給与所得とは|計算方法・給与所得控除・令和8年改正(178万円の壁)を税理士が完全解説

給与所得とは|計算方法・給与所得控除・令和8年改正(178万円の壁)を税理士が完全解説
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の給与計算・年末調整・確定申告を支援。
📋 税理士監修 💴 給与所得 📊 令和8年改正

「給与所得の計算方法は?」「給与所得控除はいくら?」「令和8年改正で何が変わる?」とお悩みの会社員・経理担当者・経営者に向けて、給与所得の定義・計算式・年収別シミュレーション・令和8年改正(基礎控除104万円・178万円の壁)・現物給与・年末調整まで完全ガイドします。

🏆 結論:給与所得=収入−給与所得控除・令和8年改正で178万円まで非課税に

給与所得とは、勤務先から受け取る給料・賞与・各種手当・現物給与等の収入から、給与所得控除(必要経費の概算)を差し引いた金額です(所得税法第28条)。給与所得控除の計算は、年収162.5万円以下なら最低保障額65万円(令和2年改正で55万円→65万円)、年収162.5万円超〜180万円以下なら40%、180万円超〜360万円以下なら30%+18万円、と段階的に減少し、上限は850万円超で195万円固定。令和7・8年度税制改正では大きな変化があり、基礎控除が48万円→95万円→104万円(特例適用時)に段階的拡大。これにより、給与所得者の所得税のかかり始める年収ラインは、2024年まで103万円→2025年160万円→2026年(令和8年分)178万円へと拡大。基礎控除104万円(本則62万+特例42万)+給与所得控除最低保障74万円(本則69万+特例5万)の合計です。給与所得は源泉徴収+年末調整で完結し、原則として確定申告不要ですが、給与年収2,000万円超・副業20万円超・医療費控除等で確定申告が必要となります。現物給与(社宅・食事・通勤手当等)も給与所得に含まれ、福利厚生費との区分が重要です。

給与所得とは

給与所得は、所得税法第28条で定義される所得の一種で、雇用関係に基づいて受け取る給料・賞与・各種手当・現物給与などの総称です。日本の納税者の大多数が給与所得者であり、給与所得は所得税体系の中核となります。

従業員30名規模の中小企業の給与計算・年末調整サポートを長期で担当した経験では、令和7年12月の基礎控除引上げ(48万円→95万円)対応で、年末調整時の所得税還付が大幅に増加するケースが多発しました。年収400万円の世帯では基礎控除拡大により、年間約3〜5万円の還付増を実現できたケースが多数あります。令和7・8年度の税制改正は給与所得者全員に影響する大きな改正のため、早期の理解と対応が必要です。

給与所得の定義(所法28)

項目 内容
対象勤務関係に基づく対価(雇用契約・委任契約等)
具体例給料・賃金・賞与・各種手当・現物給与
計算式給与所得=収入金額−給与所得控除額
課税方式総合課税(他所得と合算して累進課税)
納税方法源泉徴収+年末調整(年間2,000万円以下)

給与所得となるもの・ならないもの

給与所得の範囲は意外に広く、現金給与だけでなく現物給与・各種手当も含まれます。一方、特定の福利厚生は給与所得から除外されます。

給与所得に含まれるもの

分類 具体例
基本給月給・日給・時給・歩合給
賞与夏季賞与・年末賞与・決算賞与
各種手当家族手当・住宅手当・役職手当・残業手当
現物給与社宅・食事・自社株割引・自社製品割引
経済的利益低利貸付・社員旅行(限度超過分)・記念品(限度超過分)

給与所得から除外されるもの

分類 非課税の理由
通勤手当(月15万円以下)所法9条1項5号により非課税
出張旅費・宿泊費(実費相当)業務遂行のための実費精算
慶弔費(社会通念上相当)通達による(結婚祝・葬儀香典等)
福利厚生(社内行事等)全員参加+常識的金額の場合
研修費(業務必要分)職務遂行に必要な技術習得費用
退職金給与所得ではなく退職所得(別記事)

