
  • 復興特別所得税2.1%+住民税10%を含む概算
  • 土地の借入金利息による損益通算制限は考慮外
年収 不動産所得 不動産なしの税額 不動産ありの税額 差額(追加税/還付)
年収500万円
(給与所得356万円)
黒字 +150万円約46万円約91万円+約45万円
赤字 ▲100万円約46万円約26万円▲約20万円還付
年収700万円
(給与所得520万円)
黒字 +150万円約82万円約132万円+約50万円
赤字 ▲100万円約82万円約52万円▲約30万円還付
年収1,000万円
(給与所得780万円)
黒字 +150万円約148万円約198万円+約50万円
赤字 ▲100万円約148万円約115万円▲約33万円還付

※概算値です。実際の税額は扶養控除・生命保険料控除等により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

🧮 シミュレーション

年収が高いほど適用税率が高いため、損益通算による還付額も大きくなります。年収1,000万円のサラリーマンが100万円の赤字を通算すると約33万円の還付ですが、年収500万円の場合は約20万円です。これが「高年収者ほど不動産投資の節税メリットが大きい」と言われる理由です。

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減価償却費で「お金を使わずに」節税する方法

サラリーマン大家にとって最も強力な節税ツールが減価償却費です。建物は年数が経つにつれて価値が減ると考え、取得価額を法定耐用年数で割った金額を毎年経費にできます。実際にはキャッシュアウトがないのに経費が計上できるため、手元のお金を減らさずに所得を圧縮できます。

物件タイプ別の減価償却シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 建物価格は各パターンに記載(土地は減価償却対象外)
  • 定額法で計算(個人の不動産は定額法が原則)
  • 節税効果は税率30%(所得税20%+住民税10%)で計算
物件タイプ 建物価格 耐用年数 年間償却費 年間節税額
新築RC(マンション)2,000万円47年約42.6万円約12.8万円
中古木造(築20年アパート)1,500万円6年約250万円約75万円
中古RC(築25年マンション)1,800万円24年約75万円約22.5万円

📊 公認会計士の視点

中古木造の年間償却費250万円は非常に大きく見えますが、6年で償却が終了するとその後は減価償却費がゼロになり、不動産所得が急増して税負担が大幅に増えます(いわゆる「デッドクロス」)。短期間の節税効果だけでなく、長期的なキャッシュフローも見据えて物件を選ぶことが重要です。

初年度にやるべき手続き【届出リスト】

不動産投資を始めた初年度は、確定申告とは別にいくつかの届出が必要です。特に青色申告承認申請書は期限を過ぎると1年待たなければなりません。

初年度の届出チェックリスト

届出書類 提出先 提出期限 必須?
開業届(個人事業の開業届出書)税務署事業開始から1ヶ月以内
青色申告承認申請書税務署事業開始から2ヶ月以内 or その年の3/15まで推奨
減価償却資産の償却方法の届出書税務署確定申告期限まで任意

⚠️ 青色申告承認申請書の期限を絶対に逃さない

青色申告承認申請書の提出期限を1日でも過ぎると、その年は白色申告しかできません。業務的規模でも10万円の特別控除が使えなくなり、赤字の繰越控除もできなくなります。物件の引渡しを受けたら、すぐに開業届と青色申告承認申請書をセットで提出してください。

青色申告の始め方やメリットについては「青色申告のメリット・デメリット完全ガイド」で詳しく解説しています。

確定申告の手順と必要書類

サラリーマン大家の確定申告フロー

以下の順序で進めます。1年目は税理士に依頼して流れを覚え、2年目から自分で申告するのも賢い方法です。

①年間の家賃収入を集計する——管理会社からの送金明細を12ヶ月分合計します。礼金・更新料・共益費も忘れずに含めます。

②必要経費を集計する——固定資産税・管理委託費・火災保険料・修繕費・借入金利息・減価償却費などを集計します。

③青色申告決算書(不動産所得用)を作成する——収入と経費を転記し、不動産所得の金額を算出します。

④確定申告書を作成する——源泉徴収票の給与所得と不動産所得を合算し、所得控除を差し引いて税額を計算します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えばWeb上で完結します。

⑤確定申告書を提出する(翌年2/16〜3/15)——e-Taxで電子申告するのがおすすめです。還付がある場合は通常1〜2ヶ月で指定口座に振り込まれます。

必要書類チェックリスト

書類 入手先 確認
源泉徴収票勤務先(12月〜1月に交付)
賃貸借契約書管理会社 or 自分で保管
管理会社からの送金明細(12ヶ月分)管理会社
固定資産税の納税通知書市区町村(4月頃に届く)
ローンの年間返済明細銀行(元本・利息の内訳がわかるもの)
火災保険の保険証券保険会社
修繕費の領収書業者
不動産売買契約書(初年度のみ)購入時に取得済み

確定申告の基本的な手続きについては「確定申告の基礎知識|初めてでもわかる手順と必要書類」でも解説しています。

会社にバレない住民税の「普通徴収」切替方法

サラリーマン大家の最大の心配事の一つが「会社に不動産投資がバレないか」です。バレるルートの大半は住民税の特別徴収です。不動産所得によって住民税が増え、その増加分が会社の給与天引きに反映されることで「副収入があるのでは?」と気づかれます。

普通徴収に切り替える方法

確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」欄で、「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」を「自分で納付」にチェックします。これにより、不動産所得分の住民税は自宅に届く納付書で自分で払うことになり、会社の給与天引きには反映されません。