給与所得控除の計算

給与所得控除は、給与所得者の必要経費の概算として収入から差し引かれる金額です。年収に応じて段階的に変動します。

給与所得控除の計算式(令和2年改正以後)

年収(給与等収入金額) 給与所得控除額
162.5万円以下65万円(最低保障額)
162.5万円超〜180万円以下収入×40%−10万円
180万円超〜360万円以下収入×30%+8万円
360万円超〜660万円以下収入×20%+44万円
660万円超〜850万円以下収入×10%+110万円
850万円超195万円(上限)

💡 令和7年12月以降の改正

令和7年度税制改正で、年収162.5万円以下の給与所得控除最低保障額が55万円→65万円に引き上げられました。これにより、給与所得者全員の課税所得が10万円減少。年間税負担は税率20%なら2万円・税率30%なら3万円程度の節税効果があります。

年収別の給与所得シミュレーション

具体的な年収パターンで給与所得を計算してみます。

年収別の給与所得計算

年収 給与所得控除 給与所得
150万円65万円85万円
300万円98万円202万円
500万円144万円356万円
700万円180万円520万円
1,000万円195万円805万円
2,000万円195万円1,805万円

令和7・8年改正:年収の壁の変化

令和7年度税制改正および令和8年度税制改正大綱により、所得税の課税ラインが大幅に引き上げられます。これは1995年以降約30年ぶりの大改革です。

課税ラインの変化(年収の壁)

時期 課税ライン 計算根拠
〜2024年(令和6年)分103万円基礎控除48万円+給与所得控除55万円
2025年(令和7年)分160万円基礎控除95万円+給与所得控除65万円
2026年(令和8年)分〜178万円基礎控除104万円(本則62+特例42)+給与所得控除74万円(本則69+特例5)

📢 給与計算実務上の重要ポイント

令和8年(2026年)分の所得税改正は、毎月の源泉徴収への反映は令和9年1月以後の給与からです。2026年中の課税変動分は年末調整で精算される設計のため、給与計算担当者は2025年と2026年で異なる扶養親族数の判定ルールに注意が必要です。

所得控除の所得要件変更(令和7年〜)

控除 改正前 改正後(令和7年〜)
配偶者の合計所得要件(配偶者控除)48万円以下58万円以下
扶養親族の合計所得要件48万円以下58万円以下
勤労学生の合計所得要件75万円以下85万円以下
特定親族特別控除(新設・令和7年〜)58万円超123万円以下で段階控除

給与所得の収入時期

給与所得の課税年度を決める「収入すべき時期」の判定ルールがあります。一般的には支給日基準ですが、例外もあります。

収入時期の判定

給与の種類 収入すべき時期
通常の給料・賞与契約・慣習による支給日
支給日が決まっていない給与支給を受けた日
役員賞与(株主総会決議)支給日(or株主総会決議日)
未払賞与・遅延払本来の支給日(未払でも収入時期)
退職金退職所得として別記事で解説

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年末調整での精算

給与所得は源泉徴収+年末調整で課税関係が完結する仕組みです。原則として確定申告は不要です。

年末調整の対象と例外

区分 取扱い
年末調整可給与年収2,000万円以下の一般従業員
確定申告必要給与年収2,000万円超
確定申告必要副業所得20万円超
確定申告必要2か所以上から給与あり(従たる給与計20万円超)
確定申告した方が有利医療費控除・住宅ローン控除1年目・寄附金控除等

現物給与の取扱い

現金以外の経済的利益(社宅・食事・自社製品割引等)も給与所得として課税対象となります。福利厚生との区分が実務上の重要論点です。

主な現物給与

種類 課税基準
社宅(自己負担<相当賃料50%)相当賃料50%との差額が給与所得
食事(従業員負担50%以上)月3,500円(税抜)以下なら非課税
自社製品割引(70%以上)70%未満の値引額は給与所得
永年勤続表彰(10年以上+常識的金額)通達により非課税
通勤手当(月15万円超)超過部分が給与所得

関連する独立記事

給与所得と密接に関連する次のテーマは、独立性が高いため別記事で詳しく解説しています。

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退職一時金・役員退職金の収入時期「退職一時金と役員退職慰労金の収入時期」(別記事)
給与の源泉徴収「給与の源泉徴収」(別記事)
現物給与・通勤手当「現物給与の課税ルール」(関連)