⚠️ 普通徴収が万能ではない理由

自治体によっては、確定申告書で「自分で納付」を選んでも特別徴収に一本化されるケースがあります。また、不動産所得が赤字で損益通算した場合は、給与の住民税が「減る」ため、会社の経理担当者が気づく可能性があります。完全にバレないことを保証する方法は残念ながらありません。心配な場合は、お住まいの市区町村の税務課に事前確認することをおすすめします。

損益通算で注意すべきポイント

土地の借入金利息は損益通算できない

不動産所得の赤字のうち、土地を取得するために要した借入金の利息に相当する部分は損益通算の対象外です。不動産購入時のローンには土地分と建物分が含まれますが、損益通算で使えるのは建物分の利息のみです。

銀行の融資では土地と建物を一体で借りることがほとんどですが、売買契約書で土地価格と建物価格を区分しておけば、その比率でローン利息を按分できます。

「作りすぎた赤字」は税務調査の対象になる

減価償却費や経費を最大限に計上して大きな赤字を作り、損益通算で還付を受ける——これ自体は合法ですが、実態のない経費や過大な按分割合で赤字を「作っている」と判断されると、税務調査の対象になります。経費はあくまで「不動産収入を得るために直接必要な支出」に限られます。

💡 実務のポイント

サラリーマン大家が陥りやすいのが「節税のために赤字を出す」という発想です。しかし、不動産投資の本来の目的はキャッシュフローの黒字化です。減価償却費による「帳簿上の赤字」で損益通算するのは有効な戦略ですが、実際のキャッシュフロー(手取り)がマイナスになる物件は投資判断として問題があります。税務上の損益とキャッシュフローを混同しないようにしましょう。

所得控除の全体像や他の節税手段については「所得控除の一覧と適用条件」も参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

サラリーマンが不動産所得の確定申告をしないとどうなりますか?
不動産所得が年間20万円を超えているのに確定申告をしない場合、無申告加算税(原則15〜20%)と延滞税(年2.4%〜8.7%)が課されます。税務署は不動産の登記情報を把握しているため、「バレないだろう」という甘い考えは通用しません。また、悪質と判断されると重加算税(35〜40%)が課される可能性もあります。
年末調整を受けたサラリーマンでも確定申告は必要ですか?
はい。年末調整は給与所得のみを対象とした手続きです。不動産所得は年末調整の対象外なので、不動産所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。年末調整と確定申告の両方を行うことになります。会社の給与は源泉徴収票の金額をそのまま確定申告書に転記します。
不動産所得が赤字のとき、確定申告するメリットは何ですか?
損益通算により、不動産所得の赤字を給与所得から差し引くことで所得税・住民税を減らせます。年収700万円のサラリーマンが100万円の赤字を通算すると、約30万円の税金が還付される計算です。特に初年度は仲介手数料や登記費用などの初期費用で赤字になりやすいため、確定申告しないと還付金を受け取る機会を逃してしまいます。
不動産投資を会社に知られたくないのですが、対策はありますか?
確定申告書の第二表で住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」に変更することで、不動産所得分の住民税が給与天引きに反映されなくなります。ただし、自治体によっては特別徴収に一本化されるケースや、損益通算で住民税が減った場合に会社が気づく可能性もあります。完全にバレない保証はないため、お住まいの自治体に事前確認をおすすめします。
青色申告と白色申告、サラリーマン大家にはどちらがおすすめですか?
青色申告を強くおすすめします。業務的規模(10室未満)でも10万円の特別控除が使え、赤字の3年間繰越控除も可能です。白色申告との手間の違いは開業届と青色申告承認申請書の提出だけなので、デメリットはほぼありません。事業的規模(10室以上)であれば最大65万円の控除が使えるため、メリットはさらに大きくなります。
中古物件の減価償却の耐用年数はどうやって計算しますか?
中古物件は「簡便法」で短い耐用年数を使えます。法定耐用年数を全部経過した場合は「法定耐用年数×0.2」、一部経過の場合は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×0.2」で計算します。たとえば築20年の木造アパートなら(22年−20年)+20年×0.2=6年です。耐用年数が短いほど年間の償却費が大きくなり、節税効果が高まります。
確定申告を税理士に依頼すると費用はいくらかかりますか?
サラリーマン大家の確定申告を税理士に依頼する場合、年間5〜15万円程度が相場です。物件数が少なく(1〜2件)、経費も管理会社経由で整理されている場合は5〜8万円程度で収まることが多いです。税理士報酬自体も不動産所得の経費として計上できるため、実質的な負担はさらに小さくなります。初年度は書類の作り方を教えてもらう意味でも税理士への依頼を検討してみてください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 不動産所得が年間20万円超で確定申告は義務。赤字でも確定申告して損益通算で還付を受けるべき
  • 年収700万円・不動産所得▲100万円なら約30万円の税金が還付される
  • 減価償却費は「お金を使わずに所得を圧縮できる」最強の節税ツール(中古木造は特に効果大)
  • 初年度は開業届+青色申告承認申請書を物件引渡し後すぐに提出
  • 会社バレ対策は確定申告書で住民税を「普通徴収」に切り替え(完全ではない)
  • 税務上の損益とキャッシュフローを混同しない。節税のためだけの赤字は本末転倒

サラリーマン大家の確定申告は、収支の構造を理解すれば決して難しくありません。初年度は青色申告承認申請書の提出期限に注意し、まずは書類を揃えるところから始めましょう。不明点があれば、不動産所得の確定申告に慣れた税理士に相談するのが確実です。

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