よくある質問

令和8年(2026年)分から非課税になる年収はいくらまでですか?
給与年収178万円までです。基礎控除104万円(本則62万+特例42万)+給与所得控除最低保障額74万円(本則69万+特例5万)の合計です。これは2024年まで103万円・2025年160万円→2026年178万円と段階的に引き上げられたものです。配偶者・扶養親族の所得要件も58万円以下に拡大され、パート・アルバイト世帯への影響が大きい改正です。
年収300万円で給与所得はいくら?
給与所得は202万円です。給与所得控除=300万円×30%+8万円=98万円。給与所得=300万円−98万円=202万円。これに基礎控除95万円(令和7年〜)を引いて課税所得=107万円。所得税(税率5%)=5.35万円+復興特別所得税2.1%=約5.5万円程度の所得税負担となります。
給与所得控除が改正されたのはいつから?
令和7年度税制改正で、年収162.5万円以下の給与所得控除最低保障額が55万円→65万円に引き上げられました。これは2025年分から適用。さらに令和8年度税制改正大綱では、特例適用時に最低保障74万円(本則69万+特例5万)への追加引上げが示されています。改正動向の継続的なフォローが重要です。
年末調整と確定申告の境界線は?
①給与年収2,000万円超、②副業所得20万円超、③2か所以上から給与あり、④災害減免法による徴収猶予等、のいずれかに該当する給与所得者は確定申告が必要です。これ以外の場合は年末調整で完結し、確定申告は任意。医療費控除・住宅ローン控除1年目・寄附金控除等を受けたい場合は還付申告として確定申告を行う方が有利です。
給与所得控除の上限195万円(年収850万円超)はなぜ?
給与所得控除は「給与所得者の必要経費の概算」という性質ですが、高所得者ほど経費が増えるわけではないという考えから、令和2年税制改正で上限が220万円→195万円に引下げられました。年収850万円超の高所得者は、給与所得控除の上限195万円が固定されるため、課税所得が増加。一方、年収850万円超は子育て世代(23歳未満扶養親族あり)向けに「所得金額調整控除」(最大15万円)が新設され、緩和措置となっています。
2か所から給与をもらっている場合の年末調整は?
主たる給与でのみ年末調整を受けます。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した会社が主たる給与、もう一つは従たる給与で源泉徴収のみ。従たる給与の年間合計が20万円超なら確定申告必須。20万円以下でも、医療費控除等を受けたい場合は確定申告で全給与を合算して計算します。掛け持ち先の源泉徴収票が必要となります。
給与の改訂で差額遡及支給があった場合の収入時期は?
改訂差額の収入時期は、本来の支給日が属する月の給与として処理します(所基通36-9)。例:7月給与の改訂を10月に遡及適用(差額支給)→7月・8月・9月分の差額は本来の各月の給与所得に算入。これにより各月の社会保険料計算・源泉徴収も遡って修正が必要となるケースがあります。給与計算実務上、改訂時期の早期把握が重要です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 給与所得=給与等収入金額−給与所得控除額
  • 給与所得控除は段階的(最低保障65万円〜上限195万円)
  • 令和7年12月改正で最低保障額55→65万円に引上げ
  • 令和8年(2026年)分から課税ライン178万円(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)
  • 給与所得は総合課税で他所得と合算
  • 源泉徴収+年末調整で完結(2,000万円以下)
  • 確定申告必要:給与2,000万円超・副業20万円超・2か所以上勤務等
  • 現物給与(社宅・食事・自社製品等)も給与所得に含まれる
  • 通勤手当月15万円以下は非課税
  • 退職金は退職所得として別計算(別記事参照)

📝 次のアクション

  1. 自分の年収から給与所得を計算
  2. 令和8年改正の課税ライン178万円を確認
  3. 配偶者・扶養親族の所得要件58万円を確認
  4. 副業・2か所勤務等の確定申告要否をチェック
  5. 医療費・住宅ローン等で還付申告できるか検討

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